2025.04.29
Jupiter@新宿Wild Side
Jupiter LIVE「Ecliptic」

2025年1月公演よりベーシスト・CEROが加入し、新体制で動き出した技巧派メロディックメタルバンド、Jupiter。現メンバーで生み出した初のシングル作品『Ecliptic』を携え、同タイトルを冠した全6公演のツアーが、4月29日に新宿Wild Sideで開幕した。

LEDビジョンに映し出された『Ecliptic』のアートワークを背景に5人が姿を現し、エモーショナルなギターフレーズから始まる「Blessing of the Future」でスタートを切ったこの日。そのタイトルや歌詞が示す通り、希望や未来への信念が描かれたこの楽曲は、遡ればJupiterのデビューシングル(2013年)でもあったわけで、新たな始まりとなる当夜の1曲目を飾るにふさわしいと言えよう。そこに続いた、ドラマティックな展開を見せるキラーチューン「ARCADIA」、KUZE(Vo)のハイトーンヴォイスが美しく響いた「Warrior of Liberation」もまた“光”が軸であり、Jupiterの根底にあるものを提示する序盤ブロックとなった。

KUZE

新作『Ecliptic』と響きが近いタイトルであることから、1990年リリースの名盤『Eclipse』(イングヴェイ・マルムスティーン)を例に出し、「次は『Eclipse』に負けないくらい、カリカリのヘヴィメタルになっているのでね」というKUZEの言葉を経て放たれたのは、「My Enemy」。ディストーションの効いたギターリフと疾走感のあるリズムセクションに英詞の歌が乗る、まさに言葉通りの1曲で、さらに上手のHIZAKI(G)、下手のTERU(G)がお立ち台に上がり双璧感溢れるプレイで突入した「Angel’s wings」では、シャウトとクラシカルなメロディで見事なコントラストを魅せた。音楽的にはもちろんメッセージの観点からも、不安や恐怖に覆われた状況から抜け出し、生きたいと願う強い思い、怒りや絶望を乗り越え、再生と前進への意志を歌った2曲の流れは実に秀逸だ。

前半戦のフックとなったのが、永遠の愛を歌う美しくも情感的な「No cry no more」。ミディアムテンポで聴かせるサビの展開では、HIZAKIとTERUが手をひらひらと舞わせながらプレイする華麗なるシーンも。真っ赤に染まったステージにオリエンタルなムードの同期が流れ、「新宿! 思いきりかかってこい!」というHIZAKIの煽りを合図に、シンフォニックかつ攻撃的な「絶望ラビリンス」で再びの場面転換。DAISUKE(Dr)が叩き出す確実でパワフルな高速ドラミングが冴え渡り、フロアにヘドバンを巻き起こせば、HIZAKI、CEROがサイドステージに立ち、至近距離でオーディエンスのさらなる熱狂を誘った。

HIZAKI
TERU

現体制でのステージは、当夜がわずか3本目。CERO自身が「心から楽しさが滲み出ている」と述べたように、様々な場面で笑みを見せながらプレイしていた姿も印象深い。そんな彼が加入し、メンバーらが「究極の神曲ができた」と語る最新ナンバーがここで披露されることに。ツインギターのハモリと掛け合いから始まった表題曲「Ecliptic」は、TERU、CERO、HIZAKIの順で3人のソロパートが組み込まれているほか、メロディアスかつ激しい展開のなか聴こえてきた〈未知なる明日を信じて〉〈未来の先へ〉といったリリックも印象的。続いた、同シングル収録の「Bleeding Vision」は、印象的なメインのギターリフや、華やかなツインギターソロはもちろん、皆で飛び跳ねたBメロセクション、間奏でのトリッキーなユニゾンプレイなど、随所に新鮮さも感じられる1曲だった。

圧倒的なスピードで疾走する、パワフルで壮大なメロディックメタル「Breath of Heaven」を皮切りに突入した本編終盤ブロック。「The Spirit within me」「Symmetry Breaking」を繰り出し、「全員で一つになれるか!? 全員でかかってこい!」というHIZAKIの煽りも飛び出しながら、最後には「皆がずっと昔から愛し続けるこの曲を」(KUZE)と、Jupiterのテーマそのものとも言える“愛と美”が描かれた「The Birth of Venus」を。オーディエンスのシンガロングとともに、ドラマティックな本編ラストとなった。

CERO
DAISUKE

アンコールでは、4月10日に誕生日を迎えたTERUへ、プレゼントが贈られるサプライズの一幕も。そして、「呼んだからにはさぞかし大暴れしてくれるんでしょうね!? 知っている人はちゃんと同じキーで歌ってください!」(KUZE)と、とてつもなくハイトーンの歌唱が求められる「SHOW MUST GO ON」をプレイするというドSぶりを見せれば、緩急を巧みに使い分けた「B.L.A.S.T」でさらなる熱狂を描き出し、メロディックメタルを前面に押し出した「Theory of Evolution」をもって、〈I’m never gonna change my mind loving you 永遠の誓いを〉と締めくくったのだった。

この夜を振り返ってみれば、希望や未来への信念が描かれたデビューシングル「Blessing of the Future」に始まり、進化と再生をテーマにバンドの新章の幕開けを象徴するKUZE加入後第1弾シングルだった「Theory of Evolution」に終わったわけで、その中間地点に現メンバー5人で生み出した初作品の楽曲が据えられた。それらが示しているのは、このツアーが紛れもなくJupiterの新たな始まりであり、未来へと突き進む彼らの明確な意思の表れだと捉えて間違いないだろう。

「本数の割に期間の長いツアー」とTERUが述べていたように、このツアーは5月30日の西川口、31日の柏公演を経て、当レポート公開タイミングでの次回公演は6月13日の梅田Zeela。「ツアーに向けてCEROがたくさん曲を覚えてくれたので、今までやっていなかった曲も(今後のステージで)増えていくと思います。楽しみにしていてください」「もっともっとパワーアップして帰って来るので、期待していてください!」(HIZAKI)とのこと。新生Jupiterの進化の過程を見逃さないでほしい。

◆セットリスト◆
01. Blessing of the Future
02. ARCADIA
03. Warrior of Liberation
04. My Enemy
05. Angel’s wings
06. No cry no more
07. 絶望ラビリンス
08. Ecliptic
09. Bleeding Vision
10. Breath of Heaven
11. The Spirit within me
12. Symmetry Breaking
13. The Birth of Venus

En
01. SHOW MUST GO ON
02. B.L.A.S.T
03. Theory of Evolution

(文・金多賀歩美/写真・Litchi)


【「Ecliptic」MV FULL】

【リリース情報】
●New Single『Ecliptic』
2025年4月30日(水)通販先行発売(※5月3日より順次発送)
2025年6月4日(水)一般発売

[通常盤](CD)ZRJP2507 ¥1,980(税込)
[限定盤](CD+パンフレット24P+LIVE DVD)¥5,500(税込)

[CD]※共通
01. Ecliptic
02. Bleeding Vision
03. Eradicate
04. Ecliptic -instrumental ver.-
05. Bleeding Vision -instrumental ver.-
06. Eradicate -instrumental ver.-

[限定盤DVD]
01. Warrior of Liberation
02. My Enemy
03. Breath of Heaven
04. B.L.A.S.T
05. Theory of Evolution

【ライブ情報】
●Jupiter LIVE「Ecliptic」
6月13日(金)梅田Zeela
6月14日(土)今池3STAR
6月27日(金)初台DOORS

●Jupiter Live in Bangkok 2025(※初のタイ単独公演)
8月2日(土)Mr.FOX LIVE HOUSE

●Jupiter Presents「Divine Ceremony」vs Mardelas
8月12日(火)初台DOORS

Jupiter オフィシャルサイト