2023.01.21
DIAURA@Veats Shibuya
「BLACK IMPULSE」
「周年が言わばその年のDIAURAの始まりなので、2023年をどんな年にしたいかというところもかかってくる。だからこのタイトルには、一年の計は年の初めにあるという思いも込めています」――これは昨年、Vifのインタビューの中でyo-ka(Vo)が発した言葉だ。あれから約4ヵ月を経た2023年1月21日、Veats Shibuyaを舞台に行われたDIAURAの12周年記念公演「BLACK IMPULSE」にて、その答えが明確なものとなった。
周年ライブと言えば新旧様々な楽曲を取り入れやすい絶好の機会ではあるが、年数を重ねれば重ねるほど、当然セットリストから漏れる楽曲も増えていく。毎年コンスタントに新曲を生み出し続けているDIAURAだけに、それはどうしても避けられない問題でもあるだろう。そんな彼らがこの12周年記念公演で提示したのは、2011〜2014年発表の11曲、2021〜2022年発表の5曲、そしてこれまでライブのみで披露されてきた楽曲の初音源化作品『ANTISM』(4月5日発売)に収録予定の4曲という全20曲だった。
yo-kaが巨大フラッグを手にした「to ENEMY」から始まり、初期の楽曲たちが大半を占めたこと、それこそが「BLACK IMPULSE」=「黒い衝動」が意味するもの。すなわちDIAURAを象徴する黒という色と彼らの初期衝動、それを周年ライブで改めて表現し、自らの原点である衝動は今も変わらないばかりか、DIAURAにとってそれが最も大切なものであることを示すステージを展開してみせたのだ。事実、この日全てのパフォーマンスを終えた後、yo-kaは「俺たちが大切にしたいもの、守りたいものを伝えられればと思いながらステージに立っていました」と告げたのだった。
ではなぜ12周年というタイミングで、一種の原点回帰と言えるテーマを掲げたのか。振り返れば2021年の10周年の際は周年ライブ自体がなく、2022年の11周年は14曲収録のフルアルバム『R.I.P.』を引っ提げたツアーファイナルを兼ねたものであったことから事実上不可能であったし、メンバー自身もそのような思いに至らなかったに違いない。そして今、先述の『ANTISM』のリリースと、DIAURAとしてはかなり久々となる対バンツアー(3月11日〜4月6日開催のResistar Records Presents「S.O.R.T 〜Soul of Resistance Tour〜」)が控えていることは、大きな要因となったのではないだろうか。この日も披露された「UNCONTROL BIAS」「CRACK PAIN」といった攻撃的ナンバーをレコーディングしつつ、対バン相手という目に見えるライバルの存在があるわけで、言わば現在のDIAURAは戦闘態勢。だからこその「黒い衝動」なのだと考える。
「かつて抱いていた衝動、それ以上のものを俺らは今持っているので、ブチかますだけだと思っています。この新衣装は『ANTISM』用のものではありません。『BLACK IMPULSE』のために作って、対バンツアーもあるでしょ? その中でやっぱりDIAURAは黒いんだぞと、その血が何より俺たちを突き動かしているんだぞということを見せていきたいなと。対バンの皆さんにも愚民たち(ファンの呼称)にも、改めて突き刺していきたいな思って」というyo-kaの言葉は、その証として十分だろう。なお、この日お披露目となった新衣装はもちろん漆黒で統一、さらにyo-kaはDIAURAの正装である軍帽を被っていたことを記しておきたい。
無論、初期の楽曲たちの多くは久々の披露となったことから、達也(Dr)が「リハーサルの時点でDIAURAの歴史を感じていた」と心境を述べれば、翔也(B)は「やりながら、この時はこんなことがあったなとフラッシュバックしてきて。ちゃんと歴史を積み重ねてきたんだなと」と感慨深げに話したのだった。
また、いつもながら今回もストーリーとメッセージを増幅させる構成の妙が光っており、中でも中盤の「依存の檻」「届かぬ手紙」「ホライゾン」の流れは秀逸だった。どん底まで落ちながらも最後に一筋の光を見せてくれ、DIAURAの楽曲から切り離すことができない死生観が色濃く表れたブロックだったと感じる。ちなみに「ホライゾン」に〈黒い羽〉というワードが含まれることも、ここに配された理由の一つかもしれない。しかも、これに続いた「BUG」には〈未完成な羽〉とあるわけで。
終わるものも多い世の中で前に進む決断をしていきたいという思いで描かれた「BUG」のほか、この日チョイスされた近年の楽曲たちもやはり合点のいくものだった。そのタイトルはもちろん、yo-kaが「首ちょうだい!」と言うほどのハードナンバー「ブラックアウト」、DIAURAの新たな一面を見せてくれたシャッフル曲「ミザリー」、最新シングル収録のダンスチューン「天上へ至るイド」、2021年のyo-ka生誕祭で販売されたV系色の強い「Nameless」…選ばれるべくして選ばれたライブ映えする楽曲揃いだったのだ。
「こんなにバンドを続けられるというのは、12年前には想像できないことでした。今、目の前にあるこの現実が、DIAURAとして生きていて良かったと思える最高の現実なのかなと思います」(yo-ka)――そんな言葉も飛び出した本編終盤。「UNCONTROL BIAS」ではyo-kaが佳衣(G)と肩を組んだり、コーラスをする翔也と向き合って歌うシーンも。さらに「TRIGGER」では達也が立ち上がりシンバルを渾身の力で叩きつける場面もありながら、まさに白熱の本編ラストとなったのだった。
アンコールでは各メンバーが12周年について触れ、佳衣は「12年前と今では髪型、衣装から、愚民たちの顔ぶれも、何もかもが違うんですけど、色々な出会いがあって、たくさんの支えがあっての今が全てだと思っています。今後も様々な出会いや変化があることがバンドが走り続けている証拠だと思う」と話し、達也は「様々な理由で活動ができなくなってしまったバンドもたくさん見てきたので、こうして愚民たちと一緒にライブができているという事実こそがとても素晴らしいことだと思います」と、実感のこもった言葉を残した。
また、翔也は「12年って小・中・高校を卒業するんでしょ? ヤバいよな。ここまでこういう状態でバンドがやれるとは始める時には本当に思っていなかったから、色々大変なこともあったけど、今こうして立っているのはスゲーことだなと思うし、来年もまた皆に盛大に祝ってもらうつもりでいるし、高校を卒業しちゃったからには次はやっぱり成人式じゃないですか。そこを目指して頑張るので、よろしくお願いします」と、この先も続いていくであろうDIAURAの未来をも感じさせてくれた。
そして、「音楽と出会ってなかったら今の自分はこうじゃないし、皆、常に迫られる選択を繰り返しながら生きてきたと思うんです。12年経って、もちろん良かったことばかりではなく辛かったことも多々あります。それでも、やっぱりDIAURAの音楽が何より好きだったから、それを失うわけにはいかないと思えて。それはメンバーも同じで『やっぱりDIAURAいいよね』ってなるんだよね。たまにはメンバーとバチバチになることもあったけど、それでもDIAURAの音楽だったから、DIAURAのyo-ka、佳衣、翔也、達也だったから、その歴史が今に繋がっている。過去の悔いなんてものはもちろんあるんだけど、それを晴らせるのは未来でしかないと思うので、13年目も『BLACK IMPULSE=黒い衝動』ですよ」とyo-ka。
DIAURAの戦闘態勢モードはしばらく続きそうだ。「このライブが一番楽しいと思える今を共に生きてくれてありがとうございます。これからもDIAURAを、DIAURAの音楽を愛してください。この庭で思いっきり生きてください。この庭で思いっきり感じ合いましょう。愛するお前たちに捧げます」(yo-ka)という言葉から奏でられた「Garden of Eden」で舞った銀テープ、そこに印字されていたのは「DIAURA 12TH ANNIVERSARY BLACK IMPULSE TO VARIANT[ISM]」。つまり、本公演は周年記念であると同時に4月22日より始まるツアー「VARIANT[ISM]」へ向けたものでもあると考えるのは、何も大袈裟な解釈ではないだろう。
その後、鉄板曲「MASTER」の間奏中、yo-kaにマイクを向けられた翔也は「12年間ありがとー!」、佳衣は「これからもよろしくー!」と叫び、「これからも共に光射す方へ」(yo-ka)という言葉からDIAURAの始まりの曲「失翼の聖域」が放たれると、センターにフロント3人が並ぶ場面も。何とも美しい四角形を成して、この記念公演は幕となったのだった。
「12年経って曲も増えていって、まだまだやり足りないんだ。これからも積み上げていくDIAURAの音楽を独裁の庭で受け止めて、全部俺たちにぶつけてください。2023年、全力で駆け抜けましょう」(yo-ka)とのこと。しつこいようだが、春の対バンツアー、4月5日リリースのニューミニアルバム『ANTISM』、その作品を引っ提げて開催される全国ツアー「VARIANT[ISM]」、そのどれもが最強のものとなるに違いない。なお、既報の通りこの二つのツアーは声出し可能な公演として実施されることから、「俺たちのために、その喉をぶっ壊してください!」というDIAURA流の愛情表現があったことも付記しておきたい。DIAURAの黒い衝動は、自らの色をより複雑で、より深い漆黒へと際限なく進化させていくだろう。
◆セットリスト◆
01. to ENEMY
02. REBORN
03. ブラックアウト
04. ミザリー
05. DICTATOR
06. 天上へ至るイド
07. Nameless
08. SISTER
09. evil
10. 依存の檻
11. 届かぬ手紙
12. ホライゾン
13. BUG
14. UNCONTROL BIAS
15. SHADOW
16. TRIGGER
En
01. Garden of Eden
02. CRACK PAIN
03. MASTER
04. 失翼の聖域
(文・金多賀歩美/写真・尾形隆夫)
【リリース情報】
●New Mini Album『ANTISM』
2023年4月5日(水)発売
(発売元:フォーラム/販売元:ダイキサウンド)
[初回盤](CD+DVD)NDG-25 ¥3,080(税込)
[CD]
01. ANTISM
02. UNCONTROL BIAS
03. 混沌たる世界
04. CRACK PAIN
05. SHADOW
[DVD]
「ANTISM」MV
[通常盤](CD)NDG-26 ¥2,640(税込)
[CD]
01. ANTISM
02. UNCONTROL BIAS
03. 混沌たる世界
04. 依存の檻
05. CRACK PAIN
06. SHADOW
【ライブ情報】
●生誕祭ライブ
1月31日(火)翔也生誕祭「Mr.STUPiD 2023」新宿BLAZE
2月7日(火)佳衣生誕祭「dictatorial【K】ingdom Ⅷ」新宿BLAZE
3月28日(火)達也生誕祭「Joie de Vivre 2023」新宿BLAZE
●Resistar Records Presents「S.O.R.T 〜Soul of Resistance Tour〜」
以下、DIAURA参加公演(全12公演中6公演)
3月11日(土)仙台darwin
3月14日(火)FUKUOKA BEAT STATION
3月16日(木)梅田Club QUATTRO
3月17日(金)京都FANJ
3月23日(木)NAGOYA ReNY limited
4月6日(木)恵比寿LIQUIDROOM
出演:BugLug、甘い暴力、コドモドラゴン、DIAURA
●ONEMAN TOUR「VARIANT[ISM]」
4月22日(土)HEAVEN’S ROCK さいたま新都心VJ-3
4月23日(日)柏PALOOZA
4月29日(土)新横浜NEW SIDE BEACH!!
5月4日(木・祝)青森QUARTER
5月6日(土)札幌SPiCE
5月7日(日)札幌SPiCE
5月13日(土)郡山HIP SHOT JAPAN
5月14日(日)仙台MACANA
5月20日(土)福岡DRUM Be-1
5月21日(日)福岡DRUM Be-1
5月27日(土)HEAVEN’S ROCK 宇都宮VJ-2
5月28日(日)HEAVEN’S ROCK 熊谷VJ-1
6月2日(金)名古屋Electric Lady Land
6月3日(土)名古屋Electric Lady Land
6月10日(土)OSAKA MUSE
6月11日(日)OSAKA MUSE
6月17日(土)新宿BLAZE
6月18日(日)新宿BLAZE