このバンドにしか表現できないような雰囲気を持った曲(長谷川正)
今回の作品が43枚目のシングルです。相変わらず数字で見ると、ものすごいですが(笑)。
正:そうか、43枚目なんですね(笑)。
竜太朗:ビックリしますね(笑)。3年半空いていなかったら、どうなっていたのか(笑)。
(笑)。満を持して出す新曲として、どういうものを見せようかというバンド内での話し合いはあったのでしょうか?
正:具体的に時期をどうするというのは置いておいて、一応そういう話はちょこちょこしていて。だけど、出すタイミングによって、どんな曲を出したらいいのかなと悩ましい感じが続いていたかもしれないですね。
正さん作曲ということが決まった上での制作だったのでしょうか?
竜太朗:何となく、そんな感じだったような。
正:でもまぁ、ちょこちょこ他のメンバーも作った曲を持ち寄って集まったりはしていたんですよね。僕もこれ以外にも何曲か作ったものを「こういうの、どうかな?」と皆に聴いてもらったりしていたんですけど、「痣花」に関しては自分の中で割と確信を持って作りました。具体的に出すなら大体この時期かなというのが見えてきた時に、バンドとしてどんな曲を出すのがいいのかなと自分なりにイメージして。
なるほど。
正:こういう時期を経て「僕たちはまだまだ元気ですよ!」みたいな感じの曲でもいいし、もっとじっくり聴いてもらえるようなバラードっぽい曲でもいいかなとか、色々なパターンが考えられたんですけど、この手の曲ってこのバンドならではの、このバンドにしか表現できないような雰囲気を持った曲だなぁと思って。出来上がってみてもそう思うし、この空白の3年10ヵ月を埋めるには、こういう曲がいいんじゃないかなと僕的には思ったんですよね。
曲全体の雰囲気としては、一聴してプラの王道だなと感じました。曲作りにあたって、待望の新曲という観点での気負いみたいなものはなかったですか?
正:この曲に関しては、そういうイメージがパッと浮かんだ時点で、割と楽しく作れちゃった感じですね。メンバーにもそういう話をしつつ聴いてもらったら、皆そういうところを面白がってやってくれた感じがあったので良かったです。
竜太朗さんとしては、この曲のデモを聴いた時の第一印象はいかがでしたか?
竜太朗:カッコいい曲だなぁと思ったんですけど、フラットな曲というか、いろんなアレンジも乗っかるだろうし、言葉も色々乗っかるだろうし、どういうふうにでもなれる曲だなと思いました。逆に難題だなぁと思って。
そうなんですね。ところで、今作の収録曲は1曲のみですが、何曲か入れようという意見は出たりしなかったですか?
竜太朗:いや、出なかったです。ご時世的に…かな(笑)。1曲に集約してやりましょうと。…1曲が限界でした(笑)。
『痣花』とはちょっと危険な雰囲気が漂うワードだなと。ラスサビの歌詞で腑に落ちる感があって、端的に言えば歪な愛の歌なのかなと思ったのですが。
竜太朗:まぁでも比喩なので。自分の心情も混ざっていますし、フィクションで書いている部分ももちろん多いです。どっちかと言うと曲がフラットな曲だったので、言葉で強い世界観を付けられたらいいなみたいな感覚でした。久々のPlastic Treeのシングルだし、このバンドを好きな人にとっては、いくつかPlastic Treeらしさというのがあると思うんですけど、僕自身が歌詞を書く時に最近こういうフィクション混じりの物書きみたいな書き方をしていないなぁと思ったので、今回そういうのが合いそうな曲でもあったというところで、こういうものを書きましたね。
楽曲の細かな部分についても伺いたいと思います。冒頭ケンケンさんのリムショット始まりなのが特徴的で、あそこもプラっぽさを感じます。
正:デモの段階でああいう始まりにしようかなと思っていましたね。プレイの内容はさておき、ドラムから始まって、ちょっとずつギターのブラッシングみたいなものが重なって始まるみたいな。
そして、メインのイントロのフレーズがとても耳に残るので、楽曲のカラーを作っている重要なパーツだろうなと思います。そういえば正さんは、ギターで曲作りをすることが多いと言っていましたよね。
正:そうですね。これも基本ギターで、最初はメロディーから作っていったんですけど、イントロは歌のメロディーをベースに、曲を象徴するような、ああいうリフレインがあったらいいなと最後のほうで考えましたね。
間奏のストリングスからのギターソロが印象的で、めちゃくちゃカッコいいなと。
正:久しぶりのバンドの曲なので、バンドでやれることフルコースみたいな感じも、この曲に関してはいいかなと思って。アンサンブルもバンドっぽいし、ああいうギターソロのセクションがあってもいいだろうなと思いましたね。
間奏明けのブロックは、アレンジも古語のような歌詞も特徴がありますが、ここはどのようなイメージだったんでしょう?
竜太朗:後から付け足した部分ですけど、シンプルな曲だから、あそこでちょっと世界観が変わるような感じがあってもいいなと思って作りました。そういう意図で作ったので、歌詞も自ずとちょっと違う観点で捉えてみましたよ、という感じですね。
なるほど。今回、正さんのデモ段階からプリプロやレコーディングの過程で、各メンバーの意見が反映されて変わった部分はありますか?
正:核の部分、例えばイントロのフレーズやメロディーは基本皆が良しとしてくれましたね。リズムのアプローチは、デモだともうちょっとラウドな感じだったのを、そういう要素じゃなくて違うアプローチでやれないかなとケンちゃんに相談したり、ギターのアンサンブルとかも基本はナカちゃんにお任せして、ストリングスの部分も僕は元々あまりああいう発想はなかったんですけど、入ったら「あ、これいいね」という感じになったし、結構色々ありますね。結果、自分なりにこの曲で表現したいことは全部表現できた気がします。
ちなみに、4月29日のZepp DiverCity公演で、先行して「痣花」を初披露した時の感触はいかがでしたか?
正:最初はやっぱりお客さんの反応はあまりわからなかったですね。じっくり聴いている人が多かったと思うので。これから音源になってそれを聴くことで、こういう世界の曲なんだなみたいなものがもっとわかってもらえると思います。
竜太朗:新曲をやるなんて随分なかったことなので、演奏に必死で、どっちかと言うと演奏会でしたね(笑)。「できたー!!」みたいな(笑)。
正:「完走したー!!」って(笑)。
発表会(笑)。
竜太朗:ですね(笑)。「演奏ができたー! 歌が歌えたー! 間違えなかったー!」みたいな(笑)。その後にようやく歓声が聴こえたな、みたいな。そういった意味では充実感はありましたね。
まさにお披露目ですね。
竜太朗:うん、お披露目でした。楽しかったですけどね。変にワクワクしたし。いつもライブに行く時に曲を聴くことなんてないのに、「今日、新曲をやるぞ」って入りの時から聴いちゃったりして(笑)。
正:(笑)
ところで、物作りに熱いプラの皆さんなので、これまでにも楽曲制作の際に色々な熱いエピソードがありましたが、今回の制作時でのバンドっぽいエピソード、熱かったエピソードはありますか? 新曲のレコーディングというもの自体が久々だったと思いますが。
竜太朗:機材の搬出…?
正:あぁ、あれね(笑)。
竜太朗:何でああなったんだっけな? 機材の搬出が結構大変だったなという(笑)。
正:久々に自分たちでやったんですよね。
竜太朗:あ、そうだ。今回、楽器を録るところがいつもの場所ではなくて、僕が歌入れでよく使わせてもらっているスタジオだったんです。いつものところだと楽器が置いてあるんですけど、そうじゃないので、楽器をメンバーと一人二人のスタッフで運ばなきゃいけなくて。そのスタジオが極端な急勾配の坂道にあるんですよね。アンプとかも勝手にザーッと行っちゃうので、それをこう…。
正:皆で支えながらカートで運んだりしてね(笑)。
竜太朗:2トン車に積み込むときに一回、命の危険を感じましたね(笑)。物流って大変なんだなぁ…みたいな(笑)。あっぶないなぁと思いながらやっていましたね。
とてもバンドっぽいエピソードで。懐かしさもあったんじゃないかなと。
竜太朗:そうですね。妙におじさん気合入っちゃってね(笑)。
正:ね(笑)。
竜太朗:そんな搬出の苦労を久々に味わいました。そりゃあ、スタジオが変わればそういうことになるよなと(笑)。
正:レコーディングはかなり順調だったので、特にこれと言ったエピソードはないですけど、確かに新しい曲をレコーディングするという作業自体が久々だったので、それ自体がすごく楽しかったですね。
さて、今作は全60PのA5サイズのフォトブックレット仕様(「痣花」の歌詞にインスパイアされた写真を、カメラマンの中野敬久氏が撮り下ろした豪華仕様)ということで、言わば楽曲×写真の共同作品のようなものですよね。既に写真はご覧になりましたか?
竜太朗:色校を見ましたね。
正:なかなか良い出来だと思います。
フォトセッションのようなものでしょうか。
正:そうですね。
竜太朗:歌詞を区切って、その歌詞を連想させる写真をキネマ倶楽部で撮ったという形ですね。カメラマンチームに任せて撮ってみようという感じで。
正:イメージとしては、写真がある詩集みたいな感じかもしれないですね。
竜太朗:うん。写真を見ながら物語を読むみたいな。楽しんでもらえたらなと思います。
それは楽しみです。そして、リリースから約2ヵ月後となる9月15日に秋ツアー「痣と花」がスタートします。ツアーとしては約1年ぶりでしょうか?
正:そうですね。去年の夏はベスト盤のリリースに伴ってやったので、1年ちょっとぶりですかね。
その時より本数があるツアーは久々ということで。東京は10月14日Zepp DiverCityで、近年プラはこの会場でのライブが多いですよね。
竜太朗:ずーっとやり続けていますね(笑)。ちゃんとツアーっぽい本数で回るのは久々なので、一歩ずつ以前のように戻れる希望の兆しと捉えて、噛み締めながら回っていこうかなと思います。
正:「痣花」という新しい曲があることで、セットリストの考え方もそれを軸にやっていくことになると思うので、それはこれから考えるところですけど、どういう感じでこのツアーをやろうかなと考えること自体が楽しみですね。やっぱり先の予定を考えられるっていいですよね。そういうことがままならなかった時期を経ているので。そういう意味では竜ちゃんと似ていますね。久々にツアーに行けることを噛み締めて、自分たちも楽しみたいなと思うし、来てくれる皆さんも「あぁ、久々のツアーだなぁ」と楽しんでくれたらなと思います。聴いてくれた人それぞれの中での「痣花」のイメージを持って来てくれたらなと。
そして、今後のプラの動きとしてはどうなっていくんでしょう?
竜太朗:ツアーもあるし、他に決まっているライブもあるので、一個一個楽しみながらやりつつ、やっと制作モードになっていて、今後そういう予定もあるので、曲も作っていかなきゃねと言っているところですね。
では近い未来に、さらなる新しい音源も期待できそうですね。
竜太朗:そうですね。今度はそんなに空かないと思います(笑)。
(文・金多賀歩美)
Plastic Tree
有村竜太朗(Vo&G)、長谷川正(B)、ナカヤマアキラ(G)、佐藤ケンケン(Dr)
オフィシャルサイト
リリース情報
New Single『痣花』
2023年7月19日(水)発売
(ビクターエンタテインメント)
[完全生産限定盤](CD+BOOK)VIZL-2203 ¥4,400(税込)
収録曲
[CD]
- 痣花
- 痣花(Instrumental)
[BOOK]
A5サイズフォトブックレット(全60ページ)
ライブ情報
●Plastic Tree Autumn Tour2023 「痣と花」
9月15日(金)HEAVEN’S ROCK さいたま新都心(FC限定)
9月23日(土)名古屋THE BOTTOM LINE
9月24日(日)京都FANJ
10月8日(日)仙台PIT
10月14日(土)Zepp DiverCity(TOKYO)
10月22日(日)GORILLA HALL OSAKA
●Ryutaro Arimura Presents JellyFish Breed FC LIVE in HALLOWEEN
有村クロの東京仮装倶楽部 ~令和五年 かぼちゃ狩り~
10月20日(金)東京キネマ倶楽部(FC限定)
●Plastic Tree 年末公演2023
【第一幕】Plastic Tree 年末公演2023 ゆくプラくるプラ〜まひるのうた編〜
【第二幕】Plastic Tree 年末公演2023 ゆくプラくるプラ〜よなかのうた編〜
12月17日(日)パシフィコ横浜 国立大ホール