DIAURA

最新作『ヴェノミー』に見るDIAURAとして生きることの誇りとライブにかける思い。共に堕ちてくれますか――

4月24日に開幕する、全19公演にわたるΛrlequiΩとのツーマンツアー「THIS IS MY CULT.」を前に、DIAURAが新たなシングル作品『ヴェノミー』を完成させた。戦闘態勢で2023年を駆け抜け、さらにその思いを強めながらライブを見据えて制作された表題曲には、「THIS IS MY CULT.」ともリンクする確かなメッセージが刻まれている。昨年11〜12月のワンマンツアーの中で演奏を重ねてきた「ドラスティックダイヴ」、さらに初の共作となるツーマンツアーと同名の楽曲DIAURA ver.を含めた、最新作収録の全3曲についてDIAURAの4人にじっくり話を聞いた。


新しいライブの作り方ができないかなと(佳衣)

佳衣

DIAURAとしては戦闘態勢だった2023年、観客の声出しが4年ぶりに可能となったり、年越しライブもできたりと、ようやく色々なことがほぼ元通りになった1年間を経て、2024年はまた少しギアチェンジしようとしているのかなと?

yo-ka:ツーマンから今年のツアーが始まっていくというのもあって、去年めちゃくちゃ激しいモードでライブを重ねていった、その延長じゃないけど、やっぱりライブありきのバンドなので、そこを徹底的に再度見つめ直して、よりライブバンドを名乗るにふさわしいものを作っていきたいなと率直に思っていますね。今回の新曲を聴いてもらったら一番伝わりやすいのかなとは思います。

佳衣:今年の始まりがツーマンツアーという感じがしていて。これまではリリースしてワンマンツアーを回ることが多かったんですけど、ツーマンで始まるのは自分としてもまた別のモードになれるというか。もちろん、その中でも今のDIAURAをちゃんと出したいので、そこに向けて気持ちを作っていっている感じはありますね。

翔也:今言われてみて「あ、そうだったな」と思ったんですけど、去年の春からようやく声出し解禁になったということを、ちょっと忘れかけていたなと。

何気にまだ1年しか経っていないんですよね。

翔也:そうですよね。言われてビックリしました。もう今は声出しが当たり前になってきて、慣れたからこそやっとコロナ前みたいなモードに戻ってきた感じもあって、シンプルに良いライブをしたい、そこの視界がクリアになったというのはあるかもしれないですね。それで今年のツアーの始まりがΛrlequiΩとのツアーですけど、昨年末の配信ライブありきのものなので、自分的には2023年がまだ続いているような感覚というか。そのまま走っていきたいなと思っています。

達也:当たり前だったものが一度なくなって、それを取り戻せた2023年というか。そのありがたみ、感謝の気持ちが強かったので、そこでまた愚民たち(ファンの呼称)との絆が深まった気がします。なので2024年、愚民たちと一緒にまずはΛrlequiΩとのツアーを戦っていこうという気持ちが強いですね。

2024年最初のツアーがツーマンというのは、バンドとして外に向かっていきたい気持ちもあるのかなと思っていたのですが。

yo-ka:これまでは基本的にワンマンツアーを選択してやってきて、声出しもできるようになった中で初心に立ち返るじゃないですけど、バンドってやっぱり戦いながら育っていくところも大きいと思うので、そこも楽しみたいなと。ΛrlequiΩとは初期の頃に対バンすることがやたら多かったから、その後、互いに「今はやらなくていいよね」って、意識的にちょっと距離を置いていたんですよ。

そうだったんですね。

yo-ka:そして、皆コロナ禍も経験して、ここらで改めて拳を交えるかと。それもDIAURAにとってきっと必要なことだと思うし。ΛrlequiΩはΛrlequiΩ、DIAURAはDIAURAの考えがあってずっとバンドを継続していますけど、やっぱりベクトルが違うので、そこもまた面白いなと思うんですよね。それぞれ進化するために2バンドが道を作ってきたので、ここで一度交わって、初心に返って殴り合いをしようという。ライブを作る上でそれがもたらすものって大きいと思うんですよね。そこにちょっと期待していますね。

ツーマンツアー前というタイミング的に、今回の『ヴェノミー』はそこに向けて制作した部分が大きいのか、あくまでシングル単体として考えたか、どちらでしょう?

yo-ka:表題曲「ヴェノミー」に関しては、ツーマンは意識していなかったですね。佳衣の作曲段階でもそこまで考えていなかったんじゃないかな?

佳衣:でも今回、ライブというものはすごく意識していました。今までのDIAURAのライブも大事にしつつ、新しいライブの作り方ができないかなと。リードをどうしようかと曲出しをして「ヴェノミー」に決まって、「ヴェノミー」がライブを意識していたように、c/w曲の「ドラスティックダイヴ」はライブで育ててきた曲なので、それをこのタイミングで形にするのもいいんじゃないかなと、入れることになりましたね。

メンバーの皆さんとしては、「ヴェノミー」のデモを聴いた第一印象は?

達也:何曲か候補があって、皆で曲を聴きながら選曲会を毎回やっているんですけど、リードはこれだろというのが全員一致していたので、今はこの曲でいこうという感覚が一番大きかったんじゃないですかね。新鮮さもありましたし、「ANTISM」(2023年4月発売のミニアルバム『ANTISM』収録)の時も思ったんですけど、愚民たちと一緒に皆で声を出せる部分があることもすごく大きかったですね。

翔也:いつも曲出しでどれにするか決まるまで結構時間がかかるんですけど、今回は割とスッと決まったんですよね。皆がどういう思いで「ヴェノミー」を選んだかは口には出していないですけど、ΛrlequiΩと合同制作の曲が入ることは決まっていたので、それを引っ提げてツーマンツアーを回るとなった時に、俺の頭の中ではやっぱりものすごくDIAURAらしいほうがやりやすいなと思っていて、何曲か上がってきた中で俺は「ヴェノミー」が一番DIAURAらしいんじゃないかと思って選びました。

選曲会の時、こういう理由でこれがいいと思うといった具体的なことは皆さん話さないんですね?

翔也:話す時もあるんですけど、今回はそんな話はしなかったですね。でも、満場一致でした。

yo-ka:俺が曲を選ぶ時の基準って、自分が歌っている画が濃く思い浮かぶかと、曲を1回聴いた瞬間に言葉が出てくるかなんですよね。「ヴェノミー」に関しては、聴いた瞬間から頭の中で〈ヴェノミー〉って言葉が出てきて、これしかないなと。いつもあまり曲の構成とかは深く考えないんですよ。見える/見えない、それだけ。これはすごく見えて、早く歌詞を書きたいと思ったんですよね。

「ヴェノミー」はヴェノムから来ているワードですが、yo-kaさん的に「ポワゾ」(2020年3月発売のシングル『Hydra』収録)を、そのまま「poison」だと野暮だなと思って「ポワゾ」にしたというのと同じような感覚なのかなと?

yo-ka:今回は本当に頭の中で鳴っちゃったからしょうがないという感じで、自分で「ヴェノミーかぁ…」と思いながら歌詞を書いて(笑)。4月20日のワンマンライブのタイトルを「VENOM EAT.」=「毒を食う」としていますけど、これは歌詞とも繋がっていて、正式に表すならこの曲のタイトルは「VENOM EAT.」なんですよ。

DIAURA×ΛrlequiΩ

なるほど。その「VENOM EAT.」というワード的に、マーベル作品のヴェノムのイメージもあるのかなと思っていたのですが。

yo-ka:それこそΛrlequiΩとの合同写真で佳衣がマスクをしていたじゃないですか。あの撮影の時、まだ俺は「ヴェノミー」というタイトルを言ってなくて、撮影が夜からだったから、昼間に仮歌を録って歌詞と一緒に佳衣に送ったんですよ。で、現場に行ったら佳衣がヴェノムみたいなマスクをしていて、「なんだこのリンクは!?」と思って。聞いてなかったから、かなりビックリしましたね。わかってたんだ!?っていう。

佳衣:もちろん具体的にヴェノムという言葉が来ることはわからなかったですよ。でも、直感みたいなもので、今回はこういうイメージでいきたいなと、たまたまそれを選んだだけなので、不思議ですね(笑)。

yo-ka:マジでビックリしました。俺の家にいたのかなと思いましたよ(笑)。

(笑)。撮影当日まで、お互いどんなヴィジュアルか知らないものなのでしょうか?

yo-ka:もちろん衣装は話し合いながら作るので、わかっていますけど、佳衣は突飛に面とか出してくるので、そこまではちょっとわからないですね(笑)。

佳衣さんはタイトルや歌詞の一つのワードから引っ張られることが多くて、歌詞が完成した後に楽曲が変化することもあると以前言っていましたが、今回はいかがですか?

佳衣:それは今も変わらずですね。デモの段階でもちろん自分の中でのイメージはあるんですけど、その時点では例えるならまだモノクロなんですよ。そこに歌詞とタイトルが乗ることで、ちゃんと色が付くという感じなので、そうなってからのほうがサウンドは仕上げやすいですね。例えば歌詞が悲しいイメージなのに、明るい音を入れることもないですし。最近、自分も誕生日ごとに作詞をして曲を出しているんですけど、自分が書くことで見えることもあって、詞の大事さを改めて感じるようになりましたね。

信じるとか愛するって、そんなに簡単なものじゃない(yo-ka)

yo-ka

1月の13周年ライブで「ヴェノミー」を初披露した感触はいかがでしたか?

達也:めちゃくちゃ心地よかったですね。いつも新曲を出す時って、受け取る愚民たち側も身構えている感じがちょっとあるんですよね。だけど、「ヴェノミー」に関してはそれがあまりなかったような気がして、自分たちも解放感に溢れていたと思いますし、それに触発されて愚民たちも乗っかってきてくれているんだなという感覚がありました。色々な感情が爆発していましたね。「今の時間、めっちゃ最高だ!」みたいな(笑)。

翔也:初出しで、これが作品になることが初めてお客さんにわかる状態なので、自分としてはピリッとするんですよね。ちゃんと作品を手に取りたいと思ってもらえないと意味がないので、正直今回に関してはあまり客席を見ている余裕がなかったです(笑)。普段は緊張しないんですけど、その曲だけはちゃんとやらなきゃというか、ちょっと緊張しました。もちろん自信を持って出している曲だし、お客さんの反応はファンメールとかでも届きましたけど、好感触ではありましたね。それにしても、今回は背筋がピッとしました(笑)。

(笑)。ちなみにMVだと指弾きですが、レコーディングも?

翔也:指でしたね。最近、指で弾くことが割と多くて、何ですかね…指のほうが一個物を介していないので、気持ちが乗りやすいなと前回のツアーから思いだして。なので、ツアー中は指で弾いていることが結構多かったです。年食ったんですかね(笑)。ピックの音がいいなと思う時もあるんですけど、今は指で弾いているほうが自分的には心地いいんですよね。

そういえば、翔也さんの髭も解禁から1年経って、すっかり馴染んだ感がありますよね。

翔也:そうなんですかね? 未だに「いつ剃るんですか?」って言われますよ(笑)。そう言われると剃りたくなくなるなと。性格上しょうがないです(笑)。

(笑)。yo-kaさんは初披露の感触はいかがでしたか?

yo-ka:今回、メロディーも歌詞も自分の中ですごくしっくり来るんですよ。歌っていてスゲー気持ちいいんですよね。だるま落としみたいに、自分のことをパーンッとぶっ叩いて飛んでいっているような気持ちになる。イントロが始まった瞬間に、もうズコーンッと「ヴェノミー」の世界に自分自身が支配されるというか。メッセージも含め、客席でグッと来た人が多かったんじゃないかなと思うんですよね。初出しで、バンドとしての慣れもまだそこまでではないものだったと思うけど、曲、メロが本来持っている力に言葉が混ざって、めちゃくちゃ可能性を感じましたね。だから、気持ち的にはもう何回かやりたいくらいでしたよ。それ以降、1月の翔也バースデー、2月の佳衣バースデーでもやってないんですよね。佳衣に「『ヴェノミー』入れないの?」って言ったら「いや、入れない」って(笑)。「入れないのか…やりたいけどな」と内心思ったりしていました(笑)。

曲としてはやりたいけど、ツアーにとっておきたいという感じですかね?

佳衣:ふふふ(笑)。それもありますね。ちょっともったいぶろうかなと。

翔也:俺の誕生日ライブは独特な空気なので、単純にここで「ヴェノミー」をやっちゃうのはもったいないなっていう(笑)。

yo-ka:確かに。翔也のバースデーは酒を飲みながらやっていたから。

翔也:賑やかな感じでやっていたので、そこで出しちゃうのはちょっとね。

なるほど。ところで、間奏でギターがL→Rで聴こえてくる部分がありますが、佳衣さんは音源制作においてシングルかツインかということはあまり考えないと以前言っていた気がするなと。

佳衣:今まであまり意識はしてなかったんですけど、最近逆にシングルギターらしさのほうが欲しいなと思ってきました。だから、ヘタにあちこち分けずに、左右同じで一人の音みたいなものは結構マイブームというか。そっちの意識のほうが高いですね。

リズム隊としては、「ヴェノミー」のレコーディングで特にこだわったことはありますか?

達也:LRの鳴り方を意識したところがありますね。あと、レコーディング中に佳衣ちゃんからシンバルを削ってほしいと言われました(笑)。めちゃくちゃ入れまくっていたんですよ(笑)。ここは入れていい、ここは削ってほしいという話し合いがあって。いつもだったら感覚で鳴らしやすい位置のものを叩いているんですけど、削ったことによってAメロの入りは絶対こっちから鳴らそうとか、今回はすごくこだわりました。なので、ヘッドフォンとかで聴いてもらえると、右から聴こえてくる時と左から聴こえてくる時の差がわかりやすいと思います。あと、スネアのロールが特徴的な部分が多いので、そのニュアンスもこだわった部分ですね。

翔也:俺は前作(2023年10月発売のシングル『COLD SLEEP』)から自宅で録るようにしたんですけど、やっぱり時間をかけられるというのはすごくデカくて。スタジオだと、ある程度時間が決まっている中で録らなきゃいけないじゃないですか。今回は結構時間をかけたかな。一回録ってみて、寝て起きて確認して、もうちょっと録ってみて、やっぱり戻してみたいな。そういう試行錯誤ができるようになったので、レコーディングが楽しくなりましたね。本当に伸び伸びやれている感じがします。

「ヴェノミー」では〈すがるもの〉や〈それが幸せなら〉と歌っていて、「THIS IS MY CULT.[DIAURA ver]」と繋がる歌詞ですよね。

yo-ka:そうですね、そこにはリンクがあります。「THIS IS MY CULT.」というツーマンが決まって、その曲を作ることもあって、シングルは分けて考えてはいたんですけど、きっかけにはなったと思うんですよね。CULTって信仰などを意味しますけど、改めてそこについて考えることがあって。

というと?

yo-ka:“信じる”だったり、“愛する”だったり、言葉としてはずっと変わらず存在していますけど、概念は時代によって変化していくものが多いと思うんです。すごく簡単に言うと、昔は“ファン”という言葉しかなかったけど、今は“推し”という言葉が溢れるようになって、自分的にはそれがあまり好きじゃないんですよ。ファッション的なものを感じてしまうというか。ヴィジュアル系というちょっと独特な世界観の中で育ってきて、なんか“推し”は温度が違うよなと、自分の中で疑問が募っていて。それでCULTを題材にしたツアーがある中で、今一度その疑問を真っ向から扱って毒づいてやろうかなと、「ヴェノミー」を聴きながらそのスイッチが入りました。

なるほど。

yo-ka:信じるとか愛するって、そんなに簡単なものじゃないと思うんですよね。俺はヴィジュアル系が好きだったゆえに子供の頃から少数派でしたし、人と分かり合えないことも多かった。それでも自分が好きなものを信じて、誇りを持って好きだと思っていたし、それで生きていこうと思った自分がいるので、“信じる”って強いことだと思うんですよ。“推す”ことが趣味でも別にいいと思うんですけど、自分の時間や心を一つのムーブメントみたいなもので消費していくのはいかがなものだろうかと。そういう自分の中での疑問と苛立ちを言葉にしました。ただ、こういう時代の中でヴィジュアル系をずっと好きでい続けるって、なかなかすごいことだと思うんですよ。少数派に時代が輪をかけてさらに少数派になっていく中で、それを信じて好きだと言う人たちも誇りがあると思うから、平たく言うと最終的に「ヴェノミー」は愚民たちに対してのラブソングですよね。本当にそれを望むんだったら、どんな結末であれDIAURAをあげるよっていう。そこがちょうどツーマンという機会的にも良かったなと思うし、そのタイミングだからこそ俺たちのCULTとは何だっていうところに踏み込んでいきたいなと思って書きましたね。