THE MICRO HEAD 4N’S

15周年イヤーに向け加速するTHE MICRO HEAD 4N’Sが、3曲のコントラストで描く『Silent Contrast』

11月末に開催されるツアー、そしてすでにソールドアウトとなっている12月13日の神田明神ホール公演を目前に、THE MICRO HEAD 4N’Sが新たなシングル『Silent Contrast』を完成させた。2026年の15周年イヤーに向け、より攻撃的な楽曲を求めて生まれた退廃的かつハードなリード曲「Naked shadow」をはじめ、マイフォ王道のキャッチーなメロディが光る「Time is limited〜君が君でいられる時間を〜」、中毒性のあるダンスチューン「PURPOSEFULLY」と、それぞれ異なるカラーを放つライブ映え必至の3曲が揃った。そんな最新作の制作背景を4人にじっくり語ってもらった。


もう攻める気しかない(KEKE)

KEKE

このたびリリースとなる『Silent Contrast』制作の取っ掛かりは、どんなところだったんでしょう?

kazuya:お風呂に入っていた時に、僕が僕でいられる時間というテーマで結構長いこと考えていたんですよ。今後、見た目とか何かが劣化していくのかわからないですけど、kazuyaがkazuyaでいられる時間、人生って短いなと考えていて、次はそんなシングルを作りたいなと思ったんですよね。それで2日間で5曲ぐらい作ったんですけど、その中でメンバーから表題曲は「Naked shadow」が一番面白いんじゃないかという意見が出たので、この曲でその内容は無理だよねと、話が転々と変わっていきました。なので、表題ではない曲で僕が出したかった歌詞の雰囲気をお願いしようかなという流れでしたね。

今回3曲ともライブ映えしそうなので、ツアーを見据えて制作したものなのかと思っていました。

kazuya:僕、多分1週間でアルバム1枚分の曲数は作れるんですけど、シングルを作る時もアルバムの作り方と似ていて。ポップスを作ったらハードなのを、ハードなのを作ったらバラードをという順で作るので、作曲段階ではライブのことはさほど意識はしてなかったですね。

KEKEさんは「Naked shadow」が表題曲として一推しだったわけですか?

KEKE:そうですね。ライブを引っ張っていくうえで、ちょっと攻撃的な曲が欲しいというのはありました。それと『まだ僕らを知らない君へ』(2024年6月発売)以降、歌もののリード曲が多かったので、今後いろんな対バンでバチバチにやり合っていくことを考えると、ライブ映えする曲がもっと四期として欲しいなと思って。見た目も含め、ヴィジュアルシーンにもうちょっと溶け込みたいというのがあったかな。ポップ路線の曲は、基本的にメジャー流通してタイアップを取るという部分でやっていたので、今回はもうちょっと玄人向けというか、アンダーグラウンドなところを攻めてもいいんじゃないかなと思いました。それで見た目もMVもそっちに振っていった感じですね。

8月に14周年=15年目に突入し、来年1月からのマンスリーツーマン企画も控えている中、攻めの姿勢でいきたいという思いは要素として大きかったですか?

KEKE:もう攻める気しかないっすね。僕らの武器って歌、メロディだとは思うんですけど、コンサートとライブってまた違うじゃないですか。ツーマンはライブだと思うので、やっぱり基本軸になってくるのがライブ曲だと思うんですよね。ましてや今回、まだ発表前ですけど、ちょっと背伸びをして組ませてもらっている対バンもあるので、今までのマイフォではちょっとキツいかなっていう。だから今、新しいマイフォをどんどん開拓していくべきなんじゃないかなと思いましたね。

ZERO:正直な話、やりようによってはどの曲でもよかったと思うんですけど、KEKE君からもうちょっとヴィジュアル系っぽくしたいという話も前からあって。そんな中で、四期としても「Naked shadow」みたいな曲調は数少ないし、このタイミングでこういう曲が表題として一発あったらいいなというところでしたね。

TSUKASA:KEKE君の未来の方向性を聞いた時に、やっぱりちょっと攻撃的な曲が必要かなと思いました。あとは、最近のMVが割とポップでバラードな感じが続いていたというのもありまして、来年15周年を迎えるにあたって攻めの姿勢を見せられたらなと。そんな流れで、満場一致となりました。

11月2日のFC限定ライブで初披露した手応えはいかがでしたか?

kazuya:僕は冒頭から音色を間違えちゃって(苦笑)。本当は半音上げチューニングなんですけど、レギュラーチューニングにボタンを押し間違えちゃいました。まだ馴染んでないので、必死ですよね(笑)。でも、ファンの方的には初めて聴いた割にはノッてくれていて、好感触でしたね。

しかも、リリース前の新曲を1曲目にやるというのがまた。

KEKE:FCライブって良い意味でも悪い意味でも、普段できないことができると思うので、皆にもドキドキ感を味合わせたいという意図もありましたね。歌的には、レコーディング時に「これ通して歌えるかな?」と思っていたんですけど、歌えちゃって…うん、いけるわみたいな(笑)。自分だけのことで言うと、クオリティとしてはしっかり歌える曲だなと思いました。

ZERO:個人的にはフレーズはすごくシンプルなので、今後もっと爆発できるなという手応えを感じましたね。会場の皆も折りたたみだったり見よう見まねでやってくれていて、その一体感も今後さらに希望を持てるなと思いました。

TSUKASA:1曲目からの緊張感は確かにありましたね。自分じゃ思いつかないようなフィルインがあるんですけど、叩いてみたらすごく楽しくて。ドラムのウォーミングアップでも毎回叩きたくなるようなフレーズです。それを叩いている時に「俺、ドラマーだな」って思いましたね。曲全体としては自分的にも好きな分野というか、激しい曲を叩くのは好きなので、そういうのが伝わっていたら嬉しいですね。

ちなみに、イントロでFANATIC◇CRISISの「黒い太陽」のギターのオマージュを入れているんですよね。

kazuya:たまたまキーを変えたらはまったんですよね。でも、そういう過去のオマージュみたいなものは、前から入れてみたいなと思っていたんです。わかる人だけはわかるみたいな感じ。ただ、この曲は転調もないし、コードで言うと僕にはありえないぐらいシンプルなので、ある意味僕っぽくないのかなとか思いながら。たまたまその前に書いていた曲がバラードっぽい感じだったので、それの反動でできたんでしょうね。

そうだったんですね。

kazuya:最近のこのシーンって、ラウドミュージックっぽいものが流行っているから、ギターとしては僕のパートよりもバッキングパートのほうが命で。大体自分のパートのほうが神経質になるんですけど、今回はじゃないほうを神経質に考えましたね。今はエフェクターでキーを落とせるから、6弦ギターを7弦っぽくしてロー感もすごく出て、僕なりのヘヴィロックができたと思います。

歌録りはいかがでしたか?

KEKE:過去最速で終わりました! というのも、エンジニアさんが今作から代わって、この曲は120%自分のジャッジでやらせてもらったんです。デモの段階から一人でプリプロをやっているし、喉の調子もよくて、結構すんなり録れたかなという感じですね。今回のシングルは基本的に苦戦した曲はないです。

もっと自分の人生を生きなきゃいけない(kazuya)

kazuya

今回の3曲中2曲は作詞家・松井五郎さんが歌詞を手掛けたということで、コンセプトありきでお願いしたのでしょうか?

KEKE:「Naked shadow」に関しては、僕が抽象的なオーダーをさせてもらいました。まず、あえて松井五郎さんが書かないような歌詞の内容を書いていただいたほうが面白いんじゃないかなという自分らの意見があって。松井さんが今までに書いた歌詞を全部知っているわけではないですけど、例えば安全地帯で言えば、メジャーで出ている分、どぎついことは多分コンプラ的な意味でできないと思うんです。この曲は世の中のタブーに触れているんですけど、それを松井さんが書いているということがミソだなと思っていて。

なるほど。

KEKE:そもそも今回、バンド的にメジャーで出すか出さないか、ありがたいことに今自分らが選択できる中で、出さないんだったら出さないだけの理由が欲しいよねと。そこで行き着いたのが、メジャーで出せないものを作ろうということでした。だから特に「Naked shadow」は歌詞を読んでもらいたいですね。何のことを歌っているか多分わかると思うんですけど、そういうものに触れている時点でコンプラ的に無理だよねっていう。どうせだったらMVもあまり流せないようなものに振り切っちゃおうぜということになりました。

そんな制作背景から、今回のヴィジュアルに対して皆さんが口にしている“闇落ちマイフォ”も生まれたわけですね。MVの反響はいかがですか?

ZERO:こういうテイストはマイフォではあまりないですけど、ヴィジュアルも含めて、言ってしまえば俺としては得意分野のほうに入るんですよね。やっぱりこういうのもカッコいいよねと思ってもらえているんじゃないかなと思います。個人的に言うと、三つバンドをやっている中で、本当はそれぞれ分けたいですけど、今回に関しては他での俺のキャラクターに割と寄った感じにはなっているんですよね。

TSUKASA:今回のMVは、一人ずつKEKE君に話しかけているシーンがすごく良かったという声が届いています。自分もああいうシーンは今までやったことがなくて、完成形は想像以上に皆セクシーに映っていましたね。

KEKE:あのシーンを考えたの、俺なんですよ。

TSUKASA:いや、大したことないシーンだったんですけど。

KEKE:おーい(笑)!

TSUKASA:嘘です(笑)。すごく良いシーンだったなと思って。曲が激しい分、ああいうところがあると見入っちゃうというか。惹きつけられますよね。それぞれの魅力が出ているんじゃないでしょうか。

kazuya:撮影は早起き過ぎて後半覚えてないですけど(笑)。ちなみにバンドの演奏シーンの場所は、実際はバイクや自転車がめちゃめちゃあるんですけど、それが一切わからない仕上がりになっているのがスゲーなと思いました(笑)。MVというクオリティで言ったら、最近の中で一番じゃないかなと。カッコいいと思いますね。

さて、ここであえてご自身のパート以外で「Naked shadow」の好きなポイントを教えてください。

KEKE:TSUKASAさんのドラムで、別にフィルがなくても成立する細かいところにも、しっかり入っているというのが結構好きで。ただリズムを刻んでいるだけじゃなくて、ちゃんと曲を飾るという意味で、そういう音が鳴っているのが特にこの曲はわかるから、ドラムが今回はすごく好きですね。

kazuya:僕がマイフォで激しい曲をあまり作らない理由って、やっぱり声なんですよね。別でやっているバンド・EX-FIVEの中で、TARSHIさんは何を歌っても全部の音に濁点が付いているよねって話で盛り上がったんですよ(笑)。それっていわゆるナチュラルオーバードライブで、KEKEの声はクリーントーンだから、それに対して激しいサウンドが来た時に、無理やりかけるオーバードライブって僕はあまり良くないと思っているんです。なので、はまるのかなというのはあったんだけど、結果めちゃめちゃ綺麗にKEKEの良いところが入っているなと。そういう意味では今回、ヴォーカルがすごく良かったなと思います。サビは特にKEKEの一番美味しいところが入っていますね。

ZERO:俺は印象が強いイントロのギターですね。後ろでジャーンッて白玉(2分音符、全音符などの俗称)が鳴っている中に怪しく響くあのギターは、皆も再生した瞬間に鳥肌が立つんじゃないかなと思います。

TSUKASA:僕はZERO君のベースの一発目ですね。SEから始まって、バーンッと地の底をうねるようなベースが襲いかかってきて。しかも一発じゃないですから、ドンパーンッて二発目が来る時も、またやられた!と思いますね。CDを聴く方もそう感じるんじゃないかなと思います。これはZERO君のベースだなと思いました。僕、いろんな人が弾いたベースの中から、ZERO君の音を当てられます。これはもう長年連れ添ったあれで。

ZERO:それはあるかもね。ちょっと話が違いますけど、例えば人のベースを借りて自分で音作りした場合、自分の楽器じゃなくても同じような音を作っちゃいますね。

「Time is limited〜君が君でいられる時間を〜」の歌詞は、先ほどkazuyaさんが話していた今回の制作における発端となった内容ですが、最近のマイフォっぽい歌詞でもあるなと。前シングルの「閃光のディストーション」の歌詞〈君は君であれ〉にも通じますし。

kazuya:結局僕が言いたいことは、それなのかもしれないです。kazuyaがkazuyaでいられる時間って少ないよなと考えた時に、例えばテレビを見てボーッとしている時間を否定はしないけど、僕にはもうできない。もっと自分の人生を生きなきゃいけないし、やっぱり50歳を超えて、人生により焦っているというか。いつまで音楽をやれるか、いつまで生きられるかもわからないから。この曲に関しては簡単なプロンプトを作って、こういうテーマで書いてほしいと松井さんにお願いしました。皆に死ぬ時にハッピーでいてほしいから、今日からでもハッピーになるための力になれればいいなと。伝えたいテーマは僕の中にいっぱいあるんですけど、いかんせん歌詞だけは書ける自信がなくて(苦笑)。

曲としては、歌始まりのキャッチーなマイフォらしいナンバーですよね。

kazuya:ザ・マイフォですよね。わかりやすくて、コード進行は結構面倒で、転調もあって。要はアルバムを作るイメージでいるから、まず安全牌を作っておくと、次に冒険ができるじゃないですか。僕が今回5曲作った中で一番の安全牌がこれでした。マイフォのファンが聴いて「いいよね」と言ってくれる曲であればいいなぐらいの。

KEKE:皆がKEKEってこういうの得意だよねと思っているであろう、こういう曲こそ結構キツい思いをしながら歌っていますね(笑)。サビの入口から終わりまで、ずっとキツい。でも、だからこそ人間味があっていいのかなとも思うんですけど。ストレートな曲なので、本当にまっすぐな気持ちで歌いました。あと、サビに一瞬ファルセットが入っていますけど、今までのマイフォが作り上げてきたマイフォ節のメロディみたいなものが、「星屑のアルペジオ」から広がったのかなとは思いますね。一瞬だけひっくり返してすぐに戻すって本当は難しいんですけど、ファルセットは結構得意なので、そんなテクニックも入れられて、自分の歌の可能性が広がったというか、皆に広げられたというか。

ZERO:俺は、この曲は録りながらアレンジしていったんですけど、意外とドラムに合わせやすくて、すごく弾きやすいなと思ったんですよね。TSUKASAといえば割とドコドコドコドコみたいなドラムをイメージしやすいですけど、意外とこっちのほうが得意なの?と思うぐらい。そんなちょっと新鮮な感覚で制作していましたね。

TSUKASA:多分、すごくナチュラルに叩けたからじゃないですかね。テイクもそんなに叩いてないですし、体の中に入ったものをすんなり叩けて、それがZERO君のレコーディングにも伝わったんじゃないかなと思います。