2025.09.20-09.21
Sadie presents「THE UNITED KILLERS」@JAPAN PAVILION HALL A

2024年春、東京・大阪での復活公演「THE REVIVAL OF SADNESS」をもって約8年半ぶりに再始動を果たしたSadie。同年、2作の再録アルバム『THE REVIVAL OF SADNESS』『THE REVIVAL OF DARKNESS』をリリースしたほか、9月には主催イベント、2025年1〜4月に20周年記念ツアー、3月に日比谷野外音楽堂での20周年ライブ、6月にFC限定東名阪ツアー開催と、精力的な活動を展開している。

そして、このたびJAPAN PAVILION HALL Aにて行われたのは、再始動後二度目となる主催イベント「THE UNITED KILLERS」。昨年は9月21日に同会場でlynch.とキズを迎えて開催され、パビリオンホール史上最高入場者数を記録したわけだが、今年は9月20、21日の2days公演で、第一夜にはlynch.、DIAURA、第二夜にはWaive、甘い暴力が参戦した。

改めて記すと、Sadieが活動休止前ラストライブを実施したのが、10年前の2015年9月21日。また、「THE UNITED KILLERS」という冠は、休止以前の活動時から用いられてきたものだ。すなわち、この日に本公演を行うことは、過去に刻まれた喪失の悲しみを現在の活動によって昇華し、未来へと繋げる、彼らにとって極めて象徴的な意味を帯びたものなのだ。無論、ここに集結した面々も皆、未来を見据えて今を生きる者たちであることは間違いない。

lynch.
葉月(lynch.)

“旧友”と肩を並べることになった第一夜。「Sadieの戦友、lynch.です」という葉月(Vo)の挨拶もあった通り、同期のlynch.がトップバッターを務めた。昨年に続き唯一の連続出演となる彼らもまた20周年イヤーを爆進中であり、翌日に大阪で自身の主催イベントが控える中での参加となった(9月27日の名古屋公演にはSadieが出演)。

「GALLOWS」に始まり、「MIRRORS」「Pulse_」といった出し惜しみないキラーチューンの猛攻で瞬く間にフロアを白熱の渦へと導き、ラストには〈はじめようか ミライを〉と歌う最新曲「BRINGER」で抜群の一体感を生み出した。「Sadieも復活したし、DIAURAも長いし、今もしかして最高じゃない!?」――そんな言葉も飛び出しながら、百戦錬磨のライブバンドにふさわしい圧巻のステージを繰り広げた。

DIAURA
yo-ka(DIAURA)

二番手を担ったDIAURAは、現在活動15年目。Sadie、lynch.のやや下の世代にあたるが、この夜をSadieが“旧友”とのステージと称したのは、DIAURAとも過去に交わりがあったからこそ。彼らは2015年の「THE UNITED KILLERS」にも出演しており、実に10年の時を超えて邂逅を果たした意義は大きい。

yo-ka(Vo)がフラッグを高らかに掲げ、彼らの原点とも言える「DICTATOR」での堂々たるパフォーマンスで幕開け。DIAURAを指し示す楽曲を軸に、新曲「JUDAS」を含むダンスナンバーや鉄板曲「MASTER」など、見事な起承転結を描くDIAURAらしい戦い方だった。「Sadie、lynch.と2025年の今また音楽でぶつかり合えるの、これ以上ない最高のこと」とyo-kaが述べたことも記しておきたい。

Sadie
真緒(Sadie)

当夜のSadieのステージは、「Grieving the dead soul」での凄まじい轟音でスタートを切り、早くも「生きてんのか!?」という真緒(Vo)の叫びが響き渡った。色で言えば“黒”を象徴する3バンドが揃ったからこそ、あえてカラフルなアッパーチューン揃いのメニューで挑んだのがこの日の特徴であり、序盤では「VIRTUAL FAKEMAN」、中盤では「HOWLING」、終盤では「bleach」が特にその役割を担っていたと言えよう。

中でも、オリジナルアルバムとしては休止前最後の作品となった『GANGSTA』収録の「HOWLING」は、ヘヴィーサウンドとダンスミュージックを融合させ、当時のSadieに新たな風を吹き込んだ1曲。この日のステージにおいてもフロアを大きく揺らし、「Ice Romancer」と「MAD-ROID」の間に配されたことで、絶妙なフックとなった。

剣(Sadie)
美月(Sadie)

スタイリッシュかつ疾走感溢れる「bleach」を皮切りに最終ブロックに突入すると、激しさと叙情性が共存する「クライモア」を経て、「ありったけの声をここまでぶつけてくれ!」という真緒の言葉から、ラストに届けられたのは「陽炎」。美月(G)と背中合わせに歌い、そこへ剣(G)が加わり、続いて亜季(B)に寄り添い、さらには景(Dr)と向かい合う――真緒がメンバー全員と交わる印象的な場面もありながら、クライマックスを迎えた。

亜季(Sadie)
景(Sadie)

アンコールでは、lynch.の葉月、DIAURAのyo-kaを迎え、真緒が「はっちゃん」「ようちゃん」と親しみを込めて呼びながら、和やかな会話が繰り広げられたのち、Sadieの代表曲「迷彩」をセッション。3人のヴォーカリストによる咆哮が交錯し、第一夜は幕となったのだった。

甘い暴力
咲(甘い暴力)

Sadieにとって先輩・後輩に位置するバンドが、関西ヴィジュアルシーンという共通項のもとに集結した第二夜。まずは後輩・甘い暴力が先陣を切り、初っ端からフロアに拳ヘドバンを巻き起こす激しさと、歌メロのキャッチーさでオーディエンスを一気に引き込んだ。

事前にイベントタイトルの意味を真緒に尋ねたという咲(Vo)が、「バンドの熱量でぶっ殺し合いを頼まれたんだよ!」と明かし、この日のメニューに「ミナゴロシ」を組み込んだのはさすがの一言。さらに寸劇の中でSadieの「Ice Romancer」のさわりを演奏するサプライズもありながら、最後には「本気で生きたって、適当に生きたって、真面目に生きたって、等しく終わりは来る。じゃあどうするか、正しく死ぬこと」と語り、メッセージ性の強い「どうせ死ぬ」で渾身のパフォーマンスを。まさに彼らの気概が強く伝わるステージとなった。

Waive
田澤孝介(Waive)

「初めましての皆さんに音楽を届けられるということで、やる気満々で来ました」と、貪欲さを覗かせたのは田澤孝介(Vo)。Waiveの解散と同じ2005年にSadieが結成されたことから、これまで共演の機会はなく、今回が初の対バンとなったことはあまりに感慨深い。

中盤では、田澤の圧倒的な歌唱力が際立つ「spanner」が届けられたわけだが、本イベントにおいてバラード曲を披露したのはWaiveのみ。無論それは彼らの強みゆえの選択にほかならない。また、杉本善徳(G)と田澤によるWaive名物の漫談(?)で場内に笑いを誘いつつも、「Sad.」で一気にスイッチをオン。続いて鉄板のライブチューン「ガーリッシュマインド」、代表曲「いつか」を畳み掛け、ラストスパートを駆け抜けた。

Sadie
真緒(Sadie)

前夜とは逆に、世代もカラーも異なるバンドとの共演となった第二夜のSadieは、硬派に自分たちのど真ん中を示す王道の構成で展開。1曲目から「迷彩」をぶっ放ち、会場全体を一瞬にして掌握してみせた。つい先ほど、甘い暴力による演奏があった「Ice Romancer」の本家ももちろん披露(後のMCによれば、さすがにこの日はやりにくかったとのこと)。

攻撃的なサウンドと悲哀を帯びたメロディの「Rosario-ロザリオ-」、トリッキーなリズムパターンと様々な声色を使い分けるヴォーカルアプローチが光る「Payment of vomiter」、ステージが真っ赤に染まる中、ドラミングを合図にバックライトが瞬き、バンドインする演出がドラマティックだった「Jealousy」と、中盤では魅せるナンバーが並んだ。

剣(Sadie)
美月(Sadie)

前夜では1曲目に供された「Grieving the dead soul」が、この夜は最終ブロックの入口を担い、ドラム台を囲むように剣、美月、亜季、景の楽器陣が向かい合ってプレイする光景が見られれば、フロアにヘドバンの絶景を生み出した「サイコカルチャー」では、フロント4人がセンターに集結する場面も。「お前たちの居場所はここだ!」と真緒が叫び、とてつもないロングトーンのシャウトを響かせたシーンは圧巻だった。そしてラストを飾ったのは、ファンに捧げるメッセージソング「a holy terrors」。〈独りじゃないよ 傍にいてるから 遠く離れてても〉の一節をアカペラで歌い上げた場面は、忘れがたい余韻を残した。

硬派にステージングを貫いた本編に対し、アンコールではやはり空気が一変。当日もらったというWaiveのTシャツに着替えて登場した真緒が、甘い暴力の咲を「さきぽん」、Waiveの田澤を「たかちゃん」と呼び、関西人同士ゆえか第一夜以上にフニャフニャなトークで会場を和ませた。最後はSadieの「陽炎」をセッションし、3人のヴォーカリストがセンターで肩を寄せ合いながらラスサビを歌い上げるという、何とも愛らしい光景をもって幕を下ろした。

亜季(Sadie)
景(Sadie)

「昨日は旧友と、今日は関西の新しい絆が生まれた、最高の時間でした。それぞれの人生をこれからも見届けてください」との真緒の言葉をもって、この二日間は締めくくられたわけだが、Sadieの今後の動向として、様々な情報が発表された。セルフカバーアルバム三部作の完結編となる『THE REVIVAL OF MADNESS』、日比谷野外音楽堂での20周年ライブを収めたBlu-rayが、12月24日に同時リリース。さらに、2026年1月から3月にかけては全20公演にわたるツアー「Sadie Tour 2026 DOUBLE DECADE -mode of madness- / -mode of decade-」、3月18日にはZepp Shinjukuにて21周年ライブ「BLACK FUNERAL」を行うことも決定した。未来の約束はひとつでも多いほうがいい。それが明日への希望になるのだから。

(文・金多賀歩美/写真・Jun Tsuneda)


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