
リテイクベスト盤『NEW GENERATION 2』が映し出すTHE MICRO HEAD 4N’Sの今。過去に重ねた時間を現在の音で更新し、未来への扉を開く
2024年末のツアーファイナルで現体制における最高動員数を更新し、2025年12月13日に予定されている神田明神ホール公演もすでにソールドアウトを達成するなど、快進撃を続けるTHE MICRO HEAD 4N’Sが、現体制でのリテイクベストアルバム第2弾『NEW GENERATION 2』をリリースした。第1弾の時とはバンドの状況もメンバーのマインドも変化する中で、近年のステージで演奏を重ねてきた全13曲を再録した今作。それは、現在のマイフォを端的に表すと同時に、未来をも感じさせてくれる作品となった。
ヴォーカリストって精神的なものの影響がすごく大きい(KEKE)

リテイクベストアルバム第1弾『NEW GENERATION』(2022年12月発売)から、約2年半が経過しました。あの頃は四期らしさを大切にしていたと思いますが、もう今はわざわざ意識することもなくなったのではないでしょうか。
KEKE:そうですね。偉そうで申し訳ないですけど、自分がフロントマンをやっている、自分のバンドという意識です。次第に“四期”という言葉をメンバーの中でも全く使わなくなりましたね。ただ、自分で言うのもなんですけど、僕のこの性格というか、僕だからこそ、この短期間で気にしなくてよくなったのかなと思っていて。最初の1年間は自分自身も“四期”という言葉を、良く言えば意識していたし、悪く言えば囚われていた。でもそれは加入当時の言葉であって、今はもう普通の無印THE MICRO HEAD 4N’Sだなと僕は思っているし、皆もそういう気持ちでいるのかなと思います。
kazuya:意識はもうしてないですね。KEKEの歌声って、僕の作る曲の得意なレンジ幅だから、曲作りに関しては普通に楽しくやっています。レコーディングももう率先して自分でディレクションもするし、彼なりのジャッジがあるから、僕は1作曲家とか1プレイヤーでいられる。前までは、やっぱり僕は全体を見ちゃうから、例えばライブでMC大丈夫かな?とか、気になってしょうがなかったけど、今は自分のことをやっていればよくて。そういう意味では楽になったし、バンドになったなという感覚がすごくありますね。
そういう観点で、前作と今回の『NEW GENERATION 2』では、再録への取り組み方に違いはありましたか?
ZERO:最近、バンド的にサウンドの変更もあったので、そういう今のマイフォを『NEW GENERATION 2』は表現しているんですけど、前作は言い方を変えると、まだKEKE君の『猫被りGENERATION』というアルバムで(笑)。もちろんKEKE君が自分を出すところもあったんですけど、一生懸命マイフォに溶け込もうみたいな部分が大きかったと思うんですよ。今はもうその着ぐるみを脱いでますから(笑)。これが俺だー!っていうのをすごく感じます(笑)。
TSUKASA:第1弾の時は、選りすぐりみたいな選曲だったと思うんです。KEKE君が入ってから、ライブで一期から四期までの曲をくまなくやるようになってきていたので、そういう意味では“四期”というワードが消えて。それでいて『NEW GENERATION 2』にはKEKE君の“俺俺”がすごくよく詰まった、心強い楽曲たちになったんじゃないかなと思っております。
KEKE:ヴォーカリストって精神的なものの影響がすごく大きくて。『NEW GENERATION』の時はどうしても加入の身なので、自分の歌、声、技術的なところも含めて、皆さんが聴きやすいものを意識していたと思うんですよ。で、今回の『NEW GENERATION 2』に関しては、今の自分の立ち位置が加入当時と全く違うので、そういったものを歌で表現できたらいいのかなというのは、意識して録りました。
近年のライブで演奏してきた曲ばかりなので、ライブの絵が浮かぶと同時に最近の活動を振り返れる作品でもあるなと。今は4人体制のステージということもあって、アルバムより先に、ライブに向けてのアレンジ作業があったわけですよね。
kazuya:そうですね。単純にSHUN.のパートをどうするかというところは、すごく考えました。今回、リテイクだからSHUN.のパートを一部入れているものもあるし、大体は彼のギターをコピーして、本当はこういうことをやりたかったんだろうなみたいな感じで僕が再録しました。
しかも、ライブのたびにKEKEさんが現体制で演奏したことのない過去曲を選曲してくるという。
kazuya:これは僕の美学ですけど、ファンタでもマイフォでも、ヴォーカリストに楽しそうにやってもらうことが自分の喜びだったりするんです。もちろん人間だから、めんどくせーなっていう気持ちはありますけど、それを彼が表現したいわけだから。僕、リーダーで引っ張っていく立場という部分はまだ残ってはいますけど、それよりも今は寄り添おうみたいな気持ちのほうが強いかな。
過去曲を今の形で再録して、未来を見せる作品になっているというのが、今作の素晴らしさだなと思って。それこそ最後が「「今」=「全テ」」での〈終わりなき旅へ〉で締め括られますし。
KEKE:今回、選曲も曲順もほぼ僕の案ですね。もちろん皆さんの意見も入っていますけど、最初の案を出したのは僕で。言うてもベスト盤なので、選曲していくうえで、この2枚を聴けばマイフォのカラーも歴史もわかるというものを意識したし、自分はメンバーであり、ファンだと思っているので、ファンの人が聴きたいかなと思う部分も意識しました。だから「I surrender」とか、ライブでやるヘヴィーな曲も入れたし、いろんな要素が詰まっているかなと。本当は、去年『まだ僕らを知らない君へ』のc/w曲に「The Wings Of Wind」が入ってなかったら、ここに入れたかったんですけどね。俺がファンだったら絶対「うわ、ここにウィングス入ってるー!」ってなるから(笑)。
ZERO:「UROBOROS」って言ってなかった?
KEKE:『NEW GENERATION 3』でやりましょうか(笑)。そもそも『NEW GENERATION 2』を発案したのはZEROさんなんです。今考えれば『NEW GENERATION』をもう1枚出すって、ありそうなことじゃないですか。でも、僕の頭の中には全くなくて、この意見が出てきた時に感動しましたね。2秒で乗っかりました(笑)。
ZERO:ライブでKEKE君が急に過去曲を引っ張り出して来るから、それ1回覚えるけど、継続してやる?っていう(笑)。1回で終わらない?みたいな(笑)。だから、音源にしたらもうやるしかないだろうっていうのも、今作の制作理由の一つですね。もちろんKEKE君の声で聴いてほしいというのもありますけど。
確かに1回ではもったいな過ぎますもんね。
KEKE:良い曲があり過ぎるのが悪いのよ。選ぶ時、マジで悩むんですよ。年に3回ぐらいワンマンツアーに行くじゃないですか。本数が少ないと言えど、セットリストをマンネリ化させたくなくて。せっかく良い曲があるんだから、もっと皆に聴いてもらいたい、もっといろんな表現をしたいというのもありますし。
当時とは圧倒的に音楽的知識のレベルが違う(kazuya)

今回、「ユメノツヅキ」をリードに選んだ理由というのは?
KEKE:最初、僕とZEROさんはあえて「REINCARNATION」とかのほうがいいんじゃないかと話していたんですけど、プロモーションのことを考えてこの曲になりました。
kazuya:マイフォって、自分らで活動している割には、タイアップやラジオのパワープレイをとったり、他のバンドよりメディアで流れることが多いのが強みだと思うんですよ。だから、そこで流しやすいものを常に意識してしまうというか。あと、この曲を作った当時、元々シングルっぽくしようと思っていたので、そういう意味でもいいかなと。本当は僕も「BABEL」とかがいいなと思っていたんですけど、一般層に届けようという。要は僕らって聴いてもらわないと意味のない仕事をしているわけなので、サビから始まるものだったり、メディアで流しやすいルールの中に一番当てはまっているのが、この曲なんじゃないかなと思います。
聴き比べると、原曲から大分変わっていますよね。
kazuya:全然違います。もうコードが全く違いますよ。作ったのが約12年前だから、12年の歴史の中で僕はすごく勉強していて、圧倒的に音楽的知識のレベルが違うんですよね。元々Ricky(初代ヴォーカル)と一緒に作った曲で、ヴォーカリストって相対音階でつけることが多いから、要は理論的にバッチリ合っているわけじゃないということが多いんですよ。そこを丁寧に整えて、本当はこっちだよねって綺麗に当てはめた感じかな。だからメロディだけ残して、ほぼ全部作り直したのに近いというか。
イントロのギターから違いますし。付点8分ディレイ的なやつじゃなくなってる!と思って。
kazuya:あー! そう言われれば、そうですね。イントロやソロ、エンディングはノリでやっただけですけど、90年代っぽくしたいなと思って。ハモリのギターで、そんなに音がごつくなくて、みたいな感じにしてみようかなと思ってアレンジしましたね。
落ちサビのKEKEさんの低音は、かなり効果的ですね。
KEKE:元々あそこはRickyさんは上だったんですよね。僕って結構声が高いと皆さんに言ってもらえるんですけど、僕自身はそう思ってなくて。でも、ローの部分は今までマイフォであまり出してこなかったんですよね。それで今回「ここ、落としたいんですけど」と、かず兄に話して、そっちになりました。確かStill Night(アコースティック形態のプロジェクト)でも「ユメノツヅキ」をやった気がするんですけど、その時にオクターブ下で歌うことを発見して、そこからずっとその形で歌っていて。いつもと違う、僕の聴き慣れない声を音源にも入れてみたので、耳がゾクゾクってしてくれたら嬉しいです。
イヤホンで聴くと、声が近いですよね。
KEKE:あえて近くで聴こえるようにしてほしいと、エンジニアさんにお伝えしました。それが先ほど言っていた、自分でディレクションするというところでもあって、そういうのも自分で考えてやっていますね。
リズム隊のお二人としては、「ユメノツヅキ」の再録はいかがでしたか?
ZERO:前のバージョンの頃は、ライブで指弾きをすることはあっても、レコーディングでやったことがあまりなかったので、ピックで弾いたんですけど、今回は指弾きで弾こうと思って。ピックで弾いた時との音の違いが、より出るように弾いてみました。イメージ的に言うと、一期の時の「ユメノツヅキ」は前進していく強さ、今回はちょっと優しさも含まれた感じにしてみましたね。
TSUKASA:ドラム的にはあまり変わってないんですけど、ミックスの調整の時に、サビ部分でのライドシンバルのカップを叩くところの音量を結構こだわりました。ライブではカップを叩きたくなくて、ハイハットでやるのもいいのかなと思っています。個人的にタムやスネア、ハイハットは目を瞑ってでも叩けるんですけど、ライドシンバルのカップだけは、まじまじと見つめないと叩けなくて、そこがちょっと大変だなというのもあって。ライブは楽しく、お客様の顔を見ながら叩きたいなと思っております。
KEKE:ちなみに、自分がこのアルバム全体を通してこだわったこととして、割と原曲に近い形にしたかったんですよね。楽器のサウンドとかの話ではなくて、例えば、僕のバースデーライブでやった時の「光の世界」は、一期からちょっとアレンジした二期のバージョンなんですけど、今回僕は一期に戻しましょうと。アレンジ段階でkazuyaさんには口酸っぱく言いましたね。ただ、「理論上、例えば音がぶつかってるところとかは直すね」という話はあったので、それはもうしょうがないですよねと。
kazuya:曲の作り方って人によって違うのが面白くて。SHUN.の曲は今回僕がやらなきゃいけないので、あいつのファイルから開いてコピーするわけですけど、トラック数が多いんですよ。雑なのと、絶対こんな打ち込みいらんっていう(笑)。「BREAKING & SHOUT OUT!!!!!」に関しては、「これもいらん! これもいらん!」って一人でグチグチ言いながら8割ぐらい消しちゃって、本当はこうしたいんでしょ?みたいな最新データを入れました。
KEKE:今回SHUN.さんの曲が入るので、SHUN.さん本人には『NEW GENERATION 2』を出すということを直接伝えました。そこでもし何か変えなきゃいけない部分があったら、変えるということに関して承諾済みです。
kazuya:SHUN.の曲に関して、引き算はしましたけど、基本的には本当はこうしたかったであろう、当時の彼の技術ではできなかったこととか、そういうものは僕なりに再現したつもりです。僕なら本当はずらすけど、ずらすと雰囲気がちょっと変わっちゃうんだよな、みたいなところはそのままにしたし。
KEKE:これ、出来上がったら聴いてみたいって言ってましたよ。
kazuya:「俺より上手いじゃん」って言うと思うよ(笑)。
SHUN.さんの音を残しているのはどの曲ですか?
kazuya:「BABEL」のAメロのフィードバックみたいな部分。イーボウという音が伸びる機材があるんですけど、SHUN.ちゃんは毎回レコーディングでイーボウを試すんですよ。で、100%壊れるんですよ(笑)。
なぜ(笑)。
kazuya:イーボウを3〜4個買ったのを知っているんですけど、大体真っ二つになるんです(笑)。この曲の他のパートに関しては、僕が弾いたほうが今だったらシャープに弾けるから、僕は自分をコピーしているけど、彼の音はそのまま生かしてあげたいなと。やっぱり5人でマイフォだし、イーボウのところは逆に言うと僕は表現できないから、残しましたね。でも、自分のフレーズも13年前に出したままのやつもありますよ。「I surrender」のAメロと間奏は、1stアルバム『A BEGINNING FROM THE END.』(2012年8月発売)に入っている音のまま。これを超えるものはないだろうと思って。