Plastic Tree 東京キネマ倶楽部一週間公演「裏インク」特別企画

Plastic Treeの東京キネマ倶楽部一週間公演を記念し、Vif特別企画を実施。
公演期間中にはTwitterでフォロワー限定クイズを出題。そして、この特設ページでは最終日を中心としたライブレポートをお届けすると共に、全公演のセットリスト、Twitterクイズの結果発表、さらにメンバーからのコメント動画を掲載!

ニューアルバム『インク』を引っさげた全国ツアーを3月7日に終えて間もなく、3月11日から3月17日にかけ行われたPlastic Treeの7daysライブ「東京キネマ倶楽部一週間公演『裏インク』」。有村竜太朗(Vo)もバンドマン仲間から「一週間やるんですか!? マジですか!?」と言われたという、誰もが驚いたこの一週間公演だが、その舞台となる場所が鴬谷にある東京キネマ倶楽部というのが、またPlastic Treeらしい。厳かでいてレトロなムードたっぷりのこの会場は、大正ロマンのオペラハウスを再現した元グランドキャバレー。絵画や映画のようなPlastic Treeの世界にどっぷりと浸るにはうってつけの場所だ。

また、この7日間にはそれぞれ“裏の裏タイトル”なるものが存在し、1日目「月曜日、赤色の映画館」、2日目「火曜日、橙色の映画館」、3日目「水曜日、黄色の映画館」、4日目「木曜日、緑色の映画館」、5日目「金曜日、青色の映画館」、6日目「土曜日、藍色の映画館」、7日目「日曜日、紫色の映画館」と、虹色の7色が掲げられていた。毎日その色にちなんだ楽曲が披露されるだろうということも、この7日間への期待感を増幅させるものだった。だが、よくよく考えてみれば、このようなコンセプトライブが可能なのはPlastic Treeだからこそ。7色分の楽曲を難なく揃えることができるバンドは、なかなかいないだろう。改めて、彼らが生み出す色彩の豊かさを感じることができる7日間でもあったのだ。

初日、「『インク』の長ーい後夜祭だと思ってやるので」と有村は言った。そのライブの構成はと言えば、もちろんアルバム『インク』の楽曲を中心としながら、その日のテーマ色を思わす楽曲を組み込み、なおかつライブ定番曲も盛り込むという、なんとも贅沢な内容。それを日毎に様々なバリエーションで魅せ、観客を楽しませる。Plastic Treeは過去に3daysを経験済みということもあり、3日目の時点では「楽しくできてる」と長谷川正(B)。ナカヤマアキラ(G)も「体力的には全然大丈夫」と言いつつ、「精神的には疲れますね。まだあと何日っていうのが心のどこかにあるんでしょうね」と話していた。そしてPlastic Treeにとって未知の領域に達した4 日目も順調に終え、佐藤ケンケン(Dr)は「体力的には大丈夫なんですけど、たまに気が遠のくんですよね」と笑って話す。終盤戦に入った5日目には長谷川正は「個人的には脂がのってきた」とさえ言い、残すところあと2日間というこの日、「終わっちゃうんだっていう感情が今日初めて芽生えました」と有村はその心情を口にしたのだった。

Vifでは「裏インク」特別企画として公演期間中には毎日1曲目の予想を募集したのだが、5日目の「金曜日、青色の映画館」では、「痛い青」を予想している人がほとんどだった。メジャー1stアルバムの1曲目であり、アルバム『インク』と同時期に再構築もされた楽曲。また、“青”をテーマとしていた昨年の日本武道館公演での1曲目はこの「痛い青」だったわけで、これを予想するのは順当と言えるだろう。しかしこの日の1曲目は意外にも「ブルーバック」。しかも「痛い青」はこの日のセットリストにすら入っていなかったのだが、ちょっとした裏話をすると、実は前日までは「痛い青」が入っていたとか。さらに、6日目の「藍色」に関しても1曲目を「藍より青く」とストレートに予想した人がほとんどだったが、この日も「バルーン」という意外な選曲であった。本人たちとしては特に裏をかこうとか、当てさせないという気持ちはなかったそうだが、とにかくこの一週間公演では、前日や当日にセットリストが変更になったことは多々あったそうだ。

Plastic Treeメンバー写真

さて、ここからは最終日「日曜日、紫色の映画館」のレポートをお届けしたいと思う。
ナカヤマアキラがギターを奏でた瞬間、思わず歓声が湧いた「リラの樹」でこの日の舞台は幕を開けた。1996年、Plastic Treeがインディーズでリリースしたシングル曲だ。歌詞の中に“紫”というワードは出てこないが、リラの樹は“紫色”の花を咲かせる。紫の花が咲くトップスに黒のロングカーデを纏った有村の姿が、この楽曲にとてもよく似合う。「来ちゃいましたね、最後の日が。思いきり泣いて笑って楽しんでいってください。それでは『日曜日、紫色の映画館』はじまり、はじまり〜」と有村が挨拶をする。

「君はカナリヤ」では〈僕の手は届くかな〉の一節で有村とオーディエンスが同じように手を翳す姿に温かさが満ち、「てふてふ」ではプロジェクターに映し出された、ひらひらと舞う蝶が楽曲をより幻想的な空間へと誘う。そして、4 人の熱が一つに集結するインスト曲「218小節、かくも長き不在。」でこの空気を一変させた後、「裏インク」公演ではマニピュレーターの役割も担っているナカヤマアキラが、ギターを下ろしシンセサイザーに向かう。楽曲は「ピアノブラック」へと流れフロアにはオーディエンスの手拍子が響く。続いて拡声器を持った有村が「行くよー!」と煽り「あバンギャルど」がスタートすれば、フロアの熱は一気に上昇だ。その後、“紫色”の楽曲「パイドパイパー」を披露、そして「lilac」では息の合った掛け合いで盛り上がりを見せ、そのままの勢いで「メランコリック」に突入すればOiコールと満場の拳が上がった。

「今日は最終日なので一緒に歌ってください」と披露された「ライフイズビューティフル」から、花々が咲き誇る「シオン」の流れは、儚さと美しさが同居した果てしなくドラマティックな時空間だった。アンコールでは、この会場特有のサブステージに有村が登壇。「裏インク」用にアレンジされたであろうアコースティックver.で「ロールシャッハ」「夢の島」「37℃」をメインステージの3人と共に奏で、また違うPlastic Treeらしさの一つ
を堪能させてくれた。そして、メンバーがそれぞれ感謝の気持ちを述べたダブルアンコールでは、彼らのカラーの一つである混沌さと浮遊感を持つ「Thirteenth Friday」を間に挟みつつ、「puppet talk」「クリーム」とライブ定番の人気曲でフロアを揺らし、終演を迎えた。

メンバーが皆口々に「体力的には大丈夫だけど、ちょっと気を抜くと魂がどこかに行っちゃいそう」と言っていた通り、集中力を保つことが一番のハードルだったようだが、7日間全てのステージを見届けた実感としては、最終日が最も集中していたように思う。最後の最後に、オーディエンスと共にジャンプで締めくくった彼らの笑顔は充実感に満ち溢れていた。また、5日目のMCで有村が何気なく言った言葉「将来、できる限り毎日ライブをやりたいです。“喫茶プラトゥリ”みたいな」。いつか、そんな日が来ることを期待したい。

(文・金多賀歩美/写真・大津山雄二)

次のページへ