2022.09.08
Luv PARADE主催「DEVIL’S PARTY 2022 Vol.2」@Spotify O-EAST

Luv PARADE

去る6月20日、ex.D’ESPAIRSRAYのKaryu(G)、ZERO(B)、TSUKASA(Dr)にゲストヴォーカルを迎えて編成されるLuv PARADEの再始動後初ステージとなった主催イベント「DEVIL’S PARTY 2022」がSpotify O-EASTで行われ、大盛況のうちに幕を閉じたことも記憶に新しいが、9月8日、同会場にて早くも「DEVIL’S PARTY 2022 Vol.2」が開催された。

今回の出演アーティストは、H.U.G(Karyu Session BAND)、NUL.、GOTCHAROCKA、そして主催者Luv PARADE(ゲストヴォーカル:TAKA(defspiral))を含めた4組というラインナップ。編成は様々だが正式メンバーという点で言えば、実は全バンドが3名という共通項も偶然か必然か。また、事実上D’ESPAIRSRAY、Angelo、defspiralの各メンバー同士の対バンも実現することになるゆえ、前回のステージ上で発表された瞬間に場内が湧いたことはもちろん、その後メンバーも本気でぶつかり合う気合の意味をもって、バチバチと火花を散らしていたのだった。

NUL.

トップバッターを務めたのは、全出演アーティストの中でもっともLuv PARADEと密接な関係性にあるNUL.。ex.D’ESPAIRSRAYのHIZUMI(Vo)、defspiral のMASATO(G)、布袋寅泰のサポートやabingdon boys schoolなどで活躍中の岸利至(Prog)の3人から成るバンドだ。念のため記しておくと、岸はD’ESPAIRSRAYの元プロデューサーでもある。彼らは現在、サポートにKOHTA(B/Angelo、ex.PIERROT)、石井悠也(Dr)を迎えた5人編成で最新アルバム『EVILA』を引っ提げた全国ツアーの真っ只中だが、今回のイベントにもその新体制で出演。また、NUL.としては始動3年目にして初の対バンライブということもあり、どのような攻め方で仕掛けてくるのかも注目の点であった。

そんな彼らのステージは最新作の表題曲「EVILA」でスタートを切り、「楽しもうぜ」とHIZUMI。続く「ジル」で早くもHIZUMI、MASATO、KOHTAが前方へと繰り出せば、岸がパッドを叩き、その気迫溢れるNUL.のパフォーマンスにフロアは拳で応戦してみせた。「今日は昔の仲間が集まってやるイベントなので、思いっきり盛り上がったヤツが勝ちだからな。思いっきり暴れてくれよ! めちゃくちゃ楽しませてやるから!」(HIZUMI)とフロアを鼓舞し、その心地よいリズムに身を委ねたくなる「GREEDY BLOOD FEUD」、楽器陣のユニゾンで始まるイントロが最強な「八咫烏-Yatagarasu-」と続けた。なお、この日のために用意された映像も各曲で抜群の効果を発揮し、楽曲をよりドラマティックに魅せる一因となったことは間違いない。

さらにダークなミディアムナンバー「死遊の天秤」で〈まだ「生きたい」と願う ときに「死にたい」と放つ〉心の揺れを切々と歌い上げれば、ラストにはNUL.の始まりの曲「XStream」を投下。ラップと咆哮、インダストリアル色の強いサウンドかつ〈枯れ果てた声刻め 生きた証を〉というリリックが印象的なナンバーをもって、初の対バンのステージを締め括った。全6曲中5曲が『EVILA』の収録曲という結果になったわけだが、“死を意識し、生きるを考える”というテーマで制作された今作とラストナンバーの一貫性は実に美しい流れで、この少ない曲数の中でもしっかりとメッセージを刻み付けたのだった。

H.U.G

続いてのステージは、Karyu Session BANDとして前回のイベントで初ステージを踏み、このたび「H.U.G」というユニット名で本格始動することが発表されたばかりのKaryu、ryo(Vo)、横山和俊(Manipulator)が登場。主催者を除けば、前回のイベントから唯一の連続出演アーティストとなるが、まずその装いがラフな印象だった前回とは大きく異なり、Karyuはタイトなスーツスタイル、ryoはシャツ+ベスト+大ぶりなリボン(スカーフ)、横山は黒地に鮮やかな青が映える柄シャツという、アバンギャルドかつスタイリッシュなヴィジュアルで目を引いた。中でもKaryuの素肌にジャケット姿は反則級だろう。

ryoが手を上へ、Karyuがメロイックサインを掲げると、横山が手掛けたD’ESPAIRSRAYのSEに歌を乗せたH.U.Gオリジナルの「熾-OKI-」で幕開け。ryoとKaryuがしゃがみ込んだ状態から「Marry of the blood」(D’ESPAIRSRAY)に流れ、横山が奏でる鍵盤の不協和音が合わさり、曲が進むごとに深淵なH.U.Gの沼に落ちていくような感覚を覚える。次いで「今日この時点でH.U.Gとしての活動をスタートさせます」というryoの宣言から新曲「DROP」、そしてryoと横山によるユニットTAGの楽曲をKaryuがアレンジした「Flash dancers」を続けて披露し、縦横無尽にパフォーマンスするフロント二人を前に、横山も腕を大きく掲げてフロアを盛り立てた。

ちなみに、現状のH.U.Gのステージでは全曲において横山がパッドを打ち鳴らすことが特徴の一つでもあるが、この日、彼が手にしていたスティックが透明かつ光るものであったことは前回と異なる点。終演後の本人に話を聞いたところ、NUL.の岸もパッドを叩くという情報を事前に入手したため、差別化を図ろうとKaryuからの提案だったという裏話を聞くことができた。

「音で強制ハグするのでね…逃がさないよ〜?」(Karyu)、「声は出せないので、せめて音でハグしましょう」(ryo)と、今後彼らの名刺代わりの1曲として愛され続けていくであろう「HUG」では、2回目のステージ披露ながら既にオーディエンスに浸透している様子が感じられるほど満場の拳が上がり、ラストはメロディアスな新曲「HEART」が届けられたわけだが、近い未来、コーラス部分を全員で歌える日が来ることを楽しみにしたい1曲であった。なお、H.U.Gの全ての楽曲が緻密に作られていることは前提としながら、ステージ全体を通して前回よりもキャチーに感じられたのは、新曲が持つ個性プラス、表現という部分での3人の共通意識がより明確になったからだろう。歩き出したばかりのH.U.Gの今後に期待したい。

GOTCHAROCKA

三番手のステージは、今年8月に10周年を迎え、同会場にてアニバーサリー公演を行ったGOTCHAROCKA。ダーク色の強い面々が顔を揃える「DEVIL’S PARTY」の中では異色と言える存在だ。とは言え、このイベントに出演するということは、当然Luv PARADEとの関係値があってこそ。樹威(Vo)の前バンドであるヴィドールがD’ESPAIRSRAYと同じ事務所であったことはご存知の方も多いと思うが、実はその他にもJUN(G)、十夜(G)を含めGOTCHAROCKAとD’ESPAIRSRAYのメンバーには意外な交流エピソードがあるようで(本公演VIPチケット特典のインタビュー冊子に詳細が記されているため、入手できた方はぜひ熟読してほしい)、今回久々の再会が実現することと相成った。

オープニングSEから幕開けを飾った「BRAND NEW DEVIL」において、七色の光がステージを照らし出したあたり、早速GOTCHAROCKAの鮮やかなカラーが視覚的にも具現化されたわけだが、1曲目が「BRAND NEW DEVIL」とは、今回のイベントタイトル「DEVIL’S PARTY」を意識した、この日ならではの選曲だったのではないだろうか。続いて「SENSITIVE DARKSIDE」ではGOTCHAROCKAのファンたちが“SENSITIVE BAT”なるツインメガホンを打ち鳴らし、彼らのステージを共に盛り上げていった。

「月日を経てまた同じステージに立てることが光栄だなと思うと同時に、今日はギラついてやっていきたいなと思って来たので、皆さんも一緒にギラついて最後まで楽しんでやっていけたらと思います」という樹威の言葉から、縦ノリが心地よい「PRISM」でフロアを揺らせば、空気をガラリと変え、2020年のコロナ禍に生み出された彼らの周年曲であるバラードナンバー「サプライズ」をエモーショナルに歌い上げたのだった。

そこから〈僕らが感じ取ってた未来〉という歌詞も印象的な、今年6月にリリースされたばかりのFC限定シングル収録「DEATH FLOOR」ではJUNと十夜が前方へと繰り出し、フロアにはタオルが旋回。ラストにはツインギターのユニゾンやギターソロも魅力のピースフルな暴れ曲「OUT OF SERVICE」で騒ぎ倒して、GOTCHAROCKAのステージは幕となった。今イベントの中ではカラーも異なれば世代も少し下となる彼ら。先輩たちとの久々の対バンは本気でぶつかることが礼儀と言わんばかりの、終始熱量の高いステージを繰り広げたのだった。

トリはいよいよLuv PARADEのステージ。元々セッションバンドとして誕生したLuv PARADEはこれまでに様々なカバー曲を披露してきたわけだが、11年ぶりの再始動を機にその選曲基準を熟考したという。自身のカラーに近いロックバンドの楽曲カバーは、一般的にどうしても想像の範囲内に収まりがちだが、全く異なるジャンル、しかも女性ヴォーカルの楽曲をセレクトすることで、大幅なアレンジが可能となる。そこに彼らは光と楽しさを見出したようで、前回好評だった「Poker Face」(Lady Gaga)、「Toxic」(Britney Spears)は今回も引き続きプレイ、そして前回は1曲NINE INCH NAILSのカバーがあったが、今回は「HYPER BALLAD」(Bjork)が初披露となり、すなわち洋楽カバーの全てが女性ヴォーカル曲という結果になった。

「Poker Face」は大人ロックなダンスチューンに、「Toxic」は妖艶かつスリリングなラウドロックに、「HYPER BALLAD」は壮大なロックバラードというベクトルで表現。コピーではなくカバー、この4人だからこそできるアレンジとパフォーマンスをもってLuv PARADEオリジナルのものへ昇華させる。無論、それは4人の自己満足で完結せず、オーディエンスにとっても刺激的で魅力的なものとなっていることは、フロアの盛り上がりを見れば明らかだ。こと初披露の「HYPER BALLAD」については、一気に開けるサビの第一音が個人的にとびきりグッとくるものだった。

「回を重ねるたびにラヴパのメンバーの一員としての思いが芽生え出しているとか…いないとか(笑)」と呟いたTAKAに対し、KaryuとZEROが両サイドから糸を手繰り寄せるジェスチャーをした場面もありながら、「皆の中の悪魔的なものを見せてくれよ!」(TAKA)と、このイベントのテーマ曲と言っても過言ではない「DEVILS’ PARADE」(D’ESPAIRSRAY)を、そして「GETTING CLOSER」(the Underneath)、「LOVE IS DEAD」(D’ESPAIRSRAY)と、4人の歴史上にある楽曲たちを立て続けにプレイし、白熱の空間を作り上げたのだった。

アンコールでは今回もスマホでの動画撮影がOKとなり、Karyu、ZERO、TSUKASAのみでD’ESPAIRSRAYの2曲「DEATH POINT」「MIRROR」が披露されたわけだが(ぜひSNSで検索してみてほしい)、その演奏を前に「HIZUMIが出るんじゃないかと思ったかもしれませんが、今日はラヴパとして出ていて、ラヴパのヴォーカルはTAKAさんなので。俺たちの気持ちを汲んでいただければと。もしHIZUMIと同じステージに立つことになったら、ちゃんと事前に告知するので、その時まで震えて待っていてください」とZEROが話した場面は、彼らの誠実さが伝わるものだった。

今後のLuv PARADEの動きとしては、12月17日に赤羽ReNY alphaにてLuv PARADE vs H.U.Gのツーマン公演が開催されることが決定した。当然持ち時間も長くなることが想定されるわけで、新曲や初披露曲にも期待せずにはいられない。なお、Karyuは2回のイベントに引き続きまたもや2ステージの登場となるが、「元気だけが取り柄、Karyuです!」とのことなので、安心して(?)臨みたい。

◆セットリスト◆
【NUL.】
01. EVILA
02. ジル
03. GREEDY BLOOD FEUD
04. 八咫烏-Yatagarasu-
05. 死遊の天秤
06. XStream

【H.U.G】
01. 熾-OKI-
02. Marry of the blood/D’ESPAIRSRAY
03. DROP
04. Flash dancers/TAG
05. HUG
06. HEART

【GOTCHAROCKA】
01. BRAND NEW DEVIL
02. SENSITIVE DARKSIDE
03. PRISM
04. サプライズ
05. DEATH FLOOR
06. OUT OF SERVICE

【Luv PARADE】
01. Poker Face/Lady Gaga
02. Toxic/Britney Spears
03. HYPER BALLAD/Bjork
04. DEVILS’ PARADE/D’ESPAIRSRAY
05. GETTING CLOSER/the Underneath
06. LOVE IS DEAD/D’ESPAIRSRAY

En(Karyu、ZERO、TSUKASAのみ)
01. DEATH POINT/D’ESPAIRSRAY
02. MIRROR/D’ESPAIRSRAY

(文・金多賀歩美/写真・Lestat C&M Project)


【ライブ情報】
●Luv PARADE vs H.U.G
12月17日(土)赤羽ReNY alpha
※詳細は後日発表

Luv PARADE オフィシャルサイト