『The Unfinished Story』が映し出すTHE MICRO HEAD 4N’Sの思い。今はこの場所で未来を紡いで進んでいくだけでいい――
当初7月発売予定だったTHE MICRO HEAD 4N’Sのニューアルバム『The Unfinished Story』が、約半年の延期を経て2021年1月24日に遂に世に送り出される。メンバー全員がそれぞれ作曲を手掛けるという初の試みで制作され、8月に行われた9周年記念公演の模様を収めたDVD、メンバーによる新曲解説と共に特別仕様のセットという形態で発売される今作。その経緯と真意とは。12月20日に2020年最後の配信ライブを控えるkazuya(G)、SHUN.(G)、ZERO(B)に、これまでの4本の配信ライブと最新作についてじっくりと話を聞いた。
色々な面でやれることは全てやった(SHUN.)
2020年はこれまでに配信ライブが4本行われましたが、1本目の6月25日「「The Unfinished Story」STREAMING LIVE The First Anniversary」のリハで、125日ぶりにバンドで音を合わせたとのことで。前回kazuyaさんにお話を伺いましたが、SHUN.さんとZEROさんはこの時どんな思いでしたか?
SHUN.:単純にやっぱり大きい音を出すのは楽しいなと。それまで家で弾いていたり、自主練でスタジオには入っていたんですけど、バンドでは久々だったので、リハが気持ちよかったのは覚えていますね。事前にkazuyaと一緒に他の人の配信ライブを観たりして、傾向と対策を練って。何せ初めてのことだったので、どうやったらいいかというのを勉強しつつ、ライブはまぁ気合いを入れ過ぎてやった覚えがあります(笑)。
ZERO:期間が空くといつも思うのは、やっぱりバンドって気持ちいいんだなということですね。自分たちもファンの人も納得のいく形というのは、どういうところで合わせていけばいいのかなということと、逆にそこでしかできないものを考えたり、試行錯誤していました。気持ち的には若干不安もありつつというライブでしたね。
8月23日の「STREAMING LIVE #3「The Unfinished Story」-9th Anniversary-」を前に、kazuyaさんが「9周年の挑戦の結果が本当の成功かどうかは、メンバー全員がこの日のために自分が頑張れたと思えるかどうか」ということを言っていました。振り返ってみて、自己評価はいかがですか?
SHUN.:すごく難しいですね。何せ僕は自己評価が常に低い人なので。2点っちゃ2点だし。
kazuya、ZERO:(笑)
kazuya:5点中の?
SHUN.:100点満点中2点。
kazuya:低っ(笑)。やめちまえー(笑)。
SHUN.:プロとしてどうなんだという話にもなってくるので、点数は付けづらいところではありますよね(笑)。
頑張れたかどうかという部分で言ったら、頑張れたということですよね?
SHUN.:頑張りましたよ。ギタリスト、アーティストという部分でもそうだし、単純にギターを練習するということだけじゃなく、色々な面でやれることは全てやっていましたね。ただ、今思えばもっとあるんじゃないかというのは、いつだって出てくるんですよ。
ZERO:うちの配信はライブの前後に映像が付いたりするんですけど、その時は確か編集が結構ギリギリで。まぁ…点数で言うとどれくらいですかね…50点。
SHUN.:高い!
kazuya:お前が低いんじゃ(笑)。
ZERO:その50点は、できる限りのことはやりましたという部分で、残りの50点は、やっぱりそこに来てくれる人がいないわけで、ライブってステージと会場の相乗効果で思ってもいないパワーが生まれるので、そういうものが配信だと出し切れないかなという部分ですね。
kazuya:9周年に向かうプロセスの中の広告という面で考えると、僕は1年間インスタをやり続けて、あれって色々な意味があるんですけど、宣伝の意味合いも強くて。「ライブをやります。来てください」と、1年間広告を打ち続けたのと同じじゃないですか。そこに対してはよく頑張ったなと思いますけど、シビアな話、自分の影響力、発信力がまだ弱いなと反省しています。
なるほど。
kazuya:ライブに関しては、セットリスト的にもかなり良いんじゃないかなと思っていて、最近ようやくDVDが出来上がったので観ているんですけど、なんか雰囲気がいいなぁと。ここまでよく頑張ったし、結構良い曲書いてきたなぁ、なんてことを思って。なので、僕個人としては割りかし自己評価は高いほうかな。ただ、バンドとしてはやれることはまだ全然あったなとは思っていますね。僕の場合はアーティストとしての側面と、宣伝という部分も考えなければいけないので、その多方面で考えると、まぁまぁよくやったと思いますよ。
配信ライブ1、2本目は16曲、3本目の9周年は20曲、4本目は18曲だったので、改めて考えると9周年は曲数も多かったですね。
kazuya:ぶっちゃけ削れなかったです。曲数が多いライブって、本当はちょっと苦手なんですよ。観ていて辛いかなと思うので。よく解散ライブとかで30曲くらいやったり…FANATIC◇CRISISもそうだったんですけど(笑)、あれって演者のエゴが強いのかなと。9周年に関しては、正直僕のエゴが強いです。感謝と、僕がこうしたいというものが強かったので、どうしても長くなっちゃったというか。やっぱり9年間をまとめるって難しいですね。
7月31日の「「The Unfinished Story」STREAMING LIVE #2 ZERO Birthday Hybrid Festival」」、11月18日(10月11日の振替)の「STREAMING LIVE #4「The Unfinished Story」 AMENO Birthday~初手天元~」は誕生日の当人がセットリストを組んだわけですが、ZEROさんバースデーはカオスでしたよね(笑)。
ZERO:あれを本当のライブでやっていたら、さらにヤバイことになっていただろうなと思います。あの日に俺が作った曲を解禁ということで、それを前提に割とハードめに寄せた感じではありました。終盤に「この先ずっと…」とか久しぶりな曲も入れたりして、最後に向けて走り切っていくイメージで組みましたね。
AMENOさんバースデーは結果的に9周年から約3ヵ月空きましたが、1本目から3本目までが月1ペースではあったので、間が空いたことによる影響はありましたか?
kazuya:僕はツアー初日っていつも掴みきれずに終わることが多いんですけど、それに近い感じでした。あの期間はレコーディングしたり、アコギの練習をしたり、ギター自体は弾いていたんですけど、やっぱりライブとは全く違って。感覚が最初はついていけなかったというか。セットリストのストーリー性がしっかりしていると掴みやすいんですけど、この時はいつもの流れが全くなかったので、どこでピークを持って来ようかなと考えながらやっていました。ただ、良くも悪くも個性が出るのが誕生日ライブの良いところなのかなと思いますね。
SHUN.さんはMCで「配信ライブも4回目…ようやく慣れてきたかなと思ったら嘘でした。慣れてませんでした(笑)」と言っていましたよね。
kazuya:帰りの車中でめちゃめちゃ反省していたんですよ(笑)。
SHUN.:なんだったら、通常のライブも慣れていません(笑)。
全員:(笑)
SHUN.:だから、無観客なんて慣れるわけがない(笑)。有観客はその場で何百人というお客さんに見られているけど、無観客って全世界から見られているわけでしょ? もっと緊張するじゃないですか。僕、人に見られるのが苦手なので。まぁ、それは冗談…というか半分本気なんですけど(笑)、やっぱり難しいですね。配信ライブの見せ方というのが、まだ掴みきれていないところはありますし、AMENOバースデーはある種、企画ものに近いところもあったので、kazuyaが言ったように自分のピークをどこに持っていくか掴みきれないまま終わっちゃって、個人的には反省でしたね。
緊張しいのSHUN.さんとしては、2020年一番緊張したのはいつですか?
SHUN.:バイクの免許の最終試験ですかね。
全員:(笑)
SHUN.:…あ、音楽の話でした? 僕、トータルで真面目に答えたんですけど(笑)。音楽で言えば、1本目の配信ライブが一番緊張しましたね。いつ映されてもいいように120%ずっと全力でというのを心掛けてやっていたら…死ぬぞこれとなって。なので、言い方は悪いですけど手を抜くところは抜けばいいのかなと思いつつ、性分的にそういうこともできないので、結果ずっと全力で4回やってきています。
皆と同じ山を登るな、独自の山を作れという考え方(kazuya)
『The Unfinished Story』は当初7月発売予定だったのが、コロナ禍によるレコーディングの一時中断もあり延期となったわけですが、結果1月24日発売というタイミングにした理由というのは?
kazuya:簡単に言うと、それが最速だったということですね。ファンの方々を待たせていることに対して、非常に申し訳ないと思っています。例えば僕がファンで好きなアーティストのCD発売が延期になったら、やっぱり悲しいし、早く欲しいなと思うので、その気持ちは汲んだ上で最速で出すには、ようやくそこなのかなと。ただ、なぜそんなに遅くなっているのかと言うと、もちろんコロナの件もありますけど、ほとんどのことを自分たちで完結させているからなんです。この3人で言えばギタリストとベーシストですけど、僕らの場合それだけじゃない役割のウエイトが大きいので、どうしても時間がかかってしまって。外注すると自分たちが思うものにならなくて、逆に説明するのが面倒ということも起きてしまうので、やっぱり自分たちでできる範囲は自分たちでやりたいんですよね。
8~10月に3ヵ月連続で、Incomplete ver.ではあるものの先行で今作収録の3曲がCD付きグッズとして発売されましたが、この選曲理由はどのようなものだったんでしょう?
ZERO:ライブをやる上で、この曲は聴き込んでおいてほしいというところで「LiaR」と「REMEMBER」は最初に決まって、この2曲がkazuyaさん曲だったので、そうじゃないものをあと1曲選ぼうと。その中で、販売する作品としては俺とAMENO君の曲は初めてなので、それはアルバムに取っておきたいということで、SHUN.さんかTSUKASAの曲かとなって、TSUKASAの「DOWN」に決まったという流れだった気がします。
SHUN.:多分、俺の曲はまだできてなかったんじゃないかな。
kazuya:最後だったもんね。
このグッズも、もちろんZEROさんが考えたわけですよね。
ZERO:そうですね。まず「LiaR」の時は、バッテンが付いたマスクを作りたいなというところから始まったんですよね。「嘘付いちゃいけません×」みたいな。次の「DOWN」は、気分を落ち着かせるというところでアロマキャンドルに。最後の「REMEMBER」は、時間や思い出、記憶、そういうテーマで時計にしました。
『The Unfinished Story』も特別仕様のセットでの発売ですが、DELUXE LIMITED EDITIONには『REBIRTH-the 3rd form-』の衣装(上半身のみ)も付くという。(※追記:記事公開時点で予定されていた発売形態・仕様が12月20日発表で変更になりました。詳細はオフィシャルサイトをご確認ください)
kazuya:レプリカではなく本物なので、各メンバー1着=DELUXE LIMITED EDITION自体が5つだけの販売です。今年ってイレギュラーな年じゃないですか。いつも通りのことをやって「しんどい1年だったよね」で終わるのは嫌で、どんなに絶望的な時でも、それを逆手に取って今だからできることってたくさんあると思うんですよね。とにかく僕がメンバーに提案したのは、実験の1年にしたいと。リリースの仕方や物もそうです。ある種の遊びみたいなところも含みつつ。あと、インスタライブ「18会」でファンの方から色々な話を聞く中で、僕が断捨離魔だから「捨てるなら欲しい」とかよく言われるんですよね。だったら、喜んでもらえる人のところに渡ったほうがいいなと。じゃないと、すぐに処分してしまうので(笑)。
ミニマリストですもんね。
kazuya:DVDも欲しいという人がたくさんいたので、付けようと思いました。今回の形態で出すことは皆ビックリしたと思うんですけど、ファンの方々の意見も頭に入れた上で考えています。我々は喜んでもらってナンボの職業なので、いかに喜んでもらえるかですね。あとは最近の僕の考え方なんですけど、普通のところで勝負するなという考えがすごく強くて。皆と同じ山を登るな、独自の山を作れという考え方なので、こういう形になりました。
今作は、メンバー全員がそれぞれ作曲した曲が収録されているという初の試みでもありますが、これはどういう目論見から?
ZERO:本来は9周年に向けて作りたかったアルバムなんですよね。AMENO君が加入してからの持ち曲を増やしたいというところから始まって、3~6月の配信リリースから続いて、メンバー全員で作り上げたアルバムを発売して、9周年を迎えたかったんです。
kazuya:今回、僕の場合はメンバーがこういう曲を書くかなというのを考えながら、穴埋め方式で作っていきました。