其の九 ~ギタリスト・nisaが見たレイヴ~

其の九 ~ギタリスト・nisaが見たレイヴ~

レイヴが久々の有観客ワンマンライブ「夏果て。」を行った。延期が続く「終活」とは異なる新たな企画として行われた久々のライブに、多くのファンが歓喜し、そして安堵したことと思う。そんな中、Vifではギタリスト・nisaのパーソナルインタビューを行った。レイヴの有能なスタッフを経て、正式メンバーとして加入後、彼はプレイヤーでありながら、バンドを客観的に見つめる参謀的立ち位置にあった。そんな彼が語った、今の率直な気持ち、そして未来への思い――ぜひ、じっくりと読んでいただきたい。

◆「ファンに誠実にいよう」と気持ちはまとまっている

――取材日現在、レイヴ 2020 SUMMER PREMIUM LIVE「夏果て。」が行われています。

nisa:これは、夏の8周年里帰り TOUR『原点回帰』とLAST ONEMAN TOUR「Day×Bye×day」ができなくなってしまったので、少しでも何か別の方法でライブが出来ないかと。

――今回のライブは、終活においてどういう位置づけなんでしょう?

nisa:『原点回帰』ツアーとラストワンマンツアーは別途やるつもりです。なので今回は、それが空いたところで、できる限りの対策をした、できる限りの規模の新規の企画、ですね。

――なるほど、何かの代替案ではなく、新たな企画なんですね。レイヴはコロナ禍に入ってから一貫して有観客ライブを避け、全て延期にしてきましたよね。有観客ライブは8月28日に高田馬場AREAで行われたイベント(「Takadanobaba AREA presents コスモタウン~45min~」)以来でしょうか。

nisa:そうですね。あのイベントが5ヵ月ぶりにお客さんを入れたライブでした。久々の有観客ライブがイベント、というのは若干モヤッとしたんですが(笑)、このイベントをやってくれたからこそ、僕らも有観客ワンマンに踏み切ることができたところもあります。僕らだけだったら9月4日に有観客でやることの踏ん切りがつかなかったと思うので。

――久々の有観客ライブはいかがでしたか?

nisa:イベントの時は正直よくわからなかったんです。ステージと客席の間にビニールの仕切りがあったから、お客さんからちゃんと見えているかな?と思ったり、お客さんも声を出したり、前に詰めたりというレスポンスができないから、いるんだけどいないような感じで実感がなくて。4日のワンマンは全着席で、客席との間に仕切りはなかったんですけど、やっぱり不思議な感覚でした。内容もバラード系だったので、静かに拍手で終わる感じでしたし。

――ファンの方の反応はいかがでした?

nisa:見る側も緊張しているのかな?という感じはしました。本当はレスポンスしたかったんだろうけど、ファンにとってもワンマンが久々過ぎたしこういう状況なのでどうしていいのかわからなかったのもあると思うんです。

――セットリストもこういうシチュエーション用に考えられていますよね。ツインギターにしたりと、かなりアレンジが施されています。

nisa:レンがずっと「俺、ギター弾くから」と言っていたので(笑)。9月4日に演奏した既存曲のアレンジは、悠と僕で2曲ずつ担当してやったんです。でも、自分が作曲やメインのアレンジでガッツリ関わった曲は、その時に頭の中で鳴っている正解の一つがそれなので、それ以外の解を求めるのがなかなか大変でした。

――今あるものが完成形なわけですもんね。

nisa:そうなんです。それで悩んじゃって。しかも、アレンジする曲は元々がそこそこアップテンポな曲なんですよ。イケイケで作っているのに、それを静かにアレンジしろって言われると難題で(笑)。中でも大変だったのは「BOTEKURI」でしたね。レンが持ってきた原曲をアレンジしたのは僕だったこともあって大変でした。

――どんな風にアレンジされたんでしょう?

nisa:ダークなバンドのバラードってこんな感じだろうな、という暗~いけど少し激しい感じです。

――nisaさんの目論見通り、素晴らしい既存曲の別角度が見せられたんですね。

nisa:そうですね。あれは誰も想定していなかったアレンジだと思います。よくある単純にスローテンポにして弾き語りで歌うだけのアレンジにはしたくなかったんですけど、結果ちゃんと意図通りのアレンジにできました。

――それにしても、コロナ禍で「終活」の予定が狂いまくっていますね。

nisa:予定通りに行っているものがないですよね。何もかも延期ですから。

――あえて“延期”を選んだのはなぜだったんでしょう?

nisa:消化するライブではないから、というのが大きいです。まだ未来があるバンドであれば、たくさんあるライブ中の1本かもしれないし、ツーマンもまたやるかもしれない。でもレイヴはもうやらないわけじゃないですか。だから、やることで少しでも妥協してしまわないように、延期にしたんです。もちろん、それはバンドごとの考え方なので、何が正しいということではないんです。ただ僕たちは、ちゃんと終わらせようって決めているので、そこは守ろうと思って。

――活動期間が伸びることは想定していましたか?

nisa:僕個人は延期はないと思っていたんですよ。他のメンバーも、年内でちゃんと終わらせたがるだろうと思っていたし。でもさすがにこの状況だと無理だなと。今の素直な気持ちとしては、「どうしよう。いつにしようかな。でも決められないな…」です。ただ、最後までやることは全員で決めているので、そこの不安はないですけどね。

――ファンの方々はレイヴと一緒にいられる期間が伸びて嬉しいと思いますが。

nisa:そこはどうなんだろうかと思っているんですよ。僕らに限らず、まだそのファンとしてのモチベーションは続いているのかなと。この5ヵ月、活動が何もない期間があって、でも他に家でも楽しめるエンタテインメントはたくさんあって。簡単にそっちに流れられるじゃないですか。ヴィジュアル系ってライブでみんなで振りをして、楽しくワーワーやってなんぼなところがあると思うんです。それがもう成り立たないんですよね。そんな中でファンのモチベ―ションは続いているのかなと。一方で、バンド側に熱量があっても、ファンの熱量が低下すると、その気持ちがそのままバンド側に流れてしまう部分もあって。こんな状況下で、「僕らはすごくやる気があるけど、もうこれを求めている人はいないんじゃないか?」と感じて、解散してしまうバンドもいるんじゃないかとも思います。その分バンドが努力しろよ、という当たり前な綺麗事は抜きにして本音の部分ですね。

――ファンとバンドのモチベーションは相関関係にあるんですね。

nisa:そうですね。俺らは有観客ライブが始まったので、この後は進んでいくしかないんです。というのは、ソーシャルディスタンスの関係でライブの入場者数を減らしているんですけど、発券数がその人数に届いていない会場もあるんですよ。コロナ禍で地方の子たちが来られないし、そもそもライブがその日に行われるのかもはっきりわからないから、キャンセル料や払い戻しの事を考えるとチケットに手を出せないんですよね。その状態で僕らがライブをやると決めて、チケットの発券を打ち切ると、ファンは「え、やるの!?」となるじゃないですか。全員が不本意ですよね。ライブハウスもやってほしいし、僕らもキャンセルや延期は多額のお金がかかるからその日にライブをやらざるを得なくなるし、ファンはチケットに手を出しづらいし…。個人的にそれが一番嫌なのが、みくるの追悼ライブ(10月26日に目黒鹿鳴館で開催される「レイヴ Gt.みくる追悼 ONEMAN 「Bora Bora Blue」」)なんですよ。追悼ライブはあの日あの場所だから意味があるので、延期にはできないんです。

――ではみくるさんのライブは決行するんですね。ちなみにこのライブ、1年後にするという案はないのでしょうか?

nisa:1年後はレイヴをやっていないと思うんです。きっと年明けからは、今みたいな延期の仕方はせずに、再開時期が見えるまで動かないと思います。こういう状況で、僕らはいつでも準備してやれるんですけど、あとはさっきも話したようにファンにどこまでモチベ―ションが残っているかだなと。でも変な話、ファンが頑張るものでもないと思うんですよ。「私たち、最後まで頑張らなきゃ!」って思うとファンはすごく苦しくなると思うんです。一緒に夢を見るために一緒に頑張るのは良いと思うんです。でも、終わるまで持ち堪えようという頑張りの先には虚無感しかないじゃないですか。嬉しいですけど、大丈夫なの?って心配になります。

――こういう状況下で、ファンに対してどんな思いを抱いていますか?

nisa:「ファンに誠実にいよう」ということで気持ちはまとまっているんです。もし、原点回帰ツアー、ツーマン(2MAN LIVE SERIES 「戦友-ライバル-」)、ラストワンマンツアーが当初想定していた形でできなくて、例えば一つのツアーにまとまったり、ファイナルしかやらないということになったとしても、最後までちゃんとやりきりたいなと。

――その根底にあるのが「ファンに誠実にいよう」という思いなんですね。

nisa:そうです。そうじゃなかったら終活なんてやりませんから。

◆もしかすると、実ろうとしていることにも気づいていないのかもしれない

――既に、凪さん悠さんにもパーソナルインタビューでお聞きしましたが、「活動終了」を決めるまでのエピソードを聞かせてください。

nisa:悠から持ち掛けられた活動終了の話に、最後まで「うん」と言わなかったのは僕です(笑)。

――最初に聞いたとき、どう思いました?

nisa:来たか…!と。O-WESTワンマン(2015年12月にTSUTAYA O-WESTで行われた「ちかっぱ!シティーボーイ!!~俺たちイケとろーもん~」)の後に解散の話が出た段階で、悠と凪の心が折れているだろうなとは思っていたんです。特に悠はその気持ちを隠していなかったから、バレバレだったんですよ。僕はずっと、レンと僕は続けたい、悠と凪はもう無理そうならすぐ辞めたい、という気持ちだと思っていたんです。でも、今の活動終了の話が出た当時はシングル『初恋』をリリースする頃で、これから変わるという兆しも見えていたので、まだ頑張れるんじゃないかと思って引き留めたんです。

――そこから、悠さんのインタビューで語られたように、「ワンマンツアーで変わろう」という話になったんですね。

nisa:そうです。「そのための話し合いもたくさんしよう!」と言っていたんですけど、結果的に変わっていないんじゃないかということになって。さらに悠から「しんどくなって来ちゃってる」と言われて、あぁダメだったかと思ったんです。でも、「もう少し考える時間がほしい」と伝えたんです。僕としては引き延ばしに近かったんですけど、年末だからすぐに皆が決められないと思うし、ちょっと時間をおこうと。普段、あんまり実家に帰らないんですけど、去年は実家に帰ってずっとそのことばかり考えていました。でも考えれば考えるほど悠の気持ちがわかるんですよ。実際、数字が伸びていなくて苦しいし、それもありなのかなと思いながら、それでも諦めきれない部分もあって。

――葛藤していたんですね。

nisa:それで、2月の頭に皆でちゃんと話そうということになっていたんです。それまで僕は、レンと僕、悠と凪で意見は2:2だと思っていたんですけど、レンが活動終了について「うん、わかった」というわりと肯定的な意見だったんです。その時、「あれ? 思っていたのと違うぞ」と(笑)。もしかして引き留めようとしていたのは僕だけだったのかなと思って。僕一人が縋っている感じになっていて、これは良くないなと思ったし、もし皆が次の活動を見据えているんだったら、活動終了という選択もいいんじゃないかと思ったんです。

――意外な展開でした。そしてとても冷静に見ていますね。

nisa:僕は後から加入したせいか、すごく客観的にバンドを見られたんですよ。ぶっちゃけると、僕は元々ヴィジュアルや楽曲、やりたいことの方向性も含めて、レイヴはもっと違うアプローチのほうが売れるんじゃないかと思っていたんです。僕としては僕の思う、より売れるであろう方向にバンドを持っていきたかったんですけど、どうしても僕とメンバーの意見が割れることが多くて。

――悠さんも「俺とnisaは意見が食い違うのがデフォルト」と言っていました。

nisa:レイヴに正式加入するときに「レイヴに新しい風を吹き込む」って言っていたんですけど、昔から、バンドはもっともっと良くなると思っていたんです。そして『初恋』を出して、これならいけるかも!と思ったんですよ。実際『初恋』はヴィジュアル系のファン層だけじゃなくて、一般層にも響いている。だからこそ、活動終了に対して頑なに「うん」と言わなかった部分があるんです。レイヴはここからなんじゃないかと思って。

――レイヴは今、すごく良い武器を手に入れたぞと。

nisa:そうなんですよ。せっかく良い武器を手に入れたのに振らずに終わっちゃう感じがもったいなくて。『初恋』と『ドリップ』がすごく良かったんですよね。『BOTEKURI』から兆しがあって、『初恋』で開花したというか。ファンも同じように感じているんじゃないかな。とは言え、8年やってきたメンバーが、最初に決めて突き進んできたものが実らなかったことで心が折れるのもわかるんです。僕的には「やっと来た!」なんですけど、他のメンバーは「やること全部やって終わる」だと思うので。もしかすると、実ろうとしていることにも気づいていないのかもしれない。それに、その風を吹き込んだのは作曲を始めたレンだったんですよね。その本人が活動終了に対して肯定的なら仕方ないのかなとも思うんです。

――振り返って、これをやっておけばよかったかもしれない、ということはありますか?

nisa:僕が思うに、個性が強いメンバー全員が信頼できるような人が付いていたら変わっていたのかなと。ずっと自主でやってきたことは強みでもあるんですけど、弱点でもあって。前の事務所に入ったときも「好きにやっていいよ」と言われて、戦略的には実質自主みたいな感じだったんです。だから人に頼るということをここまで覚えずに来ているんですよ。自分たちの気持ちでしか動いていない。客観的な意見をもっと取り入れるべきだったのに、やってこなかったのは悪い部分だったなと。

――もっと仕掛け方が変わっていたかもしれませんね。

nisa:そうですね。僕は内側のそういう人になりたかったんですけど、なれなかった。内側にいると5等分、4等分の1でしかなくて、それをまとめる部分にはなりづらかったです。その状態で長い年月やってきてしまったからこそ、ダメだった時の反動が大きかったのかなと思うんです。

◆レイヴが終わってからもレイヴの代わりに残っていくもの

――悠さんのインタビューで新譜のリリースについて触れられていましたが、制作は進んでいますか?

nisa:進んでいないです(笑)。というより、リリースできる時期が確定できないので動けない、が正しいですね。

――悠さんとの合作「pray」で歌詞を書いてみて、レイヴでも書いてみたいと思いましたか?

nisa:レイヴではないですね。レイヴはここまでレンの世界観できているので、この形で完結させてあげたい。今までは新しい風を吹き込んで、と思っていましたけど、レイヴはレイヴらしく終わらせたいんです。

――実際作詞してみて、手ごたえは感じましたか?

nisa:作ったときは、思ったより悪くはならなかったなと思ったんです。でもその後SNSで「二人だけで作った曲だと微妙です」という意見があって。気持ちはわかるんです。最終的なアレンジはしなかったし、制作の意図的にお互いにここは微妙だなと思っても言わずに進めて。レイヴの曲調とも違うし、歌っている人も違う。ドラムも打ち込みですしね。そういう面では微妙と思われる要素はたくさんあるんです。なので、最後の音源で新しい要素を出すとしたら僕はやっぱり作曲面かなと。でも、悠に曲を書いてほしいなと思うんです。その時も言ったんですけど、『スーサイドBABY』(2012年8月リリースのシングル)以降彼の曲をリリースしてないんですよ。だから彼の曲を世に出したい。

――以前も「悠の曲はすごいんです」って褒めていましたもんね。

nisa:メロディーセンスがすごく良くて。そこは勝てないし、ずっと信頼し続けているんです。だからこそ曲を出さないのはもったいないと思うんですよ。ファンにもぜひ聴いてもらいたいです。

――ところで、今回と次回お届けする「バッグの中身」の動画、あれは4人の個性が出て面白いですね。

nisa:あの日は珍しく、僕の荷物が小さかったんですけどね(笑)。

――レンさんが以前「nisaは何でも持っているんですよ」と言っていましたが、世話焼きの心配性?

nisa:ドラえもんのポケットみたいなね(笑)。僕は何でもしたがりです。世話焼きというより、優柔不断で断れない。

――器用ですよね。

nisa:でも本当は器用じゃないほうが良かったのかなって思うんですよ。そうしたら大人に身を預けられるし。誤解を恐れずに言うと、昔から、バカになってみたかった。そうしたらみんな勝手にやってくれるじゃないですか。器用だと色々考えちゃうし。

――ドラえもんより、のび太でいたかったんですね。

nisa:そうですね(笑)。例えば僕が、作曲も車の運転もデザインも何もできなかったら、もっとギターに集中できていたのかもしれないし、もっと気楽でいられたのかもしれない。そうしたらもっと早く人を付けようという考えに至っていたかもしれないですよね。何でも自分たちが関わったほうが手っ取り早くて楽じゃん、と思うのはダメだなと。

――レイヴは個性が強い4人の集合体ですが、メンバーを結び付けていたものは何だと思いますか?

nisa:口数は多くなく、察し合おうという感覚かな。レイヴってみんな九州の出身なので、お互い「察してよ」「わかるでしょ?」という空気になりがちなんですよね。だからあえて言い合わない。色々言い合うバンドだったら、すぐに解散していたと思うんですよ。その分、伝わらないんだったらいいや、と諦めるのも早いですし。こういう空気感なので、凪が活動終了後は学校で資格を取りたいと思っていることも、インタビューを読んで初めて知りました。そして、悠が語っていた、「(活動終了の決定に対してメンバーは)もう止めないんだと思って」って言っていたのを見て「えーっ!?」ってなりましたもん。「決まった後に、それ言う!?」と思って(笑)。

――言わずに察するなんて、熟年夫婦のようですね。レイヴが8年間で一番変わったことは何でしょう。

nisa:良くも悪くも何も変わっていないと思います。「上京して云々」とか「売れてやる」という志は変わっているかもしれないけど、空気感は変わっていないかな。今も昔もワイワイガヤガヤやっている感じ。ビジネスライクになったわけでもないし、メンバー間の仲も変わっていないし。

――以前のパーソナルインタビューで「nisaさんは参謀タイプだ」という話をしたのですが、自主になって以降、以前よりも積極的に意見を出しているように感じます。

nisa:しいて言うなら、レン、みくる、悠が年上で、僕と凪が年下という括りが何となくあって、しかも僕が後加入で意見も分かれるので頑張って発言している感じだったんです。今はそんなもの欠片もないですけどね(笑)。

――そのインタビューで、「絵が描けるようになりたい」と言っていましたが、その後いかがですか?

nisa:精進中です。母親が中学校の美術の先生だったんですけど、だからといって僕がすんなり絵が描けるわけじゃないんだなと思いました(笑)。センス的な部分は受け継いでいるかもしれないんですけど、技術的な部分はこれからだなと。でも、良し悪しの判断はできる気がします。

――ところで、最近はnisaさんお一人で多方面で活動していますね。

nisa:レイヴは今、終わりへの道を歩いて行っているわけじゃないですか。だから新規で物事が決まることはなかなかないんです。そんな時に、たまたま自分がずっとやっていたゲームにKraの景夕さん繋がりで関わるきっかけがあって、生放送に出させていただくことになったんです。それもファンが喜んでくれるんだったらいいなと思うんですよ。

――趣味と実益を兼ねていますね。

nisa:生放送に出るようになったのには三つ理由があって。一つ目は単純に趣味でやっていたものに関われることが嬉しい、二つ目はファンに少しでも喜んでほしい、三つ目はレイヴの音楽を広めるきっかけになればいいなということです。多分、レイヴのファンの中でも、なんでこんな時期にバンドじゃなくてあんなことやってるんだよ!と思う人もいると思うんです。でも、関わったものはレイヴの音楽に繋げているんですよ。例えば、出るきっかけになった「エレメンタルストーリー(エレスト)」というゲームの非公式配信ではBGMでずっとレイヴの音楽を流しているんですけど、それがきっかけでYouTubeに飛んでMVを観てくれて、実際好きになってくれた人もいる。そういうきっかけにもなっているんです。

――とても良い派生のさせ方ですね。

nisa:狭いフィールドで広げようとしても広がらないので、もっと母数の多い所に広めていかないといけないなと。ゲームの実況やBGMの制作に関わることで、少しでもきっかけとなればと思っているんです。そこからお客さんが流れてきてくれたらWin-Winだし、レイヴのファンがゲームに興味を持ってくれたら向こうも嬉しいと思う。レイヴが終わっても、多分この活動は続けると思います。

――nisaさんは今のヴィジュアル系業界をどう見ていますか?

nisa:僕みたいなのが何言ってんだって前提での話なんですが、今のヴィジュアル系は、ファンのモチベーションがもつかもたないか、目が覚めるか覚めないか、だと思います。ヴィジュアル系って夢の国じゃないですか。夢の国は夢の国でいられるようにマジックをかけ続けるんですけど、このコロナ禍でマジックをかけ続けることができるだろうかと。僕はそもそもヴィジュアル系が好きで始めたというわけではなくて、色々求めていったらヴィジュアル系にいるという流れなので、ヴィジュアル系にこだわりも未練もないんですよね。今となっては全然ヴィジュアル系は好きですけども。例えばの話、ヴィジュアル系にいないと化粧ができないわけでもなくて、同じ見た目でロック界隈にいても成立すると思うんですよ。すごく不思議な世界だなと思いますし、だからこそマジックをかけ続けないといけないなと思うんです。

――難しい状況下だからこそ技量が試される気がします。

nisa:そうですね。今後はライブハウスだけをフィールドにしていたら残れないと思うんです。もっと新しいやり方を見つけていかないといけない。そのためには、“人”を好きになってもらうことができないと厳しいなと思うんです。僕、アイドルがわりと好きなんですけど、アイドルが応援されるきっかけって曲より人なんですよ。どれだけそのアイドルグループや曲にのめり込ませるかじゃなくて、どれだけ「この子を応援したい」と思わせられるか。それができないといけない時代なのかなと。そのためには、もっと音楽以外の活動もすべきだと思うんです。コアなジャンルの音楽活動で獲得できるお客さんの数は決まっているんだから、もっと一般層を取り入れる活動をするといいんじゃないかと思って。

――今後のnisaさんは、もっとマルチに展開していきそうですね。

nisa:でも、それに縛られなくていいと思うんです。色々やりたいことはやりたいんですけど、しなきゃいけないとは思わないし、縛られちゃいけないと思う。さっきの話もそうですが、音楽面で手を抜かないのは大前提ですけどね。

――nisaさんが今大切にしていることは何ですか?

nisa:ファンに誠実であることです。曲を聴いても細かいこだわりはどうせ何もわからないだろって言う人もたまにいるんですけど、細かい部分の判断はできなくても、何となく良い、何となく悪いという判断は全員ができると僕は思うんです。だからこれからも、ファンをないがしろにしない誠実さを持っていたいと思っています。

――活動終了するにあたって、悠さんが「自分にとってバンドや音楽が何だったのかを見つけたい」と言っていましたが、nisaさんはどう考えますか?

nisa:実を言うと、悠が言っている意味がよくわからなくて。レイヴの音楽はレイヴが作ってきた音楽だと思うんです。レイヴが終わってからもレイヴの代わりに残っていくものであって、僕の魂が…みたいなものではないかなと。僕は、例えばアーティストの誰かがクスリで捕まったりした時に、その人の曲に罪は無いと思う派なので、音楽と作っている人と紐づけなくて良いと思っているんです。音楽は音楽として残ってくれればいいなと。

――活動終了後のヴィジョンはありますか?

nisa:今はレイヴの活動の終わらせ方しか考えていないので具体的には動いていないんですけど、やりたいことはたくさんあるんです。レイヴでやり切れなかったこともたくさんあるし。そして、終わらせることに対して誠実でありたいと思っています。

「バッグの中身&7つの質問」

普段見ることのできない、メンバーのバッグとその中身。そんな気になるバッグの中身を、今回は特別に見せてもらいました! バッグの形状からその内容まで、それぞれの個性が浮き彫りになった動画、必見です!

【レン編】

【凪編】

<編集後記>

連載9回目となる今回は、nisaのパーソナルインタビューをお届けした。
優秀なスタッフからメンバーに転身し、作曲、アレンジ、アートワークのデザイン、最近ではアーティスト写真の撮影までこなしてきたマルチな彼は、リーダーの悠とはまた違った角度からレイヴを支えてきた立役者であったと思う。

「バカになってみたかった」という彼の言葉には、器用なしっかり者ゆえの葛藤が滲んでいた。そして、なしえなかったと悔いていたが、バンドをより良くしたいと奮闘しながら、彼は立派にプレイングマネージャー的な立場を果たしていると私は思う。

多くのことが語られたインタビューで、今回特に印象に残ったのが、nisaが何度も口にしていた「誠実」という言葉だった。

改めて意味を調べてみると、「私利私欲をまじえず、真心をもって人や物事に対すること。また、そのさま。」だが、まるで約束のようなこの言葉に、ファンに、そしてレイヴを終わらせることに真っ直ぐ向き合うという強い覚悟を感じた。

レイヴの「夏果て。」の最終公演と共に暑い夏が終わりを告げ、2020年も残すところ3ヵ月となった。
「終活」の再開はまだ見えない。
だが、そんな不安を払拭して余りある、彼らの「誠実でありたい」という約束の言葉を胸に、ファンの皆様と共にその日を心待ちにしたいと思う。

(文・後藤るつ子)

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ARTIST PROFILE

レイヴ

<プロフィール>

レン(Vo)、nisa(G)、悠(B)、凪(Dr)によるロックバンド。2012年8月に福岡県で結成し、1stシングル『ALIVE』をリリース。2016年10月にみくる(G)が病気のため永眠。2017年3月に1stフルアルバム『不幸福論』をリリース。2018年3月、24RECORDSに移籍し、5月に移籍第1弾としてミニアルバム『メンブレさん通ります。』を、その後シングル『ハラスメント』『スーサイドBABY』『BOTEKURI』『初恋』、2020年2月に会場限定シングル『ドリップ』をリリース。2月25日に年内をもって活動を終了することを発表し、「終活」を宣言した。

■オフィシャルサイト
http://rave-official.com/

【リリース情報】

無観客ライブ映像作品『レイヴ 8周年記念 無観客ライブ「フラチズム -∞-」
2020年8月21日(金)デジタルリリース

レイヴ 8周年記念 無観客ライブ「フラチズム -∞-」
本編
¥5,000(税込)


レイヴ 8周年記念 無観客ライブ「フラチズム -∞-」
Vo.レン 最前列視点ver.
¥3,000(税込)
レイヴ 8周年記念 無観客ライブ「フラチズム -∞-」
Gt.nisa 最前列視点ver.
¥3,000(税込)
レイヴ 8周年記念 無観客ライブ「フラチズム -∞-」
Ba.悠 最前列視点ver.
¥3,000(税込)
レイヴ 8周年記念 無観客ライブ「フラチズム -∞-」
Dr.凪 最前列よりもっと近い視点ver.
¥3,000(税込)

【収録曲】

01.ナミダヒロイン
02.人生つらみちゃん
03.サイコフラチズム
04.UKIYO
05.ドリップ
06.形ないモノ
07.メレンゲ
08.わりきりララバイ
09.君がアバズレ
10.オヒトリセレナーデ
11.アクメ狂詩曲
12.フラチズムディナー

■販売サイト
24 RECORDS ONLINE STORE

【レイヴ終活一覧】

#1 ONEMAN TOUR「序章」※開催済み
#2 6月 8周年ファン感謝祭『帰ってきた耐久レース!全曲ワンマン』開催
#3 2MAN LIVE SERIES『戦友-ライバル-』開催
#4 夏 8周年里帰りTOUR『原点回帰』開催 (開催予定地:長崎県・宮崎県・福岡県)
#5 秋 LAST ONEMAN TOUR開催
#6 10月 Gt.みくる追悼ライブ開催
#7 冬 LAST LIVE開催

【ライブ情報】
●2MAN LIVE SERIES
「戦友-ライバル- vs ベル」
7月22日(水)池袋EDGE ※公演延期

「戦友-ライバル- vs DOF」
7月28日(火)高田馬場CLUB PHASE ※公演延期

「戦友-ライバル- vs NEVERLAND」
8月3日(月)渋谷REX ※公演延期

「戦友-ライバル- vs Chanty」
11月16日(月)渋谷REX

●レイヴ 8周年里帰りTOUR「原点回帰」
8月21日(金)宮崎SR BOX(nisa誕生日) ※公演延期
8月23日(日)長崎DRUM Be-7 ※公演延期
8月24日(月)小倉FUSE ※公演延期

●レイヴ LAST ONEMAN TOUR「Day×Bye×day」
9月4日(金)渋谷REX ※公演延期
9月13日(日)仙台enn 3rd ※公演延期
9月19日(土)広島Yise ※公演延期
9月21日(月)アメリカ村CLAPPER ※公演延期
9月22日(火)名古屋HeartLand ※公演延期
9月24日(木)福岡DRUM Be-1 ※公演延期

●レイヴ Dr.凪 生誕記念ONEMAN「凪のお誕生日会」
10月5日(月)高田馬場CLUB PHASE

●レイヴ Gt.みくる追悼 ONEMAN「Bora Bora Blue」
10月26日(月)目黒鹿鳴館

●レイヴ 8周年ファン感謝祭 「帰ってきた耐久レース!全曲ワンマン – 2012~2015 -」
●レイヴ 8周年ファン感謝祭 「帰ってきた耐久レース!全曲ワンマン – 2016~2020 -」
11月21日(土)池袋EDGE