DIAURA

10周年記念ベストアルバム『INCOMPLETEⅡ』に見るDIAURAの歴史と決意表明。“独裁の庭”で彼らの音楽は響き続ける。

2020年中にシングル3枚、配信曲1曲、スタジオライブDVDをリリース、9月にはLINE CUBE SHIBUYA公演を、さらに11~12月には全17公演に渡る全国ツアーを決行するなど、コロナ禍の活動ペースとは思えないほど精力的な動きを見せてきたDIAURAが、2021年1月に結成10周年を迎えた。そしてこの度、活動5~10年目の楽曲+新曲2曲の全27曲を収めた2枚組ベストアルバム『INCOMPLETEⅡ』がリリースされる。昨春に開催予定だったツアーの振替公演真っ只中にいたDIAURAの4人に、10周年への思い、ベスト盤についてじっくりと話を聞くと、責任と覚悟を持って戦い続けるDIAURAというバンドの本質が見えてきた。


もう自分たちだけのものじゃない(yo-ka)

yo-ka

10周年おめでとうございます!

全員:ありがとうございます!

2019年1月の8周年記念公演で、翔也さんが「自然と9年、10年になっていくんだと思います」と言っていたなと。実際どうですか?

翔也:毎回そうやって覚えていてくれるので、あぁそんなこと言ったっけなぁと思っています(笑)。8年目の頃が色々とあった年だったので、そこの一山を乗り越えてからは安泰だったかなと思いますね。

皆さん感覚としてはあっという間ですか?

yo-ka:コロナが10周年手前にガツンと来て、半年以上もライブができないなんて今までになかったので、ちょうど10周年にかかるタイミングでこういうアクシデントが起きたことによって、DIAURAの10年間と向き合うことができたような気もしているんですけど、本当に体感的にはあっという間でしたね。『INCOMPLETEⅡ』の収録曲に目を通してみると、すごく苦悩と葛藤の歴史を感じるんですよ。その瞬間その瞬間、色々なことを思ってやってきたんだなというのを今感じています。

佳衣:10年経ってしまえばあっという間だなと思うんですけど、振り返ってみると、本当に10年経ったのかな?と思うくらい、一つ一つの記憶が鮮明に残っていたりして、あれってそんなに前だったっけ?ということが多々あります。何も考えずに10年経ったわけではなく、一つ一つの出来事を乗り越えて自分たちの成長の糧にしてやってこられたなと思いますね。

達也:僕も体感的には皆と一緒で、『INCOMPLETEⅡ』の曲を見ると「え、もう数年前?」っていう感覚にはなります。歩んでいる最中は体感的には遅いんですけど、振り返ると、もうそんなに月日が経っているんだなと感じますね。

2019年2月のミニアルバム『DEFINITION』リリース時のインタビューで、それぞれDIAURAに対する思いを話していましたが、それを踏まえて今はどう感じているか伺いたいなと。達也さんは「途中で加入したので最初の頃は付いていくのに必死だったけど、今は一緒に突き詰めていけているなと感じられるようになりました。その強度が年々増してきて、2017年頃から明確に言葉に出せるくらい強いものになってきている」とのことでした。

達也:2017年頃から、よりがむしゃらになったというか、余計なことを考える暇がなくなったというか、自然とDIAURAに歩み寄ったんだなと今でも思いますね。なので、その気持ちはやっぱりそうだなと思うし、DIAURAの絆というものを強く考えるようになりました。

翔也さんは「バンドに対して責任感が出てくるようになった」、「4人でやっていくことなので、その存在が大きくなっていて、メンバーを信用してやっていかないとダメだなと、ここ数年特に思っているところです。例え周りに無理と言われようが、4人が行けると思うんだったら行けるでしょと。バンドをやり始めた頃の感情じゃないですけど、根拠のない自信がまた出てきたかな」と言っていました。

翔也:今でもそれは思っているところで、10年バンドをやってきて、多分大人になったんだと思うんですよね。若い頃って自分がカッコいいと思うものしか信用できなかったんですよ。ただ、10年メンバーの姿を見てきて、この人はこれを大事にしているんだなというのがわかってきて、それもカッコいいなと思えるようになったというのが本音なんだと思います。それを2年前の時点で気付いていて、今はもっと明確になってきたなという感覚です。それと、周りにああだこうだ言われて何かを変えるっていう選択肢があまりないですね。

佳衣さんは「年数が経てば経つほど、バンドというものが自分の一部分になっていっている」ということと、「バンド単体がすごく大きな存在になっているので、自分がそれにもっと追い付いていかなきゃと思うことも多々あります。自分たちでDIAURAを作ってきたつもりでも、DIAURAというものに引っ張られてやってきた部分もあって」と。

佳衣:10周年を迎えてから結構思うことで、元々バンドって自分たちで立ち上げて自分たちで作ってきたものではありますけど、ここまで来ると自分たちだけのものではなくて、お客さんや関係者、そういう人たちの集合体がDIAURAになってきていると思っていて。DIAURAというものが皆のものに感じられることがあるんですよ。なので、その中の一人として、自分ももっとふさわしい人間になっていかなきゃいけないというのは2年前も今も思っていることです。

ここ数年、感謝の思いを直接口にすることも増えたように思います。

佳衣:そうですね。感謝しかないです。何事も結局人と人の繋がりだと思うので、そこを大事にしてやっていきたいですし、それがあったからこその10年、ここまでやって来られたんじゃないかなと思います。

yo-kaさんは「より確かなものになってきている。より、バンドに魂が宿っていくという感覚。前は、DIAURAというバンドに対する誇り、プライドだけで突っ走ることもあったけど、このバンドでもっと先を見たいと思った」と。

yo-ka:何事もDIAURA以外で長続きしたことがないんですよ。もうダメだなと思ったら終わればいいじゃないか、という思いがずっとどこかしらにあったんです。もちろんDIAURAの10年間も色々ありましたから、もうダメだなと思うようなこともありましたけど、佳衣が言ったように、もう自分たちだけのものじゃないなと。表現者としての責任だけじゃなくて、一人の人間としての責任というものが、そこに必要になっているんだなということを2年前にきっと思っていたんでしょうね。年数を重ねると妥協も覚えてしまうんですけど、それをしてしまうとこのバンドはダメで、どれだけDIAURAというものと向き合ってやっていくか、どれだけ自分を注ぎ込んだかというものが、ちゃんと形になるバンドだと思うんですよ。それが面白いところで。『INCOMPLETEⅡ』は5~10年目のベストアルバムですけど、すごく色濃く出ていると思うんです。もちろん良い時ばかりじゃなかったですけど、それをどう打破するかということに4人でちゃんと向き合ってきたんだなと思える楽曲たちです。そうやってバンドに対しての責任と覚悟は、より強くなったと思うし、2年前の発言以降も強さを増していっているんだと思います。バンドって個々の集まりですけど、その4つの個がそれぞれ強くなって、バンド単位で強みを増す。そういうものを感じながら活動してきたつもりです。

この5年間、特に『MY RESISTANCE』以降のDIAURAは内面的な変化も大きく、4人の結束力が高まってバンドとしてより強化された5年だったと思います。

yo-ka:そうですね。要所要所で、バンドの内側を叩き直すみたいな曲がちゃんとあるんですよね。うちのベストってシングル曲に関してはあえて順序を変えずに収録するんですけど、それで辿れるというか。あぁこんなこと思っていたんだなとか、キーポイントが結構あってわかりやすいですね。

環境が変わった時に良くなったのも感じられる(達也)

達也

客観的にもあの時はああだったなとDIAURAの歴史を思い出しながら聴けて感慨深いです。DISC1がシングル曲とアルバムのリード曲、DISC2が会場限定販売の楽曲、未音源化曲、新曲が主な構成となっています。改めて過去曲を聴き直して新たな気付きはありましたか?

翔也:やっぱり若かったなと思いますね(笑)。特に自分のベースだとフレーズとかわかりやすくて。なんでこうしたんだろ?というのが、正直あったりします(笑)。今だったらこうしないだろうなっていう。でも、そう思えるのは、やっぱり日々成長できているのかなと思ったり。自分のモードとかもあるとは思うんですけどね。

達也:僕の場合は一番わかりやすい音がスネアだと思うんですけど、その音色を聴くと、あぁこの時はこう思いながらチューニングしていたなと思い出しますね。環境によっても音の雰囲気は変わっちゃうんですけど、後半のほうで環境が変わった時に良くなったのも感じられるので、そういうのも有難いものだなと作品を通じて思いますね。

佳衣:曲単体として聴くことが多いんですけど、今聴いてもやっぱりいいなと思えるので、根本的な自分の感性はずっと変わってないんだと思うんですね。自分ができることが増えていって、それが曲に反映されるだけであって、元々のDIAURAってこういうものだよねというところはずっと変わっていないと思うんです。そこだけは自信を持って言えますね。

yo-ka:一貫して言えるのは、その時々の自分の感情がすごく明確なんですよ。悩んだ分だけ、それが歌詞になっている。自分が信じているDIAURAというものを表現してきた、その繰り返しなので、そういう意味で一切変わってないですね。ずっと同じ気持ちでやって来られたんだなと感じます。でも、ちょっと気になったのは、落ちている時こそ激しくて、調子が良い時のほうが暗いなと(笑)。何をやるにしても開き直りみたいなものって必要だと思っていて。もうどうにでもなれ、散ってやるみたいな。「断頭台から愛を込めて」(『DEFINITION』収録)とかそうでしたけど。その時って気持ちはすごく澄み渡っていたんですよね。でも曲はどんよりしている(笑)。不思議なものです。自分の場合は歌詞だったりマインドの部分が全てなので、今作を見ると自分を解剖しているような気がしますね。

「断頭台から愛を込めて」を発表した時は、周囲から「DIAURA終わるのか?」と言われたそうですね。

yo-ka:そうそう。どうとでも言えと思っていたし、それは俺たちにしかわからないから、結局一番大事だったことは自分たちを信じることですよね。

DISC2は時系列順ではない部分もありますし、アルバム曲は近年のライブでよくやっていたり、メッセージとしてDIAURAの核になっているものが選ばれているのかなということもありつつ、ライブのセットリストに近い感覚を受けました。

yo-ka:ある程度、時系列は意識しているんですけど、今言っていただいた通りライブで培ってきた楽曲…それこそ「INFECTION」で始まっているのは、前回のベストアルバムを出して回るツアーの会場限定販売CDがこれだったからなんですよね。で、2曲目の「アウェイクネスダイヴ」は2018年の「愚民の日」に向けた無料配信曲でしたけど、これはライブで2曲目にやることが結構多かったりして。そして最後が「BLESS」で終わるのも、最終的には人って希望がないと生きられないから、それを残して終わりたいなと。そこに向かって行く、DIAURAのライブが思い浮かぶ感じを意識しましたね。

「[dignity]」(『DEFINITION』収録)は8周年記念ライブで初披露し、インタビューで「DIAURAというバンドを指し示す曲。『倒錯症レジスタンス』や『DICTATOR』のような立ち位置、これからのそれはこの曲になるという確信めいたものがある。そして、きっと生き残る曲だと思います」と話していました。今のDIAURAにとってこの曲はどんな存在ですか?

yo-ka:あ、あんまりやってないですね(笑)。

翔也:でも、スタジオライブのDVD『STUDIO LIVE FILM「VS」』(2020年8月発売)には入ったので、皆やっぱり心のどこかには残っていたんだろうなと(笑)。

yo-ka:それは絶対にそう(笑)。ただ、頻度がね(笑)。もちろんマインドは本当に変わってないです。

DIAURAの曲は一つ一つにすごく意思があるので、持ち曲の数が増えるに連れて、当然ライブのセットリストから漏れてしまう曲が増えるのが悶々とする部分もあるなと(笑)。

yo-ka:本当にそうなんですよ。全部我が強いんです。それゆえにライブだと我と我が当たるんですよね。セットリストは悩みますね。

今、持ち曲はどのくらいあるんでしょう?

yo-ka:どのくらいだろう…。アルバムが4枚、シングルが19枚、ミニアルバム3枚でしょ…?

佳衣:諸々入れたら多分100曲くらいかな。でも、10年やっていての曲数で言ったら、そんなに多いほうではないと思います。

yo-ka:そうかな? 多くない?

佳衣:10年やってたらシングル30枚とかの人もいません?

そもそも近年はシングルを出すアーティストが減っていますし、アルバムは年1ペースでも早いほうですからね。そう考えると、DIAURAの曲数は少なくはないと思いますよ。

佳衣:本当ですか。

達也:ヴィジュアル系ってリリースの頻度が高いイメージがあるんですよね。DIAURAは多いと思っていました。

yo-ka:俺も。少なくはないと思っていた。

DIAURAはコンスタントにリリースするなと思っていました。

yo-ka:ですよね。佳衣ちゃんがリリースハイになっているんですよ。

佳衣:(笑)。他のアーティストで「通算30枚目のシングルです」とかを目にしていたので、DIAURAは少ないと思っていたんですけど、意外とそうでもなかったと(笑)。

yo-ka:バンドも人間だし、気持ちやモードって変わっていくじゃないですか。それがリリースすることによって明確な形にしやすいので、それは良いことだなと思いますね。

そうですね。話が少し逸れましたが、「SIGNAL」はシングル『FINALE-Last Rebellion-』(2019年10月発売)のc/wではあるものの両A面と言ってもいい曲だったので、そういう点で外せなかったのかなと。

yo-ka:どれだけ2019、2020年が大きかったのかという表れでもありますよね。『DEFINITION』の後に出して、色々なものがガラッと変わっていく時期だったから曲に込めた思いも大きくて、これは入れるべきだろうなと思いました。

今回ようやく音源化された「FAKE[s]」は、ライブ鉄板曲なので音源化希望が多かったのではないでしょうか。

翔也:2016年くらいからライブでやっていた気はしますね。

yo-ka:実はこの曲は既に録っていたんですよ。出すタイミングが迷子になってしまって。でも、出すならベストアルバムのタイミングだろうというのは漠然と思っていて、その時が来たと。

翔也:録ったことすら忘れていました(笑)。多分、2~3年くらい前かな? レコーディングがすごく詰まっていた時期に録ったと思うんですよね。

ライブの印象が強いので、翔也さんのコーラスが思い浮かびます。

翔也:なんだかそういう曲になっちゃいましたね。

yo-ka:でも、「FAKE[s]」って当初それで作らなかったっけ?

翔也:そう。yo-kaからサビのコーラスは入れようと言われたんですよね。あの時って、俺コーラスをやり始めたばかりの頃?

翔也さんがライブでコーラスをやるようになったのは、2018年1月の生誕祭からだったかと。

翔也:確かにそんな話を以前しましたね。

yo-ka:もう時系列がわからない(笑)。

達也:実はまだ世に出してない曲をゴソッと録った時があったんですよ。「FAKE[s]」はその中の一つだったので、特殊な録り方でしたね。通常はこれを録ろうと決めて、皆でプリプロしてという段階があるじゃないですか。けど、ライブでやっている曲をいくつか録ってみようということで録ったので。