2024.09.03
DIAURA@Zepp Shinjuku
「愚民の日2024」

2024年も遂にこの日がやって来た。去る2013年、ファンクラブ「愚民党」が正式に発足されたことを機に、ファンの呼称である「愚民」の語呂合わせで9月3日を「愚民の日」とし、2016年以降はこの日にワンマンライブを行うことが恒例となったDIAURA。12回目の記念日となった2024年は、DIAURA初のZepp Shinjukuがその舞台となったわけだが、2014年9月3日に敢行した新宿ステーションスクエアでのゲリラライブからちょうど10年、また、純粋なワンマン公演という形になった最初の「愚民の日」である2016年の新宿BLAZE以来8年の時を経て、再びこの日を新宿という地で迎えることとなったのも感慨深い。

そんなDIAURAと愚民たちにとって1年で最も大切な日。新宿の繁華街や、メンバーがステージに向かう姿で構成されたオープニング映像を経て、SEと共に達也(Dr)、翔也(B)、佳衣(G)が順に姿を現し、yo-ka(Vo)が巨大フラッグを高らかに掲げて登場すると、一際大きな歓声が鳴り響いた。オーディエンスの声を煽るようなSEによって既に準備運動万端のフロアに対し「独裁の庭、Zepp Shinjukuへようこそ!」(yo-ka)と、DIAURAの原点「DICTATOR」の堂々たるパフォーマンスでスタートを切った。「シンプルにカッコいいDIAURAを、これぞDIAURAというものを叩きつけてやろうと」とは、当夜を前にSNSに投稿された動画の中でyo-kaが発した言葉だが、早くもそれを存分に感じられる、何とも痺れる幕開けとなったのだった。

yo-ka

当夜は本編4ブロック+アンコールという構成で展開され、本編の内容を大きく分けると、序盤では起爆力の高いナンバーを、2ブロック目では大型LEDビジョンを活かした視覚的にも魅了する演出を、3ブロック目ではバラードナンバー、4ブロック目にライブチューンといったセットで繰り広げられていった。無論、それはあくまでステージ運びの観点で見た振り分けであって、その展開を踏まえてチョイスされる楽曲たち、流れ、楽曲同士の関係性などによって、DIAURAから愚民たちへ向けた愛情が最大限に表現されるのが、この「愚民の日」というステージだ。

例えば、序盤に供された「ANTISM」は戦闘態勢にあった2023年のDIAURAが生み出した攻撃力の高いナンバーであり、「君へ黒の花束を」は2021年発表の10周年記念ベスト盤『INCOMPLETEⅡ』に新曲として収録された壮大かつ力強さに溢れた楽曲で、曲調としてのベクトルは異なるが、いずれも挑み戦い続けるDIAURAの意志が込められたもの。また、突き上げる拳と共に特大のOiコールが響いた、現時点での最新シングル表題曲「ヴェノミー」は〈共に堕ちてくれますか〉と、望むのならDIAURAの全てをあげると歌う、言わば愚民たちへのラブソングだ。

佳衣

また、時系列は前後するが、2ブロック目の入口となったのが、美術家の梅津庸一とのコラボレーションで生まれた「unknown teller」(国立国際美術館で開催中の特別展「梅津庸一 クリスタルパレス」にてヴィデオ・アートとして展示/会期:2024年6月4日〜10月6日)。梅津が手掛けた映像と共にDIAURAと現代美術の融合を魅せたこの場面は、良い意味で異質な存在感を放ち、一気に観る者を惹きつけるフックとなった。さらにその後、DIAURAのステージとしては珍しくMVを背景にしたプレイが続いたわけだが、中でも「TRIGGER」は2013年発表の楽曲であることから、バンドの歴史をも感じさせる1シーンとなったのが印象深い。

中盤のバラードブロックの表現も実に見事で、佳衣が紡ぐアルペジオから始まった「月光」では、薄暗いステージに白色のスポットライトが差す、まさに月明かりを思わす景色の中、〈何を夢見て僕たちは ここでもがいているのだろう〉〈何も持たずに僕たちは どこへ歩いていくのだろう〉と心の葛藤を歌い、達也によるスネアのリズムがフェードアウトしていく余韻のある曲終わりから、一見バッドエンドでありながら〈僕らは自由になる〉と、人生は絶望だけではないことをエモーショナルに歌い上げる「断頭台から愛を込めて」へ繋いだ場面は胸を打つものだった。

ここで安定感のあるプレイを見せていた翔也の佇まいも印象的で、さらに鍵盤の音色とyo-kaによる歌のみでの冒頭からオールインで一気に開ける「自壊」は、矛盾を抱えながら生きていかなければならないことを綴った、先の2曲の歌詞との関連性はもちろん、バラードと次なるライブチューンブロックを繋ぐ役割を担うという、あまりにも完璧な流れを作り出したのだった。

翔也

「年に一度の『愚民の日』、俺たちだけに許された日、この独裁の庭を楽しみにしていたよ。きっとお前たちもそうだろ? 溜め込んでいるもの全部吐き出せ! 俺たちだけの、この独裁の庭で今夜はとことん楽しみましょう」――ここまで煽りはあったものの、MCとしての言葉を発していなかったyo-kaが、本編最終ブロックを前にこう告げると、この日に向けて8月に配信リリースした「HELLTOPIA」をプレイ。まさに独裁の庭を描いたロックナンバーで愚民たちへの温かなメッセージを届け、オーディエンスとの掛け合いを楽しむ「ドラスティックダイヴ」、フロアに横モッシュの光景が生まれる「STARRY INFERNO」と、昨今のステージ常連となっているライブチューンを。そして「愚民党に。いや、この独裁の庭に。いや、お前たち全てに栄光あれ!」(yo-ka)と、「愚民党賛歌」をもって本編を締め括った。

アンコールでは当夜のタイトルロゴをバックに、10月2日にリリースを控えるシングル『dazzle-消えた弾丸-』のc/w曲「絶対零度」を初披露。〈覚悟は決めていた そうだろう?〉と印象的なリリックが響けば、次いで昨年の「愚民の日」に向けて制作された、DIAURAというバンドを端的に表す「PROVE」、〈この庭から愛を叫び続けるよ〉と歌う「GARDEN」と、より強く、より深く、楽曲を通して愚民たちへの愛情を示した。そして、「どんな時であっても、思いきり狂って、思いきり暴れて、思いきり楽しむ、それがこの独裁の庭。俺たちにしかできないライブをしようぜ。DIAURAにとって大切な曲を贈ります。この先も、どこまでも共に行こうという思いを込めて」(yo-ka)と、彼らの始まりの曲「失翼の聖域」を、さらに鉄板曲「MASTER」での白熱の光景と愚民たちの大合唱をもって、2024年の大切な記念日はラストシーンを迎えたのだった。

達也

最後にyo-kaが「こんな日だから、心から叫ばせてくれ。愛してるぜ、愚民ども!」と告げ、ステージを後にすると、「大事な日になったと思うし、これからもDIAURAになくてはならない日だと思います。いつかのライブで『DIAURA最高!』と叫んだことがあったけど、まさに今、そういう気持ちです。DIAURA最高! そして愚民最高!」と佳衣。そして、「ライブが終わったばかりで感情をまとめるのが難しいですけど、一言だけ言わせてください。また来年なー!」と翔也が叫べば、「こうして2024年も皆とこの日を迎えられたことが何より大事だなと。大切な1日を愚民の皆と過ごせて本当によかったです」と達也が締め括った。

なお、比較的これまでのDIAURAのステージより言葉数が少なかったことは、その思いを言葉ではなく楽曲で伝えたいという彼らの強い気持ちの表れだったのではないだろうか。実際、ここまで記してきた通り、バンドの意志と愚民たちへの深い愛情が色濃く表れた、まさに彼らにとってのヘルトピア=理想郷だったと言えよう。

DIAURAは10月2日にニューシングル『dazzle-消えた弾丸-』をリリースし、その最新作を引っ提げ、11月2日より全16公演にわたる全国ツアー「The Holy Deringer」を開催。ファイナル兼14周年アニバーサリーライブが年明け1月18日、神田スクエアホールにて行われる。また、12月25日には渋谷ストリームホールでのクリスマス公演、さらに12月31日は渋谷duo MUSIC EXCHANGEにてカウントダウンライブの開催も決定している。相変わらず怒涛の展開が控えているわけだが、その全てに期待を寄せながら、これから先も9月3日はこの独裁の庭で会おう。

◆セットリスト◆
01. DICTATOR
02. ANTISM
03. 赤い虚像
04. REM
05. unknown teller
06. 君へ黒の花束を
07. ヴェノミー
08. TRIGGER
09. 月光
10. 断頭台から愛を込めて
11. 自壊
12. HELLTOPIA
13. ドラスティックダイヴ
14. STARRY INFERNO
15. 愚民党賛歌

En
01. 絶対零度
02. PROVE
03. GARDEN
04. 失翼の聖域
05. MASTER

(文・金多賀歩美/写真・尾形隆夫)


【リリース情報】
●New Single『dazzle-消えた弾丸-』
2024年10月2日(水)発売
(発売元:株式会社フォーラム/販売元:ダイキサウンド株式会社)

[初回盤](CD+DVD)NDG-32 ¥2,200(税込)
<CD収録曲>
1. dazzle-消えた弾丸-
2. 絶対零度
<DVD収録曲>
「dazzle-消えた弾丸-」MV

[通常盤](CD)NDG-33 ¥1,650(税込)
<CD収録曲>
1. dazzle-消えた弾丸-
2. 絶対零度
3. SICKS

【ライブ情報】
●yo-ka聖誕祭「Evil’s Night Party2024〜grotesque gothic〜」
10月31日(木)Spotify O-WEST

●ONEMAN TOUR 2024「The Holy Deringer」
11月2日(土)HEAVEN’S ROCK さいたま新都心VJ-3
11月4日(月・祝)柏PALOOZA
11月8日(金)F.A.D横浜
11月10日(日)HEAVEN’S ROCK 宇都宮VJ-2
11月16日(土)名古屋SPADE BOX
11月17日(日)名古屋SPADE BOX
11月23日(土・祝)福岡DRUM SON
11月24日(日)福岡DRUM SON
11月29日(金)仙台Rensa
12月1日(日)郡山#9
12月7日(土)札幌PLANT
12月8日(日)札幌PLANT
12月10日(火)青森QUARTER
12月14日(土)大阪BANANA HALL
12月15日(日)大阪BANANA HALL

TOUR FINAL
14th Anniversary LIVE「The“Dazzling”Deringer」
2025年1月18日(土)神田スクエアホール

●「20241225〜聖なる夜、独裁の庭で〜」
12月25日(水)渋谷ストリームホール

●「Dictatorial Countdown2024→2025」
12月31日(火)渋谷duo MUSIC EXCHANGE

●翔也生誕祭「Mr.STUPiD 2025」
2025年1月31日(金)Spotify O-WEST

●佳衣生誕祭「dictatorial【K】ingdom Ⅹ」
2025年2月7日(金)Spotify O-WEST

●達也生誕祭「Joie de Vivre 2025」
2025年3月28日(金)Spotify O-WEST

DIAURA オフィシャルサイト