Luv PARADE

記念すべき1stミニアルバム『JOKER』が示すLuv PARADEの意思。明日世界が終わっても、俺たちは世界を作っていこう――

2009年にD’ESPAIRSRAYの楽器隊によってセッションバンドとして誕生し、2011年にTAKA(defspiral)がヴォーカルを務め、イベント出演を実現させたことが事の発端であったLuv PARADE。2022年に再始動を発表し、セルフカバーと洋楽カバーを中心に、これまでに三度の主催イベントや二度のワンマンツアーを完遂してきた彼らが、遂に全曲オリジナルのミニアルバム『JOKER』を完成させた。再始動から現在に至るまでの動きを辿りながら、正式リリースとしては初となる記念すべき作品について話を聞くと、真のバンドとして4人が一丸となって歩を進めるLuv PARADEの今が見えてきた。


ラヴパでのTAKAを演じるんじゃなくて、自分なりに表現していっていいなと思えた(TAKA)

TAKA

再始動から約2年経ちますが、当初Karyuさんとリズム隊のお二人は表で絡むのが久々なので、お互いどこまで突っ込んでいいかわからないと言っていましたよね。最近はいかがですか?

Karyu:最近もわからないです(笑)。

ZERO:裏では割と前みたいな感じではあるんですけど、表で人に見せていい感じとなると、どこまでいいか今でもちょっとわからないです(笑)。

TSUKASA:でも、D’ESPAIRSRAYの頃から変わらない空気感みたいなのは、ずっと持続していますね。

ミーティング以外はあまり会話がなくて、Karyuさんがもうちょっと会話をしたいとも言っていましたよね(笑)。

Karyu:最近も…話してないな(笑)。TAKAさんとは結構話すようになったと思いますけど、二人ともこちらから話しかけないと、会話が生まれない(笑)。

この2年間の3人の関係性は、TAKAさんからどのように見えていますか?

TAKA:それこそずっと変わらない、昔からの長い付き合いの空気感なのかなと。言葉多くなくても、分かり合える部分もあるでしょうし。…いや、どうなんだろ。分かり合えてないのかもしれない(笑)。

Karyu:ほとんどわかってないですね(笑)。

TAKA:でも、成立しているのは確かだし、信頼があるってことかな。

今この4人で活動していて、それぞれのバンド(H.U.G、THE MICRO HEAD 4N’S、defspiral)の動きというのは、お互いに気になるものですか?

ZERO:気になりますね。

TAKA:まぁ意識しますよね。SNSを見ていても、今日ライブだったんだなとか、今レコーディングが大変そうだなとか。

Karyu:各バンドのメンバーも同じだと思うんですけど、少なからず嫉妬心みたいなのがあると思うんですよね。俺は結構あって(笑)。

TAKA:Luv PARADEとしても嫉妬させていきたいしね。

再始動にあたって、メンバー3人がTAKAさんありきで考えていたということでしたが、TAKAさん自身もゲストヴォーカルの域を超えて、バンドの一員としてステージに立ってきたと思います。TAKAさんの中で、そういう意識が明確に強くなったタイミングはあったのでしょうか?

TAKA:2年前の初期の頃は、明確に“ゲストヴォーカル”として参加していて、3人が作る世界観の中で遊ぼうという意識が強かったんですけど、今年1月のツアーはオリジナル曲を2曲披露しながら回ってきたんですよね。その仙台公演でパチンと弾ける瞬間があって、ラヴパでのTAKAを演じるんじゃなくて、このバンドでのTAKAを自分なりに表現していっていいなと思えたんですよね。そうしないとダメだな、嘘だなと思ったし。そこから自分の中で意識が変わっていったというか。実際には徐々にだと思うんですけど、特に覚えているのはそれですね。

Karyu:仙台のアンコールで、バンドが変わった感じがすごくあって。あそこから急に良い方向に転がっていった気がします。

具体的に何があったんですか?

Karyu:なんだろう。何かが全員弾けたんですよね(笑)。光景は覚えているんですよ。TAKAさんが柵に乗り上げて歌っていて、相乗効果でこっちも一気にスイッチが入って、終わった瞬間に「あ、ここから大きく変わるな…」と進化した感覚があったんですよ。

ZERO:俺は、昨年9月9日の「DEVIL’S NEW WORLD」公演の時、初披露したオリジナル曲「NEW WORLD」の他にKaryuがもう1曲作っていたので、すぐに次の展開に行けるなと思ったのと、9月9日はD’ESPAIRSRAYの結成記念日ですけど、それはそれとして、Luv PARADEとして大事なものを築いていく必要があるんじゃないかなと、それを機に思いました。新曲をライブでやってみて、すごくフロアとステージの勢いを感じたんですよね。その時に気持ちが切り替わったというか。

TSUKASA:仙台のライブで弾けたということの他に、その時の楽屋で何か曲を追加しよう、the Underneathの「インソムニア」をやろうと話し合ったことが、すごく記憶に残っていて。Luv PARADEがこれからどんどん盛り上がっていくんだろうなと感じたのを覚えていますね。ツアーの途中で新しい曲をやろうという話が出たのは、あれが初めてでしたよね。

TAKA:そうかもね。ツアーをもっと良くしたいという思いが一致していて。その他にも、初めてのFCイベントがあるから、アコースティックでこういうことをやろうとか、ツアー中に色々なアイデアを出し合って、一丸となっていきましたね。

そもそもLuv PARADEでオリジナル曲を作るという話は、いつ頃からしていたんですか?

Karyu:僕自身は初めからやろうとは思っていたんですけど、全員があまり乗り気ではなかったので、一旦置いといて(笑)。そこから1年ぐらいカバー曲を中心にやってきて、やっぱりこの4人でのオリジナル曲が欲しいなと。それで、9月9日のD’ESPAIRSRAYの結成記念日に新しい世界をというところで良い機会だなと、そこを目指して曲作りをしました。

確か、Karyuさんが1月のツアー初日にバンドの現状に危機感を抱いて、それが今回のツアーに向けて音源制作することを宣言したきっかけの一つだと言っていましたよね?

Karyu:そうですね。初日の時点では決まっていなかったです。思っている以上にいろんな場面で満足できない現実があったり、もっと4人でガッと意識的にLuv PARADEとして考えていかないといけないなという危機感がすごくありました。

TAKA:どうやって盛り上げていこうかというのをすごく密に話している、ちゃんとしたバンドだと思います。バンドとしてのアイデンティティ、存在意義みたいなものをどこに持っていくか、ずっと模索していて。最初はセルフカバーと洋楽カバーでやっていましたけど、やっぱり求められるものは、この4人での音だというのはどんどん明確になっていったし、そうすることでもっと盛り上がるだろうなというのは実感としてありました。

なるほど。

TAKA:『NEW WORLD』を出した時もファンの子がすごく喜んでくれたり、ディスパの記念日に新しい一歩を踏み出すのは、意思表示にはなったと思うし。実際「この日からLuv PARADEが自分たちの新しいスタイルを進んでいくんだという決意を感じました」みたいな手紙をファンの子からもらったりもしました。一歩一歩順序立てて、ここまで来られたかなと。

自分が今感じていること、夢、もっと先に行くんだっていう思い(Karyu)

Karyu

今回のアー写は反響が大きかったんじゃないかなと思います。メイクの雰囲気や収録曲「JOKER」から察するに、今作のタイトルは映画『JOKER』がモチーフと考えていいのでしょうか?

Karyu:これが違うんです(笑)。意識はしていますけどね。でも、メイクもそんな感じですもんね。

今回のツアーを発表した1月時点で、既に「JOKER」という言葉自体は存在していましたが、楽曲「JOKER」は生まれていたのでしょうか?

Karyu:生まれてないですね。

ZERO:ツアータイトルを決める時に「JOKER」というワードが良かったから、じゃあアルバムも『JOKER』かなって。その中でTAKAさんが上手く曲にはめてくれたという(笑)。

TAKA:最初に「JOKER」というキーワードがあって、その時点では映画の『JOKER』なのか、トランプのジョーカーなのか、特に断定していなかったんですけど、どちらかと言うとヒールのイメージで。

ZERO:ゲームによってはジョーカーって何にでもなれるじゃないですか。だから、変幻自在でもあり唯一無二であったり、最強のカードでもあり何にでもなれるしという。

Karyu:グッズで遊べるし(笑)。

TAKA:ダークヒーロー的なイメージかつキャッチーな存在で、ワードだけあった時点でラヴパにはすごく合うなと。そこから広げていったり、意味合いを作っていった感じですね。

ワードありきで作品作りを進めていったわけですね。では、それぞれの楽曲について伺っていきたいと思います。まず SE「ENTER THE PARADE」から「JOKER」に繋がっていく形になりますが、SEは横山和俊さんにお願いしたそうですね。

Karyu:最初は『JOKER』のコンセプトとは別でライブのSEをお願いしていたんですけど、最初に上げてもらったものが、『JOKER』が完成していく中で僕としてはツアーのイメージとちょっと違ったんです。やっぱり「JOKER」に寄せるべきだよなと思って、遊園地っぽいとか不協和音でとか、楽曲のイメージを伝えて完成しました。それと今回の音源に入っていない、ライブでしか聴けない続きの部分があるんですけど、そこにEDM要素も混ぜて作ってもらっています。

TAKA:実際は2分くらいある曲の前半部分を音源に入れています。

「JOKER」は始まった瞬間から良い意味で洋楽感が半端なくて、ドラムと歌のインパクトが特に強い曲だなと。ここまで1曲通してガナリ気味のアプローチでのTAKAさんの歌は、defspiralの時にはなかなかないですよね。

TAKA:ないですね。ただ、TRANSTIC NERVEの後期とかは割とシャウトや英詞もあったので、昔やっていた要素ではあるんですけど、ラヴパで色々なカバーをしてきた中で作ってきた世界観を落とし込んで今回やってみました。

TSUKASA:僕のドラミングには得意不得意があって、裏が苦手なんですよね。この曲は裏が多いので、実際叩いてみた時に「おおお」って苦戦しました。アレンジは作曲者がほぼ考えているので、基本的にはKaryuが考えてくれたドラムを忠実に叩いているのと、手が3本ないと無理なところは自分なりにブラッシュアップして仕上げましたね。

Karyuさんとしては、この楽曲は元々どんなイメージで作っていったのでしょう?

Karyu:タイトルチューンを作らなきゃなと思ったけど、もっとやりたいことをメインにした曲で、そこまでメロディアスに寄らずに、今のdefspiralのファンがおそらく見ないようなTAKAさんの魅力を引き出せそうと思って作った曲ですね。

まさに。ちなみに、英詞が並ぶ中に最初に出てくる日本語〈鮮やかな嘘〉というワードが印象的だなと。

TAKA:元々全部英詞で書いて、そこから崩して日本語を入れているんですよ。英詞で全部歌ってみたものを仮でメンバーに投げて、この辺は日本語にしようというやり取りをして。英詞で埋まっている歌の中に何行かだけ日本語が入ってくると、すごく耳に飛び込んでくるじゃないですか。だから、そこはシンプルでキャッチーなワードかつ、この曲を言い得ているようなフレーズにしていますね。〈鮮やかな嘘〉は音的にも歌っていて気持ちいいです。

今作全体を通して英詞が多いのは、ライブでの洋楽カバーと並べた時のバランス感を考えてのことでしょうか?

TAKA:ラヴパの今のイメージもあるし、激しいサウンドの中で単純に音として英語は強かったりハマったりカッコよかったりするので、 このムードは大事にしたかったですね。

そして「TONIGHT, TONIGHT, TONIGHT」が今作のリード曲ですが、作曲段階でリードを狙っていたのでしょうか?

Karyu:そうですね。本当はZEROが作る曲も入ると綺麗かなと思っていたんですけど、自分でももう1曲キャッチーなやつを作った方がいいんだろうなというのはずっとあって。ZEROも自分も作りつつ、良いものができてハマればいいなと思ってできた曲です。

お洒落さもあってドラマチックで、なおかつメッセージ性の部分でもリードとして納得です。構成が随分と多くて面白い曲ですよね。

Karyu:ありがとうございます。「JOKER」で振り切ってやりたいことができたので、一旦D’ESPAIRSRAYやAngeloという自分が歩んできたものもひっくるめて、全部の要素を取り入れて、最新の自分の感覚でやれたらなと、ごちゃ混ぜにして作ってやろうと思ったところ、いい感じのができました。イントロとAメロで、もうジャンルが違うくらいの感じだし、部分的にサビだけ先にできていたり…色々繋げていって遊んでいたら、どんどん長くなっちゃって(笑)。

6分になっちゃって(笑)。

全員:(笑)

Karyu:ライブの画も大きいところを想定していて、自分が今感じていること、夢、もっと先に行くんだっていう思いとか、色々な気持ちを入れるとああいうスケール感になっちゃったという(笑)。そういう意味ではピュアな曲かもしれない。

サビの開けるグッとくる感じはKaryuさんの得意とするところだなと思いつつも、コード感なのか何かちょっと新鮮さもあります。

ZERO:聴いている分には、すごく変化していくと思うんですけど、意外と弦楽器陣は変わらないんですよ。リズムは変わるんですけど、俺、結構ずっと同じようなことを弾いていて。その中でこれだけ展開を持っていけるのは、逆にスゲーなと思ったんですよね。それで6分の曲が成立しているので。意外とベースを追っていくと、面白く聴こえるのかなと。同じことを繰り返しつつも他は展開していくという。このループしていくのって、俺は意外と好きなんですけど、6分を感じさせないですよね。

確かに。

ZERO:尺を全然意識してなくて、先日ラジオで流れた時に6分あると言われて初めて気付きましたね(笑)。4分ちょっとぐらいかなと思ってた(笑)。

Karyu:今こうやって話しながら思い返してみると、この曲は自分の好きなジャンルが全部入っているかも。ロック調だったり、パンク調だったり、インダストリアルとかEDM、ラップも入ってるし、なんかごちゃ混ぜ感…今ある全部(笑)。

TAKA:全部盛り(笑)。

TSUKASA:この曲はフレーズ的には簡単な感じがしているんですけど、簡単そうなフレーズこそが難しくて。複雑なリズムよりシンプルなやつほどごまかせないので、忠実に叩かないとなと頭では考えていたんです。だけど、昨日初めてバンドで合わせた時に、勢いでやった方が魂も伝わるし、よれることなくどんどん前に進んでいけるなと気づけましたね。ですので、自分の苦手なシンプルなリズムをちゃんとモノにできそうです。

この曲の歌詞は、ライブの光景と人生を重ね合わせたような印象を受けたのですが。

TAKA:詞を書く時にパートがめちゃくちゃ多くて(笑)。Dメロ、Fメロ、どこの話をしているんだ? ていうかサビってどこ?みたいな(笑)。

全員:(笑)

歌詞を書くにあたって、Karyuさんからイメージの共有はあったんですか?

TAKA:いや、これはなかったですね。デモが届いて、聴きながらすぐにバーンってイメージが広がって、もうスマホにそのままバーッとメモして。英語と日本語が混ざっていますけど、Aメロで「子供の頃はこの道がずっと続くものだと思っていた。でもそうでもないらしい」みたいなところから始まって、ここから広げていこうと。イントロのパンキッシュな突き抜けた感じとか、「キッズの頃」みたいなストレートな曲にしたいなと思ったし、EDMでバーッと広がっていくところは、夜空や夢、無限の可能性とかをイメージして。色々な場面で色々な感情が目まぐるしく変わっていくような楽曲ですよね。

そうですね。

TAKA:最後、またイントロと同じような感じでストンと終わっていくんですけど、そこで全ての答えを歌詞に落とし込んであげて。だからもう物語というか、色々な感情の起伏がある中で、前に突き進んでいくようなパワー感とか人生観みたいなものもあります。間奏以降の部分は、皆で一つのところに向かっていくような景色で、シンガロングしているようなイメージもあったので、皆で歌える簡単なフレーズをリフレインしていこうとか、楽しみながら作っていけましたね。この曲の良さが広く伝わってほしいなと思います。

Karyu:今のうちらの感情を言葉にしてもらえた感じがすごくあります。先に進む感じというか。まさにこれ。

TAKA:だから自分たちが主人公の歌というか、こう突き進んでいきたい、夢を見せていきたい、 世界を変えるのは自分だっていうようなメッセージですけど、本当にLuv PARADEをそういう風にしていきたい、突き進んでいきたいなと。「明日世界が終わっても後悔はない、それでも俺たちは世界を作っていこう」みたいな。本当にメッセージソングですね。