繰り返される善と悪。もしもこの命が再び巡り来るなら――。DIAURA最新作『VERMILLION』の全貌に迫る。
昨年10月に全曲新曲かつ14曲収録というフルボリュームのアルバム『R.I.P.』を発表し、その作品を手に行った全国ツアーのファイナル、今年1月20日のSpotify O-EAST公演をもって11周年を迎えたDIAURAが、早くも新たな作品を完成させた。アニバーサリー公演を振り返るとともに、2曲で1セットだという、善と悪の繰り返しを表現した「VERMILLION」と「unchain children」、c/wの「ブラックアウト」を含めた最新シングル『VERMILLION』の全3曲について、4人にじっくりと話を聞いた。
ちゃんと皆で作り上げてきて、皆でやりたいことをやれてきた(達也)
1月20日に行われた「R.I.P. -to chaotic future-」Tour Final&DIAURA 11th Anniversary「R.I.P.-reincarnate from zero-」@Spotify O-EASTを振り返りたいと思いますが、アルバム『R.I.P.』の14曲もの新曲全てが本編で披露されるとは驚きでした。
yo-ka:ツアーで18公演回りましたけど、アルバムの曲を本編から外した回数のほうが少ないんですよね。激しめだったり、一体感が作れる曲を1曲だけアンコールにということはありましたけど。ファイナルだけしか来られない人もいるので、『R.I.P.』という作品から逸れたくなかったというのがまずあって、アニバーサリーよりもツアーの完結というところに重きを置いてセットリストを作りました。なので、全部ブチ込んで、本編でやり切るという気持ちでしたね。
演奏している側としては、新曲ばかりだなという感覚は特になかったですか?
yo-ka:やっぱりライブでやってみないとわからないことが多いんですよ。シングルの2~3曲だったらまだしも、14曲の塊の中の1と考えると、これまでのDIAURAにあり得た曲であっても、不思議と新鮮なんですよね。だから、ツアーを乗りこなすまでは少し時間を要したし、本当に探り探りで。ツアーを進めていくに連れて、ガチッと流れの中でハマり込んでいく時の感覚が1曲1曲にあったので、ファイナルはアルバムの塊感というのを出せたかなという気はしていますね。
それこそ達也さんもMCで「ライブを重ねていくうちにどんどん曲が成長していって、盛り上がっていくのを感じました」と言っていましたよね。
達也:そうですね。始めの頃とファイナルで見た景色はやっぱり違って。どうしてもファンの人たちの動きってあるじゃないですか。表情も含めてなんですけど、多くの箇所を回ってきてくれた人たちと一緒に作り上げた景色が見られたなと思います。細かいことを言うと、曲によっては愚民(※ファンの呼称)たちが手を上げて下げる瞬間とか、ちゃんと皆で作り上げてきて、皆でやりたいことをやれてきたんだな、それでファイナルまで持って来られたんだなというのをすごく感じました。マスクはしていますけど笑顔も見られたので、ツアーを回れて良かったなと思いましたね。
確かに、新曲たちでyo-kaさんの振りに合わせたファンの皆さんの動きを見て、つい数ヵ月前までは存在しなかったものなのに、こんなにも完成された素晴らしい景色になるんだなと感動を覚えました。翔也さん作曲の「Loop[S]Diver」で、一部分を翔也さんが歌うというのは、いつから始まったのでしょうか?
翔也:割とツアーの早い段階で、最初は無茶振りだったんですよ。でもお客さん的にも喜んでいる感じがしたし、ツアー後半になってくると、俺もちょっと上手く歌ってやろうっていう変な意地も出てきたりして(笑)。ライブの緊張感が解ける瞬間として、すごく良いのかなと思いました。
ツアー中盤の神田SQUARE HALLの時点で既に歌っていて、驚きましたよ。
翔也:歌はムズイっすね(笑)。
『R.I.P.』以前のDIAURAになかったタイプの「Loop[S]Diver」や「ミザリー」が、ライブ全体の中ですごく良いフックになっていましたよね。
佳衣:「ミザリー」にしてもそうなんですけど、作る段階でこういう景色になったらいいなというのをある程度念頭に置いて作っているんですよね。ツアーの序盤のほうはなかなかその通りにはならなかったりするんですけど、最終的には自分が作りたかった景色がちゃんとライブで作れたなとファイナルで感じられましたし、自分たちの思惑通りに曲が育っていって、それ以上のものをお客さんが作ってくれたような感じはあります。
そして、「その証明」「Believer」「Noah」の流れはグッとくる場面でした。
yo-ka:「Noah」って2017年リリースの曲ですけど、当時あまりライブでやっていなくて、むしろここ最近のほうがやっているんですよ。モードなのか何なのか不思議で、自分でもわかりかねるところではあるんですけど、11年このバンドで過ごして作品を作ってきて、結局言いたいことって「Noah」に全部入っているというか、集約されている気がしているんですよね。時代は変わっていくじゃないですか。今で言ったら世界で争いが起きていて、そういう時代の大きな変化だったり、音楽をやっている人間としての身の周りの変化、そういう流れというのは常に起き続けている。でもDIAURAとしての軸は一つしかなくて、それを失くさないように生きていたいなという思いで歌詞を書いていたので、11年経って『R.I.P.』という作品ができても、結局それなんだと。「Noah」を入れることによって、そこに自分の芯の部分を1本通せている気がするので、そういう意味で今だからこそ、よりハマるのかなという感じがするんですよね。
なるほど。アンコールは当初2~3曲を予定していたようですが、結果的に5曲も披露しましたよね。
yo-ka:アンコール用に曲は多めに用意していて、その中からチョイスするんですけど、外せない曲が多かったんですよね。やりたいなというのが増えていっちゃって、まぁファイナルだし、あれもこれもとやっていたら…すげー多かったですね(笑)。
そのアンコールで今回のシングルのc/w曲「ブラックアウト」が初披露されましたが、リード曲ではなく、これを選んだ理由というのは?
yo-ka:「ブラックアウト」は融通が利く曲なんですよね。俺は、このバンドで融通担当だと思っている節もありますから(笑)。「VERMILLION」は『R.I.P.』を完結させてから見せたくて、とは言え何も新しい曲を出さないのも面白くないなと。それと、今作は「VERMILLION」と「unchain children」の2曲で1セットという感じなので、そこを中途半端にバラして出すというのはそもそもないなと思ったんですよね。
覚えやすい部分と凝っている部分の対比がすごく良いバランスでできた(佳衣)
今回のヴィジュアルは何と言っても佳衣さんの被り物が衝撃的です(笑)。
佳衣:今回もやりたいことを自由にできたかなと(笑)。
あれはどのように固定されているんですか?
佳衣:頭の後ろがベルトみたいになっていて、帽子のように上から被っている状態なんですよね。衝撃にはあまり強くないですけど(笑)。
そうなんですね(笑)。あれが公の場でお目見えすることもあるのでしょうか?
佳衣:そうですね、あると思います。
本物を見てみたいです。そして、ジャケ写もこれまでのDIAURAにはなかったタイプのインパクトがあります。
yo-ka:それよく言われるんですよね。メタルバンドかと思ったと(笑)。ジャケットを作る時って、基本的にいつも俺が絵を描いているんですよ。それをデザインに起こしてもらうという作業で。今回、思ったより火力が強くなったというのはあるんですけど(笑)、自分的にも新鮮で良かったなと。でも、俺はメタルを通っていないので、メタルっぽさというのがわからなかったんですよ。発表したら「メタルかと思った」という声を聞くので、あぁそうなんだと。ただ、歌詞のリンクでジャケットも考えています。
『INCOMPLETEⅡ』のインタビュー時に持ち曲数の話が出て、佳衣さんだけDIAURAは多くないと思っていたという発言がありましたが、ついに今作で20枚目のシングルとなります。
佳衣:そうですね。今までどんな曲を出してきたかなと、たまに振り返ったりするんですけど、やっぱり自分としてはすげー多いなという実感はなくて。でもそれって、やっている側と聴いている側では違う感覚もあると思いますし、「次、次、次」という感覚で出してきたので、未だにそういう実感はないですね。
フルボリュームのアルバムの次のシングル作品ということで、制作に当たって何か意識したことはありますか?
佳衣:自分の中では前回のアルバムを意識したところはなくて、完全に切り離した状態で次の新しいものという感覚で作っていました。「VERMILLION」は割とDIAURAらしさもあるんですけど、ライブを想定したところが結構大きくて。今は状況が状況で、ライブも自分たちがこうしたいという100%は叶わなかったりするんですけど、その中でももう一つ新しい景色が欲しいなという思いから作り出しましたね。
「VERMILLION」は佳衣さん特有の、どれがサビかわからない曲だなと(笑)。
佳衣:そうなんですよ(笑)。バーンッと出したいものが二つあったんですけど、どちらかに絞る必要もないなと思って、だったらどちらも1曲の中に組み込んじゃえという感じで作ったので。…だから「よし、今回もサビをわからなくしてやろう」みたいな考えは特にないです(笑)。
(笑)。楽曲としてすんなり聴けるのですが、じっくり聴くとなかなか複雑です。
佳衣:複雑なんですけど、全体を通すと意外とシンプルだったりするという、結構不思議な曲です。サビの部分がライブでこういう感じにしたいなというイメージがあって。だから意外とキャッチーというか、覚えやすい部分と凝っている部分の対比がすごく良いバランスでできたかなと思っています。
ちなみに、〈深紅の涯に描かれた/深紅の涯に残された〉の“れた”が、ものすごく微妙に外れた音に行くなと思ったのですが。
yo-ka:俺もそう思いました。
佳衣:そこがミソなんです。フックになっているというか。オケをyo-kaに投げて、メロディーが返ってきた時に、そこが上手いことハマったんですよね。上手く歌い上げてくれたなと思いました。
それと、Bメロ終わりのベースがアクセントになっていてカッコいいなと。
翔也:デモに入っていた通りです。
2B終わりの細かいフレーズはメタルっぽいなと思ったり。
佳衣:あー、そうですね(笑)。言われてみれば確かに要所要所メタルっぽい感じがあります。
yo-ka:じゃあ、全部が引き合わせだったんだ。曲がそうさせたというか。元々、曲のイメージが炎だったからね。
佳衣:最初、炎というワードは聞いていて。炎って色々な認識があると思いますけど、自分の中では燃え盛っているイメージだったので、そこでさすがに優しいフレーズは違うなと思って、割と攻撃的なサウンドにしたらこうなりました。
この曲はドラムも結構ややこしいのではと。
達也:曲を自分のものにするまでは結構苦労したんですけど、馴染んだら逆に気持ちいいですね。Aメロとかも、ダッダダッダッダって、すごくキメのままずっと流れていくんですけど、それがガチッとハマるとすごく気持ちいいという感覚があります。
レコーディングはいかがでしたか?
達也:大変でした(笑)。大雪の中(笑)。
そういえば、いつ頃レコーディングしていたんですか?
yo-ka:1月の頭からスタートして、録りは1月中に全部終わっていましたね。
2022年の初仕事が今作のレコーディングだったんですね。翔也さんは「VERMILLION」の録りはいかがでしたか?
翔也:そんなに大きな変化もなく、手こずった感じもなく。『R.I.P.』を作った時に、初めてと言ったらおかしいかもしれないですけど、割と手応えを感じていて、その流れでいけた感じもあったので、ノリにはノッていましたね。
『R.I.P.』の時に、「やりながら気付いたことをその場で反映していくというのが多かった」と話していましたが、今回はいかがでしたか?
翔也:今回は3曲収録だったので、割と事前に固めてレコーディングに入っていたんですけど、現場で臨機応変にやっていった箇所もありますね。