最上川司

ファンの皆さんと一緒にテレビに出て、紅白に出る

歌詞の面では「飛んでけ花笠」は自分への応援歌でもあり、聴いてくださる方への応援歌ということですが、一番のお気に入りフレーズを挙げるならどの部分でしょう?

最上川:〈でもさくらんぼだけは奪い合い〉ですかね。僕の中では深い思い入れがありまして。小さい頃に、近所の農家の方が売れなくなったさくらんぼをいっぱいくださったんですよね。雨に当たって割れちゃったり、大きさが不揃いだとか、熟し過ぎたものとか、そういうものをいっぱいくださって。さくらんぼというのはすごく高価なものですから、それをテーブルの上に新聞紙を敷いてザーッと広げて、家族で争奪戦のように取って食べていたのが、今思うと懐かしいですし、あったかいシーンだったなぁと思えて涙ぐんじゃいますね。

2番の歌詞は山形県人の風習も入っているということで。水道工事のくだりはどういう意味なのでしょうか?

最上川:食いついていただいて、ありがとうございます! これはですね、まず大将軍様という神様が家の周りを3年に一方角ずつ回っていると言われていまして、例えば水道が壊れて工事をしなくちゃとなった時に、神様がその方角にいるといじっちゃいけないんです。それをやっちゃうと災いが起こると言われていまして。そんな時は祈祷師の方を呼んで、お祈りしてもらってお札を貼ったりするんですよね。あとは、神様がたまに遊びに行く期間があると言われていて、それが面白おかしい部分なんですけど、そういうものを歌詞にしちゃいましたね。大将軍様に対しての敬意を持ちながらですけど。

なるほど。そして、「飛んでけ花笠」では踊りをかなり練習していた様子でしたよね。「目が回る」というツイートもお見かけしました(笑)。

最上川:あ〜! 1曲通してだったら目が回ったりはしないんですけど、練習で何回も続けてやっていたので、目が回って吐きそうになりましたね(笑)。これは続けて何回も練習できないなぁと思いました。ステージでは大丈夫なんですけどね。

イントロで踊りながら、タイトル通り花笠を客席に飛ばしていますが、あのアイデアはどんなところから?

最上川:元々は振付師の方に言われるまで、花笠を持つこともないだろうと思っていたんです。まぁ、あったらいいなくらいにしか思っていなかったんですけど、「イントロで花笠を持ちましょう」と言われて、「お、来たか!」と思って。それで「途中で飛ばします」と言われて、どこへ飛ばすのかな? PAさんの脇っちょくらいでマネージャーにキャッチしてもらおうかなとか考えていたんです。その後、最初のキャンペーンの時に、レコード会社の方に「花笠を飛ばすんですけど、キャッチしてもらっていいですか?」という話をしたら、「僕でもいいですけど…」と言われて、その時にピンと来て「お客さんに飛ばすので、返してもらいに行ってもらっていいですか?」「大丈夫ですよ」ということで、こうなりました(笑)。なので、初披露当日の現場で決まりましたね。

8周年ワンマンを観ていて、飛ばすけど返してほしいということをお客さんに事前説明するくだりが面白かったです(笑)。

最上川:あれがすごくウケるんですよね。今、鉄板になっていまして。まず結婚式のブーケトスの話をして、「ブーケを受け取った人は喜んで持ち帰りますけど、僕が投げた花笠は返してください」と言うと、すごくウケるので、これからも毎回話そうと思っています(笑)。

この記事でネタバレしちゃいますけど(笑)。

最上川:そうですね(笑)。皆が触って5年後くらいにはツルツルの花笠になっているんじゃないかなと思います。場数を重ねて、お客さんと一緒にどんどん曲がいい感じに仕上がっていっているので、あとは発売してから、お客さんが歌詞を見て覚えて来てくれて、そこからどうなるか楽しみですね。もっともっと声援が飛び交って、そしたら周りの人が「何の騒ぎだ?」と寄ってきて、人が人を呼んで、メディアも呼ぶと。そして、ファンの皆さんと一緒にテレビに出て、紅白に出ると。僕の中ではそういうことになっております…!

ひょっとしたら自分が演歌歌謡界を変えられるんじゃないか

c/w曲「許されぬ恋」はシティポップ感満載の80年代テイストに仕上がっていますね。このような方向性の楽曲を作った発端というのは?

最上川:まず僕が作曲した時点では、単純にメロディーの良いものをと思って、アコースティックギターで割とすぐできちゃったんですけど、ディレクターの方と話している中で、今おっしゃったようなまさに80年代のサウンドで、ちょっと古いけど人気のある楽曲みたいな雰囲気を目指していきましょうということになりました。この曲のアレンジに関しては、僕は全く触れていなくて、どんなふうに仕上がっていくのかワクワクしながら待っていましたね。

そうなんですね。

最上川:自分でもすごく気に入っています。SHUN.さんとも話していたんですけど、サビに行く前に入っている音とか、いかにも80年代だよねと。あと、ギタリスト視点では、ソロの音とかが80年代サウンドをすごく狙っている音色だと言っていました。総じて今回のシングルはメイン曲もc/w曲も、普通じゃないというのを意識したところはあると思っています。何か耳に引っ掛かる要素でお届けしたかったというか。

それこそ前回のインタビュー時に、「他の演歌歌手の皆さんと同じスタイルではなく、ハイブリッドなスタイルで歌っているので、サウンドも攻めてもいいんじゃないか」と言っていましたが、この根本の考え方は今も変わっていないんだろうなと今作で感じていました。

最上川:そうですね。このスタイルでやるからには、やっぱり演歌歌謡界に新しい風を吹かせたいなというのがあるので、気持ちの中では殴り込みに行くぞという感じなんですよね。もし大御所の演歌歌手の方々と実際にご対面したら、もちろん腰を低くご挨拶しますけども(笑)。気持ちは戦いに行くという感じです。ひょっとしたら自分が演歌歌謡界を変えられるんじゃないかなというくらいに思っています。

ちなみに、「許されぬ恋」は演歌歌手っぽくない歌い方で大丈夫かなと、レコーディング前にちょっと悩んだそうですね。

最上川:今の話もありつつ、自分はヴィジュアル系とは言え演歌歌手なので、この歌い方はどうなんだろうというのは実際思っていたんですけど、仮歌録りの時にリーダーのkazuyaさん(THE MICRO HEAD 4N’S/最上川司のプロデューサー)が来てくれて、歌い方をちょっと悩んでいるという話をしたら、「この曲は歌詞的にもコブシを回す感じではないんじゃないかな?」と助言をいただいて。そのお陰で吹っ切れたというか、これは演歌っぽく歌わないほうがいいなと。kazuyaさんの助言と自分の気持ちが一致して、そういう歌い方になりましたね。

この楽曲の作詞は麻こよみさんですが、歌詞を作家の方にお願いする場合は、全お任せでしょうか?

最上川:はい。曲をいただく立場という本来の演歌歌手の姿というか。でも、まさか不倫の歌が来るとは。直接「不倫の歌です」と説明を受けたわけではないですけど、多分これはそうですよね? 聴く方に自由に捉えてもらっていいとは思うんですけど、僕は不倫か、あまりにも年齢差のある許されぬ恋か、どちらかかなと。

〈二人が もう少し 早く会えたなら 幸せつかめた〉〈たとえ世界を 敵に回そうとも 君をこの手に 奪うつもりだった〉とあるので、不倫の確率が高そうですよね。

最上川:そうですよねぇ。僕も不倫の歌を歌う年齢になったかと思って(笑)。でも、やっぱり書いていただいた曲というのは、自分にはない世界を楽しませていただけますね。〈好きだよ〉とか、恥ずかしくて自分には絶対に書けないフレーズですけど、今はファンの皆さんの顔を見て〈好きだよ〉と歌うのが楽しくなってきました。

〈君が好きだよ 好きだよ〉と繰り返す、2回目の〈好きだよ〉の優しい歌い回しが素敵だなと。

最上川:ありがとうございます…! 同じフレーズを2回同じ歌い方はつまらないなと思いまして。例えば片方を伸ばすなら、もう片方は伸ばさないとか、それで面白みが十分出ますし、囁くように歌ったらファンの方がコロッと来るんじゃないかななんて思いながら(笑)。やっぱりファンの方を思いながら歌った部分がありますね。

ところで、前回のインタビュー時に、鍵盤でベースを左手で弾きながらメロディーを歌って録音することもあると話していましたが、この7年の間に演歌の作曲方法で変化したこと、新たに取り入れたことはありますか?

最上川:そこはあまり変わってないかもしれないですね。メロディーの部分よりは歌詞ですかね、何でもかんでもネタにしようという考え方になっちゃいまして。例えば今ここにある口紅のケースを落としてみると、カランコロンという音がしましたけど、これで口紅にまつわる歌詞が書けないかなぁとか、頭がおかしくなるくらいそういうことを考えています(笑)。何でも歌にしようとしています(笑)。

やはり歌メロから作っていますか?

最上川:そうですね。先ほどおっしゃった左手で鍵盤を弾きながらという時もありますし、今みたいなカランコロンという歌詞とメロディーを同時に仕上げちゃったり。…全部ネタにしようとしちゃっている自分が怖いです(笑)。あと、例えばYouTubeで演歌歌手の方の映像を観たりするんですけど、この人の歌い方だったらこういう曲を歌ったらいいのになとか、なんか上からで申し訳ないですけど(笑)、勝手にそんなことを考えちゃったりします。

様々なものの見方が、作る側の視点なんですね。さて、7月15日には山形国際ホテルで「最上川 司 移籍第一弾シングル発売記念LIVE SHOW「飛んでけ花笠!心うるがす愛の歌」」が開催されます。山形自体は今年も既にイベントやキャンペーンで行っていると思いますが、ワンマンはいつぶりでしょうか?

最上川:多分、コロナ禍になる前のディナーショー(2019年6月2日「最上川司 デビュー4周年記念コンサート」@山形国際ホテル)以来4年ぶりだと思うんですよね。

心持ちとしては一段と気合が入るのではないでしょうか。

最上川:ワンマンは東京でばかりやっていたので、久々に地元の方に観てもらえるのが楽しみですね。今、色々とネタを考えていますけど、先日の8周年ワンマンをもちろん超えつつ、地元の要素も取り入れていきたいなと思っています。県外から観に来てくださる方も多いので、わかりやすい地元ネタとかもやっていきたいなと。

最後に、最上川司として今後やってみたいことを教えてください。

最上川:何でしょうね…ファンの皆さんと一緒に紅白に出ることしか考えていなくて。あ、そろそろいい加減、芋煮会をやりたいですね。皆さん服が臭くなるとか、ヒールを履いていけないとか、色々な問題があると思うんですけど(笑)。

(文・金多賀歩美)

最上川司

オフィシャルサイト

リリース情報

New Single『飛んでけ花笠』
2023年6月28日(水)発売
(日本クラウン)

[CD]CRCN-8578 ¥1,400(税込)

収録曲
  • 飛んでけ花笠
  • 許されぬ恋
  • 飛んでけ花笠[オリジナル・カラオケ]
  • 許されぬ恋[オリジナル・カラオケ]

ライブ情報

●最上川 司 移籍第一弾シングル発売記念LIVE SHOW「飛んでけ花笠!心うるがす愛の歌」
7月15日(土)山形国際ホテル 3階 富士の間(東)