2016.7.9
Crack6@TSUTAYA O-WEST
Crack6 13th Anniversary TOUR「薔薇とピストル」

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最新アルバム『薔薇とピストル』を引っ提げ6月4日よりスタートしたPENICILLIN千聖(G)のソロプロジェクトCrack6の全国ツアーが、7月9日TSUTAYA O-WESTにてファイナルを迎えた。雨男との噂があるMSTR(千聖)は「ファイナルにも関わらず朝から雨で…」と苦笑いしていたが、開演時刻前にはすっかりその雨も上がっていたことを報告しておきたい。

開演の時を待つ場内BGMの『薔薇とピストル』に、これから繰り広げられるステージへの期待感がいやが上にも高まる。定刻を過ぎた18時15分、一瞬の暗転からJIRO 6(Dr)、SHIGE ROCKS(G&Sound Producer)、TENZIXX(B&Cho)が登場し、MSTRが一輪の薔薇をくわえ姿を現した。最新作のタイトル曲でもある「薔薇とピストル」でステージは幕を開け、MSTRが薔薇を客席へ投げ入れると、黄色い歓声が沸き起こった。

MSTRがまっすぐに天を指すと「破壊不可能」へ。SHIGE ROCKS&TENZIXXの先導でフロアいっぱいのクラップが鳴り響けば、MSTRがギターを拡声器に持ち替え「Mstr A 2 Z」を投入。序盤から熱量の高い楽曲で攻め立てる。「今夜は忘れられない夜にしようぜ!」(MSTR)と挨拶代わりの言葉を贈ると、「CODE NAME “666”」のオーディエンスとのコール&レスポンス、「最狂サティスファクション」のリズムに合わせたクラップ&コールでフロアはさらなる一体感を見せる。

すると今度は、働く女性の葛藤やプライドを歌った「サムライウーマン」でTENZIXXのチョッパーが心地よく弾み、ミラーボールが光輝く中「Baby I love you」の煌めくようなJ-POPサウンドが心躍らせる。さらにジャジーなピアノのメロディから「Cool Moon」が奏でられ、メロウな空間へと導いていった。

ここでMSTRから「フルアルバムを出せて、幸せを感じています。今日は僕に対する愛をここぞとばかりに叫んでください」というメッセージが。そして「今日はアルバム全曲やります」と宣言し、「甘い歌詞シリーズはさっきで終わり、ガンガン盛り上がっていきましょう!」と、最新作の中でも最もヘヴィーなナンバー「Love & Hate」へ。〈歴史はいつも繰り返されていく〉と歌った後に繋げられたのは「名もなき聖歌 ~little anthem~」。そして再び薔薇をくわえたMSTRがインスト曲「Re-Born」で表情豊かなギターを響かせ、「我考エル故ニ我有リ」に突入。この流れの美しさは圧巻だった。

続く「秘密遊戯」では中盤のアドリブセクションで魅了し、「渋谷の本気を見せてください!」とドロップされた「DETARA-MEN」ではTENZIXX&JIRO 6による〈ソンナモンジャナイダロウ?〉のコーラスが、さらにフロアを沸き立たせる。そして、SHIGE ROCKSが奏でる鍵盤の音色に乗せてシンガロングした「ZEROから始めよう」、メンバー、オーディエンス双方の笑顔と満場の手が揺れた「Change the World」をもって、本編はラストを迎えた。

アンコールの声に応え再び4人が登場すると、MSTRはこう語った。「今作を作っている時に震災があったりして、生きていると色々なことがあるんだなと思いました。音楽は無力だと言う人がいるけど、僕はそんなことないと思っています。皆さんの心の支えになってくれればいいなと。僕も音楽に救われてきたので、そういう人間がいることは確かです。」そして、そんな思いを込めて作った曲だという「6月の雨」を披露。穏やかな光に照らされ、アコースティックギターを手に優しく丁寧に歌い上げると、場内は温かな拍手に包まれた。ここで歌われた〈名も無きあの花〉は姿を変え「Daisies」へ…。

そして「全曲やると言ってまだやっていない曲があります」と、Crack6の歴代の楽曲の中でも異色なナンバー「ポップ☆コーン」がついに投入される。中盤にはJIRO 6の好きなポップコーンの味を当てるという“茶番劇”(MSTR談)のコール&レスポンスが繰り広げられ、和気あいあいとした空間に。2度目のアンコールでは、千聖ソロデビュー20周年を記念して台湾で写真集(9月23日発売)の撮影を行ったことを発表。「ということで、千聖ソロ時代の曲をやろうと思います」と、99年にCHISATO名義で発表された楽曲のCrack6ver.「電撃ミサイル2006」をプレイ。続けてこの日一番のBPMを誇る「Set Me Free」をドロップし、最高潮の盛り上がりを見せたのだった。

更なるアンコールを求める声に、「何でもかんでも僕にぶつけてくれていいので。全部受け止めて、Crack6は飛躍します」とライブでの鉄板曲「NEO」のイントロが奏でられた瞬間、フロアから歓喜の声が上がる。拳とジャンピングで特大の愛のやり取りを交わし、この夜のステージは終演を迎えた。マイクレスのMSTRの「ありがとうございました!」という言葉と共に4人で手を繋いだカーテンコール。満面の笑みでオーディエンスにたくさんのハートマークを送り、メンバーがステージを後にすると、時計の針はいつの間にか21時を回っていた。

終演後、楽屋を訪ねると、MSTRは約3時間を要したこのライブについて「足りたかな…」と口にした。こちらの体感と同様に、MSTRにとっても短い時間だったようだ。幸福な時間は過ぎ去るのが早い。まさにそれを実感した一夜だった。なお、「千聖 20th Anniversary Project」として今後様々な企画が予定されているとのこと。まずは写真集に期待を寄せつつ、新たな発表を楽しみに待ちたい。

◆セットリスト◆
01. 薔薇とピストル
02. 破壊不可能
03. Mstr A 2 Z
04. CODE NAME “666”
05. 最狂サティスファクション
06. サムライウーマン
07. Baby I love you
08. Cool Moon
09. Love & Hate
10. 名もなき聖歌 ~little anthem~
11. Re-Born
12. 我考エル故ニ我有リ
13. 秘密遊戯
14. DETARA-MEN
15. Violet Eyes
16. Crazy Poker Face
17. ZEROから始めよう
18. Change the World

Encore1
19. 6月の雨
20. Daisies
21 ポップ☆コーン
Encore2
22. 電撃ミサイル2006
23. Set Me Free
Encore3
24. NEO

(文・金多賀歩美/写真・小林裕和)