DIAURA

戦闘態勢にあるDIAURAが生み出した最新作。攻撃力の高い『ANTISM』を武器に今、彼らの快進撃が幕を開ける。地獄に昇っていきましょう――

今年1月に開催した12周年記念公演「BLACK IMPULSE」で、DIAURAの核となる“黒い衝動”を改めて見せつけた彼らが、新たなミニアルバム『ANTISM』を完成させた。これまでライブでのみ披露され未音源化だった既存曲5曲と新曲「ANTISM」を収めた今作は、とてつもなく攻撃力の高い1枚となっているが、その根底にあるのは「BLACK IMPULSE」を皮切りに幕を開けた“2023年のDIAURA”の意志であり本質だ。声出し解禁でのワンマンツアーも控える中、戦闘態勢にあるDIAURAの4人に周年ライブからの流れと最新作についてじっくり話を聞いた。


2023年に爆発させられるという予測はあった(yo-ka)

yo-ka

9月以来半年振りの登場ですが、その間、全国ツアー、大晦日ライブ、12周年ライブ、バースデーライブと盛りだくさんでしたね。

yo-ka:そうか。大晦日って以前まではずっと年越しでライブをやっていたんですけど、コロナ禍はやっていなくて。去年は年越しではなかったにせよ大晦日にライブができたことは、ちょっとした時代の進歩というか変化というか。ふと今、それを感じましたね。

『ANTISM』を紐解くにあたって、まずは12周年ライブについて伺います。「BLACK IMPULSE」=黒い衝動ということで、DIAURAを象徴する黒という色と初期衝動を改めてライブで示したわけで、初期の楽曲が多くあったり、一種の原点回帰を含む内容だったと思います。意外と今まで周年ライブでこういう選曲の仕方はしてこなかったのではと。

yo-ka:10周年の時なんてあまりそういうことを考えていなかったですからね。常に今のほうが重要ではあるんですけど、不思議と10周年の時はあまり過去に目が行かなかったんですよね。でも、コロナ禍の影響でライブの在り方が変わって、自然と曲の見方が変わっていって。今と向き合いまくってライブを作ってきたからこそ、過去の曲に対して、より気づくことが多かったんです。そういうこともあって、思いきりそれをやりたくなったというのもありましたね。

それにしても11曲もの初期の楽曲を演奏してみて、どんな感覚でしたか?

yo-ka:違和感が全然なかったんですよね。古い曲をやっている気負いとかも全然なくて、本当に自然。何なら昔よりも自然で、それがビックリした感じです。ていうか、11曲もあったんですね(笑)。

2011〜2014年発表のものが11曲で、あとは2021〜2022年発表の5曲、『ANTISM』収録曲4曲の全20曲という構成でした。

yo-ka:わ、すげー(笑)。偏りがエグいですね(笑)。

佳衣:当日の衣装も全員真っ黒で、見た目も中身もタイトル通りのもので、まずそれにすごく懐かしさを感じたというか。初期衝動みたいな、本当に真っ黒な感じは懐かしいなと思いながら、ライブ本編も気持ち的には当時に戻ったような感覚があって。1曲目の「to ENEMY」から、あの時はこういうテンションでやっていたなと当時の気持ちを思い出す瞬間が何度かあったのが印象的でした。

達也:古い曲が多いというのはあまり意識してなかったんですけど、改めてセトリを見返したら確かにそうだなと。2023年は攻めていこうという話は前からしていたので、衣装や1曲目が「to ENEMY」ということも含めて、そういう姿勢を見せられたライブだったなと思いますね。あと、ラストに「失翼の聖域」を演奏したのが久々な感じで、個人的には何か嬉しかったです。昔のほうが結構ラストにやっている頻度が高かったんですよね。やっぱりいいなと改めて思いました。

翔也:俺はお客さんと同じくらいの感覚というか、「わ、これやるんだ」みたいなすごくピュアな感覚で(笑)。それと、自分が過去にどういうプレイをしていたんだろうなと聴き返すタイミングでもあるので、こういうことをやっていたんだなと。多分、その時じゃないと出ないフレーズだったりするので、今やると新鮮ですよね。

銀テープの印字が「DIAURA 12TH ANNIVERSARY BLACK IMPULSE TO VARIANT[ISM]」だったことも、このライブは周年記念と同時に次の「VARIANT[ISM]」ツアーへ向けたものであるという解釈に確信を得た瞬間でした。

yo-ka:2023年の方向性は「BLACK IMPULSE」でしっかりと提示したかったし、その後に今参加している対バンツアー(Resistar Records Presents「S.O.R.T 〜Soul of Resistance Tour〜」)や『ANTISM』が控えていて、さらにその先もあって…それで声出しができるタイミングともちょうど重なってくるので、色々なものが重なる年だなと。秘めた暴力性や攻撃性をコロナ禍では無意識に押し殺す場面があったので、それを抑えなくていいんだというのが何よりDIAURAにとって大きいなと思って。だから、「BLACK IMPULSE」の時には「VARIANT[ISM]」を見据えて「お前ら、今年はやるぞ」というのを伝えたかったんです。銀テープ一つとってもそれを感じ取ってもらえればいいなという気持ちでしたね。

今おっしゃったように今年の流れがあまりにも綺麗なので、どれが本当の発端なのかとても気になっていたんです。「BLACK IMPULSE」なのか、『ANTISM』ありきでの逆算なのか、声出し解禁タイミングを予測しての『ANTISM』+そこから逆算の「BLACK IMPULSE」だったのか、はたまた攻撃的にいこうということが前提での「BLACK IMPULSE」と『ANTISM』の流れが生まれたのか。

yo-ka:あー、なるほど。「BLACK IMPULSE」というタイトルは昨年9月3日「愚民の日2022」で発表していたんですよね。とにかくコロナ禍で活動しながらずっとウズウズしていて、自分の中でそろそろ蓋をしていることに限界が見えてきていたんですよ。もうちょっとあれこれやりたいなという抑制の限界みたいなものが近い気がしていたんです。だけど、攻撃性をあまり感じさせない前作『カタストロフノート』を9月に出して、またそこで抑えたんですよ。ドMですよね。改めて考えてみたら、予測かもしれないですね。2023年に爆発させられるという予測はあったので、それありきで「BLACK IMPULSE」を考えて、じゃあ爆発させるのであればというところで『ANTISM』という感じだったと思います。

なるほど。佳衣さんもそろそろ爆発したいなという気持ちになっていました?

佳衣:自分の中では常に小さい爆発を繰り返してやってきたんですけど、バンドとしてのエネルギーをもっと外に出していきたい、もっと色々な人に見てもらいたいし、DIAURAのライブを体感してもらいたいなというのは常々思っていたところなので、今年がすごく良いタイミングなのかなというのは思いました。去年からyo-kaと食事に行った時とかに「2023年は攻めでいこうぜ」みたいなことは話していたので、バンド全体がそういうふうに感じていた時期なのかなとは思いますね。

達也:皆で改まって集まって話し合いというのはなかったですけど、『ANTISM』の選曲会や行事ごとに話し合う中で、2023年は攻めの気持ちでいきたいという共通の意識を高めていった感じでしたね。

ヴィジュアルも今回はDIAURAのど真ん中、正装である軍服ですよね。

yo-ka:不思議なもので、これもライブありきなんですよね。ああいう衣装を着るDIAURAの4人が視覚的にもすごくわかりやすい形で一丸となってライブをしていく。まずライブありきで見せるというのがバンドの軸であり、基本の部分じゃないですか。今、改めて4人で軍服を着るということは、やっぱり俺の役割としては登場からDIAURAのアイコンであるフラッグを持って、ガンガンに振り回して愚民たち(ファンの呼称)を刺激して…そういう画だったんですよね。だから、先ほど「BLACK IMPULSE」をある種の原点回帰とおっしゃってもらいましたけど、あまりそこの意識はなくて。今だからこそDIAURAがDIAURAたる所以をDIAURAが示すべきだと思って、揃えようという形になりました。

「ANTISM」のMVでもフラッグを持っていますもんね。

yo-ka:そうそう。満を持してやれるんだから、やりましょうということですね。

翔也さんの髭解禁も話題なのではと。

翔也:そんなに話題になったのかなという感じで(笑)。もっと批判的な声が上がると思っていたんですよ。何ならそれを求めてやったところも実はあって。パーマをかけたのもそうなんですけど。自分が今、このキャラクターの立ち位置でどこまで攻められるんだろうなというのを試してみたくて、やってみたら意外とすんなり受け入れられちゃったので、ちょっと肩透かしを食らった感じではあります。でもそれって、俺が積み上げてきたものが身になっているんだろうなと思うので、次どうしようかなという感じですよね。基本的には立ち位置的にこういうキャラクターになるのは自分が好きでやっていることなので、もっと裏切りたいなと常に考えているところではあります。

いつも以上に音に関してシビアにこだわった(佳衣)

佳衣

『ANTISM』はこれまで未音源化だった既存曲5曲と新曲「ANTISM」を収録した作品です。既存曲はライブでやり慣れている「UNCONTROL BIAS」「CRACK PAIN」「SHADOW」、2〜3回しか披露していない「混沌たる世界」「依存の檻」ということで、そもそもこの5曲はいつ頃から存在していたんでしょう?

yo-ka:「混沌たる世界」「依存の檻」が同じ時期で一番古くて2016年かな。

翔也:新曲だけのライブをやろうとなった時に出てきた曲だよね。

yo-ka:そう。誰も知らない新曲だけでワンマンをやるというヤバいヤツを2016年にやって、その時の2曲ですね。むしろそのライブで作品になった曲って何かあったっけ?

翔也:いや…(笑)。

達也:ないっけ…(笑)?

yo-ka:幻(笑)?

佳衣:(笑)

翔也:あの時はいっぱいいっぱいだったので(笑)。

ということは、音源化されていない曲はまだまだあるんですね。

yo-ka:あります。愚民も忘れているか、そもそもそのライブを観た人しか知らないし、俺らも曖昧ですよ。あの時はただただ必死でしたね。言い出さなきゃよかったと後悔しました(笑)。そして「UNCONTROL BIAS」が「THE UNCONTROL BIAS」ツアー(2018年3〜4月開催)の時に作って、「CRACK PAIN」はさらにその後、ツアーで起爆剤が欲しくて作ってライブだけでやっていたという。「SHADOW」は「UNCONTROL BIAS」の前後だった気がします。共通して言えるのが、全部ライブを見据えていたんですよね。

楽曲も含めて全てが引き寄せ合っているというか、まさに今出すべき曲たちですね。

yo-ka:ライブでしかやっていない曲をまとめて作品として出したいという話は数年前から出ていたんですけど、タイミングを見計らっていて、それがまさに今だったということですね。

新曲「ANTISM」は他の5曲が確定した上での制作だったのでしょうか?

佳衣:いや、確定する前ですね。この辺で組んでいこうかというザックリした案はあったんですけど、正確には決まっていなくて、そこに「ANTISM」ができてという感じでした。

初音源化とはいえ既存曲ありきということで、作品の全体像は見えてはいたのかなと。

佳衣:DIAURAで未音源化の既存曲を詰め込んだ作品というのをこれまで作ったことがなかったので、自分もどんなふうになるんだろうなと思っていたんですよね。でも実際こうして出来上がってみると、なんだかんだまとまりは良くなったなという印象はありますね。

既存曲の存在があることにより、新曲制作の心持ちとして普段と異なる部分はありましたか?

佳衣:そこまでは意識的に考えてはいなくて、まずは「ANTISM」をどういうものにするかが全てでしたね。あとはそこから他の曲たちをどうアレンジするかというところで。あまり音質の差があるのもアレだし、多分お客さんの耳が一番肥えていると思うので、逆に豪華過ぎて違和感を与えるのもよくないなと、そこのバランスは難しかったです。

「ANTISM」は既存曲5曲のさらに上をいく攻撃力があります。冒頭のユニゾンから起爆力があり、全体的に弦楽器の音色がこれまでのDIAURAの中でも重く、ドラムもタイトな印象を受けました。

佳衣:やっぱり攻撃的なものがいいなというのはあったんですけど、それだけだと自分としては納得いかなくて、そこにもちゃんと聴きやすさが欲しいので、今回いつも以上に音に関してシビアにこだわりましたね。イヤホンを変えて聴いてみたり、皆が普段どんなイヤホンを使っているのかTwitterで市場調査したんですよ。自分が聴いているものだけでは判断できなかったので、調査を参考にして、色々聴いてバランスを取っていきました。

市場調査の結果としては、何が一番多かったんでしょう?

佳衣:意外とバラバラだったんですよ。自分の予想としてはApple製品が多いのかなと思っていたんですけど、全然そんなことなくて、意外と皆こだわっているんだなっていう。

それは興味深いです。「ANTISM」の楽器隊のレコーディングはいかがでしたか?

達也:技術的に難しい場面が多いですし、ユニゾンしている部分のキッチリさや、攻撃性を出すにあたってのシンバルの使い方、どの場面で一番大きいクラッシュを鳴らそうかとか、結構こだわりましたね。あと、音色は作品全体として攻撃的な印象を持たせたかったので、スネアに関しては種類をあまり変えなかったんですけど、シンバル類はこだわったところです。使い方を今までと結構変えました。クラッシュをジャンジャン鳴らしていた部分が極端に減ったりとか、そういう違いがありますね。

そう言われると確かに。

達也:だけど、「ANTISM」はもっと手数を減らしてもよかったのにと、終わった後に佳衣ちゃんから言われて(笑)。やり過ぎた部分がきっとあるんだと思います。自分的には「よっしゃー!」とテンション上がって叩きまくっていたんですけど(笑)。

佳衣:後々困るのは自分だと思うので(笑)。

達也:(笑)

翔也:ベースはとにかく下の音が欲しいと言われていて、いつもだったら音作りしてから録り始めるんですけど、今回は全部音作りを後回しにするという感じだったんです。それってピックの当たり方だったり、弦の当てる場所だったりというのがあるので、どのタイミングでどこに当てるのかというのが結構課題だったりしました。シンプルな音だからこそ、そこは気を遣わなければいけないんだよなと改めて思いましたね。

ちなみに、最後のブロックはこの曲の中で一番DIAURA節のメロディーだなと感じました。

yo-ka:お、本当ですか。でもメロディーは佳衣さんですからね。段々と俺節がこの人の中に入ってきたんですかね(笑)。

佳衣:上手く歌ってくれたなというのはすごく思いましたね。こんなにちゃんとカッコよくなるんだと感心しました。

そして〈群れから外れた 僕ゆえの芸術を〉という歌詞にDIAURA自身を感じて。群れないイメージがありますし。

yo-ka:協調性がないんですよ。ちょっと悪い言い方をすると、人に対して本当に関心がないんですよね。例えば誰かがこうやっていて、いい感じだからうちもやろうみたいなのがすごく嫌いで。時に必要な場合もあるのかもしれないけど、基本的にずっとそういうのが苦手だったので、まぁ根本の部分ですよね。だからこそ思うことや気づくこともあったし、伝えたいこともあったし、「ANTISM」の歌詞には自分の本質の部分がすごくあります。そういう気持ちって、本当に今だからですよね。要は自分の牙の使い方、向き合い方みたいなものって、度々訪れる問答なんですけど、多分それもこのタイミングだからこそ書くべき歌詞なんだろうなと、詞を書いている時に思いました。メロディーがそうさせたというのももちろんありましたし。だから佳衣が作ったこの曲が望むのは、今改めてそこなんだろうなというリンクは感じましたね。

それと、〈地獄へ昇ってゆく〉という表現が秀逸だなと。「地獄へ」に続く言葉で自然と浮かぶのは「落ちる/墜ちる」ですから。

yo-ka:そこはすごく自分の中でも大事なポイントですね。ライブって地獄絵図が描ければ、すごく良いものだと思うんですよ。それは俺らにとってはすごく素敵なものなので。だから、この言葉はそういうライブの解釈もあったり、精神的な部分でもあったりするんですけど、要はどう思うかなんじゃないかなと。