2025.06.22
DIAURA@下北沢シャングリラ
DIAURA ONEMAN TOUR2025「Ephemeral sphere」

「今だからこそ、絶対に終わりが来ることを受け入れたうえで、何を残せるか」――そんな普遍的で大きなテーマのもと生み出された、DIAURAの最新作『Ephemeral』。その作品を手に巡った全19公演のツアーには、「Ephemeral sphere」というタイトルが掲げられた。
「人生100年時代」と言われる現代において、その中の約2時間と考えれば、ライブ1公演というのはほんの一瞬の出来事かもしれない。だが、1分1秒の積み重ねが人生であることも、やがて終わりが訪れることも、私たちは皆、知っている。言わばそんな“儚い世界”であることを自覚して生きるかどうか。その意識ひとつで、物の見え方も感じ方も、大きく変わっていくのではないだろうか。無論それは、1ステージにおいても、1ツアーにおいても、DIAURAというバンドにおいても、それぞれの人生においても。
『Ephemeral』および「Ephemeral sphere」ツアーを通して、DIAURAは改めてそのことを示してくれた。では、なぜDIAURAが今、このようなテーマを掲げたのか。それは決して悲観的な意味合いではなく、活動15年目の第一弾作品&ツアーとして、ここからまた新たなスタートを切るというバンドの強い意志の表れにほかならない。そして、その最終夜、筆者の目の前で繰り広げられた光景は、少し大袈裟に聞こえるかもしれないが、眩しいほどの命の輝きに満ちていた。

何の因果か、舞台となったのは現在も過去もDIAURAの楽曲と同じ名を持つ会場、下北沢シャングリラ(旧・下北沢GARDEN)。小箱がひしめく下北沢では、最大規模(公式情報によればキャパ500~600人)のライブハウスだ。とはいえ、これまでにホールクラスのステージも数多く経験してきた彼らだけに、東京でのツアーファイナルをこの規模の“ザ・ライブハウス”で行うというのは、2days公演にせよ、やや手狭に感じられた。実際、後方まで観客でぎっしりと埋め尽くされたフロアが、その印象を如実に物語っていた。
近年、DIAURAは“バンドの贅肉”を削ぎ落とすことに注力しており、前ツアー「The Holy Deringer」のファイナル兼14周年記念ライブ「The“Dazzling”Deringer」において、それがより明確化されたことが記憶に新しい。そして、先のインタビューの中で、「次のことを考えるなら、それこそ削ぎ落とせるものはまだあると思うし、フワッとしたところがよりなくなってガチッとなったら、端的にカッコよくなると思う」「表題曲だけ聴いて、騙されちゃうかもしれないですけど、そんなしっとりやるつもりなんか全然ないですからね。気持ち的には前ツアーから全く途切れてない感じがしていて」とyo-ka(Vo)は述べていた。つまり実のところ、この会場でのファイナルというのは、現在のDIAURAのモードとも合致するもので、言葉通りの凄まじい熱気を生み出すこととなった。

幕開けを飾ったのは、重厚かつエモーショナルなバラード「残月の灯」。2012年リリースの1stアルバム『GENESIS』収録曲でありながら、生と死、命の平等性、人の儚さや葛藤、希望までもが描かれたこの楽曲は、まさに今ツアーの本質に通じるものと言えるだろう。そこに続いた最新作収録の「Doomsday」は、終末の日を意味しつつ、その後に訪れる新たな始まりをも示唆するもの。そうしたメッセージ性の連なりはもちろん、ヘヴィーなイントロがまるで「残月の灯」のアウトロのように自然に繋がったかと思えば、目まぐるしい展開を見せる楽曲の特徴が活かされ、勢いのある次曲「乖離性イデオロギー」へと突入する流れが実に見事だった。
その後、「THIS IS MY CULT.」でDIAURAの教義を示し、愚民たち(ファンの呼称)との理想郷を描いた「HELLTOPIA」から、〈もう誰も僕らの自由を壊せはしない〉で締めくくられる「[dignity]」という展開も秀逸。そこに、最新作に収録された「Optimal fiction」での、〈いつかは終わりを迎え この顔も声も忘れてしまうだろう 抗いの日々よ抗いの旋律よ この地獄に響かせて〉と、まさに強くDIAURAを感じさせる一節が響き渡った。さらに、佳衣(G)、翔也(B)、達也(Dr)と、楽器陣のソロ回しも含むスリリングかつ耽美なV系色の強い「Nameless」を経て、〈開かれたエルドラド〉という歌始まりの完璧なキメから、「STARRY INFERNO」でフロアにモッシュの光景が広がった。

ここまでの流れからもわかるように、DIAURAのライブにおいて欠かせないのが、楽曲同士の組み合わせによってストーリーやメッセージをより一層際立たせる、構成の妙だ。本編折り返しのブロックで披露された「SIRIUS」と「SPECIES」は、いずれも苦悩や絶望を経て、再生へと向かう意志を歌ったもの。さらに言えば、前者は2013年に現体制初のシングルとしてリリースされ、後者はバンド自身の環境が大きく変化した2019年のミニアルバム『DEFINITION』に収録された楽曲。すなわち、バンドが重要な局面にあった時期に生み出されたという共通点を持つ2曲が並んだことも、実に感慨深い。
そこに続いたのが、2020年のコロナ禍真っ只中に制作された「獄彩」。〈僕が消える前に消える前に証を残したい この世界にたったひとつだけの歌〉という印象的なリリックが示すように、『Ephemeral』とのリンクはもちろん、前2曲からの流れがそのメッセージをより色濃いものとしていった。また、曲の終盤で愚民たちによるシンガロングが響き渡った場面は、胸を打たずにはいられないワンシーンだった。

「このツアーで築いてきたもの、数えきれないくらいたくさんあったなと思います。俺たちにしか作れない狂った空間を作りましょう。一緒に朽ち果てよう!」というyo-kaの言葉を合図に、本編最終ブロックへ。ヘドバンの嵐を巻き起こしたハードナンバー「ブラックアウト」、〈FOOL&FOOL LOVE〉のリフレインに合わせてオーディエンスの手が揺れた「愚踊」と、ベクトルの異なるライブチューンでフロアを揺らすと、鉄板曲「MASTER」を投入。yo-kaからマイクを向けられた達也が「ファイナルだぞ! 体力残してんじゃねーぞ!」と煽る場面もありながら、ステージ、フロアともに白熱の光景を描き出した。
そして、本編ラストナンバーとなったのは、今ツアーの軸である温かな「Ephemeral」。ここに至るまでの凄まじい熱量があったからこそ、その鮮やかな光が強いコントラストを生み出し、これまでの楽曲で重ねてきたメッセージをしっかりと結実させる、深いカタルシスをもたらした。〈残された時間はきっともう少しだけ 僕のこの命の行き着ける場所まで届け〉と、一人ひとりに語りかけるように歌ったyo-kaの姿も忘れがたい。この時間、この空間を分かち合えることの尊さと幸せを、多くの人がきっと噛み締めていたはずだ。


アンコールではまず、翔也と達也が再登場。熱気が充満し、サウナ状態となっているフロアに向かって、「暑っちぇー! エアコンMAXです。これ以上は下がりません。いっそ溶けてしまおう。一緒に溶けてくれる!? いくぞ東京!」(翔也)と投げかける。リズム隊によるインストパフォーマンスで、観客との熱いコール&レスポンスを繰り広げると、そこへ佳衣も加わり、さらに会場のボルテージを押し上げていった。この流れは、前ツアーで新たに取り入れた試みをさらに発展させたもので、現在のDIAURAのステージにおける、欠かせない見せ場の一つとなっている。
ここでyo-kaが姿を現し、「is DEAD」「UNCONTROL BIAS」と怒涛のライブチューンを立て続けにプレイ。次いで披露されたのは、〈破滅的再生を〉という強いメッセージを最後に放つ「After lament」。さらに、DIAURAの10周年を機に、yo-kaと佳衣の前バンドの未音源化曲を再構築し、過去の自分と向き合うことで生まれた「RED ROMANCE」。これらもまた、今ツアーの本質を考えれば、実に合点のいく選曲だった。そして、「ここまで共に走ってこられて、DIAURAとして『Ephemeral』の世界を描けて、本当に最高のファイナルになったなと思います。ありがとう。これからも命ある限り、この独裁の庭で音楽をお前たちに突き刺していく。それだけで走っていこうと思います。最後に独裁の庭から愛を込めて」(yo-ka)と、「GARDEN」での愚民たちへの愛情表現をもって、この夜は終幕を迎えた。


すべてのパフォーマンスを終え、「全19本、ずっと夢中で。すげーバンドしてんなと思いながら、楽しかったし幸せでした。とにかく“DIAURA”が、めちゃくちゃ楽しいツアーでした。何年経っても、いくつになっても、もっともっとカッコいい、ヤバいDIAURAになるぞという気持ちしかないので、DIAURAはこんなもんじゃないぞと最後に言っておきます。このツアーを経て、さらなるDIAURA、さらなる愚民になるよ」とyo-ka。
そして、「本当に熱かった、最高のツアーファイナルだと思えました。すべて出し切れてよかったなと思います。改めて、一緒にこのツアーを作ってくれた皆さん、ありがとうございました」(佳衣)、「1本目から回数を重ねるごとに、自分はこんなもんじゃないぞと思いながら、やっていました。今日が自分の最高潮を出せたと思います。次はもっともっとすごいものを見せられると思います」(達也)、「いつもよりもちゃんと皆(観客)の顔を見てライブができたツアーだったなと。このツアーでもう一個先に行けたと思うので、一生懸けてやっていきたいと思います。以上! DIAURAでした!」(翔也)と締めくくったのだった。

このあとDIAURAは、7〜8月にFC限定ツアー「SECRET GARDEN PARTY#6」、そして9月3日恒例の「愚民の日」公演が今年はSpotify O-EASTにて開催されることが決定しているが、この日、新たな情報が一挙に発表された。
10月1日にニューシングル『MADDY CIRCUS』をリリースし、それに伴う全16公演にわたるツアー「MADDY CIRCUS COME TO TOWN」を11月8日より開催。さらに、10月31日Spotify O-WESTでのyo-ka聖誕祭「Evil’s Night Party 2025-白ノ聖域-」、12月25日に渋谷ストリームホールにて「アンチホーリークリスマス」、12月31日SUPERNOVA KAWASAKIでのカウントダウンライブ「Dictatorial Countdown2025〜2026」と、下半期も怒涛の展開となる。なお、前述のツアーファイナルは、年明け1月17日に神田スクエアホールにて、15周年アニバーサリー公演「Maddy Circus to”NEXT GARDEN”」として開催される。これらの発表に際し、「お前たちの期待を超えるものであるべきだと思っています」というyo-kaの宣言があったことも記しておきたい。
終わってみれば、この夜はDIAURAというバンドがこれまで辿ってきた軌跡を一気に目撃したような不思議な感覚もありつつ、良い意味で東京でのファイナルらしからぬ解放感とフィジカル的な熱量は、まさに“贅肉”を削ぎ落としたバンドの姿と言えるものだった。その眩しいほどの命の輝きこそが、「絶対に終わりが来ることを受け入れたうえで、何を残せるか」という、『Ephemeral』で掲げたテーマの真の体現だったように思う。そして、彼らがこの先さらに強靭なバンドへと進化していくであろうことを、改めて確信した一夜だった。その歩みをこれからも追い続けていきたい。
◆セットリスト◆
01. 残月の灯
02. Doomsday
03. 乖離性イデオロギー
04. THIS IS MY CULT.
05. HELLTOPIA
06. [dignity]
07. Optimal fiction
08. Nameless
09. STARRY INFERNO
10. SIRIUS
11. SPECIES
12. 獄彩
13. ブラックアウト
14. 愚踊
15. MASTER
16. Ephemeral
En
01. is DEAD
02. UNCONTROL BIAS
03. After lament
04. RED ROMANCE
05. GARDEN
(文・金多賀歩美/写真・尾形隆夫)
【リリース情報】
●New Single『MADDY CIRCUS』
2025年10月1日(水)発売
[初回盤](CD+DVD)NDG-36 ¥2,200(税込)
[CD]
01. MADDY CIRCUS
02. JUDAS
[DVD]
「MADDY CIRCUS」MV
[通常盤](CD)NDG-37 ¥1,650(税込)
[CD]
01. MADDY CIRCUS
02. JUDAS
03. 朽白
【ライブ情報】
●愚民党限定ONEMAN TOUR「SECRET GARDEN PARTY#6」
7月26日(土)名古屋CLUB UPSET
7月27日(日)名古屋CLUB UPSET
8月2日(土)OSAKA MUSE
8月3日(日)OSAKA MUSE
8月9日(土)SUPERNOVA KAWASAKI
8月10日(日)SUPERNOVA KAWASAKI
●「愚民の日2025」
9月3日(水)Spotify O-EAST
●Sadie presents THE UNITED KILLERS
9月20日(土)ジャパンパビリオンホール
出演:Sadie、DIAURA、lynch.
●「Bands Shock REVOLUTION ~びじゅある祭2025~」
10月18日(土)服部緑地野外音楽堂
出演:Azavana、ΛrlequiΩ、蛾と蝶、コドモドラゴン、ザアザア、JILUKA、DIAURA、BugLug /MC:浅井 博章
●yo-ka聖誕祭「Evil’s Night Party 2025-白ノ聖域-」
10月31日(金)Spotify O-WEST
●DIAURA ONEMAN TOUR「MADDY CIRCUS COME TO TOWN」
11月8日(土)F.A.D横浜
11月9日(日)HEAVEN’S ROCK さいたま新都心
11月15日(土)柏PALOOZA
11月16日(日)HEAVEN’S ROCK 宇都宮VJ-2
11月21日(金)青森QUARTER
11月23日(日・祝)札幌PLANT
11月24日(月・休)札幌PLANT
11月29日(土)郡山#9
11月30日(日)仙台MACANA
12月6日(土)ESAKA MUSE
12月7日(日)ESAKA MUSE
12月13日(土)名古屋SPADE BOX
12月14日(日)名古屋SPADE BOX
12月20日(土)福岡DRUM SON
12月21日(日)福岡DRUM SON
TOUR FINAL DIAURA 15th Anniversary「Maddy Circus to”NEXT GARDEN”」
2026年1月17日(土)神田スクエアホール
●「アンチホーリークリスマス」
12月25日(木)渋谷ストリームホール
●「Dictatorial Countdown2025〜2026」
12月31日(水)SUPERNOVA KAWASAKI