2024.12.07
H.U.G、defspiral＠渋谷REX
「Karyu Birthday Event -Ophiuchus-」
西洋占星術は黄道上の12星座に基づくものだが、天文学的にはへびつかい座（Ophiuchus）を含む13星座が黄道上に存在する。星座の中でも巨大で目立つ存在であるへびつかい座、その区域を太陽が移動する期間は11月29日から12月17日頃とされている。
このたび催されたのは、へびつかい座の日付に当たる12月7日生まれのギタリストを祝う「Karyu Birthday Event -Ophiuchus-」で、主役であるKaryu擁するH.U.Gと、スペシャルゲストdefspiralのツーマン公演として行われた。去る10月には当夜とは逆にdefspiral主催公演「Psychedelia」にH.U.Gが招かれ、親交の深い関係にある2バンドによる初のツーマン実現で、愛に満ちた一夜となったとことは記憶に新しい。その前公演において、和樹（Dr／defspiral）が初めてH.U.Gのサポートを務め、当夜も引き続きその形がとられることとなった。
開演5分前に横山和俊（Mani＆Key＆Per／H.U.G）が影アナ前説で場を温めた後、defspiralのステージが開幕。全10曲を4ブロックで構成したステージはまさに非の打ち所がない、あまりにも完璧な流れだった。キラーチューン「PULSE」でのスタートから「HYSTERIA」を畳み掛け、一気にフロアの熱を上げた冒頭ブロックに次いで、現体制での初アルバム『ULYSSES』（2024年4月発売）の収録曲たちを中央に据え、後半では盛り上がること必至のダンサブルなナンバー、そして締めのバラードというのが大枠の流れ。その中に当夜ならではと思える点が散りばめられていたのだ。
まず、『ULYSSES』ブロックに、インダストリアル感のある鋭利かつ重厚なタイトル曲が入ったこと。この楽曲はイントロダクション的な立ち位置として、作品および『ULYSSES』ツアーの1曲目を担ってきたゆえ、中盤に配されるというのは初めての試みではなかろうか。音源のマニピュレートを横山が担った楽曲であることから、今回あえてチョイスしたと思われるが、「HYSTERIA」と「ULYSSES」の間にスリリングな「ARCANA」が入ったことで、違和感のない流れを生んだ。また、作品と切り離して考えれば、「ULYSSES」はステージの場面転換にも適した楽曲なのではと感じられたのが新たな発見だった。
Karyuとは長い付き合いであり、現在はLuv PARADEでも活動を共にしているTAKA（Vo）が、「色々な面でぶつかり合って、分かり合っている彼のバースデーということで、本当に嬉しいです。今日は愛でいっぱいの幸せな1日にしたいと思っています。たくさん踊って楽しい空間にしていきましょう！」と告げた後、後半ブロックの入口となったのが新曲のハッピーなロックナンバー。現在開催中の「defspiral tour 2024 “Nyx Nitefall”」初日公演で初披露したばかりの楽曲がこの日も組み込まれたことは、ファンにとって嬉しさを伴うものであったに違いない。
そして、和樹のドラム、MASATOのギター、RYOのベース、それぞれの音が順に重なっていく展開が魅力的な「Arcoromancer」から鉄板のダンスチューン「MASQUERADE」でフロアを揺らし、「たくさんの愛に満ちた空間になっていると思います。愛とはいろんな形がありますけど、愛しい人がいる…（フロアを見渡し）ここは愛しい世界ですね。そんな愛の歌を最後に贈りたいと思います」とTAKA。オーロラを思わす映像をバックに、まさに〈愛しいこの世界〉と歌う温かなバラード「GALAXY」をもって、実にドラマティックなラストシーンとなったのだった。この選曲についても、例えば曲数が多かったり、ツーマンの出順が後攻であれば、バラードを最後に持ってくる可能性は極めて低かったはずだし、メッセージ性の観点からもdefspiralとH.U.Gの関係性あってこそ、そして特別な日に対するdefspiralの愛情表現の形だったのではないだろうか。
その後、ステージ転換時には横山進行による音声のみの幕間トークが繰り広げられ、ryo（Vo／H.U.G）とdefspiralの面々が「Karyuと私」をテーマに語り合った。そこでの和やかな会話の詳細については割愛するが、気になる方はぜひ配信でご確認を。
H.U.Gのステージはバンド名の発端となった「HUG」でスタートを切り、様々な場面を経ながら最終的に全13曲を披露。序盤にryoが「今日はお誕生日会だと思ってやって来ました」と述べたように、終始幸福感に満ちた光景が繰り広げられたことに加え、彼らもまた、この夜ならではの展開を見せていったのだった。
メインコンポーザーKaryuが生み出した、アタック感の強いハードなナンバーが並んだ前半戦。先述の「HUG」は2022年にAngeloの活動休止後、Karyuが最初に作った楽曲であり、オリジナル曲としてはH.U.Gの始まりの曲、すなわちそれはKaryuにとっての新たな始まりでもあったわけで、誕生日という新たな歳の始まりにふさわしい幕開けだったと言えよう。
多彩な展開かつ起爆力抜群の「HELIOS」の後に配されたのは、シティポップ的な軽やかなメロディと儚さを持つ「ロゼ」。これが次への良いフックとなっただけでなく、1年前のKaryuバースデー公演で初披露された楽曲であるという事実も感慨深い。その曲終わりの暗転から、横山による鍵盤の音色、Karyuのギター、ryoの歌が順に重なり、オリジナルメンバー3人のみで名バラード「LOVE THAT NEVER ENDS」を一節聴かせた後、MASAHI（Support B／Versailles）、和樹を含めてオールインするという新たなアレンジは、楽曲をよりドラマティックに引き立たせる印象的な1シーンとなった。また、満天の星空を背景に〈終わらない愛を語ろう 空が白んでいくまで〉と歌う光景は、まるで先ほどのdefspiral「GALAXY」へのアンサーソングのようにも感じられた。
「H.U.Gの2024年最後のステージ、そしてKaryu君のバースデー。だけど、僕らはここにいる全員を幸せにするために来ました。一緒にハッピーになってくれますか！？」（ryo）との投げかけから、ソロ回しを含む「MEMBER CALL」、そして「WHO IS THE ROMEO」と鉄板のライブチューンを経て、終盤はキャッチーなナンバーが続くことに。その入口となった「SEEDS」を前に、ryoが述べた言葉を記しておきたい。
「こんなにハッピーな1日になっていて、皆が喜んでくれていて、とっても嬉しいです。毎日いろんなことがあって、あっという間に1年が終わっちゃうけど、幸い僕らにはKaryuという太陽がいます。日々前進していかなきゃいけない僕らにとって、この太陽の存在はかけがえがなくて、皆の胸の中に、僕らの胸の中にある種を花咲かそうとする原動力をくれるKaryuに、ハッピーバースデーを伝えてください。そして、太陽の光だけじゃ花は育たない。その呼び水をくれるのは皆の気持ちや熱い声なので、皆の笑顔を咲かせてほしいと思います」
その後、ベーシストがMASASHIからRYOに入れ替わり「VENUS」を、さらにTAKAとMASATOも加わり、前回のツーマン公演でもセッションした「LOTUS」（defspiral）を7名でプレイ。そして、MASASHIがケーキを持って再登場し、フルメンバーでKaryuの誕生日を祝うと、「最後はやっぱりH.U.Gの曲で終わりたい」（ryo）と、当夜のハイライトとも言える、総勢8名による愛の歌「HEART」をもって、この特別な記念日は終演を迎えたのだった。
「すごく幸せです。defspiralの皆さんに助けられて前回も今日もやれているので、Freaks（defspiralのファンの呼称）の皆さんにも感謝しています。ダッコちゃん（前回のツーマン時に出た、H.U.Gのファンの呼称案）もね。皆さん集まってくれてありがとうございます。Karyuは年齢的には結構きてますけど（笑）、ここからだと思うので、よろしくお願いします！」と締め括ったKaryu。前回にも増して、この上ない多幸感と愛に包まれた一夜はこうして幕を下ろしたが、H.U.Gとdefspiralのストーリーはこの先も続いていくに違いない。再び彼らが交わる日を楽しみに待ちたい。
◆セットリスト◆
【defspiral】
01. PULSE
02. HYSTERIA
03. ARCANA
04. ULYSSES
05. VIVA LA VIDA
06. 夢見る蜉蝣
07. 新曲
08. Arcoromancer
09. MASQUERADE
10. GALAXY
【H.U.G】
01. HUG
02. DON’T DOUBT
03. BLOOD PIN
04. HELIOS
05. ロゼ
06. LOVE THAT NEVER ENDS
07. DROP
08. MEMBER CALL
09. WHO IS THE ROMEO
10. SEEDS
11. VENUS
12. LOTUS（defspiral）
13. HEART
（文・金多賀歩美／写真・堅田ひとみ）
【配信情報】
●Karyu Birthday Event-Ophiuchus-
2024年12月7日（土）渋谷REX
出演：H.U.G、defspiral（スペシャルゲスト）
H.U.Gサポートメンバー：MASASHI（B／Versailles）、和樹（Dr／defspiral）
配信チケット ￥4,000（税込）
販売期間：2025年1月6日（月）22:00まで ※最長
視聴期間：2025年1月6日（月）23:59まで ※最長