THE MICRO HEAD 4N’S

THE MICRO HEAD 4N’S

9周年記念公演となる配信ライブを目前に、kazuyaが語るTHE MICRO HEAD 4N’Sというバンドと自身の人生。

フルアルバム『The Unfinished Story』のリリースを前に、現メンバーで再構築した既存曲を今年3月から4ヵ月連続配信したTHE MICRO HEAD 4N’S。同時に3月以降、コロナ禍の影響によりレコーディングの中断、それに伴うリリース延期、ツアーの中止を余儀なくされた彼らだが、新たな表現方法を模索しながら6月25日、7月31日には配信ライブを行ってきた。Vifでは8月23日に迎えるLIQUIDROOMでの9周年記念公演となる配信ライブを目前に、リーダーであり、経営者でもあるkazuya(G)に単独インタビューを実施。このコロナ禍の出来事を辿りながら、じっくりと話を聞くと、THE MICRO HEAD 4N’Sの在り方とkazuyaの人生が見えてきた。

◆ファンの人たちとバンドがすごく繋がっている感じがする

――Vifでは3月から4ヵ月連続リメイク楽曲配信記念企画を掲載してきましたが、あの4曲の制作はいつ頃終えていたのでしょうか?

kazuya:あれは去年の12月に終えていたので何の問題もなかったんですけど、その後のレコーディングはコロナと被って超大変でしたね。本当は7月にアルバムのリリース予定でしたけど、まぁ厳しいなと(苦笑)。2月18日にdefspiralと対バンをやって、あの頃から状況がちょっと怪しいなという感じになってきていたじゃないですか。3月にはTSUKASA(Dr)のトークライブなど色々と予定していたんですけど、急遽中止にしたり、結構大変でした。3月からレコーディングが始まったものの、段々と状況が悪くなっているのも手に取るようにわかるし、いわゆる業界内で回ってくる話があったんですよね。嘘か本当かわからないけど、ロックダウンするよとか。そうかぁ…レコーディングとロックダウンどっちが先だろうな、みたいな結構ピリピリした感じでした。

――その後、4月7日に緊急事態宣言が発令されて、メンバー同士も会わない日々が続いたと思いますが、正直なところ、精神的に辛かった時期はありましたか?

kazuya:4月の1週目はとりあえず休もうと思って、1週間ゲームやって酒飲んで寝て、みたいな普段できない生活に特化した日々を送ってみたんですけど、段々とこれはヤバくなってきたなと。ただ、僕は9年前からこういうバンドが動けなくなるような事態は想定していたので、会社として明日明後日現金がなくなるようなことはない状況を作ってあったんですけど、4月2週目くらいから、これがずっと続いたら会社の寿命はこれくらいに来るなということを考え始めて…僕、パニック障害を持っているので、精神的に結構来ちゃってダメでしたね。

――そうだったんですね。

kazuya:そこからまた1週間くらい過ごして、このままじゃダメだから、自分は何をすればいいんだろうと思った時に、まず会社のタイムリミットを何段階か作ったんですよ。本当のアウトの直前に、メンバーに「ごめん、給料払えないわ」って言うのは酷じゃないですか。だから、最悪の事態のために、メンバーが食っていける手段を考えようと思って。僕の考えなんですけど、例えば今お金がなくなってしまったとして、明日から何をするか、僕らがアルバイトをしたところで誰も喜ばないんですよね。でも僕らが何か楽しいことや音楽を作ることで、喜んでもらって対価をいただいたほうが総合的にハッピーなので、とにかく色々なアイディアをワーッと出しましたね。

――メンタルはいつ頃から落ち着いてきたんですか?

kazuya:5月ですね。4月はもうボッコボコで、それでもやれることをやっていたんですけど、5月からレコーディングを再開して、そこからアルバムを作ることが自分の生き甲斐になったんですよね。それまでの1ヵ月間、誰にも会ってなかったので、メンバーがいるって有り難いなとニヤニヤしながらレコーディングしていました。SHUN.(G)もその期間にギターの練習をしていて、すごく上手になっていたんですよね。向上心を持って色々なアレンジをしてくるから楽しくて。バンドを始めたばかりの頃のような感覚でした。締め切りがないので自由に音楽を楽しんで、そこからはメンタルが復活していって、こういう未来が来るという仮説を立てながら行動していきました。

――5月1日からはYouTubeでの配信トーク会もスタートしましたし、今となっては毎日のように誰かしらが何かしらを配信していますよね。

kazuya:そうですね(笑)。僕は去年からずっと、ほぼ毎日インスタライブ「18会」をやっていますし。あれでやりたかったのは、繋がりを強くしたいということなんです。信頼されるアーティスト、会社でなきゃいけないと思っていて。今考えたら4月中はボロクソに弱いところを見せていたと思うんですよ。でも、自分が心を開くことによって、皆が僕のことを信用してくれるのかなと。そういうこともあってか、現状ファンの人たちとバンドがすごく繋がっている感じがするんです。コロナで辛いことはいっぱいありましたけど、いくつか良いこともあって、これはその一つかなと思います。

――kazuyaさんのインスタライブは聞くほうも日課になりますね。

kazuya:あはは、日課になるようにしてますもん(笑)。

――18分間という時間がちょうどよくて。

kazuya:そうなんですよ。最初は40分やっていたんですけど、長いなとなって、短くしていったんです。kazuyaを数字にすると18ということで、ファンの人の案から拾って「18会」と。じゃあ18分間にしようという流れでした。自粛期間はスーパーを行き来するのが唯一の楽しみという生活だったので、あれで結構メンタルが助けられましたよ。

――本当に何でもお話されていますよね。

kazuya:何でも話します。時代がそうなっている気がするんですよね。昔ってアーティストは雲の上の存在で、プライベートは何をやっているかわからなかったですけど、僕はカリスマじゃないから、遠くの人になりたいという願望もないんですよね。何でも話せるような、相談を受けたら相談し返すくらいの距離感でいいのかなと。そんな自分のポジショニングを考えて、こういうことをやらせていただくようになりました。

――あれを見ていると、ものすごくkazuyaさんに詳しくなりますね(笑)。下着の話までしていたり(笑)。

kazuya:年に1回か2回、7枚買って総入れ替えするという話ですっけ(笑)。…くだらない話(笑)。まぁでも、ある種の生き方の提案でもありますよね。僕は結構ミニマリストタイプなので、こういう生き方もありますよと。

――ちなみに、リメイク楽曲配信記念企画の最後の更新は動画でしたが、あれがちょうど18分だったんですよ。ビックリしました。

kazuya:わ、それは意図してないです(笑)。でも、ライブでも何でもそうなんですけど、人が集中できる時間、見やすい時間って、ある程度決まっているので、それは結構守るようにしています。むやみやたらに長いのは、こっち側のエゴであって、見ている側は疲れますからね。

――あの動画で、「EARNEST GAME」の歌詞で言っていることはバンドで表現したいことの一つだと改めて感じたと言っていましたよね。大人だけど思いっきり遊ぼうよという。

kazuya:僕、昔の話ばかりする人が少し苦手で。今一番楽しくない人生なんて、お金があるない関係なく、負けな気がするんですよね。例えば僕がもう少し年を取って「昔はすげーモテたんだよ」とか言ったらもう負けで。「今が一番モテます」と言える人生でいたいんです。大人は大人で、見る側面を変えるとめっちゃ楽しいんですよ。夜中に焼肉を食いに行っても誰も怒らないじゃないですか(笑)。「大人最高ー」と思うんですよね。子供の頃は子供の頃の楽しさがあって、その楽しさが、10代、20代、30代、40代で絶対違うから、僕は今40代の大人として全力で遊んでいる姿を皆に見てもらって、「大人いいよね」とか、「kazuyaみたいな人生いいな」と思ってもらいたいというか。こういうマインドが、色々なことに繋がっていくんですよね。

――5~7月のツアーが全て中止になりましたが、アルバム発売延期の理由としてツアーができないということは大きいですか?

kazuya:いや、単純にレコーディングができないというのが一番でしたね。本当は3月末にドラムが録り終わって、その後すぐにヴォーカル録りだったんですけど、緊急事態宣言が出たので全部リスケにしたんですよね。そうなると間に合わないという。MVを撮れる日もないし。ということで自動的に延期になりましたね。実際まだレコーディングは終わってないです。

◆これはお金では買えない幸せ

――6月25日に行われた初の配信ライブ「「The Unfinished Story」STREAMING LIVE The First Anniversary」は、AMENOさん(Vo)加入後初ライブ=第三期マイフォ始動から1年というタイミングでしたが、1年経過した実感はありましたか?

kazuya:よくわからないです。ていうか、もっと経った気がします。色々なことがあり過ぎましたね。これまでの人生で、こういう何百年に一度の変革の時期に立ったことがないので、日々生きることに一生懸命で、1年よりももっと長い時間やって来た感じがしますね。

――コロナ禍になって、時間の経過が早く感じているということですね。

kazuya:そうですね。考えることは誰でもできるんですけど、即行動に起こさないといけないので。TSUKASA(最上川司)のYouTubeがわかりやすい具体例で。メーカーとメジャー契約していると、曲を出すのがなかなか難しかったりするんですけど、本人は新曲も作りたいだろうし、表現の場を作って、いずれマネタイズできるようにすれば、そこで食っていけるようになるだろうなと仮説して、「やったらどう?」という話をして3月から始めたんです。そういうふうに、メンバー皆が食っていくにはどうすればいいだろうと、日々考えてトライするということばかりやっていたので、時間の流れは猛烈に早いですね。もう8月ですよ。

――本当に早いです。

kazuya:僕、貧困より悪なのは暇、暇があるから悪いことをするという考え方なんですけど、考え様によってはいっぱい考えるチャンスだから、一回仕切り直して考えようと思って。バンドもブランディングからもう一度作り直そう、ビジネスの仕方を変えていこうと。その結果はもう少し先で出てくるんですけどね。この期間、考える時間と行動できる時間ができたのは、良かったなと思います。

――配信ライブのリハで125日ぶりにバンドで音を出したそうですが、これまでの音楽人生でこんなことってありました?

kazuya:僕、FANATIC◇CRISISが終わってから、作家になりたくて一度現役を辞めているので、その時の数年間は音を出してないんですよね。ただ、自分のバンドをやっていて、音を出さないということは、さすがに今回が初めてでした。だから、なんかニヤニヤしましたよ。楽しいなぁ、うるせーなーとか思いながら(笑)。でも、音を出すことよりも、僕はメンバーとくだらない話をしているのが楽しいんですよ。うちって、男子校みたいなバンドなので。

――マイフォって本当に仲が良いですよね。

kazuya:比較的良いです。AMENOにはこれから色々な世界を見せたいと思っているんですが、他の4人というのはそれなりに色々な世界を見てきたわけじゃないですか。僕とSHUN.はメジャーシーンを見てきたし、ZERO(B)とTSUKASAは海外を見てきた。そこで一周回った感じはあるから、ある程度大人だと思うんですよ。だから揉めることは一回もないし、平和です。それに、僕が「もうダメかな…」と思った時も、「やりましょう!」と言ってくれるメンバーが堪らなく大好きですね。

――6月25日の配信ライブは第三期のマイフォを象徴するようなセットリストでしたが、配信という観点よりも1周年ということを軸に考えた部分が大きいですか?

kazuya:完全にそっちですね。AMENOが加入した一発目のライブをオマージュしながら、できるだけ彼と作った楽曲を中心にして。パフォーマンスの面は、僕とSHUN.で、事前に同業者の配信ライブをチケットを買って観て、良い部分と悪い部分を書き出して、僕らだったらこうしたほうがいいよねというのをメンバーと共有してやりました。ただ、スタッフの中には配信に慣れていない方もいるので、現場がすげーピリピリしていて、いつもと全然違う空気でしたね。

――アーティスト側としても、やはり普段とは全然違いますよね。

kazuya:違いますね。最近、僕らの中で愚痴る話があって(笑)。配信って、いつ自分がカメラに抜かれるかわからないじゃないですか。だから、最初から最後まで100の状態でやらなきゃいけないんですよ。実は本当のライブって、息を抜ける瞬間がいっぱいあるんです。例えば頭を振るところでストロボを焚いたら、誰も僕のことは見ていないので、フーッと息を抜ける。この時はあまり見られていないから、ちょっと下がっておこうとか、ここは動かなくていいよなとか、そういう瞬間って多々あるんですよね。配信ライブって、ライブでもなくて、MVでもなくて、テレビ収録でもなくて、その合体ものだと思っていて、ずっと100でいるのは辛いなと思いながらもやっていて、終わったあと即行で寝ますし、次の日のダメージもすごいです(笑)。

――毎回ツアー初日のような感じで、緊張感と疲労度が凄まじいようで。

kazuya:今日メンバーと作業していて、ZEROが毎月グッズを作っているという話になって「毎月ツアーファイナルみたいで大変ですね」と。僕の場合はツアーとインストアイベントがないと、少しスケジュールが空いてくるので、4月の病んでいる時期にこのままじゃいかんとソロをやろうと思って曲を作ったんですよ。良い曲なんですよ。でもあんまり面白くないというか(笑)。

――え(笑)!?

kazuya:心が満たされないんですよ。やっぱりバンドが好きだなぁと。好きな音楽を作れるよりも、アイツらと何かを作ることが好きなんだなぁということを再認識しましたね。

――なるほど。

kauzya:それと、僕は過去には戻れないことを想定して生きているので、新しいことにチャレンジするしかないんですよね。配信ライブでやってみたいことはたくさんあります。CGとかVRとか…今は金銭的にも無理なことばかりなんですけど(笑)。とは言え、可能性は無限だなと思って。とりあえず未来に生きようと。仮説で、こういう未来が来るだろうということは何となく見えているので、そこに向かって今こうしたほうがいいという感じで取り組んでいます。実際楽しいですしね。配信と言えど、きっと皆はここでこう盛り上がるんだろうなという、ファンの人たちが見えるんですよ。だから寂しさはあまりなかったですね。

――終演後の「正直不安でしたが やっぱり マイフォがライブが 大好きです。」というkazuyaさんのツイートがいいなぁと思って。

kazuya:結局コロナ禍になってわかったのは、足るを知るじゃないですけど、バンドをやっていて、メンバーがいて、ファンの方がいて、スタッフがいて…こんな有り難いことはないなということなんですよね。メジャーシーンにいないバンドは不幸せかというと、僕は全然そんなことないと思っていて。もちろん大きくはしたいですけど、最悪大きくなれなくても、皆がいて、やりたいことができて、人生最高じゃんというシフトになれたことで、シンプルに目の前にあることをすごく幸せに感じるようになりましたね。そうじゃないと、もっと上にということばかり考えて、「あそこでできない俺たちは不幸せなのか?」と自問自答して、行けないなら諦めようという思考になるかもしれないですし。でも、実はそんなことは幸せとは関係ない。ファンの方々の前でライブをやって、メンバーと飯を食いに行ってくだらない話をできたら、こんな幸せはないと僕は思っています。これはお金では買えない幸せですから。よくRickyに「kazuyaは飯食いに行くと、すぐ「幸せだなぁ」って言うもんな」ってツッコまれましたね(笑)。

――良いことです(笑)。

kazuya:くだらない話をして笑ってくれる人がいる、曲を作ったら歌ってくれる人がいてプレイしてくれる人がいる、聴いてくれる人がいる、それが全てじゃん、最高じゃんと。今はそんな仏様みたいな思考です(笑)。

――(笑)。7月31日の配信ライブは「「The Unfinished Story」STREAMING LIVE ♯2 ZERO Birthday Hybrid Festival」で、ZEROさんのお誕生日当日でしたが、配信ライブとしては2回目というところで、気持ち的に1回目と違いはありましたか?

kauzya:簡単に言うとフォーマットが違ったんですよね。いつものライブは、僕が中心になってセットリストや演出を考えるんですけど、この日は新曲をやること以外はノータッチだったので不安しかなかった(笑)。でも、いちギタリストで居られるので楽で仕方がなかったです。この日はSHUN.がすげー緊張していて、それが伝染しちゃって、最初バンドがちょっと硬かったんですけど、TSUKASAがトラブルを起こしてから一気に解放されましたね。

――ZEROさんらしいセットリストでしたね。

kazuya:そうですね。それと、今は色々な方が配信ライブをやっていますけど、多分あそこまでオープニングVTRを頑張る人ってあまりいないと思うんですよ。クールで普段あまり喋らない子なんですけど、ファンの方に対しての思いやりをすごく持っていて、エンターテインメントで表現する…彼のそういうところがすごく好きですね。楽しませよう、ビックリさせようという思いがメンバーの中で一番強いんじゃないかな。今、皆すごく配信ライブに集中していて、オープニング、エンディングもちゃんと考えて、驚かせよう、喜ばせようというのがメンバーから出ているのは、ものすごく良いなと思っています。

――マイフォは皆さんアイディアマンですよね。

kazuya:比較的そうですね。僕は3年くらい前から思考を変えたんですけど、些細なことを大事にするというのが今一番大切で、例えばライブの開演前のBGMで海外のアーティストの曲を流す人も多いですけど、それ用に曲を作ったり、SEに入るまでの導入を作ったり、すごく些細なことなんですけど実は大事だったりして。そういう考え方がメンバー全体に広がっている感覚がありますね。

――思考を変えたのは何かきっかけがあったんですか?

kazuya:人って、昨日と今日で同じ人生を生きたら何も変化がないんですよね。1日1個勉強しようとかいう意識の高いことはなかなかできないですけど、そうでありたいという気持ちはあって。筋トレでも無茶な回数やらなくていいから、毎日少しずつやっていこうという感覚。そういう部分で、色々なYouTubeのコンテンツを見たり、本を読んだりということを数年前からやっているので、そこから様々な考え方を取り入れてみたりして、思考を変えていったという感じです。やっぱり年齢を重ねると、プライドが高くなって頭が固くなるんですよ。そうなったらヤバイなと思っているので、そうはなりたくない自分を作っているというか。僕、自分の感覚としては昔のほうが頑固だったと思いますね。

◆形は変われど9年間生きている

kazuya

――8月23日には9周年記念公演となる配信ライブ「STREAMING LIVE #3「The Unfinished Story」-9th Anniversary-」が控えています。7月29日のYouTube緊急生配信で、リアルライブとしての9周年記念公演の中止が発表されましたが、文面ではなく言葉で伝えたかったというのがkauzyaさんらしいなと思いました。

kazuya:ファンは僕らより上でも下でもなく、やっぱり人と人なので、例えば僕が何かしでかしたとしたら「ごめんなさい」と言いたいし、感謝する時は「ありがとう」と言いたい。だから説明もちゃんと口で言いたいんですよ。そういう関係性でありたいんですよね。今はSNSがあって身近だからこそ、ちゃんとしたい。あのYouTubeは関係者も結構見てくれていて「思いが伝わった」と連絡をいただいたので、やって良かったなと思いました。

――kazuyaさんは常にファンの方々への感謝や愛情をしっかりと伝えている印象ですが、昔からですか?

kazuya:いやいや、昔は全然ダメでしたよ。遊ぶことしか考えてなかったです。でも、年を重ねるにつれて、やっぱり僕は歴が長いので、「何十年ファンです」と言われることが増えてくるんです。それを思うと、自分の家族くらいファンの人たちが普段どんな生活をしているか考えた上で自分たちを発信しないと、失礼な気がするんですよね。僕らがやりたいことをやらせていただける環境があるのは、ファンの人たちがいるからなので、最大限コミットしないと失礼だなと。それも5~6年くらい前から、そういう思考になりました。今は他人から見たら、ファンの人に媚びているように見えるんですよ。でも、僕はプライドはもう捨てたので、何と思われようが構いません。でも、大切な人に対して「大切です」と言うことの何が悪いのかと。僕にとっては当たり前なんですよね。彼女でも、奥さんでも、お母さんでも、お父さんでも、一緒じゃないですか。両親にも「本当にありがとうね。健康に産んでくれて本当に感謝してる」と言っていますし、メンバーに対しても、ちゃんと「ありがとう」と「ごめんなさい」が言える人間でいたいんです。

――メンバーやファンを家族のように思うというのは言葉としては簡単ですが、kazuyaさんの言動からは、本当にそうなんだなというのが伝わってきます。

kazuya:ちょっと語弊があるかもしれないですけど、熱の話で、僕は1000人の薄いファンより、100人の濃いファンのほうが良い。昔、メジャーシーンで、ライブをやれば多いときは5000人入ってくれるという世界でやっていましたけど、結局蓋を開けてみたら、今その人たちはほとんどいなくて、それが全てだから。本当に濃いファンの人たちを大切にして、新しく入って来てくれたら「ありがとね、よろしくね!」という、そんな感覚です。

――ライブ中止発表時のSHUN.さんの言葉も印象的でした。「皆が平等じゃない中でやる、来られる人だけでやりましょうというのは、マイフォ的には違う」と。

kazuya:SHUN.は17歳の時からの付き合いですけど、元々こんな子じゃなくて、チャランポランだったんですよ。ライブのリハがあっても、来てから覚えるくらいの適当な感じでした。でも、アイツも俺も病んで、一緒に繋がることによってまた楽しくできるかなと思って始めたのがこのバンドで、今は責任感が強くて、ここ数年のSHUN.はあの頃のSHUN.ではなく、めちゃめちゃカッコいいなと思うんですよ。まぁ基本バカなんですけど(笑)。すげー良いこと言うようになったし、いっぱい考えてる。ファンの人たちを大切にしているイメージがすごく強くなりました。SHUN.がやっているニコ生の「ひとりでできるもん」も、誰に言われたわけじゃなくて自発的に「皆が暗い気分だといけないから、何かやろうかな」って。素晴らしいなと思いますね。

――人って変わりますね。

kazuya:人は環境で変わりますからね。僕らはどこかの事務所に所属しているわけじゃなくて、自分たちでやっているから、自分たちで考えないとダメなんですよね。ある程度、僕が線路を引くんですけど、例えばZEROは「嫌だっ。こっちに行こう」って別の線路を作っちゃう。バンドだからそれでいいと思うんですよね。とにかく、自分たちで考えることが一番大切。

――9周年の配信ライブのテーマは、第一期、二期、三期のマイフォを繋ぐということで。

kazuya:そうですね。僕がよく言う、過去と今と未来を繋ぐようなものに。それと、9年前、僕らは“寄せ集めバンド”ってよく言われたんですよ。当時はスーパーバンド的なのってまだ少なくて、その走りみたいなバンドだったし。ヴォーカルが代わった時は「終わったな」とか言われたりもしました。でも、形は変われど9年間生きている。だから裏テーマとして、“寄せ集めバンド”の9年後を見てくれっていう思いもありますね。形は変わりましたけど、根底は変わってないんですよ。終わりからの始まり、何度でも立ち上がれる…こんなバンドがいてもいいんじゃないかなと。

――9周年を迎えるということは10年目に突入します。

kazuya:本当は10周年で、ここでやりたいという明確なものがあるんですけど、それは多分無理なんです。で、その前の9周年で過去最高レベルに行きたいと、AMENOがそうしたいと言って。今回は目の前にファンがいるかいないかという違いだけで、チャレンジとしては一緒で、たくさんの人に観てもらえるようにギリギリまで頑張りたいし、最近知ってくれた方も、9年前や二期で知ってくれた方も楽しんでもらえるように、とにかくスペシャルなライブにします。

――そして、アルバムに先行して新曲「LiaR」がCD付きグッズという少し変わった形でオンライン販売となります。

kazuya:元々はこのライブにお客さんを入れるつもりだったから、皆に曲を覚えてもらいたくて、早めに出そうという企画だったんですよね。そこから紆余曲折あって、この形になりました。あと、たまたま衣装と合っちゃったという話もあります。

――今回のアー写はなかなかのインパクトです。第三期はどんどん濃くなっていくなと(笑)。

kazuya:ヴィジュアル系を16歳からやっていて、最初は好きで始めたことなんですけど、なんで好きだったかと言うと、当時はヴィジュアル系の格好ってヤンキー的な感じで、悪いことを見せる表現の一つだったんですよ。高校生がリーゼントにして剃り込みを入れるのと、髪の毛を立てて化粧をすることが同類だったんです。悪い人たちが聴くものだと思って好きになったんですけど、段々それとは対極なものになっていって、メイクをしたくない時期もありました。でも、今はヴィジュアル系を超楽しんでいます。だって、こんな格好はヴィジュアル系アーティストをやっている今しかできないから。要は今を楽しんでいます。

――「LiaR」は3月の時点で「死ねー!みたいな曲」と言っていた、通称M10ですよね。

kazuya:そうです。本当はアルバムのメインとして「REMEMBER」という曲があって、僕は穴埋め方式でメインの次にバラード、シングルに切れそうなアッパーな曲…という順で作っていくんですけど、ある程度曲が出揃った時に、良い意味で気を抜いた感じの曲、捨て駒じゃないですけど適当なやつを作ってやろうと思ったら、意外とすげー良くて。できた時点で、これちょっとヤバイかもと。「死ねー!」みたいな曲にしたかったから、SHUN.にそういう歌詞を書いてもらいました。

――過去2回の配信ライブで披露されましたが、ステージで演奏した感触はいかがでしたか?

kazuya:もっと楽しんで弾けるかなと思ったんですけど、結構必死でした。コーラスもしなきゃいけないし、速いし。この年齢でやるテンポじゃないですね。でもやっぱり、このバンドや僕の生き方がそうなんでしょうね。今、全力で行こうよ、今を楽しもうよっていう感じがすごくあって好きですね。保守的じゃない、攻めの感じ。

――音源を聴くと、なおさらライブに行きたくなる、早く生で聴きたいと思える曲だなと。アルバムのリード曲になりそうなんですよね?

kazuya:多分そうなるんでしょうね。僕の意図していないところで(笑)。でも今のご時世、綺麗な曲が売れるわけでもないし、それより意志を持った曲のほうが絶対に大事だと思うんですよ。聴いてくれる人が楽しんでくれたら、それでいいなと思います。特にコロナで皆フラストレーションが溜まっているから、これを聴いて騒いでくれ、世の中に中指突き立てたれ!みたいな感じです。

――当初予定していた10周年へ向けたプロジェクトもいったん白紙になったと思いますが、今後の展望を教えてください。

kazuya:世の中の状況を見ながらになるので、今は迂闊に大きなことをするのは違うかなと思っています。このコロナ禍になってから、会社として数ヵ月無収入が続いたり、怖いなと思いながらやって来ましたが、本当にファンの皆さんのお陰でなんとか生き返ろうとしている状況です。そんな皆さんを大切にしないとダメなので、この人たちを絶対にハッピーにしなきゃいけないと思っています。それと、インスト曲などを作っているKREUZというプロジェクトも発展させたいし、ソロも年内に何か出したい。やりたいことは無限にあります。色々と表現したいですね。人生は一瞬なので。今月近しい人が亡くなったのもあって、やっぱり明日があるのが当たり前じゃないと思うので、今やれることをやって、なるべく思い残したくないです。今ある表現を100%やる、気持ちに忠実に活動していきたいなと思います。

(文・金多賀歩美)

ARTIST PROFILE

THE MICRO HEAD 4N’S

<プロフィール>

2011年8月、Ricky(Vo)、kazuya(G)、SHUN.(G)、ZERO(B)、TSUKASA(Dr)により結成。二度のヴォーカル脱退を経て、新ヴォーカリストAMENOを迎え入れ、2019年6月29日の赤羽ReNY alpha公演で第三期の活動をスタート。7月にシングル『REBIRTH -the 3rd form-』、12月にシングル『FACT IS STRANGER THAN FAKE!!!!』をリリース。2020年3月から4ヵ月連続リメイク楽曲を配信、6月25日、7月31日には配信ライブを行った。8月23日、LIQUIDROOMにて9周年記念公演となる配信ライブの開催が決定している。

■オフィシャルサイト
https://themicrohead4ns.jp/

【リリース情報】

●New Album『The Unfinished Story
2020年発売予定

The Unfinished Story

【ライブ情報】

●STREAMING LIVE #3「The Unfinished Story」-9th Anniversary-
8月23日(日)LIQUIDROOM ※無観客生配信