2024.03.10
Ricky@浅草花劇場
「R☆MY CHANSON」-アール☆マイ・シャンソン- 特別先行発売記念コンサート「原点回想」
風趣に富んだシャンソンの夕べは、集った聴衆たちの心をどこまでも深く魅惑していったのだった。このたび、浅草花劇場にて「原点回想」と題したキャリア初のシャンソンソロライヴを開催したのは、ヴィジュアル系ロックシンガーにして実は歌手としての歩みははシャンソン世界での方が先だったというRicky。
2001年に元SEX MACHINGUNSのドラマー・JOEと組んだユニット・DASEINでavexよりメジャーデビューを果たして以降、これまでにはR*A*PやTHE MICRO HEAD 4N’SのフロントマンとしてもV系シーンでの大活躍をみせてきた一方、2005年からは東映公認の仮面ライダー専属オフィシャルバンド・RIDER CHIPSでもコンスタントに歌い続けてきたRickyだが、今回はなんと3月27日に全編シャンソンで彩られたフルアルバム『R☆MY CHANSON』を発表することになったのである。
なんでも、Rickyは生まれた時からご母堂からの影響で常にシャンソンを身近なものとして感じながら育ってきたそうで、音楽的な原点は明らかにロックではなくシャンソンなのだとか。実際に、1990年代後半にはシャンソン歌手としてのライヴ活動を積極的にしていた時期があり、今や各方面から評価されているRickyの高い歌唱力や豊かな表現力は、ある意味でその時代に土台が築かれたと言っても過言ではなかろう。
もちろん、近年においてもRickyはかの「新春シャンソンショウ」に出演するなど、ロックヴォーカリストとしての顔とは別にシャンソンを大事にする活動も継続してきており、ちょうどパリでの五輪が開催されるこの2024年春に満を持するかたちで珠玉のシャンソンたちを凝縮させたアルバム『R☆MY CHANSON』をリリースし、またその先行発売記念公演として行われたのが、このシャンソン歌手・Rickyによるファーストフルソロライヴ「原点回想」だったのだ。
御大として名高いエディット・ピアフの歌っていた曲であり、日本では越路吹雪の持ち曲としても知られている名曲「あなたに首ったけ」から始まった今宵は2部構成となっていて、アルバム『R☆MY CHANSON』とこのライヴをともに総合プロデュースしているシャンソン歌手・ソワレが司会進行をつとめることに。故に、普段であれば相当に饒舌な方であるRickyがこの場ではそこまで多くしゃべることはなく、シンガーとしての役割を全うする流れになっていた点が印象的だと感じた。
ちなみに、アルバム『R☆MY CHANSON』についてはサウンドプロデュースとピアノ&キーボードの演奏をアーバンギャルドのおおくぼけいが担っているほか、アコーディオン奏者としてチャラン・ポ・ランタンの小春、ギタリストとしてはハイダンシーグドロシーの情次2号がレコーディング参加しているのだが、本公演ではドビッチーまゆ(Pf)、眞鍋香我(Gt)、うのしょうじ(Ba)、なかじまはじめ(Dr)、カジカ(Vn)、えびさわなおき。(Acc)という、百戦錬磨のプレイヤーたちによって特別編成されたバンドがRickyを頼もしくバックアップ。
第1部の中盤では第二次大戦にまつわる逸話を描いた「愛の追憶」や「脱走兵」といった楽曲たちで、Rickyが当時の情景や人の心模様を感じさせる秀逸な歌を聴かせ、オーディエンスをぐいぐいと惹きつけていくさまは圧巻で、Rickyの表現者としての底力にあらためて感銘することになった人も多かったのではあるまいか。
また、その道の大家である美輪明宏のレパートリーとして名を馳せる「人生の大根役者」では、Rickyが一世一代の〈大根役者!!〉という大絶唱を披露する一幕も。若かりし頃のRickyはこの曲を歌いこなすことが難しく、照れや恥ずかしさを感じていたところもあったそうだが、ここでの彼がみせた完全なる振り切れっぷりは痛快の一言。
はたまた、第2部ではグリッタリーなゴージャスかつセクシーな衣装で「ジプシーの恋唄」をアカペラからのスタートで歌ったり、コミカルなタッチでRicky自身の体験談を歌詞にまじえた「知らない街」で場内からの笑いを誘ったりと、人生や愛の素晴らしさ、生きていく中で感じる悲哀のみならず、時には人間の滑稽さまでをも歌で体現していったRickyの姿からは、シンガーとしての貫録や円熟味を感じたほど。
かくして、オーセンティックなシャンソンというよりは、ロックやブルースの香りも漂う「ブルージーンと皮ジャンパー」ではオーディエンスがいよいよ総立ちとなり、第2部ラストの「ケ・サラ」では観客の光らせる色とりどりのサイリウムで場内が美しくきらめきだすことになった次第だ。
さらに、“おかわり”という名のアンコールではRickyが総合プロデューサー・ソワレとデュオで再度「ラストダンスは私に」を楽しく歌いあげたうえ、最後の最後には彼にとっての所信表明かのように「歌い続けて」を力強い声で響かせてくれた。なお、この夜のライヴでは前述の「人生の大根役者」と「ブルージーンと皮ジャンパー」のみ特別にスマホでの動画撮影が許可されていたため、X(旧twitter)のアカウントをお持ちの方は、#原点回想あるいは#RMYCHANSONで検索すると、ファンの方々がシューティングしたライヴ映像を視聴していただけるということもここに付記しておきたい。
「20年以上前に母の勧めでシャンソンを習い始めた時はシャンソン歌手という意識はほとんどなく、アイドルで言うところの研究生のような状態で、とにかく歌が上手くなりたいという一心で先生に言われるがままシャンソンを歌っていましたので、正直、心からシャンソンを楽しいと思えたことはなかったように思います。あれから月日も年齢も経験も重ねて、たまたまお誘い頂いた新春シャンソンショウ出演をきっかけに数年前からまたシャンソンを歌うようになり、今回こうして初めてのシャンソンワンマンライヴを終えられたことで、やっと自分で自分のことを“シャンソン歌手として”少しだけ認めてあげることが出来たような気がしますね。当然プレッシャーもあったし理想に届かない部分もありましたが、その中でもシャンソンを歌うことが楽しいと心から思えたのでね。あくまで軸足はソロやDASEINになりますが、今後はそこに“シャンソン歌手Ricky”としての活動もプラスしていけるので、事務所独立時に自らに課した【HYPER NEO SOLOIST=新しいスタイルのソロアーティスト像】という肩書きに説得力が増し、それをしっかり体現できてるなという自信に繋がりました。」(Ricky)
これは今回のライヴを終えた直後にRicky本人からもらったコメントとなるが、気付けば来年の2025年でRickyは遂に歌手生活25周年を迎えるそうだ。さまざまなフィールドで歌う自らのことを、HYPER NEO SOLOIST (ハイパーネオソロイスト)とも呼ぶRickyは、今回のシャンソンアルバム『R☆MY CHANSON』を完成させ、ソロライヴ「原点回想」を成功させたことで、よりそのハイパー度合を加速させたとも言えるはず。
シャンソン=難しそうで退屈そう…もし、そんな既成概念を持っている方がいるならば。そうした方には、“Rickyのシャンソンはわかりやすくて楽しい!”と声を大にしてお伝えしたい。ここはぜひとも、風趣に富んだRickyのシャンソンをご賞味あれ。
◆セットリスト◆
【第1部】
01. 原点回想
02. あなたに首ったけ
03. サンジャンの恋人
04. ラスト・ダンスは私に
05. 愛の追憶
06. 脱走兵
07. 人生の大根役者
08. 私の人生
【第2部】
01. ジプシーの恋唄
02. カルーソ
03. 知らない街
04. そして今は
05. ブルジーンと皮ジャンパー
06. 魅せられた夜
07. ケ・サラ
En
01. 歌い続けて
(文・杉江由紀/写真・折田琢矢)
【リリース情報】
●『R☆MY CHANSON -アール☆マイ・シャンソン-』
2024年3月27日(水)発売
(発売元:マドレーヌ・エージェンシー/販売元:PCI MUSIC)
<収録曲>
01. 原点回想(instrumental)
02. あなたに首ったけ/Je t’ai dans la peau
03. サンジャンの恋人/Mon amant de Saint-Jean
04. 魅せられた夜/Mais Dans La
05. そして今は/Et maintenant
06. ジプシーの恋唄/Le gitan et la fille
07. ラスト・ダンスは私に/Garde-moi la dernière danse
08. 私の人生/Ma vie
09. ケ・サラ/Che sarà
【インストアイベント情報】
●『R☆MY CHANSON』対象インストアイベント
4月6日(土)13時〜
littleHEARTS.新宿店
トーク&ボイスメッセージ録音会
4月6日(土)18時〜
タワーレコード池袋店
トーク&ミニライブ&サイン会
4月13日(土)19時〜
fiveStars 名古屋
トーク&ボイスメッセージ録音会
4月14日(日)17時〜
静かの海 名古屋
トーク&サイン会
4月27日(土)14時〜
ヴィレッジヴァンガード横浜ビブレ
トーク&サイン会&抽選会
4月27日(土)18時〜
タワーレコード川崎店 店内イベントスペース
トーク&ミニライブ&私物サイン会
【ライブ情報】
●ソロデビュー15周年記念ワンマンLIVE 2024「THE☆ANNIVERSARI☆CKY」ー春めぐり ソロもそぞろに 十五年ー
3月31日(日)渋谷REX
開場16:00/開演16:30
前売券¥7,500(D別)/当日券¥8,500(D別)
チケット購入ページ
物販
・先行物販 14:30〜15:30
・終演後
・通販:渋谷REX通販サイト