大きな壁を一つ乗り越えたTHE MICRO HEAD 4N’Sの今と、運命に導かれた新作『まだ僕らを知らない君へ』
2023年11月に『NEW ERA -the beginning-』、2024年5月に『NEW ERA -evolution-』と、二作のアルバムを立て続けに発表したTHE MICRO HEAD 4N’Sが、早くも次なる一手として初のメジャーレーベルからシングル『まだ僕らを知らない君へ』をリリースする。2月よりSHUN.(G)が療養中のなか、不安定な状態だったというバンド自身が、5月開催のツアーで大きな壁を一つ乗り越え、結束力を高めることとなった。あまりにも赤裸々に語られた、そこに至るまでの日々。そして、真の意味で攻めの姿勢で突き進む彼らの新作は、運命的とも言える作品となった。
絶好調にノッている時のマイフォをもう1回見せたい(kazuya)
マイフォとしては色々あった2024年上半期。まず、2月のバレンタインライブ(OFIAM、THE MICRO HEAD 4N’Sの二部制ワンマン)がSHUN.さん欠席による4人体制での最初のステージでした。
KEKE:去年の9BALL GAMESの時にZEROさんがコロナで欠席したこともあったので、僕としては4人でステージに立つということ自体は、「うわ、4人か…」みたいな感じはなくて。正直2月時点では、SHUN.さんがいない状態がこの先しばらく続くのか、今回だけなのか、わからない状態でもあったので、ちょっと言い方は変ですけど、風邪で1回休んでいるくらいの感覚だったんですよね。ただ、僕は常日頃からプライベートでもSHUN.さんと一緒に過ごしていたので、そういった寂しさはありましたし、OFIAMはSHUN.さんの語りが重要な部分だと思うので、観ていてSHUN.さんの声が鳴っているのにいないのは寂しいなという感じはすごくありましたね。
ZERO:俺が休んだ時は、下手のコンビとしてSHUN.さんが頑張ってくれたと思うので、今回は俺が頑張らなきゃなと。その先はどうなるかわからないなりにも、必死でやった部分はありますね。
TSUKASA:SHUN.さんがいないというところで考えると、やっぱり寂しかったんですけど、久しぶりのOFIAMのステージは新鮮でしたし、どちらも自分たちではあるものの、ツーマンという形は楽しかったです。
kazuya:例えばマイフォを結成した2011年、この先CDビジネスが厳しくなることは予測できたし、コロナ禍になった時も未来を色々予測しながら動いていて。僕、予測能力がそれなりに高いので、SHUN.ちゃんが休んでからも、こういう未来が予測できていたから、寂しい云々よりその先の未来をどうやって作ればいいのかということの方が不安で。探り探りやった感じでしたね。とにかくマイフォに関しては試行錯誤でした。
KEKE:kazuyaさんはやっぱり大人だなと思いました。リーダーの立場として、「どうしよう」じゃなくて「やらなきゃダメだよね」と、黙々とやるべきことをやっている姿は、さすがだなと。そういうふうにkazuyaさんの背中を見ていましたね。
kazuya:ただ、OFIAMの方が100倍キツかったです。どうしても彼の声がメインで入ってくるじゃないですか。それが、僕はやっていて心が痛いというか。SHUN.ちゃんが復帰しないのであれば、正直言ってOFIAMはもうやりたくないなと思っちゃいましたね。
確かに、あの時は胸が詰まる思いになりました。
kazuya:もしやるんだったら、形を変えてですね。今のフォーマットで、同期でSHUN.ちゃんの声を聞くのは、僕はちょっと耐えられないかな。ギターがいないことの100倍キツい。だって僕、17歳からほとんどずっと一緒にいたから、アイツの声は頭に残っているわけですよ。特にマイフォになってからの13年間は、音楽面というよりも、活動していく上での様々な面で僕もそれなりにストレスを抱えるわけで、それを唯一共有してくれる、僕の荷物を半分持ってくれるような人だったし。だから、毎日聞いていたその声が2月から聞けなくなって、久しぶりに聞くのがOFIAMの語りの声というのは、ちょっと僕は辛かったかな。
4月には、ReNY10周年&wyse25周年イベント「ROCK BATTLE」で、初めてマイフォとFANTASTIC◇CIRCUSの対バンが実現しましたが、KEKEさんとしてはファンタとの対バンは目標の一つでもありましたよね?
KEKE:そうですね。かず兄とSHUN.さんが今FANTASTIC◇CIRCUSで活動されている中で、マイフォの良さをもっとファンの人に知ってもらって、マイフォにちょっとでも流れてほしいという思いが加入当初からあったんですよね。もちろん一筋縄ではいかないと思いつつも、すごく良いライブをして、皆さんの心に訴えかけることができたら、少しは響くのかななんて考えていて。そういった面で「やらせてください」とずっと言っていたんですけど、実際にこの2バンドをぶつけるのは簡単なことじゃないので、実現させてくれた方々には本当に感謝しています。
kazuya:これを決めたのは別に僕の力ではないんですけど、僕は常日頃からKEKEのために何かやってあげたいという気持ちがあるので、ファンタチームにも以前から「KEKEがやりたがっているから、お願いできますかね?」みたいな話はしていたし、9月にKEKEが出る「VOCAL SUMMIT 2024」も、1年前からずっと「オープニングアクトでいいから、出してやってくれんかな?」と言っていたり。僕はやれることをやるだけで。
結果どちらも実現して。
kazuya:対バンは叶ったんですけど、あの日は良くなかったなと思っていて。最近何十%かは回復したと思うんですけど、バンド自体が不安定だったと思うんですよね。SHUN.がいなくなって、なんか一つになれていないマイフォが、トラブルも含めて露骨に出ていたのかなと、正直ガッカリでした。ただそれと同時に、支えてあげようというファンの人たちの強さをめちゃめちゃ感じて。それに対して僕らももっと返さなきゃいけないのになと、終わった後にすごく考えましたね。
そうなんですね。
kazuya:その日の深夜にKEKEと喋っていて、KEKEが悔しくて泣いちゃったんですよ。気持ちはわかるなと思って。本当のマイフォを見せきれなかった、自分たちの心の弱さ及び考え方の弱さが露骨に出ていたので、僕的にも悔しいですよね。マイフォってもっと良いバンドだと思うんですよ。だけど、その良さが半分も出ていない気がして。ボロ負けだなみたいな。それはメンバーが悪いというよりも、リーダーとして一つにまとめあげられなかった自分の敗因でもあります。
KEKE:でも、あのライブをやってメンバーの考えが変わったり、失敗を今は成功に導くための何かに変えられているので、本当に出て良かったなと思います。
言葉は簡単になってしまいますが、いつかリベンジを果たしたいですね。
KEKE:はい。
kazuya:絶好調にノッている時のマイフォって、良いバンドだと思うんですよ。だから、それをもう1回見せたいなと思いますよね。
前進すること、攻めることが最大の守備だという考えのもと、5月には4人体制で完成させたアルバム『NEW ERA -evolution-』の発売とツアーがありましたが、今までのお話やツアーファイナルのMCを踏まえると、攻めることを決めてレコーディングに入ったものの、その後も不安定な空気が続いていたわけですね。
kazuya:そうですね。多分それは具体的に言語化してコミュニケーションが取れていなかったから、各々思うことがあったんだと思います。
KEKE:誰でも大人になればなるほど、核心を突くことって言いづらくなっていくと思うんですよね。今回、僕が皆に「この先どうしていくんですか?」と切り出しただけですけど、それってめっちゃ勇気が要ったんですよ。僕が見て見ぬふりをすれば、なんとなく続いていくものかもしれないのに、わざわざ結果を早めるような一言を言うのがめちゃくちゃ怖くて。
ものすごく覚悟が要ることだと思います。
KEKE:リハやライブをしていても、上辺では「よっしゃ、行こうぜ!」みたいな感じなんだけど、それが芯を食ってないみたいなのがずっとあって。ライブをやっていてファンの人に申し訳ないし、こういう不安定な状態がTHE MICRO HEAD 4N’Sなんだって思われるのも嫌だった。やっぱり僕はマイクで言葉を発するポジションだから、ちゃんと本心でぶつかっていきたいんですよね。だから余計に、その不安定な状態が気持ち悪くて。ここでハッキリさせて、このツアーはちゃんと自分らの気持ちを伝えて回りたいと思ったからこそ、皆と話し合いました。…いやぁ、マジで怖かったっすよ!
そうですよね。
KEKE:名古屋公演の前日に話したんですけど、もしあそこで「もう解散だよ」とか「1年で終わりでしょ」とか言われていたら俺、きっと翌日のライブで死んだような目になってた(笑)。
全員:(笑)
KEKE:誰がどう見たって、KEKEは絶対マイフォを超楽しんでやっているだろうって見えるのに、マイフォがなくなるってなったら、俺マジで素直だから、元気なさ過ぎてもうヤバいっすよ。本当に。
その話し合いが結束力を高めたというところで、それこそファイナルの終演後、KEKEさんが「ファイナルと初日、月とスッポンくらい違わなかったっすか!?」と言っていて(笑)。リズム隊のお二人としては、話し合い以降のステージでバンドの空気が変化した実感はありましたか?
ZERO:やっぱり言葉で発することによって、一体感は増したと思いますね。多分俺、何を考えているかわからないタイプだと思うんですよ。でも、俺はTHE MICRO HEAD 4N’Sを続けている中で、例え1対4でも戦っていくつもりでやってはいたので、伝わらないかもしれないですけど、常に俺の中では本気で全力ではあるんですよね。ただ、言葉で発してみないとわからない、伝わらない部分はやっぱりあると思うので、話し合いをした後のライブは楽しさが増したなとは思っています。
TSUKASA:KEKE君が率先して話し合いの場を作ってくれて、言いづらかったことも皆で話せて、そこからステージも光り輝いてきた感覚はありました。自分的にもマイフォを13年やってきて、このアットホームな感じが大好きで続けているような部分があって。それと、kazuyaさんをはじめメンバーに道を開いていただいた演歌活動も、恩返ししていかないといけないなという気持ちでやっているので、再びこの気持ちを開花させてもらったなと思います。
過去を背負いながらやっているということを表現したかった(KEKE)
この度、初のメジャーレーベルからシングル『まだ僕らを知らない君へ』がリリースされます。表題曲は昨年10月の主催ツーマンイベント「FACE TO FACE」で初披露しましたが、11月発売の『NEW ERA -the beginning-』には収録されず、そのリリース時点では、次の作品『NEW ERA -evolution-』に入れる予定だったんですよね?
kazuya:元々1枚のアルバムの予定が2枚に分かれたから、2枚目の『NEW ERA -evolution-』に飛ばして、そこで作ろうと思ったらタイアップの話が来たから、また飛ばしてみたいな流れです(笑)。
KEKE:2回飛ばされた曲(笑)。でも、タイトルはタイアップの話が具体的になってから決まったんですけど、歌詞は書き直してないんですよね。去年録ってから新しく足した部分や、メロディがちょっと変わったので録り直した部分は多少あるんですけど、基本的には去年のアルバムに入れるつもりだったから、もう録り終えていて、歌詞も書き終えていたのに、たまたまタイアップの話が来て、知らない人たちに向けてプロモーションしていくっていうこの流れが、なんか俺は感じるものがあるというか。2回飛ばされたけど、なるべくしてなったものだなと感じますね。
運命的ですね。初メジャー&タイアップに向けて作った曲ではなく、それにふさわしい曲を選んだという、ちょっと珍しい形ではありますが、選曲はすんなり決まったのでしょうか?
kazuya:俺、「REGRET」(『NEW ERA -evolution-』収録)と結構悩みましたよ。だけど、テレビとかメディアで、いわゆる流行歌として使われるようなポジションになるわけだから、サビ頭の方が分かりやすいと思うし、「REGRET」は好きなんですけど、あれだとイントロ飛ばされちゃうなとか色々考えるじゃないですか。でも結局、皆に選んでもらったよね?
KEKE:「REGRET」と「まだ僕らを知らない君へ」どっちも良さがあっていいよねとなって、ディレクターさんに聞いたら「こっちでしょ」と。その時点でそこまでじっくり聴いていたわけではないにもかかわらず、「まだ僕らを知らない君へ」のメロディや歌詞が頭に残っていたから、タイアップで聴いてくれた人にも残るんじゃないかなということで。
なるほど。ポップスに振り切った楽曲ですが、kazuyaさんとしては元々どんなイメージで作ったのでしょうか?
kazuya:元々はもうちょっとロック色が強くて、コード進行もシンプルで、打ち込みもそんなに入ってないギターロックみたいな感じだったんですけど、メディアに出るってことで、複雑かつポップな感じにコード進行を全部変えて、ストリングスやグロッケン、ウーアー(コーラス)とかを入れて、一気にポップスに昇華させました。多分、アレンジは過去最高に時間がかかりましたね。僕、音楽理論を1から10まで全て知っているわけではないので、ストリングスがどうやったら綺麗に鳴ってくれるんだろうとか、1週間ぐらいずっとやっていましたね。なかなかな作業でしたけど、現時点での僕の知識と、僕が持っている機材はフルにぶち込んだつもりです。
既にライブで演奏を重ねていますが、レコーディング時の感覚と、ライブでやってみた印象はいかがですか?
TSUKASA:レコーディングの時は結構冷静にドラムを叩けていたので、あまり思わなかったんですけど、この曲はライブでテンションが上がるもんですから、キックのパターンが意外と踏みにくいなと思っちゃっていまして。そこをこれからも気を付けていかないとなとは思っています。
ちなみに、サビの後半でドコドコ鳴るバスドラが効いているなと。
TSUKASA:これは僕がスーパーロックミュージシャンとして、入れなきゃいけない要素かなと思いましたね。そしたらちょうどいい感じでスパイスが効いて。
ZERO:元々『NEW ERA -evolution-』のレコーディング時に録っていたんですけど、タイアップ曲になったことでコード進行も複雑になって、ベースは逆にシンプルに戻して録り直しました。ライブをやっていて、伝えるという部分で楽しい曲ではありますね。会場にいる人はもう僕らのことは知っていますけど、まだこれから僕らに出会う人を想像しながら演奏しています。そういう未来のことを考えると、ワクワクしてライブができるなと。
『NEW ERA -the beginning-』インタビュー時に、「WITH」の歌詞〈”70億の 偶然が生んだ この瞬間に”〉について、KEKEさんが「なぜ〈70億〉というワードを選んだのか、いつかしっかり話せる日が来ると思います」と言っていましたが、それは「まだ僕らを知らない君へ」の歌詞〈70億の1が僕らには待っている〉があったからですよね?
KEKE:そうです。その〈70億〉という言葉って、「銀河鉄道の夜 ~STARDUST EXPRESS~」(2017年6月発売のアルバム『百億の未来とたった1つの今 〜INFINITE ∞ FUTURE〜」収録)にも入っていますよね? 僕の中で、今の「銀河鉄道の夜」の位置が、これから「まだ僕らを知らない君へ」か「WITH」になっていくと思っていて。
なるほど。
KEKE:「銀河鉄道の夜」で僕は〈70億〉という言葉がキーワードになっていると思っていたので、大切な曲だからこそ、それをしっかり継承していきたいなと。結果的にアルバムに入らなかったですけど、『NEW ERA -the beginning-』『NEW ERA -evolution-』のメッセージ性の強い部分に、同じ言葉を散りばめていくという自分の意図がありました。『NEW ERA -evolution-』収録の「FLY TO REBORN」に〈HELLO MY CLONE〉というワードを入れているのもそういうことで。『NEW ERA』=新しい時代なんだけど、過去を背負いながらやっているということをワードで表現したかったんです。
「FLY TO REBORN」は〈HELLO MY CLONE〉の他にも、〈始まりの合図〉という「HELLO MY CLONE」や「Curtain Call」と共通のワードも入っていましたし。
KEKE:そうなんです。〈HELLO MY CLONE〉と入れたのも、パッと思いついたというよりかは「WITH」「まだ僕らを知らない君へ」のことがあったので、歌詞のワードのチョイスの仕方でも気持ちを伝えられるなと思っていて。「HELLO MY CLONE」はTHE MICRO HEAD 4N’Sの始まりの曲なので、その13年後にも新しいものに先代が作ったワードが入っていくって、すごくエモくないですか? 一期、二期、三期のヴォーカルがいたからこそ僕が今いるので、そういうものはちゃんと大切にしていきたいという僕の考えでもありますね。