Plastic Tree

Plastic Tree

結成20周年イヤーの幕開けを飾る“樹念”作品第1弾『echo』が完成。4人が織り成す自身初のミニアルバムの全貌に迫る。

「3月5日。」という楽曲を持つPlastic Treeが、まさにその3月5日というメモリアルデーに、結成20周年イヤー第1弾作品となる自身初のミニアルバム『echo』を世に送り出す。メンバー全員がそれぞれ作詞作曲を行った全7曲から成る今作は、4人のパーソナリティーが存分に詰め込まれた1枚となっている。そんな今作完成までの制作背景、20周年について、そしてライブへの思いを4人に聞いた。

◆3月5日はバンドの誕生日のようなイメージ(有村竜太朗)

――結成20周年“樹念”第1弾リリースおめでとうございます。

全員:ありがとうございます。

――昨年は音源のリリースとしてはシングル『瞳孔』のみだったので、意外と久しぶりなんですね。

長谷川正(以下、正):そうなんですよね。

――20周年はどんな感覚ですか?

有村竜太朗(以下、竜太朗):スムーズに入ってしまったというか。メジャーデビューの周年(2012年にメジャーデビュー15周年)もあって、「時間がすごく経ったんだなぁ」っていうのはあったんですけど、20周年に関しては結成自体がいつなんだっけ?っていうくらい曖昧だったので、本当に気付けばという感じ。「そっか、もうそういう時期か」みたいな。

――メジャーデビュー15周年と結成20周年とでは、気持ちの上での違いはありますか?

竜太朗:そういうのは特にないですね。たまたまメジャーデビュー10周年の時から祝い始めたんですけど、結成10周年の時は…気にしてなかったんじゃないですかね(笑)。今回は言われて「あ、そっか」と。

正:結局ずっと動いているバンドなので、周りの方々から言われて「あ、そういう区切りなんだ」っていうのはあるんですけど、特別感はあまりないかもしれないですね。「20年もやってきて感慨深いねぇ」みたいなものは、僕の中ではないです。気付いたら、という方が強いですね。

――なるほど。では、20周年第1弾リリースということへの意識はありましたか?

竜太朗:こういうタイミングで音源を作るなら、何か初めてのことをするのもいいよねっていうことは話し合いました。

――今作『echo』のリリース日は3月5日ですが、プラには「3月5日。」という曲(1998年8月26日発売2ndアルバム『Puppet Show』収録)がありますよね。そこは意図的なものがあったんですか?

竜太朗:自分たちにとっては20周年という記念の年だし、自分の中で3月5日はバンドの誕生日のようなイメージがあったんです。そういう意味合いで自分の誕生日(3月6日)の前日の曲を昔書いたので、そんな日にリリースできるのもすごく良いんじゃないかなと。ご縁があって、自然な流れでそうなりましたね。

――『瞳孔』のリリース(2013年9月4日)があって、秋ツアー、年末公演という流れでしたが、今作はいつ頃から制作を始めていたんですか?

正:本格的に動き出したのは、秋ツアーが終わった頃からかな。曲のフォーマットは『瞳孔』の頃からある曲もあったので、ミニアルバムという形が見えてから、そこに向かってみんなでまとめだした感じですね。

――ミニアルバムという形は制作の初期段階から決まっていたんですか?

正:段階を踏んで、ですね。次にリリースするならどういう形がいいんだろうねって、みんなでアイディアを出し合った中でミニアルバムという形になりました。

――インディーズ時代のアルバム『Strange fruits-奇妙な果実-』(1995年12月11日発売)が6曲収録でしたが、公に“ミニアルバム”という形は今作がバンド史上初なんですよね。

竜太朗:自分たち的には初という感覚ですね。『Strange fruits-奇妙な果実-』は初音源、初のオリジナルアルバムというものだったので、ミニアルバムという意識はなかったんです。

――シングルやアルバム制作との違いはありますか?

竜太朗:すごく線引きがあるわけじゃないんですけど、どうしてもシングルはその時期のバンドの看板にもなるので、選曲や曲作りをする時も、代表になりやすいもの、一点集中できているものを選んだり作ったりするんです。アルバムとミニアルバムは、もう少し色々な角度で物作りに取り組めるという部分はあります。

――そろそろ冬から春に移り変わっていく時期ですが、武道館(2012年4月14日)で桜が舞っている画や、『インク』(※1)~「裏インク」(※2)が記憶に新しいのもあって、プラは冬~春が似合うイメージがあります。

竜太朗:最近、冬~春に活動が活発だったからかもしれないですね。

――冬は創作意欲が湧いたり、制作において季節による影響はありますか?

竜太朗:曲はあんまり関係ないけど、歌詞は結構関係あるかもしれないですね。気持ちのモードじゃないですけど、俺の場合は今、自分の目に映っているものがモチーフになっていることが多いので、作る時の季節には影響を受けやすいタイプだと思います。

正:僕の場合は秋くらいが一番…物思う秋みたいな。

佐藤ケンケン(以下、ケンケン):冬は寒いから部屋を出ない。…そういう理由で家での作業が増える、というのはあるかもしれないです。

――必然的に冬は集中できる時間が多い、ということですか。

ケンケン:そうですね。

――モチベーションが上がるのはどういう時ですか?

ケンケン:単純に、個人的に嬉しいことがあった時ですかね。俺は季節はあんまり関係ないかもしれないですね。

――アキラさんはいかがですか?

ナカヤマアキラ(以下、アキラ):寒いと、かえって考えられないです。寒いじゃないですか。寒いしか思えない(笑)。ぼけーっとできる時は色々なことを考えられるので、そういうことができる時間がいいです。奇しくも寝る前とか移動中が多いですね。

◆自分が詞を作るとは思ってなかったんです(佐藤ケンケン)

――アルバム『インク』の時は、「テーマが見えていてアルバムタイトルが先に決まったけど、曲タイトルとアルバムタイトルはどちらを先に手掛けたかということの差で、意識的には同時」ということを竜太朗さんが言っていましたが、今作『echo』のタイトルはどの段階で決まったのでしょうか?

竜太朗:まだみんなが歌詞書きしている間に、タイトルどうしようかなと。作業的には真ん中くらいですかね。秋ツアーで「瞳孔」をよくやっていたんですけど、歌詞に〈エコー〉という部分があって。アルバムのタイトルを考えなきゃいけない時点でまだその1曲しかなくて、秋ツアーで演った感触もすごく良かったし、単純なんですけど「瞳孔」が入るならここからタイトルを付けてもいいかなと思ったんです。

――「瞳孔」ありきの作品なんですね。

竜太朗:その時点で言葉を成すものがそれしかなかったから。他にイメージがあれば良かったんですけど、今回は楽曲全体でこう、というイメージがなかったので、記号を付けるような感覚で『echo』にしましたね。あとは各曲が共鳴するような感覚もあったし。

――曲タイトルが全て漢字二文字というのは、どなたの発案ですか?

竜太朗:俺ですね。今回いつもと違うところは、すごくパーソナルな歌詞、パーソナルな曲の集合体みたいなイメージがあったんです。それに、全体を統一して絵で見られるようなタイトルを付けられればなと思って。まだ明確にタイトルが付いているものがなかったので、一枚一枚切り出した絵のように漢字二文字で付けたいなと。先に「瞳孔」があったというのもあるんですけどね。で、「全部漢字二文字のタイトルってどうかな?」って言ったら「いいんじゃない?」となったので、こうなりました。

――プラは基本的に作詞者がタイトルを決めるということでしたが、漢字二文字にすることが決まって、みなさん苦労しましたか?

正:僕の場合はあんまり苦労しませんでした(※「輪舞」)。

ケンケン:僕もタイトルはそんなに悩まなかったですね(※「雨音」)。

アキラ:俺は任せちゃった(※「嬉々」)。付けていいよーって。

――任せられた竜太朗さんはなぜ「嬉々」というタイトルを?

竜太朗:いくつか考えたんですけど、自分的には「嬉々」が歌詞の中で曲のイメージに一番似合った言葉だなというのがあったし、歌っている時もそこが自分の中で引っかかった言葉だったので、わりとブレずに決めましたね。

――「木霊」は“echo”と同じような意味だったり、「曲論」と「瞳孔」に〈運命論〉という同じワードがあったり、色々な部分で点と点が繋がっている感じがありますね。

竜太朗:あぁ…そういうのはたぶん俺はほとんど気付いてないです(笑)。気付いているところと気付いていないところがあるんですよね。そういうのって、後から気付くことが多いんです。作っている時はその一点に集中しちゃっていて、繋がりとか考えるほど計算できる人じゃないので(笑)。でも同じ時間軸なので、必然的に繋がるものってやっぱりどこかにあるんだと思います。

――今回はケンケンさん作詞作曲の楽曲「雨音」がありますが、作詞作曲という形は初めてですか?

ケンケン:初めてですね。

――作詞は前作「アイレン」が3作目にして最短で書けたということでしたが、今回はいかがでしたか?

ケンケン:たぶん最長ですね。

――そうなんですね。ご自分で作曲したものに詞を付ける方がラクということはないんですか?

ケンケン:曲を作る時は詞のことを全然考えてなかったです。言葉数が多くなるなぁと思いながら曲を作ってました(笑)。だから自分が詞を作るとは思ってなかったんです。

――皆さんはいかがですか?

竜太朗:いやぁ…曲によりけりですね。自分の曲の方が大変な時も多いし。どっちがやりやすいとかはないですね。

正:イメージが把握できればどっちでも。どっちが簡単か難しいかというよりは、イメージが把握できるかできないかですね。

アキラ:書けるか書けないか手掛ける前にわかるから、「これは書けない」って即座に言っちゃう。何日与えられても書けないっていう意味合いでね。「その代わりこっちなら書けますよ」って。

――なるほど。竜太朗さんは実体験や恋愛観が歌詞に反映されることが多く、正さんはどちらかというとフィクションの方が多いと以前言っていましたが、アキラさん、ケンケンさんはいかがですか?

アキラ:創作ということで言うと、フィクションの方が多いと思う。

ケンケン:俺もフィクションの方が多いですね。

アキラ:ただ、フィクション、ノンフィクションっていうジャンルで書いてるか?って言われたら、どうやらそうでもないし(笑)。

――「嬉々」は印象的なフレーズが多いですね。〈「畜生に何を願う?」〉はすごくインパクトがありました。

アキラ:書いていれば、なんかうまいこといくんだね(笑)。