DIAURA

DIAURA

ミニアルバム『DEFINITION』が映し出すDIAURAの新たな定義。
主観と傍観から始まる物語の果てに見える景色とは――。

2019年1月26日、渋谷ストリームにて8周年記念公演を行ったDIAURAが、定義を意味する最新作『DEFINITION』をリリースする。軸となる楽曲と、そこに付随する様々な場面展開。異なる楽曲で幕を開ける2形態の作品において、どのような結末を迎えるのかは聴き手に委ねられる。メンバー4人がDIAURAというバンドと向き合い、DIAURAがDIAURAたる所以を再確認した2018年。そんな1年を経て完成を迎えた今作には、彼らの確かな決意が込められている。新たな領域へと踏み出そうとしている4人にじっくりと話を聞くと、過去最高の結束力と言っても過言ではないDIAURAの今が見えてきた。

◆DIAURAには限界値というものがない(yo-ka)

yo-ka

――アルバム『VERSUS』(2017年11月)以来約1年2ヵ月ぶりの登場です。1月26日の「DIAURA 8th Anniversary Live-EVER SINCE-」@渋谷ストリームホールで、「DIAURAをやるべくして生まれてきたんだと思える」と言っていましたが、皆さんDIAURAに対する思いは年々大きくなっているのでしょうか?

yo-ka:自分の中では、より確かなものになってきているという印象ですかね。大きさという尺度はあまりなくて、柔らかい感触だったものが硬い感触になる、そういう確かさ。人生が山あり谷ありなのと同じで、良い時も悪い時もあるのが当然だし、バンドを始めたばかりの頃は「もうダメだ」と簡単に思ってしまう自分もいたんですけど、DIAURAはそういうことじゃないなと思うようになったんですよね。4人で耐える時期もあったけど、音楽を日々作っているわけだから、ただ耐えていたわけじゃない。そういう意味で、確かなものという感じがするんです。

――“確かさ”が、どんどん強固になっていっていると。

yo-ka:前は、DIAURAというバンドに対する誇り、プライドだけで突っ走ることもありましたけど、このバンドでもっと先を見たいと思ったんですよね。自分の中では、DIAURAには限界値というものがないんです。より、バンドに魂が宿っていくという感覚ですね。

達也:俺は途中で加入したので、立場的に他のメンバーと違って。最初の頃は付いていくのに必死で、いろんなことに気持ちを分散させることができていなかったんです。でも今は、俺が必死になって追い付こうとしていた部分が4人揃って、DIAURAをより良くしていこう、もっとカッコいいバンドにしていこうと、一緒に突き詰めていけているなと感じられるようになりましたね。その強度が年々増してきて、一昨年頃から明確に言葉に出せるくらい強いものになってきているなと感じます。

――翔也さんは「自然と9年、10年になっていくんだと思います」と言っていましたよね。

翔也:自然とその言葉が出たんですけど、自分の中では数年前から腹は括っているんだろうなと思います。バンドに対して責任感が出てくるようになりましたね。俺らがどう立ち振る舞うかで、物事が一つ動くこともあるのかなと。そういう意識を持ってやることが、バンドにとっても良いことなんだと思います。あと、やっぱり4人でやっていくことなので、その存在が大きくなっているというのはありますね。もちろん協力してくれるスタッフさんもいますけど、メンバーを信用してやっていかないとダメだなと、ここ数年特に思っているところです。例え周りに無理と言われようが、4人が行けると思うんだったら行けるでしょと。バンドをやり始めた頃の感情じゃないですけど、根拠のない自信がまた出てきたかな。

――結束力がどんどん高まっているんですね。

翔也:うん…恥ずかしいのであまり言わないですけど(照笑)。

佳衣:8年って絶対に短い時間ではないと思いますし、年数が経てば経つほど、バンドというものが自分の一部分になっていっているところもあって。ただ、客観的に振り返ると、バンド単体がすごく大きな存在になっているので、自分がそれにもっと追い付いていかなきゃと思うことも多々あります。自分たちでDIAURAを作ってきたつもりでも、DIAURAというものに引っ張られてやってきた部分もあるんですよね。

――当事者でありながら、客観的に見えているということは大きいですね。

佳衣:まだまだ上を目指したいという一心でやっているんですけど、一旦立ち止まってみると見えるものもあるというか。まだ何かを達成したわけじゃないですけど、ある程度のところまでは来たなと思える部分もあります。

――昨年9月3日「愚民の日2018-ダイバーシティを独裁せよ-」@Zepp DiverCityでの、「俺たちの居場所は俺たちが作る」というyo-kaさんの力強い言葉も印象的でした。

yo-ka:DIAURAは「独裁」を掲げてやってきていて、それが何より一番重要で、そこに背きたくないんですよ。その思いはどんどん強くなっていて、DIAURAをやりながら、どのようにDIAURAというものを、よりDIAURAにできるかということをすごく考えた2018年でもありました。俺はこのバンドで心から「独裁」という言葉を発していたいんです。いろんな葛藤を抱えていた時期もあるし、環境のこともあるけど、DIAURAをやる上で目を背けられないものはたくさんある。それは、客観的にDIAURAを見るようになったから感じることなんだと思います。自分自身もメンバーも愚民(※ファンの呼称)も、誇れるDIAURAじゃないといけないと思うので、戦いは全然終わってない。ある意味、あの日は重要なタイミングだったと今になって思います。

――と言うと?

yo-ka:意思表示ですよね。言霊ってあると思うし、「貫くよ」というのを自分自身に向けて言ったところもあって。結局、音楽やライブが一番素直に伝えられる手段だし、それをもっとクリアにしていくことで、もっとヴィヴィッドな色や、もっとダークな色が出てきたり、そういうことが自在にできるバンドにもなれると思うんです。以前、DIAURAって結局どういうバンドなんだと4人で話したんですけど、やっぱりレジスタンス=抗いなんですよね。それが崩れてしまってはダメだと。DIAURAがDIAURAじゃなくなる時って、その時だと思うんですよ。2019年はすごく変化の年になると思いますし、俺たちは音楽とライブでそれを理解させることに向き合わなければいけないから、そういう意味でもメンバーが皆合致していますね。

達也:ここ1年は4人で話し合うことがすごく増えましたね。

yo-ka:飲めない佳衣さんを、飲みに誘う機会も増えました。

佳衣:誘ってくるのが、明らかに電車で行けないような時間なんですよ(笑)。

――(笑)。ちなみに、DIAURAは周年と愚民の日で年に2回記念日がありますが、愚民の日のほうが比重が大きいですよね。

翔也:周年は大体ツアーファイナルなんですよね。

yo-ka:だから「周年です!」と言うタイミングがあまりなくて。今までほぼやっていなかったので、比重は全然違いますね。何年やったかというより、愚民の日のほうが大事というのもあります。8周年でベタに過去の楽曲を紐解いたセットリストを作りましたけど、それもそれで小っ恥ずかしくて、もっとナチュラルにやっていいと思うんですよね。古い曲だからやらないということはないので。

――去年からライブで翔也さんがコーラスをするようになりましたが、どういうきっかけだったんですか?

翔也:去年の誕生日(1月31日)からなので、ちょうど1年ですね。俺が通ってきた音楽が皆、生でコーラスをしていたんです。そもそも同機で流すというのをヴィジュアル系に入って初めて知って。それが普通なんだなと思いながらやっていたんですけど、最近ヴィジュアル系でも生でコーラスをやる人が増えてきて、カッコいいな、俺もやりたいなと。誕生日なら何をやっても許されるだろうと試しにやってみたら、意外と評判が良く。確かにライブの熱量も上がった気はしたので、続けてみようかという流れでした。

◆自分の中では勝負の曲だった(佳衣)

佳衣

――愚民の日に『DEFINITION』のリリースが発表されました。『VERSUS』は「DIAURAの根本にある反骨精神と雑草魂みたいな感じ。綺麗な表現ではなく、剥き出しのアルバムが作りたかった」ということでしたが、今作はどのような思いで制作に臨んだのでしょうか?

yo-ka:最初にできた曲が「SPECIES」で、これが軸になっていると言っても過言ではないです。『DEFINITION』=定義という意味を持った作品なんですけど、10周年が見えてくる段階に来て、4人でDIAURAと向き合いながらこの1年を過ごしてきた中で、弱さも汚さも強さも全部引っ括めて自分たちの定義と呼べる作品にしたいという思いがありました。楽曲を作るセンスみたいなものも『VERSUS』の頃とは確実に変わってきているので、それを存分に今のDIAURAとして発揮すれば余裕で超えられる。なので、制作自体は割と自由にやっていきました。俺らはアルバムにシングル曲をあまり収録しないんですけど、昨年はシングル『MALICE』(2018年10月)しか出していないというのもあって、「MALICE」はDIAURAにとって大きな楽曲になっていて、今回入れました。

――今作を聴いて、新しいDIAURAというのが一番思ったところです。「SPECIES」が最初にできたということは「MALICE」よりも先ですか?

yo-ka:そうですね。「SPECIES」は昨年3~4月の「THE UNCONTROL BIAS」ツアーの時に既にやっていたので、作ったのは2017年末です。この曲を『DEFINITION』に入れたくて、その周りを埋めていったという感じです。

――『MALICE』をリリースした頃には、既に『DEFINITION』の全体像は見えていたのでしょうか?

佳衣:俺は正直、『MALICE』の頃はまだ見えていなかったですね。ただ、「SPECIES」は今までにない感じの曲ですけど、こういう曲でライブをやってみたいという思いが強くて。もちろん今までを否定するわけじゃないんですけど、新しいライブを作りたいという気持ちがあったんですよ。そこから「SPECIES」が軸になって曲を作っていくことが多くなったので、この曲ができたことは自分の中で大きかったですね。小ざっぱりはしていないんだけどわかりやすい、無駄を削ぎ落とした形になったと思います。

――ここまで英詞の分量が多いのは珍しいですよね。

yo-ka:初めてです。新しいライブの画を作りたいという佳衣の狙いは聞いていなかったけど、この曲を聴いた時に、今までのDIAURAに当てはめちゃいけないと思ったんですよね。それで色々と試したんですけど、このメロディーには日本語は乗らないなと。魂の叫びみたいな曲だと思ったので、ライブで聴かせて一発で全体像が見える必要はなかったというか、ジワっと心に染みていく感じ。曲ってグラデーションだと思うので、自分が今までにやったことのなかった手法をあえて選びました。

――サビの開ける感じがすごく気持ちいいなと。サビ頭の、僅かに先行して入っているティンパニーの一打が結構ミソなのではと思いました。

佳衣:そこに気付いていただけたのは、すごく嬉しいです。本当に狙いだったんですけど、新しいものを作ったとしてもDIAURAが持っている世界観、すごく広い規模感みたいなものは崩したくなくて。頻繁に使っているわけではないんですけど、個人的にDIAURAはティンパニーのイメージがあるんですよ。「Garden of Eden」(2013年3月発売のミニアルバム『REBORN』収録)や「Imperial “CORE”」(2011年11月発売のシングル)とか、ここぞという大事な曲の時は結構入っているんです。「SPECIES」も自分の中では勝負の曲だったんですよね。

――ティンパニーの後に4人全員の音が入ってくるので、ライブでカチッとハマった時、演奏している側はすごく気持ちいいんだろうなと。

達也:間奏もユニゾンしていたり、そういうのがピタッと重なると叩いていて気持ちいいし、きっと観ている側も「おー!」となると思いますね。珍しいフレーズも多いですし、結構新しいジャンルの曲が出てきたなと感じてくれていると思います。

――今作も全曲の歌詞が絡み合っている印象が強いですが、yo-kaさんの歌詞制作では意図的にリンクさせている部分と、自然とそうなる部分とでは、どちらが多いのでしょうか?

yo-ka:半々ですかね。「SPECIES」は「種」という意味ですけど、「断頭台から愛を込めて」の中にも〈種〉というワードが出てきたり、そういう細かな繋がりや心理的な部分の重なりは、意図しないもののほうが多いかな。一つの作品を作る時に自分がそういうモードになっているんだと思うんですけど、ドラマを見ているような感覚です。例えば誰かが追い詰められているシーンがあったとして、そこにはそうなった経緯や、その後、もっといろんな場面があるわけですよね。今作で言えば「SPECIES」があって、そこに付随して見えてくるものがある。だから、いろんなキャラクターがあって変化はあるんですけど、根底で繋がっているような感じです。

◆好きにやっちゃいました(翔也)

翔也

――ラストナンバーではなく、あえて1曲目を2タイプにしたのはどのような意図が?

yo-ka:これは主観と傍観で、「ivy」(A Type収録)で歌っている人物が「ファントム」(B Type収録)なんです。目線ですよね。「ファントム」の主人公は自分の目の前と自分の感情しか見えていなくて、それに支配されている。恨みや憎しみ、諦め、絶望、そういったものを背負っているんです。主観と傍観から始まることで、最後の「断頭台から愛を込めて」まで行った時に、ただただ絶望だと思うのか、また違ったものが見えるのか、そういう聴き方をしたいなと思って。『MY RESISTANCE』(2016年11月)でラスト曲を変えたんですけど、作っていて充実感があったので、扉が違うというのも良いなと。

――結構珍しい形ですよね。

yo-ka:どちらから歌詞を読み進めるかで、抱くものは違ってくると思うんですよね。俺、タイトルをめっちゃ大事にしていて。好きなバンドのCD情報が出ると、タイトルで想像するのが好きだったんです。直感でいいと思うんですよ。たった3文字、5文字という少ない情報でどっちに惹かれるかは、その人の感性ですよね。「ivy」から始まるA Typeだけ聴いてもいいし、また違った画が見たいなと思った時に「ファントム」って何だろうという気持ちになってくれればいいかなと。ただ、どっちも聴いたら面白いよということですね。

――「ivy」はドラムのリズムが特徴的ですよね。

達也:すごく苦労しました。今作は2日間に分けて録ったんですけど、この日は「ivy」を1曲目に録ろうとしたら全然上手く叩けなくて、一旦やめて他の曲をやってからまた「ivy」を叩いてみたら、何かが解決したのか気持ちの面なのかわからないですけど、すんなり録ることができて。

――難易度は高かったんですね。

達也:一定のリズムを微妙に変えていって場面転換していくという、盛り上がる部分もあるしフレーズは変わっていくんですけど、気持ち的には冷静に叩くというイメージでした。スタジオの方がドラマーで、色々とアドバイスをもらいながら、いろんなものがスッキリして最終的にカッコよく録ることができました。

――ラスサビ前の間奏は不思議な雰囲気のシンセも入りつつ、エンディングに向かっていく盛り上がりがグッと来ます。キメの部分にドラの音が入っていますよね?

佳衣:入っています。自分が作っていく中でイントロもドラムのパターンもできていて、1800年代くらいすごく昔と未来を融合したようなイメージがあったんです。ざっくり言うと地球みたいな。規模はすごく広いものにしたくて、いろんな音も使いたかったので、多分3ヵ国くらいの音を使っているんじゃないですかね(笑)。

――(笑)。「ファントム」は全体的に起伏のあるベースラインが際立っていて、かなり楽曲のキーになっています。

翔也:デモを聴いた段階で大体自分の中での印象付けがあるんですけど、他の曲ではこういうことはできないだろうなというのが「ファントム」ではできそうだったのと、こういうこともできるよというプレゼンじゃないですけど(笑)、そういう感じで考えましたね。

――翔也さんの自由度が高いということですか。

翔也:好きにやっちゃいました。でも、ベース単体で考えることは少なくなりましたね。曲に引っ張られるほうが大きいので、そこに自我がいらなくなってきた気はします。

yo-ka:俺はギタリストでもベーシストでもドラマーでもないので、抽象的なことしか言えないんですよ。「ファントム」は全く違和感なく。割とシンプルな曲なので、ベースもただ淡々と行かれるとつまらない曲になってしまうから、良いバランスになったなと思いましたね。

――イントロとアウトロはDIAURA節ですが、1曲の印象として新しさを感じるのは、このベースラインの影響が大きいのかなと。

翔也:自己評価は難しいんですけど(笑)、そう思ってもらえたなら新しく出す音楽としては正しいのかなと思いますね。

――新しさと言うと、「嘘とワルツを」はDIAURAの新たな一面だなと思いました。

yo-ka:実はこれは『DEFINITION』用に作った曲ではなくて、何なら今作の中で一番古いですね。イントロのブラスの感じとか個人的に気に入っていたんですけど、バンドのモードにマッチするかタイミングもあるので、ずっと眠らせていたんです。まだ「[dignity]」と「ヘルグライド」がなかった段階の時に、もしこのポジションが他の5曲の方向性に寄ったら多分カッチカチのアルバムになるなと思ったので、この曲を出してみたら佳衣が「これで行こう」と。理由を聞いたら「タイトルが良い」と言ったんですよ。タイトルかよと思ったんですけど(笑)、並べてみたら〈支配者〉や〈改革〉だったり他の曲と歌詞がリンクしたんですよね。自分たちが望む、根本的に『DEFINITION』がどういう作品になってほしいかという部分の軸にハマっていたので、歌詞も全く書き換えずにそのままの形になりました。

――〈心なき傍観者〉〈無責任な言葉〉などに対する疑問、異を唱える気持ちから生まれた歌詞なのかなと。

yo-ka:そうですね。今は簡単に自分の手の中で人の言葉を目にできてしまうので、どんな言葉を並べても心に刺さりにくい時代だと思うんですよ。ネットニュースすら、信用できるかと言ったらわからないものが多々あるわけですから。そういう中でこの今を歌うには、「嘘」や「無責任」というワードは切り離せないものだと思うんですよね。日常の中にあるものなので。楽しそうな歌ですけど、実態はそういう思いを込めて書きました。

――曲調と歌詞のギャップがありますよね。〈信じるものは救われるなんて嘘〉という物事の根底を覆すフレーズも印象的です。

yo-ka:きっと皆、日々覆されながら生きているわけですよ。夢のあることばかり言っても仕方なくて、それを逆に強さに代えないといけないと思うんです。こういうメッセージの曲だからこそ、ライブですごく楽しんじゃえばいいと思って。現実の中にある非現実がライブなので、ピッタリだなと。こういうライブを作ってみたいという思いもあったので、ツアーが楽しみな1曲ですね。

――個人的には、佳衣さんがこの楽曲を演奏している姿が想像できなくて(笑)。

佳衣:本当ですか(笑)。でも、この曲のフレーズは自分らしさを振り切った感じがあるので、確かに普段とは違いますね。

翔也:こういう曲調って、どうしても想像できるベースラインがあるんですよね。ウォーキングベースというか、常に動いている感じ。そうはしたくないなと思って、ちょっと抗ってみました。

達也:気持ち的にはベースがやりたいようにやれる、合わせやすいリズムを意識しましたね。ベースソロの部分も「こういうふうに弾きたいから、これに合わせて」というやり取りでした。

――「[dignity]」は8周年ライブで初披露しましたが、リード曲「断頭台から愛を込めて」ではなくこの曲を選んだのはなぜだったのでしょう?

yo-ka:良いところを突きますね。この曲は今作の中で最後にできて、歌詞も最後に書きました。すごくリアルというか、自分が思い描く“DIAURA”なんですよね。「独裁」と掲げているバンドなので、常に道を拓いていかなければいけないと思っていて、バンドのバイタリティーを感じられるものがアルバムの中に絶対欲しくて。今までの流れだったら、リードはきっと「[dignity]」だったんです。だけどあえてこれをリードにしなかったのは、「定義」と名付けた作品なので新たなDIAURAの定義を見出したかったんですよね。

――なるほど。

yo-ka:本当にこれはDIAURAというバンドを指し示す曲です。「倒錯症レジスタンス」(『MY RESISTANCE』収録)や「DICTATOR」(2011年8月発売のミニアルバム『DICTATOR』収録)とか、その都度そういう曲ができるんですけど、これからのそれは「[dignity]」だなという確信めいた思いがあったので、記念すべき日に初めてやるならこの曲だと真っ先に思いました。回数とか関係なく、4人全員入り込める曲だと思うんです。

――この曲が好きならDIAURAが好きということになるのかもしれないですね。

yo-ka:確かにそうだと思いますね。『VERSUS』だったら「砂の塔-Tower of Imitation-」なんですけど、この曲はさらに塗り替えたし、これからライブでそれを証明していけると思うんですよね。そして、きっと生き残る曲だと思います。佳衣の曲というのもあって、シンプルなようで引っ掛かりが多いので、CDとライブでまた違った良さがあると思いますね。

――ベースソロからギターが重なっていくところもポイントの一つだなと。

佳衣:あそこはイメージとして、ひと段落するポイントなんですよ。ずっと一定のもので来て、そこでちょっと抜いて、また最後に向かうので、極端な話あの部分はライブで毎回同じフレーズじゃなくてもいいと思うんです。それくらいラフなものにして、差を付けたかったというのがあります。だからライブで変わっていくかもしれないですね。

◆ドンッと背中を押されたような感覚だった(達也)

達也

――「ヘルグライド」に〈悪意〉というワードが入っているのも「MALICE」とリンクします。

yo-ka:これは自然と出てきた部分が大きいかな。自分でも「悪意…あ、「MALICE」だな」と思いました。

――いわゆる暴れ曲ですが、ライブの画を想像して作ったのでしょうか?

yo-ka:そうですね。そういう作り方をしばらくやっていなかったんですけど、この曲は頭を振っている姿が見たくて、長い曲じゃないのにとにかくヘドバンの箇所が多いです。愚民の声を浴びる快感って、俺がDIAURAを好きな理由の上位に入るんですよね。今作は大人っぽい曲も多かったので、本能的にスッと入れる目一杯わかりやすい曲にしようと思ってノリで作りました。

――「断頭台から愛を込めて」はストリングスがふんだんに入っていて、ドラマティックなミディアムナンバーです。

佳衣:作っている時にすごく画が見えていた曲で、それに引っ張られる感じでした。サビも最初、2回目、ラストで全部違うんですけど、ドラマティックなものにしたかったというのもありますし、映画に同じ場面がないように、曲の中に色々な場面があってもおかしくないだろうなと思って、どんどん展開していって盛り上がっていくという形を作りたかったですね。

――歌詞の冒頭に出てくる向日葵が意味するものとは?

yo-ka:向日葵は無邪気さの象徴だと思っていて。人は生まれ落ちてすぐに絶望だとは思わないだろうし、段階を経ていろんなことを知るわけですよね。だから子供をMVに使っているんですけど、無邪気さというのはずっとそのままではいられない、良くも悪くも綺麗なままではいられないのが人間だし、バンドもそう。この曲の結末はバッドエンドですけど、自分のこれからを考えた時にハッピーエンドなんて確約されていないわけで、いろんな歯車の中で人間は成り立っていて、時にそこに悪意が混ざって向日葵が枯れてしまうほど蝕まれていくこともある。自分の意思通りにならないのも人生だし、それによって傷付くのも人生だけど、好転する可能性をも秘めているわけで一概に絶望だけではない。この曲は自分の中で人生というか。

――なるほど。

yo-ka:MVは全体的にモノトーンの色味の寂しげな印象に仕上げたんですけど、最初に浮かんだのがそういう原風景みたいなものだったんですよね。佳衣さんが「ivy」で過去と未来と言っていましたけど、本当にそういうスケールの話で。それを美しいとか醜いと決め付けることもできないけど、そういう中で生きているということですよね。そんな長い歴史の中の今。そういう気持ちで書いた歌詞です。

――ところで、佳衣さんは以前までギターはカチッとしたものを録りたかったけど、『VERSUS』ではあえて粗さを残して生っぽさを出したかったとのことでしたよね。

佳衣:割とそこは変わってないですね。その都度変わるというよりは、それまでのものに+1+1という感じなので、『VERSUS』の時に良かったと思えるところは残しつつ、次はどうしようというやり方です。ただ、誰が聴いても自分の音だとわかるように伝えていきたいなとずっと思っていて。曲によっては必要とあらば変えますけど、基となる部分は自分がずっと出し続けていくものがあったほうが絶対に良いんだろうなと思います。

――翔也さんは『VERSUS』のレコーディング時に正しい運指に直したとのことでしたが、その後いかがですか?

翔也:直ってないです(笑)。レコーディングの時は気を付けているんですけど、ライブになるとどうしても年単位で時間が掛かるんじゃないかなと。何年もやってきた癖なので、なかなか…。

――達也さんはその時の好みによって音色が変わるとのことで『VERSUS』は重低音重視でしたが、最近の好みは?

達也:その頃よりはちょっと上がっていますね(笑)。今回はドラマーの方のスタジオだったので、機材がものすごい種類あったわけですよ。ドラムセットは4~5個、シンバルも何十枚とあるので、より曲に近付いた音色を狙っていきたいと思いました。例えば「ヘルグライド」はテンポが速いので、「断頭台から愛を込めて」と同じような伸びのあるシンバルだと邪魔しちゃう部分があるので、エッジの効いた残響があまり残らないタイプのものを使わせてもらったり。自分の機材じゃないのがちょっと悔しいところではあるんですけど、お借りしたものだとしても、より曲のイメージに近いものが録れて良かったですね。とても有り難い環境でした。

――3月からは全29公演の全国ツアー「THE HUMAN DEFINITION」が開催されます。ファイナルは7月13日、服部緑地野外音楽堂での初の野外ライブです。

達也:8周年で「[dignity]」を披露した時、自分の中では機械的なちょっと冷めた感じで演奏しようかなと思っていたんですけど、いざその時になったら「違うだろ」ってドンッと背中を押されたような感覚だったんですよね。会場の熱量や曲の強さに押された部分があったので、そういう音源にない感覚、力強いものをツアーでも届けたいなと思います。

翔也:先日色々と発表があって、やっぱりお客さんは不安になっていると思うんです。その不安を拭ってあげられるのが音楽やメンバーが立っているステージだと思うので、そこで安心させてあげられたらいいなと思います。「大丈夫だよ」と、ちゃんと伝えたいです。

佳衣:ただ聴いてカッコいいだろ、良い曲だろというものじゃなくて、もっと心に訴えかける曲を作りたかったというのがあって、それは音源だけじゃなくライブもそうなんです。ただ楽しかったというのもいいんですけど、そこに何か伝えたいものは絶対にあるので、来てくれた人が感じ取って帰ってくれたらなと。そういうものをこのツアーでもっと増やしていきたいですね。

yo-ka:ネガティブなワードだけを抜粋して聴いていたら、きっと見えてくるものも見えないし、今の俺たち、これからに向かっていく俺たちの決意みたいなものが『DEFINITION』だと思うんです。これまでのDIAURAを思わせる曲もあれば、新しいDIAURAの領域に踏み込んでいける曲もある。これまでの幹をより強くして、新しいDIAURAの域に辿り着ける、そんな可能性を秘めているアルバムだと思います。それを4人だけで演奏していても仕方ないので、可能性を分かち合いたいですね。久々に行ける場所も楽しみですし、純粋にDIAURAというものを見てもらえたらいいなと思います。俺たちのこれからを感じさせてあげたいです。常に前に向かって歌っていこうと思います。

(文・金多賀歩美)

ARTIST PROFILE

DIAURA

<プロフィール>

yo-ka(Vo)、佳衣(G)、翔也(B)、達也(Dr)から成るロックバンド。「独裁的なオーラを解き放つ」という意味合いを持つ『Dictatorial Aura』をコンセプトに、2011年1月22日より活動開始。2012年3月、1stフルアルバム『GENESIS』をリリース。12月には自身初の渋谷公会堂公演を成功に収めた。その後も47都道府県ツアー、新宿ステーションスクエアでのゲリラライブ、二度の中野サンプラザ公演など精力的に活動。2018年9月3日には恒例の「愚民の日」公演をZepp DiverCityで行った。ニューミニアルバム『DEFINITION』を引っ提げ、3月2日より初の野外ライブを含む全29公演に及ぶ全国ツアーの開催が決定している。

■オフィシャルサイト
http://www.di-aura.com/

【リリース情報】

DEFINITION
2019年2月13日(水)発売
(発売元:N.D.G/販売元:ダイキサウンド)

DEFINITION
[A Type]
NDG-001
(CD+DVD)
¥3,240(税込)
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DEFINITION
[B Type]
NDG-002
(CD)
¥2,916(税込)
amazon.co.jpで買う

【収録曲】

[A Type]
[CD]
01. ivy
02. MALICE
03. 嘘とワルツを
04. [dignity]
05. ヘルグライド
06. SPECIES
07. 断頭台から愛を込めて
[DVD]
断頭台から愛を込めて(MV)

[B Type]
[CD]
01. ファントム
02. MALICE
03. 嘘とワルツを
04. [dignity]
05. ヘルグライド
06. SPECIES
07. 断頭台から愛を込めて

【ライブ情報】

●DIAURA 単独公演 2019「THE HUMAN DEFINITION」
3月2日(土)F.A.D YOKOHAMA

3月3日(日)HEVEN’S ROCK さいたま新都心 VJ-3
3月10日(日)柏PALOOZA
3月17日(日)長野CLUB JUNK BOX
3月21日(祝・木)甲府KAZOO HALL
3月30日(土)新潟 柳都SHOW!CASE!!
3月31日(日)金沢AZ
4月6日(土)神戸VARIT.
4月7日(日)OSAKA MUSE
4月13日(土)SPiCE(旧 DUCESapporo)
4月14日(日)SPiCE(旧 DUCESapporo)
4月17日(水)青森Quarter
4月18日(木)盛岡CLUB CHANGE WAVE
4月20日(土)仙台CLUB JUNK BOX
4月21日(日)郡山CLUB#9
4月27日(土)新宿BLAZE
5月4日(祝・土)水戸LIGHT HOUSE
5月6日(祝・月)HEAVEN’S ROCK 熊谷 VJ-1
5月11日(土)熊本B.9 V2
5月12日(日)福岡DRUM Be-1
6月1日(土)OSAKA MUSE
6月2日(日)KYOTO MUSE
6月4日(火)岡山 Livehouse IMAGE
6月6日(木)広島SECOND CRUTCH
6月8日(土)高松DIME
6月9日(日)高知キャラバンサライ
6月14日(金)名古屋Electric Lady Land
6月15日(土)静岡Sunash
7月13日(土)服部緑地野外音楽堂

●DIAURA単独公演 達也聖誕祭「Joie de Vivre 2019」
3月28日(木)高田馬場AREA

●DIAURA FIRST ASIA TOUR「New Identity」
5月18日(土)BANDAI NAMCO SHANGHAI BASE
5月25日(土)TAIPEI THE WALL