THE MICRO HEAD 4N’S

激動の2024年を締めくくる――THE MICRO HEAD 4N’S、勝負をかけた最高傑作『星屑のアルペジオ』が誕生

まさに激動と言える2024年を過ごしてきたTHE MICRO HEAD 4N’Sが、前作『まだ僕らを知らない君へ』に続くメジャー第2弾シングル『星屑のアルペジオ』を完成させた。その背景を紐解くと、彼ら自身にとって実質メジャー第1弾である感覚が強いという今作。それゆえ、より高い熱量をもって制作され、彼らの真骨頂である美メロに新たな要素を加えた表題曲をはじめ、c/w曲にはライブ映え必至のロックチューン「DESIRE」、打ち込みを主軸とした「黎明」と、勝負をかける最高傑作が誕生した。


今回が本当の意味でメジャーというフィールドで出す初めての作品ぐらいの感覚(KEKE)

KEKE

ちょうど取材前日、現体制の始動ライブから丸2年が経ちました。

KEKE:本当にまだ2年?って自分でも信じられないというか。僕としては今はもうファミリーみたいな感覚に勝手になっています。自分の中で加入時と今を比べて変わったこととしては、最初はメンバーについていく形がほとんどでしたけど、今はバンドを引っ張っていく側に頑張ってシフトして、THE MICRO HEAD 4N’Sを上に導くために知恵を出して色々発言させてもらっているんですよね。加入当初よりももっと具体的に案が出せるようになってきたかなと思います。変わらないことは、メンバーにリスペクトを持ちつつ、一つの目標である野音に向かっていくというところですね。

ZERO:あっという間でしたけど、4年ぐらい経った気もしなくもないなと。歴代の活動の中でフロントマンの意向を一番強く反映しているのが四期で、KEKE君もしっかりと引っ張っていけるようになったなという印象が強いですね。

TSUKASA:KEKE君が入ってから活力、元気みたいなのが以前よりも増しているように感じていまして。極めつきはこの前のFCライブの時に、もう全てを引っ張って色々やってくれているのを見て、頼もし過ぎてどうしようって感じです。いや、安心できるんですけど(笑)。常に人を笑わせたり、全てにおいてエンタメの部分があって、KEKE君の成長を感じるというか。マイフォにとってもすごく変われた2年だったなと思います。

kazuya:やっぱり今年はSHUN.がお休みしたのがバンドにとってはデカかったと思うんですよね。僕自身、相当悩みましたし、現実的に4人の仕事量も増えるわけじゃないですか。そういうのをKEKEが率先してやってくれるので、僕は今、肩の荷が下りているというか。任せられる部分が増えた=信用できるところが増えたという部分で、良い形になってきているなと思います。

このたび『星屑のアルペジオ』がリリースされますが、表題曲はkazuyaさんが3時間くらいで作ったと話していましたよね。

kazuya:多分5月くらいに作ったと思うんですけど、その時、自分のスケジュールが2日間しかなくて、多分今作っておかないとヤバいなと思ったので、ちょっとピアノを弾いていたら「あ、これいける」みたいな感じになったんですよ。

スルッとできた曲は難産な曲より良かったりするものですか?

kazuya:絶対そうですよ! どの曲も自分の中で70点以上を出せていると思うんですけど、スルッとできた曲は80点、90点とか、より良いですよね。多分、曲書きする人は皆そうじゃないかな。

KEKE:kazuyaさんは一度デモを送ってきて、自分の中でやっぱりダメだと思ったら、送信取り消ししますからね(笑)。1回聴いてみたかったのに!と思って(笑)。

kazuya:曲作りの最初の関門はメンバーに良いと思ってもらうことだから、曲を出した時に「さすがkazuyaだ」って言われないと、もう僕の負けだと思うんですよ。だから必然的にデモのレベルも高くしなきゃいけないし、変なのを送って「あー、無理」って言われたくないですよね(笑)。

(笑)。13周年ライブの時に、kazuyaさんが「僕の曲のテーマは『涙』なんだ」と話していて。「星屑のアルペジオ」は、そんなkazuyaさんの王道的美メロ曲だと思いますが、皆さんデモを聴いた第一印象はいかがでしたか?

TSUKASA:僕は最初、宴のようなイメージがありまして。歌詞が星空という風になったので、星を眺めながら騒いでいるような感じかなとも思ったんです。結果、内容的には違うんですけど、「上弦の月のオーケストラ ~Stella Note Magic~」的なドラムのフレーズがデモの段階でもうあったので、なるほど、これはそういう騒げる曲になるなと思いました。

ZERO:メジャーという部分で、第1弾「まだ僕らを知らない君へ」の後に来るわけですけど、いろんな意味で超えてきたなと思いましたね。ポップさというのはマイフォにもちろんあるものですけど、その中でも特にキャッチーでスッと入ってくる、普通に流れていても印象に残る曲だなという第一印象でした。

KEKE:kazuyaさん本気出してきたなっていう感じですよね。今年kazuyaさんは生誕半世紀を迎えるわけで、絶対にそれを意識していると思うんですよ。その中で、“kazuya”として一番得意とする究極の部分を詰め込んできたのかなと思って。それと、ちょっと悲しさもあり、キャッチーさもあるというのが、一種のkazuyaさんが歩んできた人生の軌跡みたいなものでもあるのかな、なんて思いました。「まだ僕」はメジャーに向けて作り出した曲ではなくて、元々はアルバム用の曲だったので、僕としては今回が本当の意味でメジャーというフィールドで出す初めての作品ぐらいの感覚なんですよね。そういった意味でも、マイフォの一番良い部分を全部詰め込んできたなと。kazuyaさんがより熱を込めてきたのが曲から伝わったので、僕もテンションが上がっちゃって、デモをもらってすぐに仮歌詞を書いて、1コーラスを送り返したんですよ。

kazuyaさんとしては、ここで勝負をかけたい気持ちや、50歳という節目に対する意識は曲作りの段階であったのでしょうか?

kazuya:まさにKEKEが言ったことがほぼその通りで。でも、全部後付けですけどね。KEKEがファルセットを使いたいと、遠回しにしつこく僕にアピールしていたのが印象に残っていたので(笑)、もうファルセット入れるかと思って作っていったらいい感じになって。で、例えば二期の「上弦の月のオーケストラ」とか、オーケストラというワードを僕が提示して「『◯◯のオーケストラ』にしてください」というやり方を昔よくやっていたんですよ。今回、KEKEに「アルペジオ」を使ってほしいと言ったら「星屑のアルペジオ」というタイトルが来て、もう100点と思って。仮歌詞が入った歌を聴いた時に、これいけるわと思ったんですよね。

そうなんですね。

kazuya:メジャー第1弾シングルってある種、意図してないところで起きた偶然の産物みたいなもので。そのために作った曲ではないから、僕の中で100点ではなかったんです。歌詞に助けられたところが大きかった。だから、僕にとっても今作がメジャー一発目の感覚が強いです。で、メジャーで出すというのは不特定多数に聴いてもらうことが目的なわけで、そう考えると、安っぽい言葉かもしれないですけど、“売れる”ための確率を上げる作業をしなきゃいけないんですよね。みんな歌詞を大事にするから作詞家さんを立ててみようとか、時代の流れとして振り付けはマストのものになってきているから入れてみようとか。あと、そんなに勝負をかけるんだったら、生ストリングスを入れたいなと思って。それから、SPOT動画はナレーションを入れて、音楽がより良く聴こえるようなものにしたいなとか。僕のやってみたいことと僕の周りのこと、メジャーで出すこと、その全てを今できる範囲で一つにしたという感じですね。

どうせ人は死ぬことが決定しているので、その間どれだけ遊べるか(kazuya)

kazuya

「星屑のアルペジオ」の各パートについても伺いたいと思います。ベースラインが結構目立つ印象を受けましたが、レコーディングで特に意識したことはありますか?

ZERO:音作りやフレーズ自体は、ほぼデモのままを形にした感じですけど、いかに自分っぽさを出さないかというのがこの曲のテーマでしたね。ミックスした状態のデモを聴いて、後にパラデータを開いてみると、こんなこと弾いているんだっていう面白いことがいっぱい詰まっていて、間違いなくそこには自分にない発想があったんですよね。だから、自分なりのフレーズも色々思い浮かんだんですけど、そういうのも消していくことを重視しました。で、最終的にマスタリングの時にちょっとベース上げの音が選ばれましたね。

サビのリズムパターンは先ほどTSUKASAさんが言っていた宴のイメージというのがまさにと思いました。

TSUKASA:やっぱりサビは騒げそうだなということと、2Aの和太鼓的なフレーズがこの曲のアクセントみたいに思っていまして、気に入っております。曲全体としてはメロディを引き立てるために、いかにシンプルなリズムにするかが重要で、デモからあまりいじってないんですけど、唯一僕がこだわったのが最初のハイハットとキックのコンビネーションです。あそこはちょっと自分らしさを出していたんですけど、レコーディングが終わる直前にkazuyaさんから変えてくれと言われまして。そしたらkazuyaさんが考えたリズムのほうがすごくおしゃれだったので、ありがたかったです。

歌の難易度はどうでしょう?

KEKE:もちろん難しいですけど、いつもながら練習して臨みました。1回録り終えて聴いたら、ほとんどピッチが合っていたんですよ。それは練習の成果もあるんですけど、僕のキーや声質にマッチしているのかなと思いました。それと、マイフォって1Aと2Aでほぼ同じメロディを歌うことが多いんですけど、今回2Aが違う感じになっているんですよね。せっかくいろんな人に聴いてもらえるチャンスなので、新しいことをしたいよねと。サビでファルセットを使っている曲も、おそらくそんなにないんじゃないかな。僕が入って変わった部分を、そういうところでも入れていきたくて。だから、kazuyaさんが生み出してきた美メロ曲の中でも、本当に新しさがある楽曲だと思います。

歌詞は作詞家・松井五郎さんによるものですが、kazuyaさん的にも過去最高の自信作と言えるような曲ができたことで、勝負をかける意味で松井さんに依頼する気持ちになったということでしょうか?

kazuya:KEKEが書いた仮歌詞も決して悪くはなかったんですけど、もうとにかく確率論ですよ。勝てる確率を上げたいと。「雪月華」(アルバム『NEW ERA -the beginning-』収録曲)の時に松井さんの話はもう出ていたんですけど、その時は正直ビビってたんです。でも、もう今回行かなきゃいつ行くの?みたいな気持ちになっちゃったから、お願いしました。しかも、そんな大物作詞家さんに何回か書き直しをさせるという。実はメンバーも知らない幻の第1弾があるんです。多分、松井さんがめちゃくちゃ勉強してくれたんだと思うんですけど、マイフォ過ぎるものが来ちゃって。せっかくだから松井さんの色が欲しいなと、タイトルありきで書き直してもらいました。

そうなんですね。

kazuya:ちょっと勇気が要りましたし、幼少の頃から安全地帯を聴いて育ってきて、松井さんの歌詞はカラオケでも歌うぐらい好きなので、そんな方とお仕事できるなんて、もう今しかないのかなと。僕、ポジティブな意味で口癖のように言うんですけど、どうせ人は死ぬことが決定しているので、その間どれだけ遊べるかというのが僕の人生のテーマなんです。今のうちにやれることをやってみようと勢い一発でお願いしました。

KEKEさんの仮歌詞は、最終的な松井さんの歌詞と方向性は近かったのでしょうか?

KEKE:いや、近くないですね。元々はkazuyaさんから、肯定的な歌詞がいいんじゃないかという話があって。アルペジオって一音一音を鳴らして音色を奏でていくので、星屑を人に例えて皆で奏でようとか、いっぱいいる人たちの中で輝く一番星みたいな内容が僕の歌詞だったんですけど、松井さんから上がってきたのが恋愛の歌詞だったんですよね。

kazuya:TSUKASA君が言ったみたいに、僕も皆で星を見ながらワーみたいなハッピーソングになると思っていたんですよ。そしたら結構悲しい方向性で来たのでギャップは感じましたけど、それはそれでありなのかなと。

男性目線での失恋の歌詞ですよね。

KEKE:自分が思っていたものとは全く違う方向性だったので、歌詞を理解して昇華させるのに少し時間はかかりました。メロディ自体は僕が得意とする分野ですけど、表現という意味ではサビが結構難しかったかなと。〈好きだと言ったあの日〉の部分でどこにブレスを入れるかとか、語りかける感じにしても、どう語るかというニュアンスが、僕と松井さんの考えがちょっと違ったので、そういうフレーズ一つひとつが難しかったですね。松井さんが現場に来てくださって、贅沢にも相談させてもらいながら録れたのが、すごくよかったです。

ちなみにkazuyaさん、やっぱり2Bの転調はミソかなと。

kazuya:これ、ぶっちゃけ入れる必要がない転調なんですけど、作っていく間にこの曲に対する愛情がMAXになっちゃって、僕の技を全部入れたいなと思ってきて。だから、メロディに導かれたみたいなアーティスト的なことではなくて、個が出たというか(笑)。結果、あそこを褒めてもらえることが結構多いので、よかったのかなと。あと、ストリングスのアレンジはFANTASTIC◇CIRCUSの「ダウンコード」をやってくれた方なんですけど、その時にとんでもなく良かったので、今回は同じ方にお任せしたほうがいいなと思ったんですよね。

なるほど。ところでライブ初披露の際、KEKEさんは歌いながら振りをやることの難しさを実感したと言っていましたよね。

KEKE:歌と違うリズムの動きをするのが、わけがわからなくなるというか。やっぱり新曲という部分でマイクローン(ファンの呼称)も当然構えるので、ここでスゲー良いと思わせないとダメだなと、いつも以上に歌に集中するわけですよ。その中で振り付けが来ると「おおおお」ってなるという(笑)。やっぱり難しいっすね。

ライブで演奏してみて、新たな気づきはありましたか?

ZERO:ベースのプレイで言うと休符をしっかり入れないといけないので、動きながらもしっかり止まるとこは止まって。そうしないとぼやけちゃう曲だと思うんですよね。ドラムとの兼ね合いもありますし。あと、この曲はイヤモニをしなくちゃいけないので、そのトラブルが怖いと思いました。ド頭から入るので、トラブると入れないんですよね。

TSUKASA:スタジオでKEKE君にも言われたんですけど、サビのフレーズでテンションが上がる感じになれたらいいねということで、色々研究しまして。ライブでは自然とハイテンションな感じにできたんじゃないかなと思っています。レコーディングとは違うテンション感でできるのが、この曲の面白いところでもあるかなと。

KEKE:リハをやっていて、ドラムがフレーズは一緒でも前にするか後ろにするかで、すごくテンションが変わったんですよね。だからこの曲はある意味、ドラム次第で良くも悪くもガラッと変わってしまうなと思って。やっぱりライブではテンションが上がっているから、TSUKASAさんもいい感じに叩けていて、テンション感はリハよりも高くいけたかなと思いましたね。この曲、TSUKASAさん一番の大仕事ですよ…!

TSUKASA:要ですね。裏に入るスネアの強弱で、その問題が解決できることがわかったので、今後が楽しみですね!