A9

◆俺も何か技が欲しいね!(Nao)

Nao

――ところで、少し前に沙我さんが、1番のバラードは「Waterfall」、1番苦労した曲は「GEMINI」、ライブで1番至福になる率が高いのは「the beautiful name」などをツイートしていましたが、皆さんはいかがでしょう?

将:今作縛りにしちゃうと限られますよね。バラードは「虹彩」か「Waterfall」だし。

沙我:「無限の花」もじゃない? 「FANTASY」はバラードなのかな?

将:「FANTASY」は今回ギターロックになったよね。

虎:まず、バラードってどういう意味なのかな? 愛を歌っていたらバラード?

ヒロト:バラードの定義…。

Nao:バラードだと感じたらバラードじゃない?

虎:バラードとラブソングは違う?

ヒロト:個人的な解釈では「GEMINI」はバラードなんだよね。

将:サビとかはバラードだよね。

虎:一番のバラードは…「-Dice-」ですっ。

将:「the beautiful name」は改めてすごい曲だなと思いました。本当に素晴らしい歌を歌っているという気持ちで歌える曲です。

沙我:将さんはまだ知らないだろうけど、ゴスペルが入ったんですよ。

将:ライブで流れているよね?

沙我:さらにちゃんと録った。一人で。

将:最初は「コーラス大変でしょ」って歌い始めてくれたんですけど、もう結構ツインヴォーカルくらい歌っているので、全部を通して聴くのが楽しみですね。

――コーラスと言えば、「-Dice-」のグロウルも沙我さんなんですよね。

沙我:あれしかできないです。ホイッスルとかできない。

将:結構、沙我くんがグロウルなんですよ。俺がやるのがガテラルヴォイスというやつで、「-Dice-」は俺的にもグロウルだと思ったので、沙我くんありがとうと思いましたね。

沙我:Naoさんの声も欲しい。

Nao:俺も何か技が欲しいね!

将:Naoさん、YouTubeで「ホイッスル」で検索して、練習してきて?

全員:(笑)

沙我:俺もYouTubeでグロウルを勉強したんですよ。Naoさんがこれを覚えちゃったら、ライブでやりまくるんじゃない? すげーうるさそうだよね(笑)。

Nao:ヤバイよ!

沙我:一人一つシャウトを覚えるって面白いかもしれないですね。

――では、ライブで1番至福になる率が高いのは?

ヒロト:僕は「GEMINI」ですね。サビの歌詞がめっちゃ好きなんですよ。しかも、それを聴いている時のお客さんの顔がめっちゃ良いんです。サビ以外は自分が必死というのもあるんですけど(笑)。だから、サビでいつも噛み締めている気がします。

沙我:「タイムマシン」(2004年7月発売シングル)の歌詞は熱いなと思いましたね。こんなこと言ってたんだなと。〈抱き締めさせて〉って。

――「今年の夏に繋がる曲でもあるし、この曲がツアーでどう育つかが一つのポイント」という、ちょっと意味深な沙我さんのツイートもありましたよね。

沙我:「タイムマシン」は大事なポジションになると思います。僕的には結構踏み込んで変化させました。この曲は今まで解釈が難しかったんですよね。それこそバラードなのか、熱い曲なのか、ライブをやりながらもどのテンションでやればいいんだろうみたいな。掴みきれていなかったんですけど、改めて歌や歌詞を吟味した結果、やっぱりもっと熱いんじゃないかと。そんなにしんみり聴く感じじゃないなというところに行き着いて。これはライブでも解釈が一番変わるんじゃないかなと思います。お客さん的にもたまに聴ける初期の名曲みたいな、聴けるだけでOKという感じだったと思うんですけど、今回ポジションをハッキリさせてあげようと思いました。

――反応が楽しみですね。

沙我:できれば、昔ながらの聴き方をしてほしいなと思いますね。アートワーク、歌詞カードを見ながら聴いてもらえると、一番楽しめるんじゃないかなと。

将:言葉がちゃんと届くように、沙我くんが俺以上に歌詞を大切にメロディーやアレンジを調整してくれて。言葉が聴き取りやすいようにというテクニックが入っているので、若いバンドマンも必聴です。ロックサウンドって元々英語圏のものなので、日本語が日本語として聴こえるようにというのは、結構テクニックが要るんですよ。

沙我:今回、歌を一番大事にしましたね。アレンジのカッコよさはサブ的な要素で、結局は歌モノとしての良さをすごく上げたいので、全曲においてそれが最重要でした。

将:でも、今回ドラムで曲を盛り上げるアレンジが増えたなと思った。最近の音楽とかバンドって、同機音で味付けをするのが多いんですけど、ドラムがメロディーのハマるべきところにあって、相乗効果で上がるという部分が結構あって。「Le Grand Bleu」のラスサビとかヤバイなと。Naoさんは叩き過ぎて忘れてるかもしれないけど。

Nao:覚えているけど…。いやー…聴いてくれ!

全員:(爆笑)

――実際、Naoさんは今回再録してみていかがでしたか?

Nao:全21曲を自分のスタジオで録るとわかっていたので、機材を新しく揃えて、時間をかけて調整して学びながら、流れ作業にならないように1曲1曲臨みました。プレイ、レコーディングのより良いやり方を追及して、すごく贅沢な感じでやれましたね。1日練習して体に入れて、セッティングして半日して、微調整して、そこから録るという感じだったので、1曲3日くらい掛けられました。実のある制作でしたね。

――合間に美味しいものは食べられましたか?

Nao:いや、今回は本当に忙し過ぎて。1曲覚えたらすぐに次の曲に臨むので、もうどんどん忘れていくんですよ(笑)。

――ツアーに向けて、覚え直さないといけないですね。

Nao:そうですね。また練習しないと。

沙我:本当にツアーがヤバイですよ。超ムズイと思います。

Nao:でも一度やっているので、ちょっとやり出したら意外と体が思い出していくんですよ。それが救いですね。

――虎さんはライブで1番至福になる率が高いのはどれですか?

沙我:虎さんが一番可愛いのは「メビウス」(『Supernova』収録)じゃない?

虎:今回入ってないし(笑)。この中だと「the beautiful name」かな。

沙我:ちなみに「RAINBOWS」は、意外と楽器隊が違うんですよ。ライブでややこしそうだな…。今までやっていたことが覆されちゃうので、ツアーがマジで大変だと思います。

◆演者側が、どんな体験を提供していくのかを考えていくべき(将)

将

――そんなツアーが5月4日からスタートします。前半は『花鳥ノ調』、6月15日からの後半は『風月ノ詩』を中心にしたものになるということで。

沙我:再録の楽曲たちが中心ではあるんですけど、独立以降の曲たちを組み合わせてやろうと思っています。

――新曲の披露も予定しているそうですね。

将:目が泳いでる(笑)。

沙我:大丈夫っすよ! やりますよ!

将:最悪、5人の即興でフリースタイルラップやります(笑)。

――ファイナルは久々の日比谷野音ですが、前代未聞のチケットシステムがすごいなと思って。

将:そこ突っ込んでくれるんですね。元々、チケットキャンプというサイトが二次販売みたいなことをしていたのを、少し前に音楽業界が潰したんですよね。ただ、市場原理として、お客さんが例えば10~20万円という金額で良い番号が欲しいというのは、気持ち的には有り難いことだと思うんです。だから、逆にアーティスト側がそういうプランを用意して、それだけの価値をプレゼントできるようなことをやるべきなんじゃないかなと。周年という機会に僕らが先陣を切ってやるので、他のアーティストもダイナミックプライシングというか、僕たちの公演にはこれだけの価値がありますと提示して、その対価に見合うクオリティのものを届ける努力をするべきだと思うんですよね。とっくの昔にアメリカはそうなっているし、日本は全てが遅くて、みんな事なかれ主義に捕らわれているので、業界全体がこういうことをやりやすくなるといいなと思っています。

――そういう真意があったんですね。

将:アーティスト側にも責任が伴うし。ただ演奏して、ただ聴きに来るということ以上の体験なんだよという定義付けをしていかないと、音楽というエンターテインメント自体が他のエンターテインメントに対して無価値なものになってしまいますよね。やっぱり演者側が、どんな体験を提供していくのかを考えていくべきだと思います。という意味で、ちょっと物議を醸してほしかったので、こういうことをしました。とにかく、この設定は業界のためを思ってという感じですね。

――なるほど。最後に、2015年に「今後のA9、どのようなバンドを目指したいですか?」という質問に答えていただいたので、現段階でどう感じているか伺いたいと思います。Naoさんは「“かっこいいバンド”の代名詞になりたい。ただ綺麗にかっこいいんじゃなくて、男臭さもちょっと出たらいいかな」とのことでした。

Nao:個人的には、まだ俺の男らしさが足りてないので、やっぱり雄の部分が欲しいっちゃ欲しいです。可愛いだけじゃなくて、そういうところも見せていきたいなと。あとは、オンリーワンなバンドになって、支えてくれる皆と楽しい人生を送りたいですね。A9のことを人生賭けて考えてくれている子もいたりするし。虎さんが倒れた件もありますけど、誰に何が起こるかわからないので、応援してくれている子たちのためにも、ちゃんと健康診断に行って、居場所を守りたいですね。

――沙我さんは「何か新しいバンドの見せ方みたいなものが、そろそろ生まれそうなんですよね。実験的なものをやってみたい」ということで、前回、「CASTLE OF THE NINE」で実現したという話をしましたね。

沙我:新しい見せ方を一通りやったので、今は演出とか以外に、1本のライブとして楽しめるかどうか、曲の伝え方、そういうバンドとして基本的なところを強化したいなというところに戻ってきました。「CASTLE OF THE NINE」でのダンスを見てA9に興味を持ってくれた人に、芯の部分を見せる時期なんじゃないかなと思います。

――虎さんは「何でもできるバンドがいいと思います。自分の持ち味をもっと増やす、そういうバンドになれたら」と言っていました。

虎:間違いなかったですね。個性が強いバンドなので、その個性をもっと出してもいいんじゃないかなと思ってやってきましたけど、かなり出たんじゃないですかね。逆に言えば、それが散らばらないようにまとめる作業が大事だなと思います。

――ヒロトさんは「この5人にしか作り得ないものを追究していく」と。

ヒロト:それ自体はずっと変わっていなくて。ただ、今は知ってもらいたいという気持ちが強いかなぁ。結局、どんなに素晴らしいものを作っても、認識されなかったら存在しないのと一緒なので。うちは初期に当時の事務所がすごくプッシュしてくれて、勝手に広まっていった節があると思うんですよね。今、そうじゃない状況を自分たちで選んでいて、15年前とはテクノロジーも変わっているし、その上でどう動いていくかですよね。当時は雑誌やテレビくらいでしか知らせることができなかったけど、今は自分で発信できるし、その分、嘘も多い世の中だと思うんです。そんなに感動していなくても、SNSで「すげー最高だった」と皆言いがちじゃないですか。そういう中で、人が本当に感動できることを伝えていくって難しいなと。自分がもっともっと感動して、どうしたら人に伝えられるか考えてやっていきたいなと思います。

――将さんは「誰もが知っている曲、A9だっていう世界を両立させたものを作りたい」と。「真逆のベクトルかもしれないけど、両立できると思う」ということでした。

将:曲って、やっぱり思い出と結び付いているので、風化しない、ずっと刺さっているものだと思うんです。それを残したいと思うし、『PLANET NINE』ではA9というコンテンツを使って、どういう体験をお客様に提供できるかということを頑張った作品で、新しい挑戦が多かったんですけど、そこで飛び道具を使ったことを経て、またバンドがもっと曲の深いところ、自分たちの初期衝動や、こういうものがやりたいんだというところに向かえそうな気がしています。メンバーがそれを発揮できるように、僕は努力したいなと思います。

――そして、将さんとヒロトさんの口から「武道館」という具体的な名称も出ていました。

将:押さえられそうだったんですけど、ガチな話、クジ引きでダメでした。武道館って、やっぱり皆やりたいし、アーティストの思いだけではなくて、世の中の風が吹かないとできないんですよね。まだまだ諦めてないし、一度武道館に立っていて、お客さんの「また立たせてあげたい」という気持ちも感じているので、それに応えるのが男だと思うんです。そこから目を逸らさずにやっていきたいですね。

――武道館公演を発表すると、ファンの方々が喜びますよね。

将:やっぱり国旗の下で自分たちが生業としていることをやるというのは、ものすごく誇らしい気持ちになりますよ。

ヒロト:あの立地もあると思うんですよね。歴史が詰まっている場所なので、そこに自分たちが好きなものや、それを好きな人たちが集って歴史を刻むというのは、絶対に嬉しいですよね。現状、有言不実行になっていても、いつか回収できればいいと思うので、言い続けたほうがいいなと思いますね。こういう場で言うと、聞いている人がいて、文字になって、それを見る人がいて、段々と行けるかもしれないと思う人もいるかもしれない。変わらずそこに向かいたいですね。

(文・金多賀歩美)

ARTIST PROFILE

A9

<プロフィール>

将(Vo)、ヒロト(G)、虎(G)、沙我(B)、Nao(Dr)により2004年結成。メロディーセンスが光る楽曲が注目を浴び、結成直後よりシーンで注目を集めセールス、ライブ動員ともに拡大。2011年には初の日本武道館公演を成功に収める。2014年8月、富士急ハイランドコニファーフォレストでの10周年記念公演をもって独立し、1年の休止期間を経て、2015年8月、EP『銀河ノヲト』を引っさげた11周年記念公演で完全復活を遂げた。2017年4月にアルバム『IDEAL』、2018年4月にアルバム『PLANET NINE』をリリース。2019年、15周年を記念した再録ベストアルバム『花鳥ノ調』『風月ノ詩』を手に、5月4日より全27公演に渡る全国ツアーを開催する。

■オフィシャルサイト
http://a9-project.com

【リリース情報】

『花鳥ノ調』『風月ノ詩』
2019年4月24日(水)発売
(NINE HEADS RECORDS)

cdcdcd
[花鳥ノ調]
NINE-0024
¥2,500+税
amazon.co.jpで買う
cdcdcd
[風月ノ詩]
NINE-0025
¥2,500+税
amazon.co.jpで買う

【収録曲】

[花鳥ノ調]
01. タイムマシン
02. 華一匁
03. グラデーション
04. H.A.N.A.B.I.
05. 銀の月 黒い星
06. 無限の花
07. 平成十七年七月七日
08. 光環
09. ヴェルヴェット
10. FANTASY

[風月ノ詩]
01. NUMBER SIX.
02. -Dice-
03. 虹彩
04. RAINBOWS
05. CROSS GAME
06. the beautiful name
07. Waterfall
08. Le Grand Bleu
09. GEMINI -0-eternal
10. GEMINI -I-the void
11. GEMINI -II-the luv

【ライブ情報】

●BEST OF A9 TOUR「ALIVERSARY」~前夜祭~
4月26日(金)高田馬場AREA ~NUMBER SIX. 限定公演~

●BEST OF A9 TOUR「ALIVERSARY」CASE OF 花鳥
5月4日(土・祝)TSUTAYA O-EAST ~ヒロト生誕祭2019~
5月10日(金)さいたま新都心VJ-3
5月12日(日)柏PALOOZA
5月18日(土)山形ミュージック昭和セッション
5月19日(日)盛岡CLUB CHANGE WAVE
5月25日(土)岐阜CLUB ROOTS
5月26日(日)京都FAN J
5月28日(火)高松DIME
5月30日(木)山口 LIVE rise SHUNAN
6月1日(土)宮崎SR BOX
6月2日(日)鹿児島CAPARVO HALL
6月8日(土)甲府CONVICTION
6月9日(日)長野JUNK BOX

●BEST OF A9 TOUR「ALIVERSARY」CASE OF 風月
6月15日(土)金沢Eight Hall
6月16日(日)奈良NEVER LAND
6月22日(土)新潟NEXS
6月23日(日)郡山HIP SHOT ~沙我生誕祭2019~
7月6日(土)福岡DRUM LOGOS ~将生誕祭2019~
7月7日(日)長崎DRUM Be-7
7月13日(土)仙台RENSA
7月15日(月・祝)札幌PENNY LANE24
7月18日(木)滋賀B-FLAT
7月20日(土)松山サロンキティ
7月21日(日)岡山CRAZYMAMA KINGDOM
7月26日(金)名古屋ボトムライン
7月28日(日)大阪BIG CAT ~Nao生誕祭2019~

●BEST OF A9 TOUR「ALIVERSARY」FINAL A9 15TH ANNIVERSARY
8月10日(土)日比谷野外大音楽堂