2025.01.18
DIAURA@神田スクエアホール
「The Holy Deringer」TOUR FINAL&14th Anniversary LIVE「The“Dazzling”Deringer」
「俺ら、こんなんじゃ嫌だなと、もっとできるぞということを4人で共有して始めたツアーでした。そこで掴めるものは微々たるものかもしれないけど、それを掴めなかったら、その先のデカいものも掴めないと思って」――これは1月18日、神田スクエアホールで行われたDIAURAの全16公演にわたるツアー「The Holy Deringer」最終夜かつ14周年記念公演「The“Dazzling”Deringer」の本編終盤にyo-ka(Vo)が発した言葉。
DIAURAは今、何度目かの変革期を迎えている。当夜のステージはそれが如実に感じられるものだった。昨今、yo-kaが「話す言葉も大切だとは思うけど、やっぱりバンドで音楽、ライブをやっているので」と度々口にしていたわけだが、その意思を改めて示した最初のステージが「愚民の日2024」であり、それを経て行われたのが本ツアー。そして、9月末公開のインタビューにおいて「表題曲でツアーの印象ってガラッと変わったりもするので、わかりやすくスゲー汗をかけるライブができるんじゃないかな」と翔也(B)が述べていたように、最新シングル『dazzle-消えた弾丸-』(2024年10月発売)を軸として、より削ぎ落とされたロックバンド“DIAURA”の姿が提示されることとなった。
当夜の幕開けを飾ったのは、ダークなミディアムナンバー「侵蝕」。この手の楽曲が1曲目を担うのは近年のDIAURAには珍しいようにも思えたが、オープニングSEから続く近いテンポ感の流れが実にスムーズかつ、〈正論と暴論も焦点を変えれば 正義となれるだろう〉の一節が示す通り、『dazzle-消えた弾丸-』で表現されるテーマと見事にリンクした、まさに納得の選曲と言えるものだった。
そこから、戦闘態勢にあった2023年のDIAURAが生み出した「ANTISM」、2024年のツーマンツアーで得た刺激とともに自らを見つめ直した末に完成した「dazzle-消えた弾丸-」という攻撃力の高い2曲を繰り出したのち、「THIS IS MY CULT.」へと繋いだ流れは、DIAURAの教義を示す象徴的な序盤ブロックだったと感じる。
もちろん、最新作に収録された表題以外の2曲についても、本ツアーおよび当夜を形作る重要なポジションを担っていたのは間違いない。曲の中間地点でいわゆる煽り曲の要素を持つ「SICKS」は、その構成からして様々な組み合わせ方ができそうなナンバーだが、当夜ではヘヴィーチューン「Caligula」からのグラデーションが見事であったし、〈この詩を敷き詰めてずっと待っていたから もっと君の声を聞かせていてね〉の一節で、yo-kaがフロアを見渡しながら囁くように歌ったシーンも印象的。
「dazzle-消えた弾丸-」と地続きの物語でありながら、煌びやかなサウンドとキャッチーなメロディが光る「絶対零度」は、本編中盤ブロックにおいて、活動初期のダークなナンバー「歪む球体」に次いで披露されたことで強いコントラストを生みつつ、「『The Holy Deringer』最後の夜にとことん愛し合おうぜ! 全員で一つになろうぜ!」(yo-ka)と、「After lament」へ繋ぐドラマティックな展開を作り上げた。
「ドラスティックダイヴ」を皮切りに突入した本編最終ブロックでは、再びの煽り曲「DARK AGE」の投下でyo-kaと佳衣(G)がフロアへ降りる場面もありながら、白熱のシーンを展開。続く「新世界」「自壊」で描かれた生と死、〈誰かが笑って誰かが泣いていて そうやって世界は今日も繰り返す〉といったリリックをはじめ、そこにはDIAURAが描くものの一貫性があり、歌詞に〈弾丸〉を含みつつ存在意義や未来を示す「TRIGGER」で本編を終えたのだった。
アンコールでは、達也(Dr)、翔也、佳衣が順に各ソロセクションのプレイを披露し、フロアと威勢の良い掛け合いを繰り広げるという、本ツアーからの新たな試みが見られた点が、大きな変化の一つだった。それは、このレポート冒頭に記した現在のDIAURAが目指すライブの形を具現化するうえでの一要素だろう。なお、このセクションで翔也が「好きな言葉が二つあります。終わり良ければすべて良し。生きてるだけで丸儲け。声を出すことがすべてではないですが、最大限出して終わりたいと思います。後ろまで届けるから聞いとけよー!」と叫んだシーンも印象深い。
これまでのDIAURAのステージでは各メンバーのMC後、演奏に入ることが多かったが、今回の形では当然、熱量を上げたその勢いのまま楽曲へ繋ぐことが可能となるわけで、楽器陣に続いてyo-kaが再登場すると、「FAKE[s]」「UNCONTROL BIAS」とハードナンバーを連投。さらに、ダメ押しの鉄板曲「MASTER」ではyo-kaにマイクを向けられた達也が、「愚民ども! かかってこい!」と絶叫する場面もありながら、呼応するオーディエンスと共にあまりにも美しい熱狂の空間を描き出した。
「一つのことを14年続けるって、無理だろうなと昔は思っていました。でも、なんで今日を迎えられたんだろうと考えてみたら、DIAURAというバンドはネガティブな世界を描くことも多いですが、我々なりの求める光があるから描くネガティブだと思っていて。これまで全て捨てたくなったこともなかったとは言えないけど、陰気なバンドだからこそ描く光を、この瞬間、奇跡みたいな現実を離したくないなと思っています。この先、苦しいこともあると思います。でも、DIAURAなりの光をなくさずにいたい。こんなちっちゃい光を、どうかお前たちにとっても、目印にしてもらえれば嬉しいなと思います。14年間、DIAURAで生きてきました。これからも生きていくつもりです。そんなDIAURAの光を込めた歌を聴いてください」(yo-ka)
この言葉から奏でられたのは「Garden of Eden」。眩い光の中、フロアに手が揺れ、〈奇跡の星降るこの場所で新しい/素晴らしい世界を描こう〉と温かなメッセージがリアリティをもって鳴り響けば、「これからも共に光射すほうへ」(yo-ka)とDIAURAの始まりの曲「失翼の聖域」が当夜のラストナンバーとなったのだった。
最後にyo-kaが「さっきたくさん話してしまったので、一言だけ。愛してます。ありがとう」と告げると、「回ってきたツアーは充実していたし、まだまだやれるなという気持ちも溢れたし…スゲー楽しかったです! 今年もよろしく!」と達也。そして、「ツアー初日に、もう誰にも遠慮しねーと話したんですけど、改めて思うのは、自分に嘘はつきたくない。だから、自分がカッコいいと思ったことだけを追求していくので、2025年もよろしく!」と翔也が述べ、「昔はツアーが終わるのが寂しい、名残惜しい気持ちが強かったけど、今は次が始まる楽しみのほうが強くて。それは愚民たちと良いツアーができたからだと思います。そして14歳を迎えました。まだ義務教育は終わっていません。まだまだ皆と一緒に成長していけたらなと思います。自分が音楽をこうして届けている理由って、この景色だなと。いつも言っていますが、変わらずに変わっていこうと思います」と佳衣が締めくくった。
DIAURA が「The Holy Deringer」の終着地で見せたのは「The“Dazzling”Deringer」。Dazzlingとは「眩い」「華麗な」といった意味を持つ。彼らが闇の中で放つ一筋の光が、より多くの人々を導く道標となることを願ってやまない。また、彼らは4月2日にニューシングル『Ephemeral』をリリース、その作品を引っ提げ、4月19日より全19公演にわたる全国ツアー「Ephemeral sphere」を開催することが新たに決定した。バンドとして何度目かの変革期、その大きな一歩となった「The Holy Deringer」ツアーを経て、彼らが次にどんな景色を見せてくれるのか、期待したい。
◆セットリスト◆
01. 侵蝕
02. ANTISM
03. dazzle-消えた弾丸-
04. THIS IS MY CULT.
05. CRIMINAL BEAST
06. Imperial Core
07. Caligula
08. SICKS
09. 歪む球体
10. 絶対零度
11. After lament
12. ドラスティックダイヴ
13. DARK AGE
14. 新世界
15. 自壊
16. TRIGGER
En
01. FAKE[s]
02. UNCONTROL BIAS
03. MASTER
04. Garden of Eden
05. 失翼の聖域
(文・金多賀歩美/写真・尾形隆夫)
【リリース情報】
●New Single『Ephemeral』
2025年4月2日(水)発売
[初回盤](CD+DVD)NDG-34 ¥2,200(税込)
[CD]
01. Ephemeral
02. Optimal fiction
[DVD]
「Ephemeral」MV
[通常盤](CD)NDG-35 ¥1,650(税込)
[CD]
01. Ephemeral
02. Optimal fiction
03. Doomsday
【ライブ情報】
●DIAURA ONEMAN TOUR2025「Ephemeral sphere」
4月19日(土)HEAVEN’S ROCK さいたま新都心VJ-3
4月20日(日)HEAVEN’S ROCK 宇都宮VJ-2
4月26日(土)柏PALOOZA
4月27日(日)新横浜NEW SIDE BEACH!!
5月10日(土)郡山HIP SHOT JAPAN
5月11日(日)仙台MACANA
5月15日(木)青森QUARTER
5月17日(土)札幌SPiCE
5月18日(日)札幌SPiCE
5月24日(土)福岡DRUM Be-1
5月25日(日)福岡DRUM Be-1
5月31日(土)金沢AZ
6月1日(日)新潟GOLDEN PIGS BLACK
6月7日(土)名古屋Electric Lady Land
6月8日(日)名古屋Electric Lady Land
6月14日(土)OSAKA MUSE
6月15日(日)OSAKA MUSE
6月21日(土)下北沢シャングリラ
6月22日(日)下北沢シャングリラ
●翔也生誕祭「Mr.STUPiD 2025」
1月31日(金)Spotify O-WEST
●佳衣生誕祭「dictatorial【K】ingdom Ⅹ」
2月7日(金)Spotify O-WEST
●達也生誕祭「Joie de Vivre 2025」
3月28日(金)Spotify O-WEST