Plastic Tree

Plastic Tree

過去と現在のPlastic Treeによって生み出された『念力』。バンドの初期衝動を昇華したメジャーデビュー20周年“樹念”第1弾作品の全貌に迫る。

2017年、メジャーデビュー20周年を迎えるPlastic Treeが、その“樹念”第1弾作品となるシングル『念力』をリリースする。本来20年前にPlastic Treeでやろうと思っていたビジョンを、現在のスキルをもって具現化したというバンド感溢れる表題曲をはじめ、c/wには、今やってみたいとメンバーの思いが一致した「creep」、さらに2ndアルバム『Puppet Show』(98年発売)収録曲でもある「サーカス」のLive Arrange Versionが初音源化(通常盤のみ収録)。また、初回限定盤A・BのDVDには自身初の東京国際フォーラム公演の模様が収録される。そんな“樹念”作品を携え、アニバーサリーイヤーに突入するPlastic Treeから、有村竜太朗(Vo)&長谷川正(B)のスペシャルインタビューをお届けする。

◆音楽を作る、バンド活動をするということを、サウンドに乗せて説明書のように伝えられれば(有村竜太朗)

有村竜太朗

――メジャーデビュー20周年イヤーおめでとうございます!

有村竜太朗(以下、竜太朗)、長谷川正(以下、正):ありがとうございます!

――10周年、15周年、20周年で意識の変化はありますか?

竜太朗:うーん…、時間が流れたなという意識はありますし、ということは残された時間のことも考えます。そういう部分では確かに意識は違いますね。ここまでやった長い時間というのにすごく意味を持ちたいなと思います。

正:意識の変化というよりは、単純に振り返ってみて「20年か、すごいな」という感じですね。

――この5年間でシングル8枚、ミニアルバム1枚、アルバム2枚をリリースして、2012年4月には武道館公演もありました。この5年間で特に印象に残っていることは?

竜太朗:5年は振り返れないですね(笑)。

正:それまでにやってないことを色々とやりましたよね。男子限定ライブ(2015年5月23日@渋谷GUILTY、2016年5月14日@原宿アストロホール)や自主企画(2015年10月12日Plastic Tree主催公演「虚を捨てよ、町へ出よう」@豊洲PIT)もそうだし、そういう意味ではすごく実のある5年間でしたね。

――特にここ数年、初めての出来事が結構ありましたよね。これだけ長い歴史のバンドでも初めてのことってまだまだあるんだなと。

竜太朗:やったことのないライブハウスもあるだろうし、まだやったことのないことは色々とあるんじゃないですかね。

――では、2016年はどんな1年でしたか?

正:なんとなく、あっという間に過ぎちゃいましたね。

竜太朗:光陰矢の如し(笑)。バンドとしては夢の一つだった東京国際フォーラムでライブができたり、いつも通り精力的に活動できていたなと思います。それプラス、自分的にはそこから一回離れて物作りしてみたというところで、まだ途中ですけど、本当の意味で一個人でアーティストとしてやれた大きな1年だったなとは思いますね。でも、今回の『念力』もソロの『デも/demo』(11月23日発売)も、作る意義があったなと思うので良かったです。

――国際フォーラムに実際に立ってみていかがでしたか。

竜太朗:ちょっと特別な気持ちを持っていた箱だったので、“国際フォーラムに立った”という感じでした(笑)。会場も音も綺麗でしたね。

正:フォーラムは単純に嬉しかったですね。ああいうところでやれるプラって本当にすごいなと思ったし。

――正さんはどんな1年でしたか?

正:個人的には、自分のベースのプレイスタイルを原点に立ち返って見つめ直せたのが良かったですね。

――竜太朗さんのソロ作品に関して、正さんから「とても美しい作品を作ったね」と言われたということが竜太朗さんのTwitterで投稿されていましたね。「俺にとって彼は、プラを始めたきっかけでもあるし、いまだに作曲でいちばん尊敬してる人」と。

正:光栄ですねぇ。本当にすごく良い作品だなと思って聴かせてもらいました。竜ちゃんもそうだと思うし、俺も改めて自分の個を見つめ直せる機会が結構あったので、良い年だったなと思います。『剥製』のツアー(2016年3~5月開催)も、やっぱり作品って、形にしてそこで一回完結するじゃないですか。それをライブで演奏するにはどういう心構えでやったらいいのかなという時に、自分が元々バンドを始めた時のようなスタンスで取り組んでみたらいいのかもなぁと思って。そこで得た感触が、結果として今回の曲に反映されていたりすると思うし、やって無駄なことは一切なかったので、それが何よりだなと思いますね。

――今作『念力』はタイトルからインパクトがあって、発表された時に驚きました(笑)。どんな曲なのか全然想像が付かないなと。

竜太朗:それは良かったです(笑)。

――そして楽曲を聴いて、まずイントロでビックリしたんです。

正:ほう!

――一瞬、プラだと気付かないかもというくらい、攻めているなと(笑)。シングルはその時期のバンドの看板にもなるので、選曲や曲作りも代表になりやすいものを選んだり作ったりすると以前言っていましたが、そういう意味では、20周年イヤーは攻めの姿勢なのでしょうか?

正:今のプラだったら色々な表現ができると思うんですけど、デビューして20年という節目を迎える時に、どういうものを提示したらいいのかなと考えて、本来20年前にPlastic Treeでやろうかなと思っていたビジョンのようなものを、もう一回具体的に曲にしてみたいなという気持ちがあったんです。

ナカヤマアキラ

――c/wの楽曲を選ぶ際も、そういう基準だったのでしょうか?

正:「creep」に関しては、皆で曲を持ち寄って、「これいいよね、やってみたいよね」という基準で選んだんですけど、「サーカス(Live Arrange Version)」は「念力」のように20年前の自分たちのスタンスを今一度ここで表現しようというのと近い感じですね。今までこのアレンジで音源化したことがなかったので。しかも、20年前、ちょうどデビューする頃にプレゼン用に3曲入りのデモテープを作ったんですけど、それに1stシングルの「割れた窓」と2ndシングルの「本当の嘘」と、今回のバージョンの「サーカス」が入っていて。その当時のバンドの名刺代わりのデモだったんですよね。そういうのもちょっと思い出したりして。この「サーカス」は正式には音源化していなかったので、やるならこういうタイミングで形にしておいたほうがいいのかなと、作ってみました。

――デビュー15周年の時はプラがやっていそうな曲、プラらしさが一つのテーマになっていましたよね。

正:「静脈」(2012年2月発売のシングル)の時は、当時のプラの最先端を目指していたんですよね。「念力」に関しては、もっと根っこの部分というのかなぁ。本来こういうことをやろうとしていたよなぁというスタンスが表現できればいいなと。

――お二人が思う「念力」の中のプラらしい部分を挙げると、どんなものがありますか?

正:曲の全体像はプラらしいと思います。

竜太朗:昔の正くんを彷彿させるベースだなぁというのと、ワウとかが昔のナカちゃん(ナカヤマアキラ)みたいだなぁというのと、デジタルっぽいのを人力で一生懸命限界へ挑戦しているのがケンちゃん(佐藤ケンケン)らしいなぁと。俺にいたっては、声から見た目から歌詞から、全部ですかね。だから、昔に持っていたイメージで、新しいものを作ったというほうがわかりやすいのかも。プラらしさって、周りの人が見て聴いて決めることで、意外と本人たちはわかってないのかもしれないなと思うんですよね。個人個人のことはわかるので、こういう部分あったよねというものを改めて集めて曲を作り上げていく作業という感じですかね。もちろんスキルは昔とは違うので、例えばちょっとエレクトロな要素が入ったりしつつ。

――なるほど。各パートの聴きどころとも言えるものが挙がりましたが、正さんとしてはいかがですか?

正:ベースに関しては、久しぶりに暴力的なベースにしてみたところがあって、あとは個々のプレイヤーの顔が見えるようなアレンジになっていると思うんですよね。

――確かに、一つ一つが立っているなという印象は強いですね。

正:ナカちゃんギター弾いてるなぁ、ケンちゃんドラム叩いてるなぁ、竜ちゃん歌ってるなぁっていう、各々のキャラクターが出ているバンド感が聴きどころですかね。

――「念力」の歌詞は〈~かな〉、〈~たらな〉がたくさん使われているのが特徴的だなと。

竜太朗:あぁ、言われてみれば。多分、次の音と感情に受け渡す時に、一番ハマりが良かったんでしょうね。歌詞なので意識的といえば意識的なんですけど、そこにこだわって書いていたわけではないですね。

――その他にも〈きれいねぇ〉〈いいねぇ〉等、竜太朗さんが持つ雰囲気のままのような感じもして。攻めのサウンドと、ふんわりした歌詞のギャップがまた魅力的です。

竜太朗:自分的には、この音に一番乗っかりやすい感情が、軽い気持ちで言う深刻なこと、みたいなイメージだったんですよね。作り込んだ感情とか、本当に吐くような感情というよりは、音に乗ってフラッと言っちゃった感情みたいな。

――「念力」というタイトルや、この歌詞に行き着いた経緯というのは?

竜太朗:感情めいた部分や人間めいた部分というよりは、もっと全部を音のパーツとして見せるような曲だなというイメージがあったし、曲の成り立ちがデビュー20周年を迎えるにあたって、せっかくその一発目のシングルだから、バンドの初期衝動めいた部分で表現したいということで、正くんが作ってきたものだったので、だとしたら俺が歌に変に意味合いを付けるより、それを説明してあげるような曲になればいいなと。音楽を作る、バンド活動をするということを、サウンドに乗せて説明書のように伝えられればいいな、20周年の最初にそういう説明書を作れればいいなというイメージでしたね。初期衝動という部分では、こういうタイプ以外の曲もまだたくさんあるんですけど。このタイミングでこういう歌詞が書けたのは良かったなと思います。

――〈届くかな?〉〈届いたらなぁ〉というフレーズが入っているのも、そういう思いが反映されているんですね。

竜太朗:最終的にはそうなりますね。自分的にはそう思っているということなので。