10年間の全てを詰め込んだ(佳衣)
そして、DIAURAの意思が伝わってくる新曲2曲が収録されています。今作のメイン曲となる「君へ黒の花束を」は、佳衣さんが得意そうな曲かつDIAURAらしい曲だなと。
佳衣:10年間の全てを詰め込んだ感じが強いですね。自分たちもそうですけど、お客さんって変わることだけを望んでいるわけじゃないと思うんですよ。10年経っても変わらないものがあることに嬉しさを感じることも絶対にあって、そういう意味でも10年分あえてベタだけどやったこともありますし、それがDIAURAの良さであり、今までやって来たことを表現したかったというのがあって。本当に全てを詰め込みましたね。
壮大さと力強さにDIAURAらしさを感じます。始まり方も特徴的ですよね。
佳衣:そうですね。この10年間を思い返すと、DIAURAって“戦い”というイメージがあって。何をするにも戦ってきたという感覚が強いんですよね。だから、今から戦いが始まるような雰囲気を最初に出したくて、こういう形にしました。
歌詞の面では2020~2021年を感じる部分もあります。
yo-ka:2020年以降に作ったものって、どうしてもそういう面が出ちゃうんですよね。それプラス、こういうご時世で音楽というものの無力さを感じさせられることが増えていって、それがバンドを10年経た今とすごく重なったんです。コロナ禍のDIAURAは2020年9月からライブを再開したわけですけど、その時も色々な声がありました。でも、誰かの声でDIAURAを終わらせるつもりはないし、俺たちは俺たちの意思で戦っているんだということを、この曲に込めたかったんですよね。我々DIAURAというバンドの色は何かと言ったら、俺としては黒なんです。自分たち自身が大事にしているものを、俺はDIAURAの10年間を詰め込んだつもりで書いていて。だからすごく前向きですよね。かかってこいよっていう。それがDIAURAの本質だと思うんですよ。
タイトルもDIAURAらしいなと思いました。
yo-ka:「黒の花束」という言葉にしたこと、それを忌み嫌う人もいると思うんですけど、俺は美しいものだと思って作品として出しているので、同じようにそれを美しいと思う人がいるのであれば、それは何よりも素晴らしい花束だと思うんです。というのが音楽に対する俺の気持ちですね。
「君へ黒の花束を」「BUG」どちらにも〈死〉という強いワードが入っていますが、「獄彩」(2020年7月発売の配信曲)や前作シングル『最果てに降る雪』(2020年10月発売)収録の「NIGHTMARE」にも入っていたので、yo-kaさんの中でやはり昨年からのモードが続いているのかなと。
yo-ka:平和ボケというか何も起こらないと、そういったところから意識は遠のくじゃないですか。でも今はそれがリアルに感じられるので、終わるものも多い世の中で、終わることも続けることも決断だし、DIAURAは前に進む決断をしていきたいというところで、対極にあるネガティブなワードも必然的に出てくるんですよね。
なるほど。「BUG」は構成が面白いなと。これは一体どこがサビなのでしょうか?
佳衣:ふふふ(笑)。それがやりたかったんです(笑)。厳密に言えばサビが二つという形で、〈そうして世界は作られる〉のブロックがサビで、〈きっと僕は失敗作で〉のブロックが大サビという認識ですね。「DRAIN DRAIN」(2020年3月発売のシングル『ENVY』c/w)に近い形です。
歌詞の面でも「BUG」には〈Fuck the beauty story〉とあり、「DRAIN DRAIN」には〈嘘まみれのBeautiful World〉とあって、通じる部分があるなと。
yo-ka:なるほど、そう言われれば。「BUG」という単語が最初に出てきたんですけど、今って何が確かなことなのか全然わからないじゃないですか。生きていく上で、何が正しくて、何を信じて、何を指針にしたらいいか全くわからない。国の上のほうで二転三転している状況だし、それを伝えるメディアの言葉も偏りがあったり。どれを取捨選択していけばいいか非常に分かりづらくて。あくまで自分の人生は自分が主役で、自分の人生のストーリーって一体どうやって作っていけばいいんだろうなと考えた時に、外部から入ってくる情報に振り回されることが圧倒的に多いんですよね。最近そういうことがあまりにも多くて、くだらないなと思って。それがこの曲の根っこですね。
ちなみに、佳衣さんは自分の曲でギターソロを弾きたがらないという話が以前ありましたが、今回も漏れなくそうですね(笑)。
佳衣:単純に必要なかったので(笑)。入れるところないなと思って。いろんなことを考えると、ギターソロって場合によってはライブの流れがそこで止まっちゃうことがあるんですよ。勢いでいきたい場合は、意図的にギターソロは抜くという時もありますね。
そして「BLESS」でベスト盤を締め括るというのが、なんとも素敵だなと。愛情を感じます。2020年1月のツアーファイナル兼9周年記念公演のラストに初披露した楽曲ですが、10周年の作品で初めて音源化するということは想定していたのでしょうか?
yo-ka:想定していましたね。この曲は佳衣さん肝入りだったもんね。
佳衣:うん。すごくハッピーな曲じゃないですか。DIAURAにこういうのがあってもいいよなと思っていたものなので、それを実際ライブでやった時もすごく良かったなと。
yo-ka:「君へ黒の花束を」みたいな曲も「BLESS」みたいな曲も、どちらもDIAURAなんだよって堂々と提示できるのは、この5年間やってきたことだと思いますしね。
ライブの時もとても耳に残った部分ですが、〈僕がここで歌っている この瞬間が真実だから〉という歌詞…本当にそれが全てだなと。
yo-ka:色々な環境、状況がありますけど、結局そこだけなんですよね。お客さんはそれを観に来ているわけだし、そこで何を伝えるかというのは4人の意思でしかないっていう。
デカい波が来て、それに乗るのがDIAURAかなと思う(翔也)
コロナ禍以降、既に二つ目の全国ツアー真っ只中のDIAURAですが、この状況下で割と本数も多く、細かく地方を回っているバンドは少ないですよね。11~12月の『最果てに降る雪』を引っ提げてのツアーが久々のツアーだったわけですが、地方の状況はどうでしたか?
達也:僕らが行くところはコロナの感染予防対策をちゃんとしてもらえているし、愚民たち(※ファンの呼称)もちゃんと協力してくれているので、そういった面では安心感を持ってライブができていますね。
翔也:個人的には、回り始めた頃と終わる頃の感覚が違ったなと。自分たちも地方に行くのが久々だったので、最初は「あれ?」と思いましたね。正直、俺らに対して東京から来た人たちという空気は薄ら感じていたんですよ。でも、ライブハウスの方々からは「来てくれてありがとうございます」という声も聞けたりして。そこは何というか地方の雰囲気と、地方で働いている人たちのギャップがあって、回っていくごとにお客さんも慣れていった感じが生々しく感じました。求められてないわけではないんですけど、どこか不安はあるんだろうなというのは感じていましたね。
昨年の「愚民の日」にできなかった「MASTER」をツアーではやっていますよね。
yo-ka:それも一つの小さな気付きなんですけど、過去にも「MASTER」をやらなかった時期があって、その時と似てるなぁと思っちゃって。俺たちにはまだまだ見せるべきものがある、こんなのやらなくたっていいわというのが、第一「MASTER」をやらなかった時期。今回はそういうのを経て「MASTER」はより大事になって、「マスターは誰だ!?」という前振りも含めた一連の流れが大事だという脳になっていたんですよね。それができないんだったらやらないと思っていたんですけど、一向にコロナの状況が変わらないじゃないですか。そういう中で意地を張っているのはこっちだけなんじゃないかなと、それがくだらないなと思ったんですよね。だから堂々とやろうと。もちろん「お前たちのマスターは誰だ!?」と言っても誰も何も言えないですけど、その分「見ろ! 感じ取るから」と言って。それも今の形だろうなと思ってやり出して、やっぱりあの曲のエネルギーというのは大きいし、改めてすごく大事だなという風になりました。コロナ禍の中でも気付くことは大事にしたくて、最近はやるようになりましたね。
佳衣:長くやっている曲ですし、回数で言ったら圧倒的に多い曲でもあるので、やらない期間もありましたけど、久々にやったからといって何か違和感があるわけじゃなくて、本当に自然にできるものなんですよね。
FC限定ライブの振替公演が1年越しに実現しましたが(※名阪は2月、東京は7月)、元々は『ENVY』『Hydra』のツアー前に開催するはずで、「愚民たちがDIAURAの曲にどういう解釈を持っているんだろうかとか、そういうものもツアーが始まる前に見たい」ということでしたが、結果的にツアーの振替公演と同時進行になりましたよね。
yo-ka:逆に今はツアーと重なって良かったなと思っています。ツアータイトルの「BRILLIANT MONOCHROME」というのが「BRILLIANT」と「MONOCHROME」という相反する言葉を組み合わせたもので、当初はそれを経て10周年に向かっていくという流れだったので、これまでのDIAURAの10年にまた光を当てることができるような内容にしたかったんです。そういう意図はあったんですけど、振替でグチャッとなっちゃって、当初の目的みたいなものが若干薄れかけていたところで、愚民党(FC)ワンマンが名阪あって。元々はセットリストを募集のつもりでしたけど、時間的なものとリリースも増えたことでそれはなしにして、リクエストだけもらうことにしました。そこで示されるものが現状のDIAURA のライブだったら「MONOCHROME」のゾーンに入っているような曲たちが多かったので、それを引っ張り出すことで「BRILLIANT MONOCHROME」の意図も明確に思い出したり。曲的にはすごく懐かしいものばかりでしたね。グチャグチャになっちゃいましたけど、それによって噛み合ったところはあったので良かったと思います。
5月3日、yo-kaさんの地元である郡山HIP SHOT JAPANから新たにツアーがスタートします。東京は初めての会場、日本橋三井ホールでの2daysですね。
達也:今は「BRILLIANT MONOCHROME」ツアーの振替公演をやっている途中ですけど、愚民党限定ライブをやった時に懐かしい曲を披露したのをきっかけに、振替公演でもそういう曲を混ぜるようになって。そういう感覚になったことがすごく有難いタイミングだなと感じています。『INCOMPLETEⅡ』を発売することによって、また新たな見せ方ができるだろうなと感じているので、久しく披露していなかった曲もきっと披露することになるんじゃないかなと。コロナの状況はどうなるかわからないですけど、より多くの人にまたDIAURAを観てほしいなと思うので、楽しみにしていてもらいたいですね。
翔也:10周年でこういう状況で、本当に持っているなと思うんですよね(笑)。今までも平坦ではなかったですし、何かの節目にこういうことが起きるなというのはあって。乗り越えられる人にだけ試練が与えられるってよく言うじゃないですか。いい加減にしろよとは思うんですけど(笑)、デカい波が来て、それに乗るのがDIAURAかなと思うので、あくまでネガティブにならずに、やっぱりやるからには根本は楽しむことを忘れちゃいけないなと思います。なので、あまり暗い話はせずに、やるからには楽しく回りたいなと思います。
佳衣:今までの10年もそうでしたけど、全て予定通りとか、何か確約されたものがあるわけでもなくて、色々と移り変わっていくものだと思うし、それってこれから先もそうだと思うんですよね。2020年はそれを一番感じる年でしたけど、その時その時、できることに注いでいくということも、このバンドの持っている力だと、去年すごく感じることができたので、ツアーもその時にできる最善のことを注いでいければなと思います。
yo-ka:10周年って言葉にするのは簡単ですけど、相当難しいことだったと思うんですよ。10年間でDIAURAが作ってきたもの、越えてきたものを、今こういうタイミングだからこそ改めてちゃんとこのバンドで噛み締めて回るツアーにしたいです。まだまだライブに来たくても来られない人はいっぱいいると思うんですけど、DIAURAが『INCOMPLETEⅡ』を出して、新曲「君へ黒の花束を」に込めた思いでもあるのは、どんな状況であってもDIAURAのライブ“独裁の庭”にDIAURAの音楽は響いているし、これからも絶やすつもりはないということ。皆にとって苦しい時だとは思うんですけど、DIAURAはこれからも存在していくし走っていくということを決めて、こういうリリースもツアーもあるので、また絶対どこかで会えるということを信じて楽しみにしています。そういう色々なものを持って、もちろん会えない人たちの思いも持ってツアーを回ろうと思います。それがDIAURAの10年だったと思うから。気持ちの面で、全員で駆け抜けたいなと思っています。
(文・金多賀歩美)
DIAURA
yo-ka(Vo)、佳衣(G)、翔也(B)、達也(Dr)
オフィシャルサイト
リリース情報
10th Anniversary BEST ALBUM『INCOMPLETEⅡ』
2021年4月7日(水)発売
(発売元:フォーラム/販売元:ダイキサウンド)
[初回盤](CD2枚組+DVD+豪華ブックレット仕様)NDG-16 ¥5,500
[通常盤](CD2枚組)NDG-17 ¥3,300
収録曲
[CD:DISC1]
- ENIGMA
- 月光
- 倒錯症レジスタンス
- Noah
- シャングリラ
- 砂の塔-Tower of Imitation-
- MALICE
- 断頭台から愛を込めて
- FINALE
- ENVY
- Hydra
- 獄彩
- マリンスノウ
[CD:DISC2]
- INFECTION
- アウェイクネスダイヴ
- CRIMINAL BEAST
- レゾナンス
- is DEAD
- ロストチャイルド
- [dignity]
- MOMENT
- FAKE[s]
- GARDEN
- SIGNAL
- 君へ黒の花束を
- BUG
- BLESS
[初回盤DVD]
- 「君へ黒の花束を」MV
ライブ情報
●DIAURA 10th Anniversary『INCOMPLETE EDEN』tour
5月3日(月・祝)郡山HIP SHOT JAPAN
5月4日(火・祝)仙台CLUB JUNK BOX
5月6日(木)青森Quarter
5月8日(土)札幌BESSIE HALL
5月9日(日)札幌BESSIE HALL
5月14日(水)新横浜NEW SIDE BEACH!!
5月16日(日)HEAVEN’S ROCK さいたま新都心VJ-3
5月21日(金)柏PALOOZA
5月29日(土)HEAVEN’S ROCK Kumagaya VJ-1
6月1日(火)名古屋ボトムライン
6月2日(水)名古屋ボトムライン
6月4日(金)福岡DRUM LOGOS
6月5日(土)福岡DRUM LOGOS
6月11日(金)ESAKA MUSE
6月12日(土)ESAKA MUSE
6月19日(土)日本橋三井ホール
6月20日(日)日本橋三井ホール