Sadie

あの日に誓った“重なり合う未来”。原点回帰と新生を軸にSadieの新章が今、幕を開ける――

2015年9月21日のZepp Tokyo公演をもって10年にわたる活動に一旦のピリオドを打ったSadieが、2023年6月7日、約8年の歳月を経て再始動を発表した。2024年を迎え、いよいよ再録アルバム『THE REVIVAL OF SADNESS』のリリースと、東阪での復活公演が目前に迫る今、実に9年5ヵ月ぶりとなるVifインタビューを決行。再び歯車が大きく動き出すきっかけとなった出来事から今現在の思い、そして活動前期の代表曲12曲を新たに生まれ変わらせた最新作について5人に話を聞いた。


パズルのピースがガチッとハマった感じ

真緒

活動再開おめでとうございます!

全員:ありがとうございます!

Vifのインタビューは2014年9月のアルバム『GANGSTA』以来、コメント動画での登場を含めると2015年5月のシングル『Voyage』以来となります。2015年9月21日Zepp Tokyoでの活動休止前ラストライブ「forever and ever…」から8年余が経過した実感はありますか?

亜季:もちろん。

剣:実感はあります。メンバー各々活動していて、僕で言えばもう一つのバンドRAZORが今年で8年目になるので、この間を考えればなかなかに濃い8年余になりますね。

真緒:僕はあまり実感がないですね。月日が経っても、顔を合わせたらその当時のまま再生されている感じなので。青春を共に過ごした仲間の強みです。

美月:実感は不思議とないかもですね。もうそんなに月日が流れているんだってのが率直な感覚で。常に今を懸命に過ごしてきたので、改めて数字として見るとビックリしますね。

景:自分的にもそこまで実感はないですね。でも、現在2024年で、やっぱりその数字だけ見ると、なんかすごく感じます(笑)。

(笑)。2022年6月7日開催の「真緒Birthday Live 2022 哀シミノ讃歌-Hymn of sadness and die-」@新宿ReNYにて、3曲ではありましたが景さんが7年ぶりにドラムを叩いて、最後に、観に来ていた剣さんと亜季さんも含めて、7年ぶりに5人がステージに並びました。あの公演が再始動の大きなきっかけになったのでしょうか?

真緒:そうですね。もちろんタイミングを図りながらSadieの再演は常に考えていました。だからこそSadieの音楽を絶やさないように、自身でも誕生日の唯一のワガママとして「哀シミノ讃歌」をやらせていただいていて。でも、バンドとしてのSadieは5人が揃わないとやる意味がないので、景君の動きは引き金となりました。そして、あの時5人が活動休止以降初めてステージに並んだ衝動は、さらに始動への行動に意欲が湧きましたね。

景:あの辺りから再始動の兆しが出てき始めたので、すごく大きなきっかけになったのは確かですね。

亜季:水面下のことが、水面に現れた日ではある。

剣:あの日久しぶりに全員と会って、バンドを組み始めた初心に近い感覚というか。それと懐かしさが混在したような心境でした。

美月:あの日ライブ後に、5人だけで話し合ったんですよね。終わらせるのか続けるのか、その意志確認ができました。

ちなみにあの日、本来は5人でステージに並ぶ予定はなかったんですよね?

真緒:活動休止以来、同じ空間に5人がいたことがなかったんです。なので、偶然なのか必然なのか、あのタイミングは嬉しかったですし、押し付けがましいかもしれませんが、ご来場いただいたファンの方々に自分の生き様や考え、思いを共有したくて色々と話をさせていただいたところからの流れでした。見えない未来かもしれませんが、今あるものに向き合うのがポリシーでもありますから。

剣さん、亜季さんとしては、急にステージ上の真緒さんから呼ばれて、率直にどんな心境でしたか?

剣:単純に、ステージに上がってええのかなぁ?っていう感じがありました。上がる予定は全くなかったので(笑)。

亜季:アイツ(真緒)、無茶苦茶言うなと。

(笑)。出演していた美月さん、景さんとしてはいかがでしたか?

美月:この二人出て大丈夫なん?っていうのが、まず一番に思ったことで(笑)。でも実際5人が並んで、久々な気持ちも、しっくり来る気持ちもある不思議な感情でしたね。

景:上手く説明できないですけど、当時の感覚が一気に蘇ってきて、パズルのピースがガチッとハマった感じでした。ファンの皆の声、この立ち位置、この5人。Sadieだって。

グッとくる言葉です…。真緒さんは「正直、Sadieをもう一度やるのは無理かもと諦めかけていた時に、景ちゃんがドラムを叩くと言ってくれた」と話していましたが、遡ると、その時点で真緒さんの胸の内ではここから動かしていこうという思いが強くなったのでしょうか?

景:そうなら嬉しいですね。

真緒:常に再開の念は抱いていましたけど、5人が揃わないと絶対にやらないという意志だけはあったので、やっぱり景君の意志はより強い引き金となりましたね。

「Sadieってええな」という景さんの言葉と涙も印象的でしたが、今振り返ってみて7年ぶりのあの日のステージはいかがでしたか?

景:実際自分はSadieから離れていた生活をしていたので、改めて純粋にSadieに触れることになったんですよね。たくさんの思い出や、メンバーとファンの皆様の優しさ、温かさに触れて、素直に出たのがあの言葉でした。

ちなみに、本編のドラムを務めたRyoさん(for severe addicts only、ex.アヲイ)が、Sadieのメンバー5人が並んだステージ上で「また観たいですっ…!」と号泣していたのも忘れ難いです。

真緒:Ryo君は前事務所の直系の後輩でもありましたし、見て来たものが多かったんだと思います。

美月:そういう意味では、彼が一番近くで僕らを観てくれたのが嬉しかったですね。

剣:直属の後輩として一番近くで見てくれていただけに、あれはやっぱりグッとくるものはありましたね。

真緒:力を貸してくれた彼には、敬意と感謝の思いでいっぱいですね。涙脆いところもかわいいです(笑)。

亜季:景とRyoの関係性が微笑ましかった。

景:Ryoはすごくかわいい後輩で、いつもSadieを陰ながらとても応援してくれていて、あれは自分にとって“愛の告白”だと思っています(笑)。もちろん、愛の告白に応えますよ。

「ただいま」を言わせてください

そして1年後の2023年6月7日、「真緒 Birthday Live 2023 哀シミノ讃歌 -Hymn of sadness and die-」@新宿ReNYは、亜季さんと景さんが出演し、美月さんと剣さんも来ていました。真緒さん以外は、2022年、2023年でメンバーがSadieの楽曲を演奏する姿を客観的に観る機会になったわけですが、どんな感覚でしたか?

剣:懐かしさと、Sadieの楽曲の良さを改めて感じましたね。

美月:僕は2022年まで毎年「哀シミノ讃歌」に出演させていただいていたので、2023年に、完全なSadieではないにせよSadieを歌う真緒さんを初めて客観的に観ることができて、感動でしたね。カッコよかったです(笑)。

真緒:ありがとうございます(笑)。

景:僕は2022年のライブはアンコールのみの出演だったので、本編は観ていたんですけど、Sadieをそれぞれが大切にしてくれている気持ちがダイレクトに伝わってきて、すごく嬉しかったし震えましたね。

活動休止以降、真緒さんの誕生日は年に一度Sadieの楽曲を演奏する日としてきましたが、やり続けてきて良かったなと特に実感するのはどんな瞬間でしたか?

真緒:悲しいワードになるかもしれませんが、人は忘れることを憶えます。だけど、僕らが作って、育てていただいたファンの皆様との大事な楽曲、思い出を僕自身は忘れることができない。ただその思いを形にしただけです。こうして再開できたこと、自分自身がやり続けて、ファンの方々がこの意志に賛同してくださったことは本当に良かったと思います。

2023年の「哀シミノ讃歌」で本編後に5人がステージに集結し、Sadieの活動再開が正式発表されました。発表時は緊張感、ワクワク感、どんな思いが一番大きかったですか?

真緒:あの時はそれらの気持ち全部ひっくるめてありました。ただ、今は楽しみでしかないですね。「ただいま」を言わせてください。

剣:やっぱりファンの皆をかなりの時間待たせてしまったので、やっと復活を直接お知らせできたことが良かったなと思います。妙な緊張感はありましたね。

美月:正直、緊張感がすごかったです。僕自身、普段そこまで緊張するタイプではないですけど、この日は特別緊張しました。

景:何よりこの長い時を待っていてくれたファンの皆の思いを、胸に突き刺さるほど感じました。「随分待たせて本当にごめん、本当にありがとう」と、感謝の気持ちをずっと頭の中で唱え続けていました。

亜季:長い間待たせてごめん。

この5人が集まれば自然とSadieになる

美月

この度リリースされるアルバムタイトルであり、再始動ライブのタイトルでもある『THE REVIVAL OF SADNESS』。この言葉に行き着いた経緯を教えてください。

剣:哀しみはSadieのコンセプトであり、そのままの意味ですね。

景:あの活動休止からの復活、あの時からもう一度生きたい、Sadieの原点でもある哀しみ、痛み、そういった思いが込められた言葉となります。

真緒:時が経ち、時代も変わり、さらなる自分たちの意識として、再生をテーマにしました。

再始動一発目に世の中に出す楽曲を「迷彩」にしたのは、メンバーの皆さんの中で満場一致という感じでしたか?

亜季:満場一致だったと思う。

美月:自分たちにとっても「迷彩」は特別なので、満場一致でしたね。

真緒:狭い世界かもしれませんが、ありがたいことに多くの方々にカバーしていただいたり、リスペクトいただき感謝です。だからこそ、今の「迷彩」を届けたかったという気持ちです。

MVが公開され、多くの反響があったと思いますが、特に嬉しかった言葉や意外な反応はありますか?

剣:たくさん曲がある中で、「迷彩」は初期からずっとやってきている代表作ですからね。反響はすごかったです。音が格段に変わったのもそうだし、トゲトゲしさが増してるっていうような感想をいただいたり、単純に嬉しいですね。

美月:「なかなか再録の成功パターンはないよ」って各所から言われていたので、正直怖かったんですけど、かなり多方面から高評価をいただけてすごく嬉しかったです。

景:ありがたいことに「迷彩」は多くの方に知っていただいている楽曲でもあって、僕たちの中でも名刺代わりみたいなものです。今回のMVを通して復活を知っていただいた方、新たに知っていただけた方もいますし、何より「以前よりカッコよくなってる」という言葉はすごく嬉しいですね。

今回の「迷彩」のMVはオリジナル版のオマージュとなっていますが、撮影時に当時のことを思い出す瞬間はありましたか?

亜季:特になかったかな。

景:当時、若かったな~って、年をとったことを実感(笑)。

美月:僕としては人生初めてのMVが「迷彩」だったのもあって、色々思い出しましたね。白ホリっていうのがまた原作MVのオマージュなので、当時のことがフラッシュバックしたり。

真緒:再生というテーマもありましたし、過去のMVを意識したものにすることは監督と話し合いました。5人が椅子に座るラストのシーンが「Voyage」のMVのラストに繋がっていることは、ファンの方もお気付きかと思います。

剣:一番思ったのは、この5人が集まれば自然とSadieになるという、当たり前のことなんですけど、この5人が並ぶことで発せられるバランス感というか、そういうすごさみたいなものを感じましたね。

美月:ちなみに今回MVの撮影をしていて、曲が長いって皆言っていましたね(笑)。当時は若いからこそ色々詰め込みたかったんだろうなと(笑)。

(笑)。「迷彩」に限らず今回のアルバムは、原曲の世界観を崩すことなく、新たに生まれ変わらせることをテーマに臨んだそうですが、アレンジやレコーディングで特に試行錯誤した部分を教えてください。

真緒:歌としては原曲に添いつつ、客観視しました。「上手に歌う」ではなく、「カッコよく歌う」がテーマでしたね。

剣:元々楽曲自体は完成されているんですけど、昔だと表現しきれなかったことや、もっと本当はこうしたかったことなど、要所要所盛り込みました。ただ、原曲が聴こえてこないと嫌なんですよね。それは自分がいちリスナーとして客観的にもそう感じたので、原曲がより活きる今の完成形を目指しました。

美月:もっと複雑にできるし、カッコよくできる自信もありましたけど、あえて変えないというのは意識しましたね。もちろんビルドアップしているところもあるんですけど、イメージは原曲を大切にしております。

亜季:ベースに関しては、原曲をアレンジした時の自分や、それを支持してくれたファンの方を否定したくないから、ほぼフレーズは変えてない。現代のサウンドで生まれ変わるだけで良いって考え方かな。

景:僕は、音源は音源でいいとは思っているんですけど、楽曲そのものはファンの皆さんの思いなども重なって一緒にライブでさらに成長していき、最終的な形となるものだと考えているので、ドラムに関しては現時点でのライブで成長した姿を主にアレンジしていきました。その上で自分自身の原曲のイメージや、これからのSadieをイメージして、プラスアルファの試行錯誤をしていきましたね。