HIROTO × ナカヤマアキラ（Plastic Tree）

あまりにも縁があり過ぎる（ナカヤマアキラ）

HIROTOさんの深い部分で、アキラさんは重要な存在だったわけですね。つまり、今回の共演は相当アツいと。

HIROTO：僕的には相当アツいです。だって、そこで育っているんですもん。心の師匠的な人が横で弾いてくれる。こんなに心強いことはないです。僕、常々心構えとして、自分がステージに立つ時に、14歳の時の自分が見て幻滅しない、14歳の自分が見て「おっ」と思うものをやりたいと思っているんですけど、これこそ見せてやりたいですね。「ヤバくね？」って（笑）。

アキラ：（笑）

第2部はHIROTOさんがギターヴォーカルなので、アキラさんとツインギターにもなるわけですよね？

HIROTO：あ、交互に弾きたいと思っている箇所があります。

アキラ：あの曲でしょ？　あれって最後にハモるだけじゃなくて、交互にやる感じ？　HIROTO君、俺の順？

HIROTO：HIROTO、アキラさん、最後に両方です。

アキラ：2回なかったっけ？

HIROTO：1回ずつですね。増やしてもいいですけど。

アキラ：いや、やめましょう。限界です（笑）。

HIROTO：（笑）

ソロ曲だけでなく、アリス九號.の曲もやるんですよね？

HIROTO：はい。あと、ルーツになった曲のカバーもやります。やっぱり完全に初見の曲って、ファンの人も盛り上がりきれないじゃないですか。だから、ルーツの曲があって、この曲があるという関連性を最初のライブの中で見せたいなと。で、こういうのがあったから、次のライブではこういう新曲ができてきたんだみたいな物語性を持たせたいなと思って選曲しています。セルフカバーも自分が10代の時に作った曲を選んで、今、僕はソロアーティストとしては新人なので、10代の時に走り出した感覚を、同じ座標だけど階層だけが違っている状態でやりたいなと思って。このメンツでやらせてもらうことによって、アリス九號.の曲もまた新しい魅力をファンの人に感じてもらえたら嬉しいなと思っています。

そうですね。

HIROTO：チャレンジでもあるんですけどね。やっぱりそれを聴いて育ってくれた人からしたら、下手に思い出を変えてほしくないみたいなファン心理ってあるじゃないですか。でも、そこにあえてトライして、この曲にはこんな魅力もあったんだと感じさせたいんですよ。影丸君が叩いてくれて、アキラさんが弾いてくれて、Kが支えてくれて、自分がフロントに行ったら、それはできると自分の中ではもう見えているんですよね。あとはやるだけです。

アキラさんが今回のライブで一番楽しみにしているのはどんな部分でしょう？

アキラ：まず、HIROTO君は自分がセンターに立ってソロでやるのは、今回が初なんだよね？

HIROTO：実は経験はあって。約9年前、バンドが独立してまだ動けなかった時、誕生日にソロイベントがあって、これは自分が真ん中にいないと成立しないなと。あと何回かそういう機会がありましたけど、それは僕的にはバンドありきの別冊みたいなものだったんですよね。

アキラ：じゃあ、自分の楽曲を持って、自分の看板のもとセンターに立つというのは…。

HIROTO：ちゃんと「HIROTOです！」というステージは、今回が初めてです。

アキラ：なるほど。今までに経験はあっても、今回は独特の緊張感を持って立たなきゃいけないと思うんですよ。そういう場に一緒に立てるってすごく光栄なことで、何度も経験できることじゃないですからね。そんな毎度、初めての人のサポートに行くなんて仕事はないわけで（笑）。

HIROTO：バージンキラーみたいな（笑）。

アキラ：「あなたも初めてですか。あなたも初めてですか」なんてことはない（笑）。だから、そういう場に選んでいただいて、すごく光栄だなと思います。楽しみにしているという意味合いで、そこが一番強いかな。前任者がいないわけですから、誰かがこうしていたから、こうしといてくださいね、みたいなこともない。ほとんど無の状態で立たせてもらえる。ミュージシャンをやっていても、なかなかこんな機会はないんじゃないかな。

そもそもアキラさんは、サポート出演自体が珍しいですよね？

アキラ：悲しいかなね（笑）。なかなか誘ってもらえない。全然やるんですけどね。

皆さん恐れ多いのかもしれないです。

HIROTO：それは絶対あると思いますよ。僕も、まさか受けてもらえるとはと思いましたし。でも、基本的に可能性が0なことって、この宇宙にないと思うので、本当にわずかでも可能性があるなら、トライしてみようと思っちゃうタイプなんですよね（笑）。

大切なことですね。

HIROTO：2019年にアリス九號.がフェスみたいなもの（2019年8月24日「Beautiful Beast Fest.」＠新木場STUDIO COAST）をやった時に、実はプラをお誘いさせてもらっていたんですけど、スケジュールが合わなくて。でも、竜太朗さんが「俺のソロだったら出られるんだけど」と言ってくれて、出てもらったんですよね。そういう流れがあって、ツーマンもまた絶対やらせてもらいたいなと思っていたんですけど、うちの活動が止まっちゃって。実は19周年のタイミングでもう一度フェスをやろうとしていて、そこでも名前を挙げさせてもらっていました。いろんな事情で結局ワンマンだけになったんですけど。 結構それは心残りで。でも、本当にたまたま先ほど話したメンバー皆さんと食事に行かせてもらう機会が訪れて…もうこの流れだなと。

アキラ：この流れだよ。あまりにも縁があり過ぎる（笑）。

HIROTO：遂に実現。だから自分的には本当に、一緒にステージに立たせてもらう、このスタートのタイミングでご一緒させてもらうのは、もう感慨深過ぎますね。あ、ちなみに影丸君のドラム、スゲー気持ちいいっすよ。対談第1弾でも話したんですけど、僕は結構衝撃でした。

アキラ：うちのケンケンさん（Dr）に「影丸君ってどういうタイプなの？」って聞いたら、「タイプ的には、ex.スリップノットのジョーイ・ジョーディソンみたいな感じじゃないですか」と言っていたから、それは凄腕の方だねと。

HIROTO：スリップノット！　手数もすごいんですけど、基本の8ビートを叩いた瞬間のドンッドンッが風圧を感じるというか。この人、本当に太鼓を叩くために生まれてきた人だなと。

アキラ：それはすごいね。

ちなみに、今後二人で一緒にやってみたいことはありますか？

アキラ：何かあるかな？　例えばどういうこと？

例えば、一緒に曲を作るとか、HIROTOさんソロとアキラさんソロでツーマンをやるとか。

アキラ：面白いねぇ。

HIROTO：おー！　そんなのやらせてもらえたら…。

アキラ：その場合どうすんの、ギタリスト（笑）。

HIROTO：…え（笑）？

アキラ：すごく面白いんだけど、俺どうすんだろうと思って（笑）。

アキラさん一人2ステージ？

アキラ：そうだよね。「終わった終わった。また行ってきます！」みたいな（笑）。

HIROTO：どうするかはちょっと置いといて、めちゃくちゃやりたいですね。

期待しています！　HIROTOさんは他に一緒にやってみたいことはありますか？

HIROTO：曲を書いてもらいたいというのはありますけど…あ、一緒に海外でライブしたいですね。

アキラ：海外でライブはね、一周回って楽しいんですよ（笑）。日本で常識とか当たり前にやってくれると思ったものが、海外だとこんなにないんだっていう。裸一貫みたいな。味方はステージの人間だけというのが露骨で。だから、すごい一丸となったチームとして帰国するという。あれは不思議だね。そのぐらい過酷なことが起こる。

HIROTO：アリス九號.の香港公演の時に、照明さんが途中で帰っていて（笑）。

アキラ：あー！　ありがち！

HIROTO：セッティングして、最初チェックしていたけど、途中から何もやらなくなったから、もう仕込み終わったのかなと思っていて。リハがある程度終わって照明のオーダーを出しに行こうと思ったら、「帰りました」と言われて（笑）。

アキラ：本番でできるし、というのが割と海外の普通。「君たち随分リハやるね」みたいな感じです。

HIROTO：海外で体感すると、いつでもバンドを始めたての時みたいな気持ちになるんですよね。まだこんなのあったかみたいな（笑）。あと、日本人の性質として、初見の曲でウワーッ！とはあまりならないじゃないですか。真剣に向き合ってくれる結果でもあると思うんですけど、一旦様子伺うみたいな。海外だと、もう聴いた音にそのまま反応するので、良ければウオーッ！となる。だからある種、試されている感もあって、盛り上がらなかったらそれまでなんだなと。僕、ドMなんですかね（笑）？　そういう環境であればあるほど燃えちゃう。アキラさんと行ってみたいなぁ。

アキラ：海外は熱くなれるのよ。ほんと劣悪過ぎて、一周回って楽しい。

HIROTO：そこをどう楽しめるかが、そもそも音楽なんじゃないかなって。

アキラ：うん。海外公演をやると、日本って本当にちゃんとしてるんだなって実感しますよ（笑）。

HIROTO：どこの国が印象に残っていますか？

アキラ：メキシコはすごかったっすよ。「PCを迂闊に置いておくと盗られますよ」とか、「路地に入ったら鉄砲で打たれますよ」とか、もう色々な噂を聞くわけですよ。我々は街スタで合わせるぐらいの機材しか持っていかずに、ほとんどのことは現地でやるわけですから、さっき言った通り味方は演者4人しかいないみたいな。「これはどう考える？　日本でこういう公演は久しくやってないぞ」とか思いながら（笑）。でも、お客さんの盛り上がりはすごかった。

HIROTO：なるほど、南米に行きましょう（笑）。

アキラ：楽しいだろうね（笑）。

（文・金多賀歩美）