2022.08.28
OFIAM@代官山SPACE ODD
「OFIAM 1st Anniversary -宴-」

1日は24時間、1年は365日。当然ながら時というものは誰にとっても等しく流れていく。だが、その体感速度は、どれだけ濃密な時間を過ごしてきたかという人生の充実度で変わっていくのではないだろうか。このたび行われたOFIAMの1周年記念公演にて、メンバーは口々に「長かった」と述べた。無論それは、あまりにも多くの出来事があったから。たかが1年、されど1年。OFIAMにとってこの1年は、とてつもなく大きなものだったことは間違いない。ゼロからスタートした彼らは、1年で多くの変化をし、進化を遂げていったのだ。

改めて、OFIAMが生まれた経緯を記したい。2021年5月末に第三期の活動を終え、ヴォーカル不在となったTHE MICRO HEAD 4N’Sが、バンド本体とは別に新たに始動させたプロジェクトの一つがOFIAM。逆から読めば“MAIFO”(マイフォ)である通り、あくまでTHE MICRO HEAD 4N’Sへ帰結するため、自らの進化を求め新たな表現方法を追求するバンドとして立ち上げられた。「実験的音楽による常識の破壊」をテーマに、ギタリストkazuya、SHUN.、ベーシストZEROによるプロジェクトでありながら、全員がVoiceという肩書きを併せ持ち、歌や語りも素材の一つとして扱いつつ、さらにSHUN.がVJも担い、映像も駆使しながら表現していくのが彼らのスタイルだ。

ドラマーのTSUKASAはサポートメンバーとして共にステージに立ち、音源ではあえてドラムを打ち込みにするため、その監督的立場で関わってきたが、この日「メンバーみたいに扱っていただきまして、本当に嬉しく思います。僕としてはこのバンドに参加する際に、割とシンプルなドラミングを意識してやってきました。視覚的にもカッコいいと結成当初から言っていまして。本当にお洒落なバンドだと思いますので、自分自身の心もお洒落になったつもりでおります」という発言もあったように、表舞台ではほぼメンバーゆえ“OFIAM(+TSUKASA)”と表記することもあるほど。

「マイフォの新メンバーをすぐに見つけるのは正直難しい。でも、活動を止めたくない」「ヴォーカルが脱退したらバンドは終わりみたいな風潮を覆したい」…そんな思いから始まったプロジェクトだったが、そこはやはりアーティストの性だろうか、逆境+“何でもあり”の実験的なバンドで表現を追求していくことに、彼らは新たな楽しみを見出していったようだ。この1年の間にOFIAMは3枚のシングルで全9曲を発表してきたが、未音源化曲を含めればそれを遥かに上回る曲数を生み出してきたのだ。それは4人の結束力と新たなチャレンジを厭わない姿勢がもたらした結果に違いない。

リーダーでありメインコンポーザーであるkazuyaが「この企画もこの音楽も、メンバーに聞かせる時、正直怖かったです。『何すか、これ』って言われると思ったし。でもメンバーは喜んでくれた。ファンの方々も最初は『何じゃこりゃ』と思ったと思うんです」と語ったように、ことライブにおいても、手探りだった1stライブ(2021年8月21日THE MICRO HEAD 4N’S 10th Anniversary「THE MICRO HEAD 4N’S vs OFIAM」)から、この1年で“OFIAMのライブの在り方”が固まっていった。

事実、kazuyaは1stライブの中盤まで観客が座っていたことを振り返り、「当時考えたのは、コロナ禍、声を出せない、暴れられない、でも観たい、このポイントを繋げると映画のサントラみたいな音楽を作ればいいのかなと思ったんです。だから、座っていていいと思った。でもやっていくうちに、何か違うなとなって。皆と僕ら、お互いがクエスチョンを持っているような感じがして。やっぱり僕らも皆もロックバンドが好きで、騒ぐことが好きで、そんな僕らについてきてくれている、聴いてくれているということに遠回りしたけど気づいたんです。そこから振り切って、楽しいバンド、皆と一つになれるバンドにシフトチェンジしました」と吐露したのだった。

つまり、僕らの表現を観てくださいという一方向のスタイルから、一緒に盛り上がろうという双方向のスタイルに。OFIAM3本目のステージとなった2021年12月の横浜ブロンテ公演にて、既にその変化の兆しは見て取れたわけだが、4本目の2022年3月、赤羽ReNY alpha公演で完全に現在の形が出来上がったと言える。

そして7本目のステージ、8月28日「OFIAM 1st Anniversary -宴-」。始動時のトレーラー映像に使用された楽曲であり、1stライブの1曲目でもあった「命」で幕を開け、19曲の持ち曲全てが披露されたわけだが、例えば、ヴォーカルチョップとSHUN.のスラップが特徴的な「斑」の間奏でZEROがセンターお立ち台に上がりベースソロ的な魅せ方をした場面、THE MICRO HEAD 4N’Sのインストナンバー「I’m spider」のOFIAMアレンジver.でSHUN.の合図からオーディエンスがタオルを回した場面(そもそもこの楽曲は3月に初披露)、ハードナンバー「神」がテッパンの暴れ曲に成長したこと、あらゆる楽曲においてメンバー同士の絡みが多く見られたことなど、まさにこれらは初期のOFIAMには見られなかった光景だ。この日、SHUN.からは「今日はOFIAM史上一番楽しく、一番盛り上がっている気がします」という嬉しい言葉も飛び出していた。

変化と言えば、TSUKASAからしきりに「テクノロジー」という発言があったが、本公演からメンバー全員がイヤモニを使用したことによるパフォーマンスの変化もあった(これまではリズム隊のみ使用)。イヤモニの利点は様々あるが、パフォーマンスという点で観客側からも見える違いとしては、メンバー全員がカウント音を耳元で聞いていることで、ドラマーによるカウント無しに曲に入ることが可能になる。すなわち、良い流れを失速させることなくバンドインできるというわけだ(もちろん楽曲によってはこれに当てはまらないものもあるが)。そんな微々たる差がライブ全体のアップデートに繋がっていく。

さらに、新曲(タイトル未定)のお披露目があったことは特筆すべき点であり、語りとラップと歌という三つのVoice要素が合わさった、これまでのOFIAMになかったものを提示してみせた。OFIAMのステージ上で歌詞について話すことは少ないSHUN.だが、この楽曲に関しては「歌詞はまだこれから変わっていく可能性大で。僕の中では『暁』と兄弟曲で歌詞が繋がっている感じ。OFIAMで歌詞を書くとき、“生きる”ということをテーマに書いているんですけど、この曲も生きる指針を示せるような言葉を表せたらと思って作りました」と述べたのだった。

また、本編中盤には“何でもあり”というOFIAMのスタンスを象徴するように、SHUN.、ZERO、TSUKASAによる「Born」、続いてkazuya、ZERO、TSUKASAによる「COUNTER ATTACK」と、スリーピースのプレイで魅了。終盤には初めての試みとして、シングル表題曲の「棘」「声」「時」が連続で披露されたのだが、毛色は異なれど、この3曲が持つパワーはやはり圧倒的で、改めてシングルになるべくして生まれた楽曲たちなのだということを実感させられた。

この3曲を前にkazuyaが語った言葉は極めて重要なものであったため、少々長くなるが抜粋を記しておきたい。
「このバンドで表現したいことの一つの答え=テーマが見えたんです。『無くなったものを数えるくらいだったら、今あるものを最大化しろ』という言葉があってさ。まさにそれだと思って。マイフォはあの時ヴォーカルがいなくなってこういう形になって。無くなったものはあるんだけど、1年で得たものはものすごくデカいと思っている。誰が何と言おうと、僕は成功だと思っている。SHUN.のMVを作る力もそうだし、リリック力もそう。ZERO君は最近楽しそうにギターを弾きながら歌っている。そういうのって、あまりないことだと思うんだ。ある程度年齢を重ねていくと、四角い箱の中で全部収めようとしがちだけど、そんなの人生つまんねーと思っていて。色々なものに興味を持って色々やればいい。ダメだったらダメでいいじゃん。今回のプロジェクトもそうで、僕らは皆との場所を守りたいと思ったし、新しい表現をしたいし、ヴォーカルが抜けたくらいで解散とか言われているのすごく嫌だし、だからすげー頑張ったの。でも、もし無理だと思ったら、その時はそれで別にいい。死ぬわけじゃないしさ。だから、これからも色々な表現をしていこうと思っているし、今日新曲をやったのも僕の中での裏テーマがあって。これからマイフォの四期が始まるわけじゃないですか。それでOFIAMを止めたら、『出た出たー。マイフォの間の繋ぎ?』なんてことを思われるのが超嫌で。僕は前を向いているという意味も込めて新曲を作りました」

本編ラストは満天の星空の映像をバックに、kazuyaが紡ぐ美メロが温かなバラード曲「煌」を。そしてZEROが歌パートを担うキャッチーなデジロックナンバー「創」、TSUKASAのビートに乗せフロアにハンドクラップが響いた「罰」のアンコール2曲をもって、この記念公演は終幕を迎えたわけだが、先頃発表されたTHE MICRO HEAD 4N’S第四期の始動に伴い、年内のOFIAMのステージはこれがラストとなった。とは言え、前述のkazuyaの発言や、OFIAMとStill Nightという二つのプロジェクトをスタートさせた当初から、「第四期が動き出したとしても、三つのプロジェクトを動かすと決めている」と常に公言していた彼らゆえ、そう遠くはない未来にまたOFIAMに再会できる日が巡ってくるだろう。ちなみに「チョコレートの季節くらいにでもやりたいなと思っていますけど、あくまで予定は未定ということで」(kazuya)という発言があったことも付記しておきたい。

しかしながら、来年まで待てないという方に朗報が。この1周年記念公演の模様が映像作品として今秋リリースされることが決定した。ぜひ入手して、じっくり堪能しながら次の機会を楽しみに待っていてほしい。

「OFIAMやStill Nightを通して、マイフォではできなかった経験が詰め込まれた1年だったと思うので、復活の際にそういう経験を活かしていって、またマイフォで得たものをOFIAMに還元して、良い環境で良い相乗効果を出していけたらなと思っています」という本公演でのZEROの言葉や、先のインタビューにおいて「OFIAMが本領発揮する瞬間は、マイフォと同時進行になった時」とkazuyaが述べていたことを踏まえると、より一層今後のOFIAMに期待が高まる。再会の暁には、さらにアップデートした4人の姿が見られることだろう。

◆セットリスト◆
01. 命
02. 罰
03. 罪
04. 天
05. 斑
06. I’m spider
07. 新曲
08. 証
09. 暁
10. Born
11. COUNTER ATTACK
12. 傷
13. 神
14. 創
15. 碧
16. 棘
17. 声
18. 時
19. 煌

En
01. 創
02. 罰

(文・金多賀歩美/写真・KURO)


【リリース情報】
●LIVE DVD『OFIAM 1st Anniversary -宴-  at DAIKANYAMA SPACE ODD』
2022年秋発売予定

OFIAM オフィシャルサイト
THE MICRO HEAD 4N’S オフィシャルサイト