2024.10.14
defspiral、H.U.G@高田馬場CLUB PHASE
「defspiral presents monthly 2man event “Psychedelia”」
Psychedeliaとは、1960年代から1970年代にかけて、主に音楽やアートの分野で発展した文化的・芸術的なムーブメント、または視覚や聴覚に対して強烈で幻想的な感覚を引き起こす芸術表現全般を指す言葉である。文化的観点では、カウンターカルチャーと深く結びついており、自由、精神的探求、平和を追求する価値観が強調された。総じて、意識の拡張や現実の変容をテーマとする表現こそが、Psychedeliaの本質とされる。
defspiralを熱心に見続けてきた人たちならば、すでにピンと来ているだろう。それについては後ほど触れるとして、8月にメリー、9月にNeu:NOIZを迎えたdefspiral主催マンスリーツーマンイベント「Psychedelia」の最終夜、様々な要素が重なり、愛に満ちた一夜となった10月14日H.U.Gとのツーマン公演の模様を記していきたい。
当夜のMCの中で「僕たちはdefspiralが大好きです! 色々絡んでます! defspiralのファンの皆さんもH.U.Gが大好きだと思います!」と横山和俊(Mani&Key&Per)が述べたように、defspiralとH.U.Gは各メンバー同士が共に別バンドを組んでいたり、音源制作に携わっていたりと、実に親交の深い関係であることは周知の通り。そんな彼らによる初のツーマン実現は、双方のファンにとっても喜ばしいことであり、まさに「待望」という言葉がふさわしい。加えて、H.U.GのサポートドラムをTAKEO(PIERROT、Angelo)に代わり和樹(defspiral)が急遽務めることとなり、偶然とはいえ、ある意味“現実の変容”と言える状況に。
ryo(Vo)、Karyu(G)、横山和俊、MASASHI(Support B/Versailles)、和樹の5人が円陣を組んだ後、起爆力抜群の「HELIOS」で幕を開けたH.U.Gのステージ。2022年に始動したH.U.Gは、2023年6月にアルバム『HELIOS』、10月にシングル『CORE』を発表したが、その後もライブを重ねるごとに新曲を追加してきた。「HELIOS」に次いでKaryuによるリフからスタートした「HIDE AND SEEK」は、今春開催のツアーの中でプレイを重ねてきた未音源化曲。〈I WANT YOU BABY〉の掛け合いが盛り上がるノリのいいロックチューンでありながら、中間部ではryoの低音ヴォイスも堪能できた。中盤に供された未音源化曲「ロゼ」は、シティポップ的な軽やかなメロディーをH.U.G流のヘヴィーサウンドに落とし込んだ、儚さも感じられるナンバーで、1ステージにおける良いフックとなっていることは間違いない。
時系列は前後するが、2ブロック目は打ち込み要素の強いダンスチューン「Flash dancers」から始まり、楽器陣のユニゾンに合わせてフロアがハンドクラップを打ち鳴らした「DROP」、各パート主張がありながらキャッチーかつメッセージ性の強い「SEEDS」という流れの中で、不思議と「SEEDS」がこれまで以上にハードに聴こえてきたのが印象深い。ryoの話によれば、ドラムのキックが増えていたことと、和樹のビート感がそうさせたのかもしれないとのこと。
先述の「ロゼ」に続いた珠玉のバラードナンバー「LOVE THAT NEVER ENDS」は、このステージでもやはり圧倒的な存在感を放ち、「助けてくれた愛のあるバンドdefspiral、そして和樹君」というryoの言葉を経て、バンド名の発端となった刺激的な「HUG」を皮切りに後半戦に突入。トリッキーかつ緩急のある「BLOOD PIN」でフロアに拳が上がれば、5人それぞれのソロ回しを含む「Member call」で一体となり、鉄板のライブチューン「WHO IS THE ROMEO」で白熱の光景を描き出した。ラストには力強くも温かな愛の歌「HEART」を届け、「defspiralとFreaks(defspiralのファンの呼称)の皆に感謝します」(ryo)と締め括ったのだった。
さて、冒頭に記したPsychedeliaという言葉について思い出してほしい。自由、精神的探求、平和の追求は、defspiralの根底にあるものと言って過言ではないし、近年の活動において“拡張”は重要なキーワードの一つだった。そう考える理由として、念のため彼らの活動を少し振り返っておきたい。
2022年に和樹が正式加入し、12月に行ったツアーが「CARPE DIEM」=今この瞬間を楽しむ・現在を大切に生きるといった意味合いで、同ツアーの拡張を意味する「CARPE DIEM -extend-」が2023年春のツアーに冠された。そのファイナルでは「この勢いで皆が大好きなdefspiralを広げていきたいと思います」とのTAKA(Vo)の宣言もあり、同年冬のツアーでは前ツアーの続編的な意味合いを持ちつつ、ライブを通して皆で陶酔したり幸福になっていく光景を表した「Butterfly Euphoria」というタイトルが掲げられた。そして、2024年春に発表したアルバム『ULYSSES』で描いたのは、幸福を追い求める物語。
その『ULYSSES』を手に巡ったツアーで作品の世界観を完全再現してみせた彼らだが、本作は約6年4ヵ月ぶりかつ現体制初のフルアルバムであることから、今現在のdefspiralを象徴する作品であり、ツアー完遂後もなお、その楽曲たちがステージの中枢を担っている。実際、当夜披露された全12曲中8曲が『ULYSSES』の収録曲で、〈この目に映る 全て愛おしい/美しい〉と歌う、ライブの光景を描いた「EUPHORIA」の歌詞の中にも〈サイケデリア〉というワードが含まれる。むしろ、「EUPHORIA」の存在が今回のイベントタイトルを生んだと考えてもおかしくないだろう。
トップギアで勢いづける「VIVA LA VIDA」に始まり、前半戦に配されたのは、和樹のビートに合わせて息の合ったハンドクラップが鳴り響いた「FLASH」、MASATOによるエッジーなギターが冴えるダークかつスリリングな「ARCANA」、TAKAの妖艶なヴォーカルとRYOが奏でるベースフレーズのアンサンブルが心地よいロック歌謡「夢見る蜉蝣」。後半戦では、先述の「EUPHORIA」からシャッフル曲「ALEGRiA」への流れが美しく、ダンスチューン「MASQUERADE」を挟んでリズム隊の重低音が轟くメロディアスな「流星」を続けた。
「H.U.Gがいると、愛に溢れた空気で嬉しいです」とはTAKAの言葉で、defspiralのステージにおいてH.U.Gの面々と共演するレアなシーンが繰り広げられた。中盤、defspiralとオンステージでの共演は初だという横山とは、彼自身が音源のマニピュレートを担ったことから思い入れのある1曲だという「STARDUST」をプレイ、過去にもTAKAと並んで歌ったことがあるryoとは、ミディアムナンバー「光の世界」をツインヴォーカルで聴かせ、Karyuを呼び込み当夜のラストナンバーとなった「LOTUS」では、曲中にryoと横山も加わり総勢7名でのお祭り騒ぎとなったのだった。
余談だが、現在TAKAとKaryuが活動を共にしているバンド、Luv PARADEの原型が生まれた2009年開催のD’ESPAIRSRAYのツアータイトルが「PSYCHEDELIC PARADE」だったという事実は、あまりにもでき過ぎた偶然の一致。約15年の時を経てこんなことが起こるのも、それぞれがこのシーンで活動し続けているからこそ。当夜はメンバー同士がハグを交わし、「本当に愛のある1日でした。またそれぞれのステージで楽しい思い出を重ねていきましょう」というTAKAの言葉をもって幕となったのだった。
なお、彼らの物語には続きがあり、12月7日開催の「Karyu Birthday Event -Ophiuchus-」にスペシャルゲストとしてdefspiralの出演が決定。再びH.U.Gとのタッグが実現する(サポートメンバーも当夜と同一)。さらにdefspiralは、11月9日に地元・姫路Betaの29周年記念ライブ、11月30日〜12月26日に「defspiral tour 2024 “Nyx Nitefall”」が控えていることに加え、早くも2025年2〜3月に初の2daysコンセプトツアー「defspiral tour 2025 “CHRONO TRAVELER”」を開催することが決定した。
この2本のツアータイトルから推察するに、先に記した2022年以降の一連の流れは今回の主催ツーマンで一区切りと言えるのではなかろうか。ただし、defspiralというバンドの本質は決して揺らぐことはないはずだ。そのうえで、彼らと共にさらなる思い出を積み重ねていこうではないか。
◆セットリスト◆
【H.U.G】
01. HELIOS
02. HIDE AND SEEK
03. Flash dancers
04. DROP
05. SEEDS
06. ロゼ
07. LOVE THAT NEVER ENDS
08. HUG
09. BLOOD PIN
10. Member call
11. WHO IS THE ROMEO
12. HEART
【defspiral】
01. VIVA LA VIDA
02. PULSE
03. FLASH
04. ARCANA
05. 夢見る蜉蝣
06. STARDUST
07. 光の世界
08. EUPHORIA
09. ALEGRiA
10. MASQUERADE
11. 流星
12. LOTUS
(文・金多賀歩美/写真・defspiral:瀧本葵、H.U.G:浜本研志(SIX Project))
【ライブ情報】
●姫路Beta 29周年記念 Live「the BIRTH 29」
11月9日(土)姫路Beta
●「defspiral tour 2024 “Nyx Nitefall”」
11月30日(土)EDGE Ikebukuro
12月13日(金)川崎Serbian Night
12月21日(土)大阪yogibo HOLY MOUNTAIN
12月22日(日)名古屋ell.FITS ALL
12月26日(木)高田馬場CLUB PHASE
●「Karyu Birthday Event -Ophiuchus-」
12月7日(土)SHIBUYA REX
出演:H.U.G、defspiral(スペシャルゲスト)
H.U.Gサポートメンバー:MASASHI(B/Versailles)、和樹(Dr/defspiral)
●「defspiral tour 2025 “CHRONO TRAVELER”」
Day1:BRILLIANT VOYAGER
Day2:GALACTIC BUTTERFLY
2025年
2月22日(土)大阪yogibo HOLY MOUNTAIN
2月23日(日)大阪yogibo HOLY MOUNTAIN
3月1日(土)名古屋Heart Land
3月2日(日)名古屋Heart Land
3月7日(金)福岡INSA
3月8日(土)福岡INSA
3月14日(金)札幌Bessie Hall
3月15日(土)札幌Bessie Hall
3月21日(金)初台DOORS
3月22日(土)初台DOORS