2025.04.29
アンティック-珈琲店-@Zepp Haneda
「LIVE CAFE 21st spring NYAPPYサクラ咲く頃にまたこうしてみんなで「でっかくなって会いたいね」とo(≧∀≦)o」

アンティック-珈琲店-によるワンマンライヴ「LIVE CAFE 21st spring NYAPPYサクラ咲く頃にまたこうしてみんなで「でっかくなって会いたいね」とo(≧∀≦)o」が2025年4月29日にZepp Hanedaで開催された。今回は2DAYSで開催されることになっていたが、翌30日公演には「昔を振り返っても明日は無いけど、ボクは忘れないo(≧∀≦)o」と異なるサブタイトルがつけられていることからこの2日間における差異にも大きな期待が集まっていた。本レポートではそんな初日公演の模様をお届けする。
そもそもアンティック-珈琲店-のワンマンライヴが最後に開催されたのは2024年1月のLINE CUBE SHIBUYA 2DAYSにまで遡る。2日間に渡ってのべ4000人超のカフェっ仔(ファンの呼称)とこれまでの歴史を邂逅しながら愛を確かめ合う万感のステージとなったことは今でも記憶に新しいが、その感動と同時に感じさせられたのは、未来に約束などないということだった。
事実、あの夜に嗚咽混じりに感情を溢れさせたみくは「どうか幸せに暮らしてください」とオーディエンスに想いを告げたのだった。しかし、それから自体は予想外の方向へと動いた。あくまでバンド20周年を祝うために期間限定的に活動を再開したアンティック-珈琲店-だったが、時代を共にしたMUCCから「共に対バンしたい」との強力なラヴコールを受けて、昨年9月に「LuV Together 2024」でEX THEATER ROPPONGIに立ち、それ以前にも8月には「Harezaの日4th Anniversary SUMMER FESTIVAL 2024」にて中池袋公園でフリーライヴを実施することとなった。未来を提示することなく終わったLINE CUBE SHIBUYA公演を経て、どうして彼らは再びアンカフェの音楽を奏でるのか? その答えは極めてシンプルで“求められたから”にほかならない。
「LuV Together 2024」終演後に発表された今回のZepp Haneda 2DAYSも、まったく予定調和でなかったからこそ、求め続けたカフェっ仔の深い愛情で勝ち取ったものであると言える。だからこそ、アンティック-珈琲店-の5人が提示するものにどうしたって関心が高まるのだ。

定刻をやや過ぎ、待ち焦がれる空気が充満したところで暗転すると数千のクラップに呼び込まれるようにメンバーが登場。天井から吊るされたNYAPPYくんオブジェとシャンデリアも再会の時を歓迎しているかのようだ。
オープニングは春に相応しい「Cherry咲く勇気!!」。煌びやかなサウンドと抜群のメロディは一気にこの空間がアンティック-珈琲店-のライヴであること知らしめてくれる。当時と同じ場所で撮影されたMVも話題を呼んだ代表曲で「久しぶりだなZepp!!」と叫んだみくの言葉もよそ行きのものではなく、傍らに寄り添うような愛情がこもったものに思えた。

Takuya(G)がロケンローなリフとギターソロで魅惑する「メープルガンマン」で会場は一気に大揺れのダンスフロアに。メンバー全員がシンプルにこの日を謳歌しようとしていることが伝っているからこそ、形式的ではなく目の前のステージに呼応することで生まれる化学反応が瑞々しくある。
お馴染みの「ニャッピーo(≧∀≦)o」の掛け声とともに始まったMCでは「モニターで見てたけど、みんな髪色落ち着いたね~」とみくがフランクに語り笑わせる場面もあった。そんな中、よく見るとゆうき(Key)はトレードマークのサングラスを着用せずによりフラットな出で立ちでキメている。
曲タイトルを告げた時点で悲鳴に近い歓声が上がった「Spring Snow」では春雪を想起させ切なさを運び、ゆうきの和風テイストなフレーズが映える「テケスタ光線」ではみくがタンバリンを持ち会場を盛り上げた。サビメロの躍動を促すよう疾走するカノン(B)のフレージングにニヤリとさせられている間もなく、温かみを感じさせるキャッチーな名曲「スノーシーン」まで一気に畳みかけた。まさにアンティック-珈琲店-の魅力を凝縮するような前半ブロックは彼らの強固なアンサンブルを再確認させるものでもあった。

ここで集結した観客に改めて謝辞を述べたうえで、みくが前夜に見たという夢の話へ。実父が下着泥棒の濡れ衣をかけられていたから疑いを晴らそうとした…というなんともみく節な軽妙な夢オチトークで会場の空気をソフトに和らげると、次なるブロックへ。
「今回リハ―サルが大変だったんですよ」との発言通りに、ここからは比較的レアなナンバーが続くこととなった。
歓声と拍手で迎えられたのは2006年リリースの2nd album『マグニャカルタ』収録の「七色クレヨンで描く光」。そしてその歓喜を遮断するように続いたダークな「輪廻の罪」とミドルな楽曲で歌を浸透させていく。輝喜(Dr)のパワフルなドラミングは、光と闇を交互に照射していく形となったそれぞれの楽曲に異なる緊張感を生む。結果、バンドの引き出しの多彩さと同時に、ベーシックなサウンドとその中心にそびえ立つ歌声の唯一無二さをこれでもかと浮き彫りにさせるシーンとなった。

次なるブロックでは楽器隊が一人ずつ「Cherry咲く勇気!!」のサビをアカペラで歌う寸劇でコミカルに転じさせると、みくとゆうきがツインヴォーカルを務める「NYAPPY in the world 2」でスカを香らせ、青春パンク感のある「FUNKY FRESH DAYS☆」で再び会場に熱気を充満させていく。
「羽田声を聴かせろ! 全然聴こえねえぞ!」と挑発するみく然り、向かい合ってアイコンタクトを取りながらグルーヴしていく楽器隊もこの日はいつも以上にバンド然としている様が印象的だ。20年以上のキャリアを誇るバンドに対して的確な表現かはさておき、今のアンカフェには初期衝動のようなフレッシュさがある。
ヘッドバンギング必至な初期からのキラーチューン「ダックのマジカルアドベンチャー」、サウンドの厚みとダイナミズムさが痛快な「プッシンプリン」、輝喜の跳ねるドラムからtakuyaのタッピングに繋がるメタリックな「AROMA」。「全力出し切って帰ってくれよ!」とアジられたカフェっ仔の振り回すタオルが壮観だった「BondS~絆~」とあっという間にライヴは終盤へ。

まさにかゆいところに手が届く申し分のないメニューの中で印象深いのは、これまで以上のアツさだった。2DAYSワンマン特有の体力の温存のような逆算的なものは皆無で、終盤に向かうほどに叫び倒し、「お利口にしてんじゃねえよ! もっと声出せ!」と煽り倒すみくの姿がやけに新鮮に映る。それは楽器隊も同様で、ショーアップされたステージ以上にライヴハウスでしか織りなせない熱気を渇望していることは明らかだ。交差するレーザービーム、シャンデリアもラグジュアリーな空気を演出する役目を担っているものの、本質的には5人が発する生の熱量が終始空間を支配していた。だからこそ華美な装飾も大会場にしっかりと意味のあるものとして映えていたのだろう。
本編ラストは「全力で届けたいと思います」と告げた「ラフ・ソング」。巡り合えた奇跡に真心をこめる1曲はキャノン砲から飛んだテープとオーディエンスの大合唱が鳴り響いた。曲中に聴こえた「ずっと待っててくれてありがとう」、「ずっと会いたかったよ!」というみくの素直な言葉はいつまでも耳に残るエモーショナルな温かみを残し、それはいつしかメンバーを再び呼ぶ声へと繋がっていった。
グッズのTシャツに着替えたメンバーが再登場し贈られたアンコールは3曲。「覚醒ヒロイズム〜THE HERO WITHOUT A “NAME”〜」、「JIBUN」でアッパーに駆け抜けると最後はついに「スマイル一番イイ♀」を披露。重なる音の塊の説得力と呼応しあう熱量を確かめるように、イヤモニを外して笑顔で会場を見渡すみくの表情も柔らかい。決して感傷的ではなく、今の5人のベストを更新していくんだという覚悟を感じさせる至高のエンディングとなった。

最後はメンバーがそれぞれマイクを取り観客に語りかける。
「今こうやってアンカフェがまだライヴをできてることが本当にすごいことなんだって、自分にとっては。そして本当にありがたいことで幸せなことだなって思ってます!(中略)みんな本当に頑張り過ぎないでね? 休まないとダメだよ?辛い時は。そして必ずまた一緒に僕たちとアンカフェのライヴで会いましょう!」(輝喜)
「みんなとメンバーとスタッフさんとまたこうやってできたのがすごい嬉しくて、こういうことをこれから先もずっとやっていけるのかなって。これから先もアンカフェが何かするときは是非みなさんまた来てください!」(ゆうき)
「アンカフェのライヴでしか得られない栄養素ってあると思うんですよ。ビタミンDでもなくAでもなく…あ、Aかもしれないアンカフェだし(笑)。これからもアンカフェを愛してみんなお肌ピチピチになってください!」(カノン)
「ステージに立ってて、このメンバーとみんなと一緒に過ごす時間がすごく尊いというか…すごく愛おしいなと感じました。」(takuya)
「同じ思い出を共有することってすごいことだって思って。みんな歳とったら思い返すわけじゃないですか? 今日のことを。…僕もきっと思い出すんだろうなぁって思います。(中略)「YOU」って曲で頑張り過ぎるな、みたいに言ってるんですけど…歳とってくると解るね。やっぱ頑張らなくちゃダメだね(笑)。頑張るためにも今日みたいな思い出を大事にして思い返して、一緒に幸せな人生を送れたらいいなって思いました。これからもよろしくお願いします。」(みく)
この夜に至るまでみくはアンティック-珈琲店-を続けていきたいと語っていた。奇跡の復活からその先へ。何気なくも未来を約束する大きな発言はこの夜の全てを集約するものだった。メンバー全員が未来を見据える言葉を残し2DAYS初日は幕を降ろした。

かと思ったのも束の間、再暗転したステージ中央には奇妙な仮面のシルエットが映写され雷鳴が鳴り響く。どよめきを助長する鐘の音がシンフォニックで荘厳なSEに変わると逆光に導かれるように白装束に八咫の仮面を被った5人が登場する。その姿は謎の新人バンドとして注目を集めていた“八咫ノ仮面 -YATANO KAMEN-”だ。
センターに鎮座するヴォーカリストの声はヴォイスチェンジャーのエフェクトが施されていて肉声を窺うことができない…のだが、あまりの怖さに泣きじゃくる子どもの声が会場に響き渡る不足の事態に…。すかさず「怯えるな。安心しろ。お前たちの心を奪うことはない。狙っているのは…財布の中身だ!」と爆笑をさらうアドリブ力と発言から察するに、中の人物は軽妙で心優しい可能性が非常に高い。
「仮面の下の正体を探ろうとするなよ? 仮面の下にあるのは…汗とメイク崩れだ!」とさらに沸かせると、ついに同名義でドロップされ話題を巻き起こした「祈奉-KIBOU-」をプレイ。グロウルやホイッスルを多用したヴォーカリゼイションとハードで獰猛なサウンドで会場を飲み込んでみせた。正直なところそのクオリティはネタの範疇ではなく、彼らが音楽に誠実に対峙していることが明白だ。もはやここがアンティック-珈琲店-のライヴ会場だったとは思えない。無言でシュールに捌けていく様然り、結成から22年、現在進行形でやりたいことを貫いているバンドからはこれまで以上に未来を求めているマインドが伝わった。
思えば翌日公演のサブタイトルは「昔を振り返っても明日は無いけど、ボクは忘れないo(≧∀≦)o」だ。決意表明にも受け取れるその言葉通りに最新形のアンティック-珈琲店-を提示してくれることだろう。そしてなんと12月6日の仙台darwinから年明け2月8日Spotify O-EASTまで計4本のツアーも決定したようだ。ハイペースではなくともバンドを継続するという決意を早くも体現したアンカフェ。その先に広がる景色を心待ちにしたい。
◆セットリスト◆
01. Cherry咲く勇気!!
02. メープルガンマン
03. Spring Snow
04. テケスタ光線
05. スノーシーン
06. 七色クレヨンで描く光
07. 輪廻の罪
08. エトセトラ
09. NYAPPY in the world 2
10. FUNKY FRESH DAYS☆
11. ダックのマジカルアドベンチャー
12. プッシンプリン
13. AROMA
14. BondS~絆~
15. ラフ・ソング
En1
01. 覚醒ヒロイズム〜THE HERO WITHOUT A “NAME”〜
02. JIBUN
03. スマイル一番イイ♀
En2
01. 祈奉-KIBOU-
(文・山内秀一/写真・菅沼剛弘)
【ライブ情報】
●LIVE Cafe 22nd NBD parade☆2025-2026 o(≧∀≦)o
2025年
12月6日(土)宮城・仙台darwin
2026年
1月4日(日)大阪・OSAKA MUSE
1月5日(月)大阪・OSAKA MUSE
2月8日(日)東京・Spotify O-EAST
オフィシャル先行二次受付(抽選)
受付期間:5月31日(土)12:00~6月15日(日)23:59
【リリース情報】
●アンティック-珈琲-店-『Cherry咲く勇気!! -Re:Bloom-』
Music Video
●八咫ノ仮面 -YATANO KAMEN-『祈奉』
Music Video