2023.05.28
defspiral@Veats Shibuya
「defspiral tour “CARPE DIEM -extend-”」
3月12日にスタートした全14ヵ所15公演にわたるdefspiralの全国ツアー「defspiral tour “CARPE DIEM -extend-”」が、5月28日Veats Shibuyaにてファイナルを迎えた。5月26日が始動記念日の彼らにとって、本公演はツアーファイナル兼13周年のアニバーサリー、さらには1年前の5月28日に和樹(Dr)が正式加入し、現体制となって丸1年という様々な意味合いを持つ特別な夜となった。
今ツアーでは現体制初の音源であるシングル『明日への階段』が初日より会場限定発売となったが、その時点で「もっと新曲が増えるかもしれない」と公言していた通り、5月12日には『VIVA LA VIDA / 光の世界』、そしてこのファイナル公演では『ALEGRIA / FLASH』と、三作品が立て続けに発表されたことは大きなトピックス(三作品の収録曲は各配信サイトでも配信中)。しかもそれらがツアー中に制作され、ライブを経て完成した音源であることは極めて重要な点で、まさにリアルタイムのdefspiralが投影されたものであることは確かな事実。すなわちそれは、ツアーを通してファンと共に作り上げた楽曲たちと言ってもいいだろう。
今ツアーお馴染みの1曲目「PULSE」で威勢よくスタートを切ったこの日、先述の新曲たちを軸に据えながらアンコールを含め全21曲が披露された。早くも2曲目に投入された「VIVA LA VIDA」は3分に満たない短い尺ながら抜群の起爆力を発揮し、「FLASH」ではフロアに息の合ったハンドクラップが鳴り響けば、TAKAの歌とMASATOのギターによる会話のような掛け合いも心地よく、重厚なロックバラード「明日への階段」はTAKAの圧倒的なヴォーカリゼーションはもちろん、和樹のツーバスをはじめ魅せるドラミングが見応えたっぷりだ。
本編中盤に配されたしっとりと聴かせる「光の世界」は、そのメロディーの良さが際立ち、サビの〈降りしきる雨〉のリフレイン、落ちサビの〈世界はまだ美しい〉といった歌詞も印象的。軽やかな横ノリかつdefspiralならではのアンニュイさも感じる「ALEGRIA」は、この空間に新たな風を吹き込んでくれ、無数の流れ星を思わすレーザーライトが交差する中、「明日への階段」と対を成すヘヴィー&ハードかつキャッチーな「流星」が本編を締め括った。
後のMCで音源制作をしながらのツアーだったことを振り返り、TAKAが「濃密な時間を過ごしました」と話せば、「念願のCDが出せて。ハイペースの制作は楽しかった」と和樹。「すごく健康的だという結論が出ました」とはRYO(B)の言葉で、いつしか音源をリリースした後にツアーを開催することが通例となっていた中、そうではない方法をとったのが今回。楽曲を制作し、ライブでの演奏を経てブラッシュアップしたものを音源という形にする、その行程はバンドにとってごく自然なことであり、過去には彼らもそれが通常運転だったはず。つまり今、改めてこの形をとったことは、バンドの新陳代謝を促す良い結果をもたらしたのだろう。無論、ツアーと同時進行であることは時間との戦いになるわけで、できる限り無駄を省いた生活を送らざるを得ないという点で、フィジカル的にも健康だったという意味合いも含まれていると思うが。
もちろん既存曲の数々でも最高の景色を見せてくれた彼ら。序盤に「ヘイ東京! ファイナルだぜ! ついてこいよ!」(RYO)と、アダルトかつダーティーなムードでフロアを揺らしたシャッフル曲「THANATOS」、MASATOが紡ぐアルペジオから始まり、TAKAの歌声、和樹のドラム、RYOのベースと音が重なり合っていく様が美しかった「Hollow」、「ゆこう、光へ」と告げ、頭上を通るレーザーライトへ手を伸ばすTAKAの姿が印象的だった「SHINING (IN YOUR HEART)」、一瞬にして空気を支配した壮大で圧倒的なバラードナンバー「ESTRELLA」などハイライト尽くし。
また、defspiralとしては今ツアーより声出し解禁となったことから、それが叶わなかった日々を取り戻すようにオーディエンスの声を求める場面もしばしば。メンバーコール&ソロ回しから始まる「Arcoromancer」では、フロアの熱い応戦ぶりに対し「いい声してんな!」とTAKAが満足げな表情を浮かべれば、本編最終ブロックでは「ここまでの14公演の全てを超えていきたいと思います」(TAKA)と言い、MASATOの煽りで「SALVAGE」へ突入。赤に染まったステージでは弦楽器隊のヘドバンや、RYOがステージ際でフロアを挑発するように、重心を低く構えベースのネックを立てて弾くあの姿も見られ、〈声を聞かせて〉と歌うセクションではお決まりのオーディエンスによる歌声が、続く「BREAK THE SILENCE」でもシンガロングがフロアに響き渡ったのだった。
さらに、アンコールでは「色々な出会いと思いがあって辿り着いた13周年です。これからもまだまだ皆で元気に楽しい時間を重ねていきましょう」というTAKAの言葉もありながら、疾走感あるロックナンバー「SILVER ARROW」での〈今君に溢れ出した この思い伝えたい〉〈今届けこの夜を超えて このメロディに乗せて〉といった歌詞が胸を打つものであったし、ダンサブルなナンバーを数多く持つのもdefspiralの特徴の一つで、「MASQUERADE」「IRIS」「LOTUS」でフロアを揺らし、多幸感溢れる空間を描き出したのだった。
かくして幕となったこの特別な一夜。MCの中でも「かじゅたん(和樹)入ってくれてありがとう! すごくフレッシュな気持ちでバンドをやれています」というMASATOの言葉があったが、終演後の楽屋にはTAKA、MASATO、RYOの連名で「かじゅたん defspiralに入ってくれてありがとう 1周年記念」と書かれた祝酒のシャンパンが用意されていた(メンバーのTwitter参照)という愛溢れるサプライズがあったことも付記しておきたい。
この後defspiralは、6月4日HEAVEN’S ROCK 熊谷 VJ-1にてメリー主催のツーマンイベント「魑魅魍魎2」、7月22日〜8月26日にTHE MICRO HEAD 4N’Sとのカップリングツアー「9BALL GAMES」が控えているが、新たにファンクラブの開設をはじめ、2023年中にニューアルバムを出すこと、それに伴い冬には長めのツアーを開催予定であることが発表された。
バンドとして今とても良い状態にあることが見て取れた一夜。改めて、新曲が6曲入るというラインナップは、実質的に新たなミニアルバムを軸に据えた公演と同等と言っても過言ではないものだった。これだけ楽曲の幅が広がれば、当然1ステージの構成にも変化が生まれ、それはバンド全体の進化にもつながっていく。今ツアーは前ツアーの「拡張」を意味するタイトルが掲げられていたわけだが、「この勢いで皆が大好きなdefspiralを広げていきたいと思います」というTAKAの宣言もあった通り、今後も彼らの中で「拡張」は重要なキーとなりそうだ。ここからも続いていくdefspiralの物語を楽しみにしたい。最後にTAKAの言葉でこのレポートを締め括ろう。「未来にご期待ください!」
◆セットリスト◆
01. PULSE
02. VIVA LA VIDA
03. THANATOS
04. FLASH
05. 明日への階段
06. Hollow
07. 光の世界
08. AQUA
09. Arcoromancer
10. ALEGRIA
11. SHINING (IN YOUR HEART)
12. ESTRELLA
13. SALVAGE
14. BREAK THE SILENCE
15. CARNAVAL
16. 流星
En1
01. PHANTOM
02. MASQUERADE
03. SILVER ARROW
En2
01. IRIS
02. LOTUS
(文・金多賀歩美/写真・株式会社LINKSOLU 上野宏幸、堅田ひとみ)
【ライブ情報】
●メリー主催ツーマンイベント「魑魅魍魎2」
6月4日(日)HEAVEN’S ROCK 熊谷 VJ-1
●THE MICRO HEAD 4N’S & defspiral Coupling Tour 2023 9BALL GAMES -4th-
7月22日(土)川崎Serbian Night
7月23日(日)柏PALOOZA(GUEST:DaizyStripper)
7月30日(日)仙台ROCKATERIA
8月4日(金)名古屋ell.FITS ALL(GUEST:SPLENDID GOD GIRAFFE)
8月6日(日)岐阜柳ヶ瀬ants
8月11日(金・祝)姫路BETA
8月12日(土)大阪RUIDO(GUEST:FEST VAINQUEUR)
8月19日(土)札幌SPiCE
8月20日(日)札幌SPiCE
8月26日(土)新宿BLAZE(O.A:SPLENDID GOD GIRAFFE/GUEST:H.U.G)