2025.09.03
DIAURA@Spotify O-EAST
「愚民の日2025」

「今日はまごうことなき、DIAURAと愚民たち、俺たちだけの日です」――そうyo-ka(Vo)が告げたのは、2025年9月3日Spotify O-EASTのステージ上でのこと。去る2013年、DIAURAのファンクラブ「愚民党」が正式に発足されたことを機に、ファンの呼称である「愚民」の語呂合わせから9月3日を「愚民の日」とし、2016年以降はこの日にワンマンライブを行うことが恒例となった。そんなDIAURAと愚民たちにとって1年で最も大切な記念日が、2025年もまた巡り来たのだ。

yo-ka

今年で13回目を迎えた「愚民の日」。赤を基調とした、この日のための新衣装を纏い、達也(Dr)、翔也(B)、佳衣(G)に続いて、最後に姿を現したyo-kaが巨大フラッグを高らかに掲げる。これぞDIAURAと呼ぶにふさわしいオープニングから、「倒錯症レジスタンス」で幕を開けると、〈さあ飛ぼうあなたと二人なら どこでも構わない〉という一節、さらには曲中に「この独裁の庭で狂おしく愛し合おうぜ、愚民ども!」(yo-ka)と投げかける場面もあり、初っ端から愚民たちへの愛情を示すスタートとなった。

「倒錯症レジスタンス」は2016年当時、DIAURAというバンドを体現する曲として生み出されたもの。そこに〈抗いの日々よ抗いの旋律よ この地獄に響かせて〉と歌う、最新作収録の「Optimal fiction」が続けば、「THIS IS MY CULT.」においては〈君よずっと愚かなままで〉というリリックが、まるで愚民たちへの願いのように響き渡った。さらに「胎動」における〈鉄壁ノ崇拝〉をはじめとしたリンクまで含め、まさに非の打ちどころのないメッセージの連なりを通して、“DIAURA”の存在を強固に提示する序盤ブロックとなったのだった。

佳衣

毎年、その年ごとに固有の色合いを持つ「愚民の日」公演だが、全21曲にわたって繰り広げられた当夜もまた、特筆すべき要素をいくつも含んでいた。その一つは、活動初期の楽曲が随所に配されたこと。「15周年に向かって、俺たちの歴史全部を大事にしていきたいなと。どの曲も大事で、歴史も全部愛おしいもの」と、yo-kaはその真意を語った。

中でも、本編折り返しのブロックにおいて、死と再生、愛する者への思いを歌った、重厚かつエモーショナルな「SIRIUS」、〈孤独よりも怖いのは君を忘れてしまう朝〉だと、“君のいない風景”を描いたキャッチーな「Lily」という、2013年に現体制初のシングルとして両A面で発表された2曲が続けて披露されたうえ、さらに2014年発表の「ホライゾン」で人の愚かさや命の平等性を描きながらも、希望の光を見せてくれた流れは実に見事だった。なお「ホライゾン」では、〈唯一、求められるなら “この場所に”幸せを〉と歌い替えたシーンも忘れがたい。

翔也

これら初期の楽曲によって死生観が色濃く表れたことは、同時にDIAURAの根底にあるものが当時から現在に至るまで一貫していることの証でもあった。実際、今春にリリースされたシングル『Ephemeral』は、「今だからこそ、絶対に終わりが来ることを受け入れたうえで、何を残せるか」という普遍的なテーマのもと生み出された作品であり、そこに収録された3曲すべてが当夜のメニューに組み込まれていたのである。これが本公演における二つ目の特徴であり、先述の「Optimal fiction」のほか、それぞれが適材適所に配され、最新作であるというファクターを抜きにしても、極めて重要なポジションを担っていた。

時系列は前後するが、2ブロック目の入口となった「Doomsday」は、終末の日を意味しつつ新たな始まりをも示唆する楽曲。そこに続いたのが、死を待つ日々に抗いの声を響かせる「The abyss」で、そのメッセージのつながりはもちろん、ヘヴィーかつ目まぐるしい展開を持つ両曲の並びは、親和性の高さも感じられた。そして、本編最終ブロックに据えられたのが、温かな表題曲「Ephemeral」。このメロディアスなナンバーが、初期のDIAURAの代表曲であるハードな「赤い虚像」「MASTER」に挟まれるという構成は、楽曲のカラーとして考えれば意外性を孕むものだった。だが、その対比こそが鮮烈なコントラストを生み出し、限られた人生の時間の中で〈この愛と詩を敷き詰めて〉いくという決意が、より一層リアリティをもって響いたのだった。

達也

なお、当然ながらこの夜も、DIAURAと愚民たちによって終始白熱の景色が描き出されたことは付記しておきたい。例えば序盤、ステージに白煙が噴出した「THIS IS MY CULT.」ではモッシュの光景が広がり、中盤で立て続けに投下された近年の常連ダンスチューン「愚踊」「STARRY INFERNO」でフロアを揺らすと、メンバー4人が笑みを見せる一幕も。終盤では「ドラスティックダイヴ」でオーディエンスとの掛け合いを楽しみ、「赤い虚像」「MASTER」「愚民党賛歌」でのヘドバンの嵐はまさに絶景だった。

また、「ホライゾン」でyo-kaが翔也との距離を詰め、共に歌った場面、「ドラスティックダイヴ」で達也がスティックをフロアに向けながら、掛け合いのコーラスをした場面、「MASTER」において佳衣がセンターお立ち台でギターソロをプレイし、そこにyo-kaがバックハグの形でマイクを差し出した場面、「愚民党賛歌」のギターソロ部分で、yo-ka、翔也、達也が向かい合った場面…随所でそういった見せ場や和やかなシーンがあったことも、やはり嬉しさを伴うものだ。

yo-ka
佳衣

アンコールは、2024年の「愚民の日」公演に向けて制作された「HELLTOPIA」から、フロアに扇子が舞った「乱世ディストピア」へとつなぐ憎い展開でスタート。そして、10月1日にリリースを控えるニューシングル『MADDY CIRCUS』のc/w曲「JUDAS」が初披露されるという、大きなトピックも用意されていた。「身構えずに聴いてほしいけど、作った側の見たい景色としては、サビで跳んでほしいの。それと『オ、オ、オー』って言ってほしいの(笑)」とyo-ka。難度の高そうなコーラスのレクチャーだったものの、愚民たちの見事な再現率で、初見とは思えない一体感を生み出すと、攻撃力の高い「UNCONTROL BIAS」「ANTISM」の連投をもって、終幕を迎えたのだった。

DIAURAは10月に『MADDY CIRCUS』をリリースしたのち、それに伴う全16公演にわたるツアー「MADDY CIRCUS COME TO TOWN」を11月8日より開催する。それらを前に、9月20日にはSadie主催イベント「THE UNITED KILLERS」で、Sadie、lynch.と激突する。「DIAURAの持てる力を全て出し尽くす。それが役割だと思うので、Sadie、lynch.に全力でぶつかりにいきます。だから、気を抜かずに張り詰めていてください」(yo-ka)とのこと。

そして、翔也が「『また来年』と言えるのは、DIAURAが今、良い状態だからだと思うので、さらにカッコよくなって戻ってきます。なので、来年もよろしくお願いします!」と告げると、達也は「満足感、充実感あふれる気持ちです。楽しかった!」と心からの叫びを。さらに佳衣が、「7月の愚民党限定ツアーから今年の夏を突っ走ってきて、今日で夏が終わったなと思ったけど、これからも突っ走っていくのでよろしくお願いします! いつも来てくれている人も、今日初めて来た人もいると思うけど、ここにいるということは皆さん立派な愚民だと思うので、ここを出る時に胸を張ってください。そうすることで、DIAURAと愚民党がもっと強固なものになると思うので」と締めくくった。

翔也
達也

終わってみれば、今年は例年に比べ「愚民の日」にまつわる楽曲が少なめだった印象を受ける。しかし当夜のステージを振り返ると、DIAURAというバンドの揺るぎない意志と愚民たちへの深い愛情は明白であり、これ以上の何も必要としなかったに違いない。むしろ、そうした楽曲を多く並べずとも、「愚民の日」を存分に表現し得ることの証明でもあったように思う。すべてのパフォーマンスを終え、達成感に満ちた4人の清々しい表情が実に印象的だった。

なお、11月に開幕するツアーのファイナルは、2026年1月17日に神田スクエアホールにて、15周年アニバーサリー公演「Maddy Circus to“NEXT GARDEN”」として行われる。「今までもこれからもいろんなことがあるだろうけど、結局のところDIAURAが好きで大切なので、その思いでここに立っている。自分たちが作ったとかの次元ではなく、DIAURAに“出会えた”と思っている」とは、この日yo-kaが述べた言葉。いよいよ一つの節目となる日が近づく今、まずは新作『MADDY CIRCUS』の誕生を心して待ちたい。そしてこれから先も9月3日はこの独裁の庭で会おう。

◆セットリスト◆
01. 倒錯症レジスタンス
02. Optimal fiction
03. THIS IS MY CULT.
04. 胎動
05. Doomsday
06. The abyss
07. 愚踊
08. STARRY INFERNO
09. SIRIUS
10. Lily
11. ホライゾン
12. ドラスティックダイヴ
13. 赤い虚像
14. Ephemeral
15. MASTER
16. 愚民党賛歌

En
01. HELLTOPIA
02. 乱世ディストピア
03. JUDAS
04. UNCONTROL BIAS
05. ANTISM

(文・金多賀歩美/写真・尾形隆夫)


【リリース情報】
●New Single『MADDY CIRCUS』
2025年10月1日(水)発売

[初回盤](CD+DVD)NDG-36 ¥2,200(税込)
[CD]
01. MADDY CIRCUS
02. JUDAS
[DVD]
「MADDY CIRCUS」MV

[通常盤](CD)NDG-37 ¥1,650(税込)
[CD]
01. MADDY CIRCUS
02. JUDAS
03. 朽白

【ライブ情報】
●Sadie presents THE UNITED KILLERS
9月20日(土)ジャパンパビリオンホール
出演:Sadie、DIAURA、lynch.

●DIAURA × ΛrlequiΩ 2MAN FREE LIVE「CALLING THE CULT.」
10月4日(土)イオンモール幕張新都心 GRAND MALL1F グランドスクエア

●「Bands Shock REVOLUTION ~びじゅある祭2025~」
10月18日(土)服部緑地野外音楽堂
出演:Azavana、ΛrlequiΩ、蛾と蝶、コドモドラゴン、ザアザア、JILUKA、DIAURA、BugLug /MC:浅井 博章

●yo-ka聖誕祭「Evil’s Night Party 2025-白ノ聖域-」
10月31日(金)Spotify O-WEST

●DIAURA ONEMAN TOUR「MADDY CIRCUS COME TO TOWN」
11月8日(土)F.A.D横浜
11月9日(日)HEAVEN’S ROCK さいたま新都心
11月15日(土)柏PALOOZA
11月16日(日)HEAVEN’S ROCK 宇都宮VJ-2
11月21日(金)青森QUARTER
11月23日(日・祝)札幌PLANT
11月24日(月・休)札幌PLANT
11月29日(土)郡山#9
11月30日(日)仙台MACANA
12月6日(土)ESAKA MUSE
12月7日(日)ESAKA MUSE
12月13日(土)名古屋SPADE BOX
12月14日(日)名古屋SPADE BOX
12月20日(土)福岡DRUM SON
12月21日(日)福岡DRUM SON
TOUR FINAL DIAURA 15th Anniversary「Maddy Circus to“NEXT GARDEN”」
2026年1月17日(土)神田スクエアホール

●「アンチホーリークリスマス」
12月25日(木)渋谷ストリームホール

●「Dictatorial Countdown2025〜2026」
12月31日(水)SUPERNOVA KAWASAKI

●翔也生誕祭「Mr.STUPiD 2026」
2026年1月31日(土)Spotify O-WEST

●佳衣生誕祭「dictatorial【K】ingdom Ⅺ」
2026年2月7日(土)Spotify O-WEST

●達也生誕祭「Joie de Vivre 2026」
2026年3月28日(土)Spotify O-WEST

DIAURA オフィシャルサイト