何を目立たせるかを結構悩んだ曲(達也)
既存曲の内、まずはあまりライブでやってこなかった2曲について。「混沌たる世界」はYouTubeでの年越し配信で佳衣さんが「作った当時はあまりしっくり来ていなかったけど、yo-kaが『あの曲いいんだよね』と話していて、引っ張り出して実際やってみたら、この先どんどん化けていくんだろうなという感じがあったので、これからが楽しみ」と話していましたよね。
yo-ka:本当にずーっと言ってた(笑)。俺、「『混沌』は絶対やっていいと思うけど」と度々言っていたんですけど、「いやー…」って。
佳衣:忘れもしない去年FC旅行の旅館の部屋でyo-kaに改めて聴かされて(笑)、じゃあもう一回アレンジしてみようかなと。当時この曲は闇雲に作ったので、それを割と全部取っ払って今の感性で形にしてみたら、「あぁ、確かにな」という感じはありました。
このリフ押しは相当カッコいいなと。
佳衣:そうですね。リフがこの曲のポイントになっていると思うので、そこは生かしました。
間奏のダブステップ的要素は元々入っていたのでしょうか?
佳衣:あれはなかったです。間奏自体も若干雰囲気が違っていたと思うんですよ。リズムや尺は一緒ですけど、もうちょっと重いおどろおどろしい感じにしたいなと思って、新しく付け加えましたね。
yo-kaさんとしては、この楽曲の好きなポイントはどんなところだったんでしょう?
yo-ka:一番好きだったのは〈広大な白の世界の中〜〉のCメロなんですけど、この曲ができたのって『月光』(2016年8月発売シングル)の時期で。めっちゃ覚えているのが、「混沌たる世界、照らす月光。」というタイトルで『月光』のワンマンが新宿ReNYであって、その時もやっているんですよ。俺の中では「混沌たる世界」がもたらしてくれたアイディアや情景がその当時から結構あって。ただ、ライブで表現するのがちょっと難しかったんですよね。今レコーディングして形になったver.って、昔のver.からAメロが変わっていて、昔は意味のない英語を叫んでいただけなんです。
旧歌詞を拝見しました。全く別ものになっているなと思って。
yo-ka:とりあえず全曲新曲ワンマンを目標に曲を作りまくっていた時期で、ちょっとおざなりになっていた部分があったんですよね。それが自分の中で引っ掛かっていて、満を持して今回ちゃんと録り直したいなとなって、仮歌を自分で録る時に昔のノリでやってみたんですけど、全然しっくり来なくて。今の自分で表現するならどうかなと思って歌詞も書き直した部分があるんですけど、やっぱり曲の流れがカッコいいですよね。リフがまずカッコよかったし、サビのテンション感も自分が作るテイストじゃないし、この曲は自分の中で良い意味での違和感があるんですよ。そこが好きですね。
翔也さんは久々にこの曲に触れてみて、いかがでしたか?
翔也:それこそ当時、アレンジする余裕もなかったというか(苦笑)。ただ覚えて披露するという感じだったので、逆に言ってしまえば当時の変な印象もなくて、フレッシュな感じでやることができたかなと思います。
新曲のような感覚ですか。
翔也:そうですね。感覚的にはほぼほぼそんな感じではありました。
達也さんはいかがでしたか?
達也:改めて聴いたものと当時の印象は大分違いました。当時は特にAメロとかを自分なりにすごくアレンジして叩いていたんですけど、それがどうしても思い出せなくて、今回新しいものを考えてどんどん詰め込んでいきました。テンポ感が速いので、勢いを出すフレーズを入れたいんだけど、テンポ的に合わないなという葛藤があったのは覚えていますね。上手いフレーズがないかなとすごく悩んだ曲でした。
「依存の檻」はイントロの壮大さや全体の重めの雰囲気はDIAURAらしい楽曲ですが、Aメロが他ブロックとキャラクターが違うというのも面白いです。
yo-ka:こんなに豪華になったのは作品になったからなんですよ。昔はもっと貧相な体をしていたんですけど(笑)、今回収録するにあたって佳衣とアレンジの話になった時に、やっぱり『ANTISM』という作品の中に「依存の檻」がいるということを考えて、佳衣も普段にはないくらい思い切ったシンセをガンガンに入れるという話でした。自分で作った曲ですけど、「すごい綺麗になって帰ってきたねー」という親心みたいな感じです(笑)。東京出て行ったと思ったら、すっごい美人になって帰ってきた子みたいな(笑)。でも、流れている血だけは変わらないように。そこだけは維持されています。
佳衣:自分の中では得意分野の一つではあるので、あまり思い悩むこともなく結構自然にできたなと思いますね。ただ、ストリングスとかに頼り過ぎずにギターでできることはないかなというのはすごく考えたので、ど頭だったり要所要所に印象的なギターを入れつつ、上手くバランスが取れたんじゃないかなと思います。
このギターソロはたまらんですね。
佳衣:自分で弾いていてもたまらんですね(笑)。でも、これはデモで録った時のままなので、今回レコーディングで改めて録り直したものではないんですよ。最初に録った時のニュアンスがどうしても耳に残っていて、これ以上はないなと思ったので、そのまま使いました。
そうなんですね。それと、ラスサビ後から〈この”依存の檻”から〉部分のギターと歌の絡み合いが最高だなと。
佳衣:あれはよくやるやつで、もう十八番みたいなものですね(笑)。
yo-ka:伝統芸能(笑)。
(笑)リズム隊のレコーディングはいかがでしたか?
翔也:やっぱりAメロが他とキャラが違うじゃないですか。最初ルートだけだったんですけど、何かできることがないかなと思って。ドラムも割とベーシックだったりするので、結構頭を悩ませたところではありますね。しかも結構尺が長いので、どうやってキャラを変更させようかと、ちょっとリフっぽく弾いてみたり工夫しました。サビは王道ではあるので、そこでしっかりベースの役割をすればいいかという感じで。
達也:結構繊細な部分が多い曲だと思うんですけど、一番悩んだのはサビに入る瞬間で。ドラムと歌だけになる部分があって、2回とも本当はドラムがガッツリ入っていたんですけど、アレンジしている段階で結構悩んでいたんですよね。それでレコーディングに何個かアイディアを持ってきて、「どれがいいと思う?」と佳衣ちゃんに相談しました。悩んだ末、2回目に至ってはドラムを全部なくすという極限までいきましたね(笑)。それくらい繊細なものであり、何を目立たせるかを結構悩んだ曲でした。
良いファンに恵まれているなと思えた(翔也)
あとの3曲に関して、ライブでやり慣れた曲だからこそ特に意識したことはありますか?
佳衣:やっぱり極力崩し過ぎないことが大事だなと思いました。過去に一度それで個人的に痛い目を見ているので(笑)。だからいかに原型を保ちつつプラスアルファしていくかという、そこのバランスはすごく悩みましたね。あまりマイナスした部分はないんですけど。
「UNCONTROL BIAS」はAメロのベースがゴリゴリだなと。
翔也:元々ライブではなかったんですよ。ギターとドラムと一緒にブレイクしていたんですけど、今回の佳衣のアレンジでベースが入っていたので、そこは変わった部分ですね。
イントロのタム使いや間奏、2サビの高速ドラミングなど、ドラムが映える曲ですよね。
達也:この曲が一番ライブでの経験を活かした曲だなと思います。ライブだとずーっと叩いていたけど、せっかくの機会だからちょっとこの部分を歌に合わせてみようとか、足のパターンを変えてみようとか、一番変化がありましたね。ライブでの経験を吸収した上でレコーディングできた、すごく良い部分だと思っています。
この曲の歌詞を改めて読むと、〈掲げろ抵抗 もがけばいい/貫けばいい〉〈存在証明〉などDIAURAの根本だなと思うところが多々あって。
yo-ka:そうですよね。ただ、この曲に関しては恐ろしい問題が生じてくるんですけど、今までライブでしかやっていなかったから正確な歌詞は誰も知らないわけで、あってないようなもんだったんです。もちろん作る段階で歌詞なんてどうだっていいだろうということは一度たりともないんですけど、ライブでしかやってない曲で、しかもこういう曲調で、めちゃくちゃやろうぜというスタンスで作られた曲なので、右脳と左脳で言えば左脳は閉じっぱなしだと思うんですよ。声も体も直感でしか動いていなくて。だからレコーディングするにあたって、今まで冷静に見ることもなかった歌詞が目の前にあって、意識して歌うというのがすごく大変で。変な感じがするんですよ。俺、最近座ってレコーディングするんですけど、その状態でこの曲を歌うのは、慣れるのにちょっと時間がかかったなと。
そうだったんですね。「CRACK PAIN」「SHADOW」はいかがでしょう?
翔也:「CRACK PAIN」はライブで毎回違うことを弾いていた気がするんです。でも、とある瞬間にBメロであるフレーズを弾き出したら、急に下手が咲くようになったんですよ。「ん?」と思って(笑)。でもこれって、お客さんからしたら耳に残っているはずだから、そこだけは絶対に生かそうと思いました。だから一緒に作った感じがあるんですよね。
達也:この曲は新しく今回のデモが上がってきた段階で、同期とかシンセ系が結構入って、より華やかになったなという印象があったので、俺はライブで叩いていたそのままを生かした感じですね。俺も変えてゴチャゴチャすると、新しく入ってきたものとぶつかり合っちゃうかなと思ったので、皆が慣れたドラムの音をそのまま表現しました。
イントロを聴いた瞬間にフロアの画を思い出します。それと、Aメロの歌の合間に入るギターが、不思議な引っ掛かりがあって面白いなと。
佳衣:ライブでは全然感じなかったことなんですけど、メロディーだけ聴くと意外とちょっとダウナーな匂いのする曲だなと感じて、じゃあ全体をそういう雰囲気に持っていこうかなというところから、あのギターも出てきました。これはライブだけでは気づかなかったことが多い曲ですね。
「SHADOW」はyo-kaさんに染み付いているものが滲み出ている、メロディーにV系味を感じる曲です。
yo-ka:一番そうかもしれないですね。ざるうどんって感じ。わかります?
シンプルイズベストということですか?
yo-ka:そうそう。ざるうどんが美味しいって、すごく良いことだと思うんですよ。ヴォーカリスト、作曲者としての自分の素は、皮を剥いて剥いて剥いていったら「SHADOW」だと思うんですよね。佳衣がDIAURAの象徴的な曲を担ってきてくれたからこそ、俺は「SHADOW」みたいな曲に全振りできたというか。だから自分にとってもこういう曲もライブでやるべきだなと、当時も素うどんを捏ねていたわけで、ということはこれもDIAURAにとって大事なものだったりするので、実はこの曲が一番作品にできて嬉しかったかもしれないですね。
歌メロはV系味がありつつもバンドの音はゴリっとしているのが、この作品だからこそなのかなと。
佳衣:そうですね。あまり古(いにしえ)感はないですし。というか、自分の中ではそんなにこの曲に対してそういうイメージはなかったんですよね。もちろんザ・王道な感じではあるけど、どこかしら現代的な雰囲気は感じていたので、それをあえて古にする必要もないだろうなと思って。まぁ、ギターソロの入りは古感がすごいと思いますけど(笑)。あれは自分の中に流れている血がそういうものなので、出たんだと思います。
さて、現在開催中のイベントツアーでDIAURAとしてはコロナ禍初の声出し解禁ライブとなりました。
翔也:人生であんな経験をすることって、今後あるかないかだと思うんですよ。声が出せないライブを約3年間続けて、解禁の最初の瞬間って自分の中である程度は想像していたんですけど、その遥か上を行かれたので、すげー面食らったというか。良いファンに恵まれているなとイベントツアーだからこそ思えました。
達也:もちろん声がないライブも試行錯誤して楽しくやれてきたんですけど、やっぱり声があるというのは、さすがにない時の上を行くものだなと思っちゃいましたね。感動しましたし、すご過ぎてステージに出る時にニヤけちゃいました(笑)。
佳衣:愚民たちに支えられているんだなと、すごく感じましたね。声が出せないとなったら拍手で支えてくれるし、出せるとなったら声を出して支えてくれるし、そこに一番感動して、スタート前に袖でちょっとウルッときました。それくらいすごく嬉しいし、自分自身もそれで高まる部分があったので、やっぱりいいなぁと思いましたね。
DIAURAが戦闘態勢の今、対バンのツアーができたことはバンド自身に良い影響を与えていますか?
yo-ka:本当に良かったですねぇ。この機会をくれてBugLugありがとうって、ずっと思っていますね。足向けて寝れねーなと。最初はワンマンで声出し解禁をしたかったんですけど、色々なタイミングの妙でズレてイベントツアーからということにはなって。でも逆にこれができて良かったなと思うし、それを見たからこそ次のワンマンツアーでもっと容赦なくいこうと思えましたね。ぶっ殺してやるという気持ちが何より大事だなと思い出させてもらいました。
いよいよワンマンでの声出し解禁となる「VARIANT[ISM]」ツアーが4月22日にスタートします。
達也:今まで声を出せない中、一緒にライブを作ってきてくれた愚民たちにはとても感謝しています。それ以上のものを見せられると約束できる曲たちもありますし、期待していてほしいですね。自分自身もすごく楽しみにしているし、来てくれる皆もきっと楽しい時間を過ごせると思うので、どうぞよろしくお願いします。
翔也:まず、声出し解禁までに誰一人ルールを破らずにいてくれて、この空間を守ってくれてありがとう、という感謝があります。我慢していたと思うので、それを一緒に解放できるようなツアーにしましょう。
佳衣:皆がすごい熱い気持ちを持って声を出しているのに、自分たちがそれ以下になるつもりもないし、それだといけないと思うので、やっぱり皆の声を上回るくらいのものをステージからぶつけたいなと思います。
yo-ka:色々な思いは『ANTISM』に全部込めていて、CDの帯とかもちゃんと読んで欲しいんですけど、そういうところにメッセージもあって。『ANTISM』を作って、今このタイミングでそのツアーがあるということが全てだと思うので、歌詞にも書いたように地獄に昇っていきましょうよということですね。愚民たちも相当な熱量でかかってくると思うので、我々はその遥か上でぶち殺しにいこうかなと。それがライブの中で今できる一番の愛情表現だと思うんですよ。本当に近年稀に見るほど気合の入ったツアーになると思うので、気合入れて地獄に一緒に行きましょう、そんなツアーにしましょう。
(文・金多賀歩美)
DIAURA
yo-ka(Vo)、佳衣(G)、翔也(B)、達也(Dr)
オフィシャルサイト
リリース情報
New Mini Album『ANTISM』
2023年4月5日(水)発売
(発売元:フォーラム/販売元:ダイキサウンド)
[初回盤](CD+DVD)NDG-25 ¥3,080(税込)
[通常盤](CD)NDG-26 ¥2,640(税込)
収録曲
【初回盤】
[CD]
- ANTISM
- UNCONTROL BIAS
- 混沌たる世界
- CRACK PAIN
- SHADOW
[DVD]
「ANTISM」MV
【通常盤】
[CD]
- ANTISM
- UNCONTROL BIAS
- 混沌たる世界
- 依存の檻
- CRACK PAIN
- SHADOW
ライブ情報
●ONEMAN TOUR「VARIANT[ISM]」
4月22日(土)HEAVEN’S ROCK さいたま新都心VJ-3
4月23日(日)柏PALOOZA
4月29日(土)新横浜NEW SIDE BEACH!!
5月4日(木・祝)青森QUARTER
5月6日(土)札幌SPiCE
5月7日(日)札幌SPiCE
5月13日(土)郡山HIP SHOT JAPAN
5月14日(日)仙台MACANA
5月20日(土)福岡DRUM Be-1
5月21日(日)福岡DRUM Be-1
5月27日(土)HEAVEN’S ROCK 宇都宮VJ-2
5月28日(日)HEAVEN’S ROCK 熊谷VJ-1
6月2日(金)名古屋Electric Lady Land
6月3日(土)名古屋Electric Lady Land
6月10日(土)OSAKA MUSE
6月11日(日)OSAKA MUSE
6月17日(土)新宿BLAZE
6月18日(日)新宿BLAZE