デビュー15周年を経たPlastic Treeが生み出す最新作。
2013年第1弾シングル『瞳孔』で魅せるプラ流バンドサウンドの真骨頂。
シングルとしては前作『シオン』から約1年ぶりとなる最新作『瞳孔』。昨年のメジャーデビュー15周年におけるシングル3作、アルバム1作、1stアルバムの再構築を経て、改めてPlastic Treeらしさを見つめ直した末に辿り着いたのは、“バンドっぽさ”。様々な要素が織り込まれながらも一貫しているのは“バンド完結”だ。全員揃っての登場は久々となるPlastic Treeの4人に、今作についてじっくりと語ってもらった。
――3月の「東京キネマ倶楽部一週間公演『裏インク』」から早くも約5ヶ月経ちますね。
有村竜太朗(以下、竜太朗):早い…早過ぎて笑えますね(笑)。
――VifのTwitterで出題したクイズに対するファンのみなさんの予想ランキングをご覧になっていかがですか?
竜太朗:意外なところもありますね。…俺らの方が意外だったのか(笑)。
――そうですね(笑)。
竜太朗:藍色とかそうですよね(笑)。でも、ほぼ合ってるんじゃないですかね。
長谷川正(以下、正):木曜日まではことごとく正解してるもんね。後半がやっぱり難しかったのかな。特に紫とか。「パイドパイパー」はなかなか鋭いですね。
――また一週間公演をやってみたいですか?
竜太朗:んー今ならそう思います(笑)。バイトみたいに通ったなぁ。これだけバンドをやっていても、一週間同じ場所でライブをやり続けるというのはなかなか無い経験なので。無事に終わったから良かったですけど、やっている時は危なっかしかったですね。
――そうだったんですね。
竜太朗:正直、やる前はもっと不安でしたけどね。決まった時は、やれるかやれないか半々の気持ちでした。
佐藤ケンケン(以下、ケンケン):途中で「竜太朗さん喉大丈夫ですか?」って聞こうと思ったことがあったんですけど、聞いたら逆に気になって喉が潰れたら嫌だなと思って、触れられなかったです(笑)。
竜太朗:そこは聞いてもよかったのに(笑)。聞いたことによって喉が潰れちゃうことはないよ(笑)。
ケンケン:気にされたら嫌だなぁと思って。
竜太朗:近いことはあったかも。気にしないようにしてましたね。声が出ないとか掠れるとか、気にし始めちゃうと…大変でしたね。
――アキラさんはいかがでしたか?
ナカヤマアキラ(以下、アキラ):いやぁ覚えてないです(笑)。こういうことをやったんだなぁって感じですよね。こういう企画(Vif特別企画)をやっていただけて有り難いですよ。嬉しいです。楽しんでいただけて良かったです。
◆本来やろうとしていたものに今一度向き合って(長谷川正)
――この一週間公演が終わって、すぐ制作期間に入ったんですか?
竜太朗:ちょっと空けてですね。
――タイトルは基本的には作詞者が決めるということでしたが、今回はいかがですか?
竜太朗:今回も3曲ともそうですね。
――「瞳孔」というタイトルを聞いて、「静脈」(2012年2月発売シングル)が頭に浮かびました。歌詞に“瞳孔反射”というワードが出てきたりするので。
竜太朗:“瞳孔”も前から使っている言葉ではあるのであんまり気にしてなかったんですけど、言葉の羅列の中からなんとなく最初にこれかなって抜き出したのが“瞳孔”だったんだと思います。選んだカードがそれだったという感じかな。
――タイトル曲「瞳孔」(作詞:有村竜太朗 作曲:長谷川正)は、昨年の15周年のシングル3作(「静脈」「くちづけ」「シオン」)とは少し違うイメージで、美しさと儚さはありつつバンド感がより強い印象を受けたのですが、正さんの中でその3作とは違うものにしようという意識はあったのでしょうか?
正:そこまでの意識は特別なかったんですけど、シングルの3曲よりもアルバム『インク』や『Hide and Seek(Rebuild)』(※『インク』限定盤に収録された、1stアルバム『Hide and Seek』を完全再構築したリアレンジアルバム)を作ったことの影響の方が大きいかな。そこで得たバンドサウンドの構築の仕方や表現の仕方というのが反映されている曲だと思うんですよね。
――昨年は“Plastic Treeがやってそうな曲”を意識したとおっしゃっていましたよね。
正:自分たちが本来やろうとしていたものに今一度向き合って、実際の作業を通して「元々こういうことをやろうと思っていたバンドなんだよね」とか、そういうことを再確認できたというのも今回の制作において結構大きかったかもしれないですね。バンドっぽさっていうのをうまく出せたらいいよねっていう話は作業中によくしていたので。その辺の影響は大きかったんじゃないですかね。
――「インク」もそうでしたが、プラの様々な要素が詰め込まれている楽曲ですよね。ホールで観てみたいなと思いました。
竜太朗:あぁー、それはなんか嬉しいですね。自分たち的にはまだ作ったばかりでライブの手応えとかがないので。割りとシンプルな曲なので、それをホールのプラで観てみたいっていう意見は嬉しいですね。
――9月20日から始まる秋ツアーはライブハウスですね。
竜太朗:そうですね。
――何かしらの演出が入る可能性も…?
竜太朗:どうでしょうねぇ。話し合ってみないと(笑)。やりたい、という気持ちはあります(笑)。
――まだ時間がありますからね。ところで、「瞳孔」に出てくる〈懺悔日和な晴天〉という言葉が印象的でした。
竜太朗:今回の曲は音に対して出てきた言葉とか映像とか…もしかしたら心象風景みたいなものなのかもしれないですけど、あんまり感情的じゃないというか。曲で触発された感覚みたいなところで歌詞書きさせてもらったかなぁ。
――“懺悔日和な晴天”とはどんな感じでしょう?
竜太朗:あー(笑)。雲一つなく清らかな晴天だと「恥の多い人生だなぁ」とか考えてしまうような(笑)。なんて言うんですかねぇ…性格じゃないですかね。そういうものを音楽で表現しやすいんじゃないですかね。ライブとかは別なんですけど、昔から楽しいことがあると気持ちと逆なことを考えてしまったりとか。日常生活でそういうものを出してるわけじゃないんですけど、曲にして自分純度の高いものを表現しようとすると、どうしてもそういう部分が出てくるみたいです。
――なるほど。では雨は嫌いじゃないタイプですか?
竜太朗:嫌いじゃないですね。出かける用事がなければ。
正:出かける用事がある時は嫌ですよね。面倒くさいなぁって。傘をさして人混みとか行きたくないじゃないですか。
――センチメンタルな気分になったりはしないですか?
正:その時の気分次第でしょうね(笑)。家にいて雨の音を聴いてるだけで、クヨクヨしちゃう時もあるし。
竜太朗:雨はよく眠れますけどね。
正:うん、逆になんか落ち着く時もあるね。
竜太朗:眠れるので家でよく雨の音を流してますもん。
――コメント動画の質問の答え、それがありましたね。
竜太朗:あー! そうですね。あれからいろんな雨の音が集まりました。
◆今結構すごいレベルまで来ていて(有村竜太朗)
――今回のMVも素敵ですね。「静脈」「くちづけ」「シオン」と同じ監督さんですか?
竜太朗:はい、小嶋(貴之)さんです。
――個人的には「静脈」からの4作中、今作が一番好きです。
竜太朗:おー! 嬉しい意見です。ほんと嬉しい。
――竜太朗さんが幕の中から首から上だけ出して歌っているシーンが好きですね。
竜太朗:あそこ気持ち悪くていいですよね(笑)。ああいう赤いビロードの幕ってライブでもよく使うし、うちのバンドにもしっくり来るものなんですけど、MVだとあんまりないなと思って。小嶋さんが曲を聴いて触発される映像という世界があるので、それをいつも楽しみにしているんです。今回の赤い幕は自分たちのライブでもよく使うし昔からのイメージにもよく合うアイテムなので、それを今の感覚でやってもらったらどういう風に映るんだろうと思いました。
――今回はアー写の雰囲気もかなりダークですよね。ヴィジュアル面にみなさんが意見を出すことはあるんですか?
正:あんまりそういうやり取りはないですね。ヘアメイクさんやスタイリストさんが提示してくれたものが、今の自分たちに「あ、確かにいいよね」っていう。疎通がうまくいっているということだと思います。
――理想的ですね。あうんの呼吸で。
竜太朗:投げっぱなしっていう話もありますけどね(笑)。でも、音もそうだしヘアメイクさんやスタイリストさんも基本的に変わらないチームなんです。その中で日常的に色々な意見交換もできているので、衣装もこういうのがいいよなっていうものを汲み取ってくれているんじゃないですかね。
――あうんの呼吸と言えば、作詞者の担当も立候補制且つあうんの呼吸で決まるとのことでしたが、今回はいかがですか?
竜太朗:今回もそうですね。曲作りするのに集まっていたので、なんとなく自発的に。
正:自ずと、この曲にはこの人が歌詞を書く流れだな、というものが決まっていましたね。
竜太朗:今結構すごいレベルまで来ていて、どっちが書いてもいいんだけど「うーん」みたいな。例えばc/wの「時間坂」とか書いてみたいなって思うんだけど、逆に正くんが書いたものを歌いたいなっていう気持ちもあって。その時の空気でふらっと決めていく感じなんです。「アイレン」はケンケンが書きたいということで。
――竜太朗さんは実体験や恋愛観が歌詞に反映されるということですが、正さんはいかがですか?
正:僕の場合は歌い手ではないので、どちらかというとフィクションの方が多いですね。こういう曲にはこういう世界観の歌詞が合うんじゃないかなとイメージして書いていくことが多いです。
――「時間坂」(作詞作曲:長谷川正)は、歌詞には“時間坂”というワードが出てこないですが、このタイトルはどのようなところから生まれたのでしょうか?
正:おそらくこういうシチュエーションだろうなって。実際にこういう坂があるわけじゃないし、最初からそこまでイメージしていたわけじゃないんですけど。
――この楽曲は情景が浮かびますね。夏の夕暮れのちょっと寂しい感じというか。
正:ちょうどリリースの時期や曲を作っていた時期も関係しているんじゃないですかね。結構最近作った曲で。あんまり季節感云々というのは考えてなかったんですけど、ちょうどそういう風景がよぎったのかもしれないですね。