
コンセプトシングル『BEHIND THE LIGHT』で描く、過去の葛藤と未来への希望。生きてる今を君と歌いたい――
2024年末に開催したツアーのファイナルSpotify O-WEST公演で、活動第四期の最高動員数を見事に更新したTHE MICRO HEAD 4N’S。そんな彼らが、最新シングル『BEHIND THE LIGHT』を引っ提げ、3月9日よりツアー「閃光のディストーション」を開催する。美メロの前作表題曲「星屑のアルペジオ」から一転、ロックで攻撃的な本作は、あらゆる面で新たな挑戦を試みた全3曲を収録。昨年末を振り返るとともに、闇と光をテーマに据えたコンセプチュアルな最新作について、じっくり語ってもらった。
バンドって辛いなっていうのと、いいなっていうのを同時に感じた(kazuya)

改めて、昨年末の「星屑のアルペジオ」ツアーの率直な感想を伺えればと思います。
TSUKASA:とにかく熱い気持ちがずっとあったのは覚えております。KEKE君との手売りチケットの旅が、自分の中ですごくドラマを作ってくれたような気がしまして。それが集約されたファイナルは、めちゃくちゃ爆発しましたし、感動しましたし、マイフォ史上一番熱さがあったライブだったなと思います。
手売りチケットの旅をきっかけに、TSUKASAさんの中で内面的な変化が結構あったんじゃないかなと思います。
TSUKASA :確かにそうですね。特に印象深いのが、KEKE君が体調を崩して、手売りチケットの旅で山形に行くのはやめようかという話になったんですけど、大阪公演のMCでKEKE君が涙ながらにこのツアーにかける思いを語っていたのを思い出したら、僕一人でも行かなきゃいけないんじゃないかと、使命感が湧き上がってきまして。『ドラゴンボール』のセリフでもありましたけど、「俺がやらなきゃ誰がやる!」っていう気持ちでしたね。そこでチケットが7枚売れて。少ない枚数でも、マイフォの未来を考えたら大きな飛躍だと思いました。
ZERO:初日の宇都宮のアンコールで、初ライブで演奏したセットリストの曲を披露したんですけど、そういう始まりのライブから、ファイナルでの最新のマイフォという流れで、いろんな感情がたくさん詰まったツアーだったなと思います。途中、俺も体調を崩したんですけど、ファイナルにはなんとか復活できて。そういう意味でも、いろんなことを乗り切ったツアーでしたね。
kazuya:それこそ手売り旅のTSUKASA君が山形に行く行かない問題というのは、結構話し合ったんですよ。一人で行かせるのはさすがに仲間として悪い気がして、だったら俺も行くよと。でも、TSUKASA君が「一人で大丈夫」って。あの辺りからTSUKASA君が妙に頼もしくなったのは事実です。バンドが一つになれていて、ツアーは良かったんですけど、ファイナル前に僕も含め皆が体調を崩したり、そこでのスケジュール調整とかで、もう僕は消耗しちゃっていて、正直、ファイナルのライブは全く覚えてないんです。良かったかどうかすら。ただ、一つ覚えているのは、あの日のTSUKASA君が妙に心強く感じたんですよ。いつもは僕が指揮者みたいなものだから、音楽的に引っ張っている感があるんですけど、この時は僕も心身ともに絶不調だったのもあって、後ろから押されている感じが心強かったんですよね。これ、あまり言ったことがない話ですけど。バンドって辛いなっていうのと、いいなっていうのを同時に感じたファイナルだったかな。
KEKE :ツアーというもの自体、やれば楽しいのは当たり前なんですけど、今回、僕らのライブ制作をしてくれている人がツアーに同行してくれたのが、これまでと違うことで。僕もいつにも増してテンションが高くなっちゃって、より良いライブができたんですけど、やっぱりスタッフも含めてチームでTHE MICRO HEAD 4N’Sだと思っているので、信頼している人たちが現場にいて、ツアーファイナルはファンタチームのスタッフさんも来てくれたり、新しく照明さんが入ったり、そうやってチームでツアーを回るっていいよねと、心の底から思えたツアーでした。
MCでも話していましたね。
KEKE:2024年は、マイフォに僕が加入してから一番のピンチの1年だったと思うんです。5月にメンバーと話し合って、その時は自分のモヤモヤは解消したんだけど、それでもどこか心の奥底にもやがかかっていて。バンドに対して考えていることって個々に違うと思うんですけど、僕はMCでも言ったように、ファイナルのO-WESTで何か結果を残さないと、バンドのテンションが下がっていく気がしていて。だから、結果ちゃんと四期で過去最高の動員を入れられたということが、全てじゃないかなっていう。でも、それは僕らだけじゃなくて、ファンの方も一緒に作り上げた数字だと思っています。手売り旅の現場に応援に来てくれたり、大阪での僕のMCを聞いて「元々ファイナルは行く予定はなかったんだけど、行くって決めました」とメッセージをくれたり。THE MICRO HEAD 4N’Sって、僕らのヒューマンドラマを楽しんでほしいと言ったりするんですけど、まさにそういうツアーだったなと。いろんな人の思いが詰まっていた。だから、2023年のO-WESTよりも、さらに人間味の詰まったファイナルを迎えられたんじゃないかなと思います。
数字的にもリベンジを果たせたことや、KEKEさんの熱いMCもあって、kazuyaさんの50歳という節目の誕生日ではあったものの、それ以上の意味合いが強いツアーファイナルでした。
KEKE:それぞれメンバーの誕生日にフォーカスしたライブがあるじゃないですか。でもO-WESTって、かず兄の誕生日付近にやっていますけど、個人的にはあまり誕生日という感覚にはなっていなくて(笑)。
kazuya:なれ(笑)!
全員:(笑)
KEKE:ツアーファイナルのほうに8割方気持ちがいってしまうので、やっぱり誕生日は…ついでです(笑)。
kazuya:でも、本当にそれでいいんですよ。やっぱりバンドをやっているので、バンドの1年の集大成と見ているし、今回で言ったら、動員という意味でも、知識、スタッフキャスティングも、僕がマイフォにしてあげられることは全てやったと思っているんですよ。ファンタの監督に「誕生日プレゼントで来てよ」とか、誕生日だから照明お願いしたいなとか、要は誕生日というのは1個のネタで。ファンタのライブをわざわざマイフォの前日に持ってきたのも、ちゃんと導線を考えました。マイフォって自分が中心になって作ったものだし、KEKEも加入してくれたから、その全てに対しての僕なりの恩返しですね。
失敗や後悔という経験があるからこそ、今の自分がいる(KEKE)

今回のシングルと春のツアーは、発表時点で「ロックで攻撃的な内容に」と謳っていましたが、ツアーのテーマ先行だったのか、表題曲のイメージ先行だったのか、どちらでしょう?
kazuya:今回のツアーをどうしようかと考えた時に、小箱でいこうと。それで、小箱に似合う楽曲となると、ロック系のほうが面白いだろうな、新曲もそっち系だなと思っていたから、まだ歌詞もなかったんだけど、表題曲のタイトルを先に決めちゃいました。タイトルって結構、蔑ろにしがちだと感じていて。過去の「上弦の月のオーケストラ」や「星空ニカケル声」は僕が提案したんですけど、そういう引っ掛かりのあるタイトルにすると、関係者が覚えてくれるんですよ。いじってくれる人もいたし。ってことは、やっぱりそこって大事だなと。それで、「星屑のアルペジオ」の流れかつ音楽絡みで、ロックっぽいなと考えたのが「閃光のディストーション」でした。だから箱ありき、タイトルの順でしたね。
前回はkazuyaさんの「○○のアルペジオ」というお題に対して、KEKEさんが「星屑」を提案した流れでしたが、今回は丸々kazuyaさんのアイデアだったんですね。
kazuya:キャッチーかなと思って。例えば、英語のフワッとしたタイトルだと、どこのバンドにもありそうだし、多分覚えづらいし、期待値が分かりづらいのかなと。何でも明確化、わかりやすくしたほうがいいのかなと思うんですよね。この曲は前作と同時期に作ったんですけど、デモを投げた時にTSUKASA君が「これ、一番いいっすね」とか言っていて、そのまま今回それにしようと。
TSUKASA:速いテンポでメロディアスなんだけど、どこか引っ掛かりがあって、最初にデモを聴いた時に「うわ、カッケー」って思ったのは覚えています。また、KEKE君の歌詞が良くてですね。僕、仮歌を聴く前に歌詞だけ読んだんですけど、その時点で絶対良い曲になるなと思いまして。誰もがこういう思いになったことがあるなっていう歌詞だと思ったんですよね。
タイトルありきの作詞だったわけですが、テーマはすぐに閃きましたか?
KEKE:このサウンドとタイトルの中で、「閃光」と「ディストーション」をそれぞれ何に例えるか色々考えたんですけど、タイトルありきで作詞をすることが人生初だったので、結構苦戦しましたね。先ほどの話の通り、ワードの引っ掛かりとわかりやすさからこのタイトルになっているので、歌詞もわかりやすさを重視して書いたつもりです。ただ、自分は理解できるけど、他人が理解できないとかもあるじゃないですか。だから、TSUKASAさんが今言ってくれたことで、ちゃんと伝わっているのがわかったので、安心しました。かず兄が曲を出した時は結構不安だってよく言いますけど、僕も歌詞を出す時って不安なんですよ。ましてやうちのバンドは、何々がどうでいいねみたいな言葉がそんなにないから(笑)。
kazuya:リターンが薄いんだよね(笑)。
KEKE:LINEのメッセージにグッドとか押すだけだったりするから、いや、何がどう良かったのか教えてくれ!みたいな(笑)。僕は皆に出す前に一旦ZEROさんに出して、アドバイスをいただきながら手直しするんですよ。ZEROさんが一番作詞にこだわると思うし、そういうところに熱い気持ちを持っている人だと思うから。最終的に、自分的にも良い詞が書けたんじゃないかなと思いますね。
前回、「黎明」の歌詞は「悲しいことも色々あったけど、それでも模索して大切なものを見つけていこうよという思いで書いた」と話していましたし、「星屑のアルペジオ」の幻のKEKEさんの仮歌詞は、肯定的なメッセージの内容にしていたということで、「閃光のディストーション」はそれらが合わさった感じがあるなと思って。前作が、今回の作詞のきっかけになった部分もあるのでしょうか?
KEKE:根本的に僕、自分の過去にすごくネガティブな感情、コンプレックスみたいものがあって。表ではポジティブでも、それだけで生きている人間はいないと思うんですよ。そういった闇、それこそディストーションの部分が人にはあって、失敗や後悔という経験があるからこそ、今の自分がいるんだと思います。僕は、そういう闇と光の美学を感じて生きているので。「黎明」の時にも、歌詞を書いていく中でやっぱり自分の人生や経験を振り返るわけですよ。例えば映画もそういう視点で見ちゃうし、色々なものから刺激を受けて、この歌詞ができたのかなと思いますね。
ZEROさんからKEKEさんへのアドバイスは、どんなものがあったのでしょう?
ZERO:あまり覚えてないですけど、KEKE君が書いてくるものって割とハズレがないので、所々ちょっと提案したくらいですかね。だから逆に、そのうち俺が書いた曲とか、まるっと書き直しをさせてみようかな(笑)。
KEKE:やめてください(笑)!
ZERO:「もうテーマが違うんだよね。この曲はそういうことを言ってもらいたいんじゃなくて」とか(笑)。何か新しいものを生み出したい時に、そういう手段をいつか使おうかなと思います。この歌詞は、俺も人に対して割と劣等感を持って生きてはいるので、気持ちはわかる部分が結構ありますね。
曲調としてはkazuyaさんが作る王道ロックチューンという印象を受けました。
kazuya:確かにストレートなkazuyaというか、今のマイフォらしい感じかな。でも、今はKEKEが僕のベーシックに対して追加メロを持ってきてくれるから、そういう意味では活動一期みたいな感じで。二期、三期は100%僕だったんですよ。今はメロに対して突っ込んでくれたり、今回で言うとイントロを死ぬほど考えたんですけど、何パターン作ってもKEKEから個別に連絡が来て、「ちょっとあれに似てませんか?」とかダメ出しされて(笑)。ただ、僕はバンドってそうあるべきだと思うし、100%自分のエゴを通したい人間ではないので、一つの曲に対して色々なアイデアを出してくれるのは楽しいですね。
メインイントロに入る前の冒頭部分が、すごくインパクトがありますよね。
kazuya:あれ、全く違うパターンを考えたんですよ。ファンクラブ内のVlogで、最初の部分だけファンの方に聴かせてあげたんですけど、そこから全部変えちゃったという(笑)。
KEKEさんが提案した追加メロは、具体的にどの部分ですか?
KEKE:ラストサビが終わった後に出てくるラララの部分ですね。それと、最後のメロディも1〜2音ぐらい「自分はこう歌いたいんですけど」と言いました。あと、この曲は僕、ラララの部分で人生最高のキーを歌っているんですよ。それって僕としては結構大きくて。このシングル自体、新しいものというのにすごくこだわっていて、この曲ではそこがこだわりなんですけど、いかんせん難しいんですよ。
あと、ドラムの音色がいつもより粒立って聴こえる感じがして。フレーズによるものか、RECやMIXでこれまでと何か違うことはありましたか?
TSUKASA:フレーズによるものですかね。kazuyaさんからも自由にしてもらっていいよというお話があったので、自分が得意とするフィルをちょっと変えてやってみたんですけど。その部分がそう聴こえるのかもしれないです。
kazuya:ただ、エンジニアさんとこういう感じにしたいよねって話はしました。何て表現すればいいかわからないですけど、今時っぽい音色というか。
KEKE:曲はマイフォらしいけど、サウンドはドラムの音色も含めて全体的に四期としては新しい感じに聴こえるんじゃないかなと思います。
TSUKASA:同期の音が少ないというのもあるかもしれないですね。それでドラムがバーンッと前に出てきている感じがするというか。
なるほど。ZEROさんはこの曲のレコーディングはいかがでしたか? Bメロからサビは結構動きがあるフレーズですよね。
ZERO:味付け的に結構サビで動いてっていうのは最初に曲を聴いた段階からイメージはありつつ、間奏をどうしようかなと色々考えていて。音作りもしながらレコーディングしていたんですけど、ちょうど新しく買った機材がすごく良かったので、間奏を作り直して、いい感じにできたかなと思っています。あと、俺が今まではドラムと塊みたいな音作りをしていた傾向にあるんですけど、今回は結構歪んでいたり、セパレートした音作りになっているので、もしかしたらそれがドラムの音の話と関係しているかもしれないです。