其の七 ~ベーシスト・悠が見たレイヴ~

其の七 ~ベーシスト・悠が見たレイヴ~

全国のライブハウスが営業を再開して1ヵ月が経ち、これまでとは形を変えた日常が少しずつ戻りつつある7月。Vifではベーシスト・悠のパーソナルインタビューを行った。レイヴというバンドを中心となって立ち上げ、リーダーという肩書を持つ彼が、淡々と、それでいて赤裸々に活動終了を決めるまでの経緯やメンバーへの思いを語ってくれた。ぜひともじっくり読み込んでいただきたい。

◆自分自身も「またきっとやれる」って思いたかったのかもしれない

――コロナ禍でなかなかお会いできずにいるうちに、2020年ももう折り返しですね。

悠:そうですね。今年は「STAY HOME」の2ヵ月間があったせいか、いつもより時間の流れがすごく早く感じるんですよ。あの期間て何かしたくてもできない、ぽっかり空いた時間だったじゃないですか。充実感があまりないのに、もう7月なんですよね。

――レイヴにとってとても大切な年に、想定外の空白の期間が空いてしまったわけですからね。

悠:とは言え、これも良し悪しかなと思うんです。俺らが今やっている「終活」を邪魔された感じもするんですけど、ポジティブに考えると、いろんなことをゆっくり考えられた2ヵ月だったかなと。

――前回のオンラインインタビューで、コロナ禍をどう捉えているか聞いたときに、「仕方ないで片付けてもあれだけど、仕方ないんだよな」と言っていたのが悠さんらしいなと思いました。

悠:そうかもしれませんね(笑)。仕方がないことですから。

――そして、その際に公開された「pray」の制作風景は、普段目にすることのできない、とても貴重な映像でした。

悠:確かに。あれは特殊なやり方をしたので、普段とはちょっと違うんですけど、基本的には、ああいうチマチマした作業を夜な夜なやっているんですよ。

――「pray」は、全てオンラインでやり取りをして制作したことに加えて、nisaさんとの初共作、nisaさんによる初の作詞、そして悠さんの初のヴォーカルレコーディングと、普段とは全く違う初めて尽くしの1曲でしたが、それをシレっとこなしてしまうあたりに悠さんの要領の良さを感じます。

悠:自分ではそこまでは思わないんですけどね(笑)。でも、長年やっているせいか、すごく悩んだりはしませんでした。今回もnisaが良い仕事をしてくれましたし。それに、ここに来て意外とこういうやり方のほうが良かったんじゃないかと思うようになったりもして。

――こういうやり方というのは、共作のこと?

悠:共作もそうだし、全てのことにおける人への頼り方ですね。今までは、「俺がやる俺がやる!」という感じだったんですよ。でももし、人に頼れるところは頼って、自分は自分のやることをやるという切り分けが上手くできていたら、もっと円滑に回る部分もあったのかなという気付きはありましたね。活動終了前の今になって、という感じではありますけど(笑)。

――では、活動終了について聞かせてください。この言葉を最初に口にしたのは誰だったんですか?

悠:こういうこともファンの皆さんに受け入れてもらおうと思っているので、隠さず話しますけど、俺です。去年の6月9日、新宿のカフェで。インストアイベントの後だったかな。ちょうど4人集まっていたので、「この後ミーティングしない?」って話したんです。ただ、すごくおこがましい話なんですけど、その時メンバー全員が同じ気持ちだと思っていたんですよ。むしろ逆に誰も言い出せないんだろうなと。終わりにしようなんて言い出しづらいじゃないですか。レイヴは自分が中心になって立ち上げたので、終わりも自分から言って、みんなの肩の荷を下ろしてあげよう…と思って話したら、意外とそうでもなかったんです(笑)。

――まさかの展開(笑)。三人の反応は?

悠:まだメンバーのパーソナルインタビューが続くので、あまり詳しくは言いませんけど、俺と同意見のメンバーもいれば、正反対で「いや、まだ頑張れる」という意見のメンバーもいたし、「バンドって楽しいよね」ってあっけらかんと話すメンバーもいました。その衝撃が大きすぎて、俺のほうが時間がほしくなっちゃって、一旦持ち帰ってそれぞれ考え直すことになったんです。その後、何度か話をして、結果的に「もうちょっと頑張ろう」ということになりました。ただ、頑張るにしても何か変わらなきゃダメだよねと。凪もパーソナルインタビューで言っていましたけど、“レイヴというのはこういうものだ”という世間のイメージがあって、それをずっとやってきた結果がこれなんだから、今後のライブイベントで他のバンドのファンの人に観てもらったときに、「あれ? レイヴ、何か違うな」って思ってもらえるようにしないとダメだよねという話をしたんです。

――活動終了をこのタイミングで告げた理由は何だったんですか?

悠:『BOTEKURI』(2019年6月リリースのシングル)のワンマンツアーを回る前に話したかったんです。その上で、ワンマンツアーでどう変われるかだと思ったので。それで、それぞれが何か変わらなきゃダメなんだというテーマをもってツアーを2ヵ月間回ったんですけど、結果全然変わっていないなと。

――どういう変化を想定していましたか?

悠:ざっくり言うと、スマートで大人っぽい、音楽的な部分を強調したライブのアプローチや楽曲の届け方をした方がいいと思ったんです。それで『初恋』(2019年11月リリースのシングル)で見た目や曲調もガラッと雰囲気が変わったんですよ。

――『初恋』はその点、とても成功していると思うのですが。

悠:そうですね。この話をしてツアーを回った結果できた曲とMVなので、その点は変わったんでしょうね。

――でも終了という結論に至ったと。

悠:確かに『初恋』に関しては変化があったんですけど、ライブや数字、根本的なものが変わるのは難しいし、一度やってみたことで、果たして変わる必要はあるんだろうかという考えも出てきたんです。色々考えていくうちにわからなくなってきたというのはありますね。メンバーそれぞれがやりたいこととは違うんじゃないかとか、それを売れるために我慢してやるのかとか、それで結果が出なかったらどうするんだとか、良いことも悪いことも考えました。これが去年の下半期です。

――6月から半年かけて試行錯誤をした結果、出した結論なんですね。

悠:その間に俺もバンドも一度は持ち直して、もう一度やろうとはなったんですけどね。12月にツアー中の大阪の居酒屋で、「6月からここまでやってきたけど、どうするのか」という話をしたんです。お酒の力も借りつつ、それぞれの思っていることを言い合ったんですけど、その時点で最初に話したときとメンバーみんなの言っていることは変わっていなかったんですよ。心変わりしている奴はいなかった。

――最終的な答えに至ったのはいつ?

悠:今年の頭でしたね。年明けに改めて「この前話したことから、俺の考えは変わらない」と話したときに、反対派だったメンバーから、「悠が提示した終了すべき理由に一つも反論ができないから納得した」って言われて。でもそう言われたときに急にすごく寂しくなっちゃって。

――反論してほしかった?

悠:そういう寂しさというよりは、止めてほしかったわけではないけど、心のどこかで自分自身も昔のようなモチベーションが欲しかっただけなのかもしれません。自分自身も「またきっとやれる」って思いたかったのかもしれない。でもこういう結果になったときに、「やっぱりそうだよな」と自分自身でも思えたし、メンバー全員で終わりにしましょうということになったんです。今のところ誰もこの決断に後悔はしていないと思いますよ。

――悠さんが活動終了を考え始めたのは、いつ頃だったんですか?

悠:俺、これまでにもやめようと思ったことが何度かあるんですよ。

――2017年のパーソナルインタビューで話してくれた、2015年に4周年を前に解散を考えた時以外にも?

悠:メンバーにも伝えたのはあの時だけですけど、自分の中で「もう無理だな」と思ったことは何度もあります。

――それは最近?

悠:いや、活動中、割と頻繁に(笑)。元々諦めが早いタイプなんですよ。

――悠さんは物事にあまり執着しないタイプですよね。

悠:そうですね。良くも悪くもなんですけど。諦め方もネガティブな「あぁ、もうダメだ…どうしよう…」という感じじゃなくて、現実的というか、結果を見て「うん、ダメ」と自身の事でも客観的に判断するタイプですね。これまでは、大きいワンマンがあって結果が出ないと「これはもうダメだな」と思うんですけど、周りのメンバーの助けやファンの皆さんの声に救われて、持ち直していたんです。でも、今回に関してはその積み重ねで逃げ場がなくなったなと。去年の12月の段階で俺の気持ちが変わっていなかったのは、6月にああいう話をして、そこからツアーを2本回った後、バンドが何事もなかったかのように普通に前に進もうとしていたからなんです。それは良くないと思ったんですよ。結果が出ていないのに、それをどうするかという話もなく、来年はこうしようという方向にバンドが向いていた。これまでそれをずっと繰り返してきての今回の話でしたからね。

――なあなあにして進みたくなかったんですね。

悠:そうなんです。毎回毎回もう崖っぷちって言っている気がして。前回も崖っぷちだったのに、崖伸びてない!?っていう(笑)。

――4周年を前に解散を考えた時は、「バンドが終わったら俺は完全に音楽をやめようと思っている」ということをメンバーに伝えたそうですが、その時は凪さんから「悠には音楽の才能があるからやめてほしくない」と引き留められたという話でした。今回も同じ様に止められていたら結果は違っていたのでしょうか。

悠:いや、今回は多分、止める凪を止めていたと思いますよ。諭したと思う。活動してきた期間とけじめという言い方はあれですけど、いい加減シビアに考えないといけないんじゃないかと思っていましたから。

◆今、8年間やってきた中で一番メンバー全員の事をリスペクトしている

――活動終了について、発表前に関係者にもほとんど告知していなかったそうですが、先輩であるR指定の七星さんには報告しました?

悠:七星さんとはプライベートで頻繁に会っていたので、その都度近況は話していましたね。活動終了が正式に決定してからも「実はご報告がありまして…」という感じではなかったですね。近況を話すときも「先輩、相談があって」という感じではなかったですし。他は、バンドとの関わりが深いけど地方にいてあんまり会えない人たちに連絡しました。

――やめないほうが良いとは言われなかったんですよね。

悠:「考え直せ!」って言う人はいなかったですね。今まで頑張ったねって声をかけてもらうほうが多かった。ということは、やっぱり端から見てもそういう風に見えていたのかなぁとも思いましたね。

――でも喧嘩別れでもなく、稀有な終了の仕方だと思います。

悠:ですね。なのでこのタイミングで良かったなと思います。

――2015年にやめていたら未練が残ったと思いますか?

悠:残ったと思いますよ。それも悪い方向に。「俺はまだやれる」みたいな。「自分は間違っていなかったのに周りが悪かった」という未練の残り方をしていた気がする。でも今はそれがないんです。むしろ今、8年間やってきた中で一番メンバー全員の事をリスペクトしているんですよ。最初に話した、他の人に頼れるところは頼るというのは、今その感情があるからなんでしょうね。

――2015年と今回、何が一番違ったと思いますか?

悠:理由としては「結果が出ないからやめましょう」ということで一緒なんですけど、今回はメンバーへのリスペクトもそうだし、もう充分やったという思いもあります。もちろんまだやりたいことや、やり残したことが一つもないというわけではないですけど、それも予定通り終活が終われば、悔いなく終われるはずです。上半期もそうでしたけど、あっという間に終わると思うんですよ。今年も、レイヴというものも。コロナで延期になった公演があるので、今はまだ活動が再開できない状況ですけど、いざ再開となったらその分がギュッと凝縮されたスケジュールになるので本当に一瞬かなと思いますね。

――10月には「レイヴ Dr.凪 生誕記念ONEMAN「凪のお誕生日会」」の振替、11月には「レイヴ 8周年ファン感謝祭「帰ってきた耐久レース!全曲ワンマン」」の振替が決定して、特に忙しそうですよね。さらに、「2MAN LIVE SERIES」の全公演開催延期(※日程調整中)も決定しましたし。

悠:そうなんですよね。今年中に終われるのかもちょっと怪しくなってきました。

――4月のレンさんと凪さんのオンライン飲み会で「解散延期かも」「10周年もあり得るのでは」という話が出ていましたが。

悠:10周年は長いなぁ(笑)。基本的に今年中という意向ではあるんですが、終活が全うできないのであればそれは伸ばすしかないですよね。今の段階でいつからライブができるかもわからないですし。8月から再開できるなら今年中で終わるでしょうけど、それができなかったら現実的に年内終了は難しくなりますよね。

――6月13日に配信ワンマンライブ「STAY HOME」が行われましたが、こういう形でのライブはいかがでした?

悠:もしかすると今後はライブは生で観るものじゃなくストリーミングで観るのが主流の時代になるかもしれないじゃないですか。そうなるのであればその中で良い方向を見つけるしかないし、そこで楽しみ方を見出す考え方もありますよね。もちろん、今までのようにお客さんがギュウギュウのライブハウスで同じようにやれるのが理想ですけど、今はもう文句を言っても仕方がないし、ライブをやれないより配信でもやれたほうが良いと思うんです。

――悠さんが終活で一番楽しみにしていることは何ですか?

悠:やっぱり8月の原点回帰ツアーかな。何気に楽しみです。宮崎、長崎…最初nisaに「最後の生誕は宮崎でやりたい」と言われたときは、「えー宮崎かよー。遠いわ!」と思いましたけど、今となっては楽しみです。8月がどうなっているかわからないんですけど、これは俺らの中では重要な部分なので。とは言え、今後どうするかは本当に難しい問題なんですよ。俺らにとっても最後の期間なので、一度全部白紙にしてコロナが落ち着いた頃にフルボリュームで再開するのが一番良いのはわかっているし、やれるんだったらやりたいのが本音です。でも、延期や中止にすると会場費のキャンセル料も発生しますし、それをやっちゃうと現実問題、破産してしまうので(笑)。そこはご理解いただきたいなと思っています。

――ところで、先日「pray」が完成しましたが、レイヴとしての新曲リリースの予定はありますか?

悠:…あります。あるでしょう。

――含みのある言い方ですね(笑)。それがレイヴの最後の曲になるんでしょうか?

悠:そうなりますね。ただ、まだ全くできていないですけど。俺は去年から曲を作っていなかったので、今回は持っていこうかなと思っています。毎回俺らは曲を作れる人が作って、そこから選曲会で選ぶんですけど、どんな曲が選ばれるのであれ、最後は自分たちらしいものになればいいなと思います。

――新しいアー写を撮ったという情報をキャッチしたのですが、前回に引き続き今回もセルフで撮ったのでしょうか?

悠:そうです。俺は自分の生誕の写真からなので3回目のセルフ撮影でした。今回も凪が中心になって服を考えてくれたんですけど、作品を出すタイミングでのアー写ではないので、それぞれ「こういうのが着たい」というものを選んでもらったんです。でも、セルフで撮るのも今回が最後じゃないかな。いつか最後のアー写が出ると思うんですけど、その時はカメラマンさんに撮影してもらうと思うので。

――とはいえ、このコロナ禍ではセルフで撮れるというのは、かなりの強みだと思いますよ。

悠:確かにそうですよね。今回もメンバーそれぞれの個性が出ていて、良い写真が撮れたんじゃないかなと思います。前回と前々回は白と黒で統一されていたんですけど、今回はそういう意味ではちょっとバラバラで、全員セットアップという縛りはあるんですけど、個性が出ているなと思います。公開を楽しみにしてほしいですね。

◆繋ぎ止めていたのは“レイヴ”

――悠さんはご自身のリーダーという肩書をどう捉えていますか?

悠:自分の中ではずっと「周りが勝手に言っているだけ」と思いながらやっていました。そもそも立候補したわけじゃなくて、「やってくれ」って言われたからやっていたんですよ。俺は失踪したギターにやってほしかったんですけど、本人含む全員から「いやいやいや、いっしーでしょ」と言われて決まってしまって。その時に、「リーダーだから、これしなきゃあれしなきゃ」って言うのはやめようと決めたんです。俺は自分の仕事をするだけ、それをみんなが勝手にリーダーって呼んでいるってことにしようと。だからその姿勢だけは最後まで変わらなかったですね。仮に「リーダーなんだから、これやれよ」って言われたら、「じゃあお前がリーダーやれよ!」って言ったと思いますし。

――リーダーにはどういう人が向いていると思いますか?

悠:メンバーに一番弱みを見せられる人がやったほうが良いと思うんです。引っ張っていくより、強がらずに「俺、今めっちゃ凹んでるんだよね」って言えるような人が向いているなと。実際リーダーをやってみて、うちのメンバーみたいな我が強い人たちをまとめるのも、引っ張っていくのも難しいなと思いました。自分の意見に反発してくる人もいるし。だから、逆にそういう人のほうが向いているのかなと思うし、そういう意味では俺は向いていなかったなと思いましたね。というか、うちは全員弱みを見せたがらないですけどね(笑)。

――悠さんにとって、メンバーの皆さんはどんな存在でしたか?

悠:凪は知り合ってもうすぐ10年くらい経つんですけど、去年、俺はセッション系のイベントに何本か出て、違うドラマーの人と音を交えたんです。中には凪よりもずっと先輩で上手な人ともやらせてもらったんですけど、何かしっくりこなくて。凪って自分にとって大事な機材の一つというか、「このベースじゃないと弾けない」の延長にある「このドラマーじゃないと自分のベストな演奏はできない」という存在になってしまったなと思うんです。大げさじゃなく、本当に。だから、凪はリズム隊として最高の相棒だと思います。

――nisaさんは?

悠:このバンドをやってきて、俺とnisaは意見が食い違うのがデフォルトなんですよ(笑)。喧嘩に発展することはないんですけど、最終的なところまでわかり合えないこともある。nisaは物事を冷静に細かく見ているんです。俺はそういうタイプじゃないんですよ。例えば、俺は写真で全体を見るけど、nisaはその中の服の素材を見ているような。見ているところが違うんです。でも逆のタイプだからこそ、仕事という面で最高の相棒だったなと思いますね。プレイの面でもバンドを動かしていく上でも、一応リーダーは俺ですけど、nisaなしでは成り立たないなと。彼には本当に助けてもらいました。

――では、レンさんは?

悠:レンは言わずと知れた高校の同級生なので、もう人生の半分一緒にいるんです。だから良くも悪くも特別な存在です。音楽的な部分や仕事の部分とはまた違う存在だったなと思いますね。上手く言い表せないですけど。俺が思うに、三人は俺と近しい部分をそれぞれ持っていると思うんですよ。それぞれ近くにいるようでいないような感じですね。

――レイヴを繋ぎとめていた核の部分は何だと思いますか?

悠:それは音楽だというのがベターなんでしょうけど、実際好みの音楽は違いますからね。答えになっていないのかもしれないけど、繋ぎ止めていたのは“レイヴ”というものだったのかもしれないですね。だから、レイヴというものが止まったら会うことがあるのかなって考えたりもするんです。

――現時点で、活動終了後のプランはありますか?

悠:多分俺はもうバンドはやらないです。99.999%くらい。あと人前に出ることもしないと思います。俺、STAY HOME中にYouTubeのチャンネルを立ち上げて二つ動画を載せてみたんですけど、とりあえず一つ動画を上げた段階で「あ、俺これ全然やりたくないな」と思ったんです(笑)。YouTuberになろうなんて考えてはいなかったんですけど、実際やってみて、「あぁ自分はもう、こういう“見られる仕事”をやりたくないんだ」と思ったんですよ。

――意外な答えでした。今は具体的に何かをやりたいというよりも、消去法でやりたくないことを潰していっている段階なんですね。

悠:そうですね。いよいよ次は、今後仕事として音楽に携わるか否かを考える段階なんですけど、これに関しては「潔くやめよう」という気持ちや、むしろもうやるべきじゃないという気持ちがあるんです。10年近くバンドをやってきてダメだったわけだから、レイヴをやめる理由と同じで、言い方は悪いけど「自分は音楽はダメだったんだ」と。でも一方で、5月にnisaと一緒に曲を作って「やっぱり音楽って楽しいな」と思った部分もあるんです。それこそ技術やスキルはそれなりにあるわけじゃないですか。それを無駄にするのかとか、音楽以外に俺に何かあるのかと考えると、いやないなとも思う。今はそこを考えていますね。

――凪さんは福岡に帰ることも視野に入れているそうですが、悠さんは?

悠:実は俺もそれを考えているんですよ。仮に音楽をやめるとなったら東京にいる意味がないんですよね。ちなみに俺は今まで、もう二度と長崎に住むことはないと思っていたんです。でも最近になって、それもなしじゃないなと思うようになったんですよ。なので可能性としてはあります。

――最後の答えはいつ頃出そうですか?

悠:焦って考える必要はないと思っているので、レイヴが終わるときに決まっていないなら決まっていないで良いと思うんです。レイヴを8年間、バンドは10数年、努力を努力と思わないくらい好きで夢中になれることだったから、それに代わるものを見つけたい。ただ生きるためだけにやりたくない仕事をする人生は嫌なんですよ。サラリーマンになるにしても、自分が一生懸命になれる仕事ができればと思うんです。

――現在は、次に没頭できることを模索中なんですね。

悠:YouTubeには没頭できませんでしたけどね(笑)。

――(笑)。以前、「自分にとってバンドや音楽が何だったのかを見つけたい」と話していましたが、答えは出ましたか?

悠:まだ終わっていないので出てはいないんですけど、やっぱり青春だったと思うし、俺自身いろんな夢を見させてもらったなと思う。もしかしたら、人にも夢を見せて来られたのかもしれない。今はまだ適切な言葉が見つからないんですよね。終わるときには見つけられたらいいなと思っています。

――活動終了までの残された時間、そしてその先の悠さんがどうなっていくのか気になります。

悠:俺も気になりますよ。一つ思うのは、自分のことは置いておいて、他のメンバーには音楽を続けてほしいなと思うんです。凪は前回のインタビューでああ言っていましたけど、みんな良いものを持っているから続けてほしい。そして続けるのであれば、次こそは実ってほしいなと思うんです。誰も不幸にはなってほしくない。これは、メンバーをリスペクトしている今だからこその気持ちなのかもしれませんね。

<編集後記>

悠の口から、終活、バンド、そしてメンバーへの思いが語られた今回のパーソナルインタビュー、いかがだっただろうか。
多くのことが語られた中でも特に印象に残ったのが、「他のメンバーには音楽を続けてほしい。(中略)そして続けるのであれば、次こそは実ってほしいなと思うんです。誰も不幸にはなってほしくない。」という言葉だった。これは8年という長い時間を共にしてきた盟友たちへの、この上ない贈る言葉ではないだろうか。

そして、このインタビュー後、新型コロナウイルスが大きな影を落としていたレイヴの「終活」が新たな展開が見せた。悠もインタビュー中で楽しみにしていると口にしていた、8周年里帰りTOUR「原点回帰」とLAST ONEMAN TOUR「Day×Bye×day」の延期、そして活動終了時期の延長が発表されたのだ。
全着席人数限定というwithコロナ時代らしい新たな形式でのライブツアー「夏果て。」、そして少し期間を延ばした彼らの「終活」に期待が高まる。

(文・後藤るつ子)

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ARTIST PROFILE

レイヴ

<プロフィール>

レン(Vo)、nisa(G)、悠(B)、凪(Dr)によるロックバンド。2012年8月に福岡県で結成し、1stシングル『ALIVE』をリリース。2016年10月にみくる(G)が病気のため永眠。2017年3月に1stフルアルバム『不幸福論』をリリース。2018年3月、24RECORDSに移籍し、5月に移籍第1弾としてミニアルバム『メンブレさん通ります。』を、その後シングル『ハラスメント』『スーサイドBABY』『BOTEKURI』『初恋』、2020年2月に会場限定シングル『ドリップ』をリリース。2月25日に年内をもって活動を終了することを発表し、「終活」を宣言した。

■オフィシャルサイト
http://rave-official.com/

【リリース情報】

New Single『初恋
2019年11月27日(水)発売
(24RECORDS)

初恋
初回限定盤A
(CD+M∞CARD)
TFRV-1011
¥1,800+税
amazon.co.jpで買う
初恋
初回限定盤B
(CD+M∞CARD)
TFRV-1012
¥1,800+税
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初恋
通常盤
(CD ONLY)
TFRV-1013
¥1,500+税
amazon.co.jpで買う

【収録曲】

[CD]
初回限定盤A
01.初恋
02.たかが世界の終わり

初回限定盤B
01.初恋
02.untouchable

通常盤
01.初恋
02.untouchable
03.たかが世界の終わり

[M∞CARD]
「初恋」MV + MV Making ※初回限定盤A、Bのみ

【レイヴ終活一覧】

#1 ONEMAN TOUR「序章」※開催済み
#2 6月 8周年ファン感謝祭『帰ってきた耐久レース!全曲ワンマン』開催
#3 2MAN LIVE SERIES『戦友-ライバル-』開催
#4 夏 8周年里帰りTOUR『原点回帰』開催 (開催予定地:長崎県・宮崎県・福岡県)
#5 秋 LAST ONEMAN TOUR開催
#6 10月 Gt.みくる追悼ライブ開催
#7 冬 LAST LIVE開催

【ライブ情報】
●2MAN LIVE SERIES
「戦友-ライバル- vs ベル」
7月22日(水)池袋EDGE ※公演延期

「戦友-ライバル- vs DOF」
7月28日(火)高田馬場CLUB PHASE ※公演延期

「戦友-ライバル- vs NEVERLAND」
8月3日(月)渋谷REX ※公演延期

「戦友-ライバル- vs Chanty」
11月16日(月)渋谷REX

●レイヴ 2020 SUMMER PREMIUM LIVE「夏果て。」
8月21日(金)宮崎SR BOX(席数44席)
8月23日(日)長崎DRUM Be-7(席数78席)
8月24日(月)小倉FUSE(席数30席)
9月4日(金)渋谷REX(席数50席)
9月24日(木)福岡DRUM Be-1(席数78席)

●レイヴ 8周年里帰りTOUR「原点回帰」
8月21日(金)宮崎SR BOX(nisa誕生日) ※公演延期
8月23日(日)長崎DRUM Be-7 ※公演延期
8月24日(月)小倉FUSE ※公演延期

●レイヴ LAST ONEMAN TOUR「Day×Bye×day」
9月4日(金)渋谷REX ※公演延期
9月13日(日)仙台enn 3rd ※公演延期
9月19日(土)広島Yise ※公演延期
9月21日(月)アメリカ村CLAPPER ※公演延期
9月22日(火)名古屋HeartLand ※公演延期
9月24日(木)福岡DRUM Be-1 ※公演延期

●レイヴ Dr.凪 生誕記念ONEMAN「凪のお誕生日会」
10月5日(月)高田馬場CLUB PHASE

●レイヴ Gt.みくる追悼 ONEMAN「Bora Bora Blue」
10月26日(月)目黒鹿鳴館

●レイヴ 8周年ファン感謝祭 「帰ってきた耐久レース!全曲ワンマン – 2012~2015 -」
●レイヴ 8周年ファン感謝祭 「帰ってきた耐久レース!全曲ワンマン – 2016~2020 -」
11月21日(土)池袋EDGE