A9 come back スペシャル

A9 come back スペシャル パーソナルインタビュー 虎

A9パーソナルインタビュー第3弾は、ギターの虎。将(Vo)曰くロマンチストだという彼だが、様々な角度から話を聞いていくと、バンドが置かれている状況を客観視し、現実をしっかりと受け止めるリアリストの一面を垣間見ることができた。A9がより大きく飛躍するため、常に新たな物事に挑みながら、着実に前進し続ける虎の姿があった。さらに、第2弾で話題に上ったあの件について尋ねると、新事実が明らかに(!?)。

◆進化した状態で出てこられた

――前回の虎さんが欠席したA9のインタビューの際、欠席裁判のようになっていて(笑)。

虎:すみませんでした!

――いえいえ(笑)。将さん曰く、虎さんは「見た目はイカツイけど内面は優しいロマンチスト」と。

虎:どうでしょうね、自分ではわからないです(笑)。でも、現実派ですよ。

――3年目の渋公の頃には、口角を固定したスマイルを身に付けていたという情報も(笑)。

虎:あはは(笑)。みんなが楽しんでくれたらいいなと思っているので、自分が楽しんでいる姿を見せたほうがいいのかなと思うんですよね。イメージとして、ディ●ニーランドに行ってムスッとした人(キャスト)がいたら嫌じゃないですか。それと同じことだと思うんですよ。

――それは、とても納得です。

虎:割とみんな表情を見ているんですよね。ジャン●ルクルーズのお兄さんを目指しています。実際、客席を見ながら弾くのって結構難しいんですよ。特別そのための練習をしているわけじゃないし。でも、無理して笑っているわけじゃなくて、楽しんでいるんです。楽しみ過ぎて演奏を忘れる時がありますね。あ、ヤバい、みたいな(笑)。

――(笑)。メールインタビューによると、『銀河ノヲト』は基本自宅でのレコーディングだったということですが、これは今作に限ったことでしょうか。

虎:ここ1年~2年くらい前から割と自宅録りですね。

――何かきっかけがあったんですか?

虎:特にないですね。最近は機材も進化していて、家でもスタジオでもあんまり変わらないので、だったら家で落ち着いてやったほうがやりやすいなと。すごく時間を掛けられるし、早く終わらせなきゃというストレスもないので。家だと無限にできるというのが一番ですかね。

――逆に、なかなか終われないという部分もありますけど。

虎:それなんですよね。いつ終わっていいかわからないっていう。でも、終わりよりも始めるタイミングのほうが難しいですね(笑)。時間が決まっていないだけに、あぁ、やらなきゃなぁと思いながら。始めたら謎の集中力を発揮するんですけど、なかなか始められないんですよ。

――今作の中で、自宅レコーディングの良さが特に出たなという部分はありますか?

虎:フレーズはこだわれたと思いますね。細かい部分も自分の好きなようにできました。

――さて、ファンの方々はA9の中で唯一SNSをやっていない虎さんの声が気になっているところだと思います。8月23日のライブについて、率直な感想を教えてください。

虎:白かったですね。

――確かに(笑)。

虎:1年ぶりだったので、体力的な問題で20曲も演奏できるのかよって感じだったんですけど、自転車みたいなもので、意外と体が覚えているものだなと思いました。練習量も多かったんですけどね。でも、無事に帰ってこられて良かったなと思いました。それと、1年間、表立っては活動が止まって見えていましたけど、個々の活動もやっていたり、週一でメンバーと会ったり、スタジオに入ったりしていたので、劣化した状態じゃなくて、進化した状態で1年ぶりに出てこられたのがよかったですね。

――オープニングの「PRAY」の後、幕が下り、フロアが見えた瞬間はどんな感覚でしたか?

虎:おぉ、人がいっぱいいるなと。みんな、待っていてくれて良かったなと思いました。

――このライブで、完全復活を遂げた実感はありましたか?

虎:正直、ツアーを回ってみないとわからないですね。今回はアジアツアーもあるので、それも全部終わってから、どうだったのかなと考えたいなと思います。

――新曲たちを初めて披露してみた感触はいかがでしたか?

虎:ムズいな、という感じですね。

――進化しているだけあって。

虎:ですねぇ。曲を作る上で時間があると、フレーズも細かくなっていくので、ライブではひたすら難しかったですね。

――このライブではソロセクションがポイントの一つでしたが、やってみていかがでしたか?

虎:ソロセクションを入れたいという話が沙我くんからあって、結構ギリギリまで何も決まっていなかったんです。俺のソロはできたのがライブの二日前ですよ。でも、これだけじゃつまんないなと思って、バックに映す映像も自分で作ったんです。将くんのDJセクションの映像を俺が作ることになっていて、ついでに自分のも作っちゃったみたいな。

――毛筆体で背景一面に大きく「虎」と出たのは、インパクトがあってかっこよかったです。

虎:こういうほうが自分っぽいかなと思って、あんまりオシャレにしないほうがいいかなと(笑)。

――この日、最もグッと来た瞬間、心に残っている場面を教えてください。

虎:ラストの「すべてへ」でみんなが歌っていたところですね。後ろに歌詞を出していたのもあるんですけど、みんな歌っていて、その光景は今までになかったので、いいなと思いました。逆に1曲目の「Phoenix」とかは、どう見えていたのかなと疑問だったりしますね。レコーディングしたのはだいぶ前だし、YouTubeで公開(2015年3月)してから結構経つんですけど、ライブでやるのは初めてで。でも、あんまり初披露という実感はなかったんです。セットリストに組み込まれると、不思議とずっとやっていたような感覚になるんですよね。

――「Phoenix」はA9の新しいサウンド感と勢いがあって、あのライブの1曲目としてすごくふさわしい曲だなと思いました。では、プレイしていて最も気持ちよかったなという瞬間は?

虎:そうだなぁ…「Scarlet」とか気持ちいいんですよね。新曲はまだ気持ちよくなれないですね。体が慣れないと。

――もう少し回数を重ねてというところですね。

◆ちゃんとやってんだぞ

――ツアーがスタートして2公演終えたところですが、いかがでしたか?

虎:良かったですね。熱かった。ファンも自分たちも、みんな思ったよりも元気だなと。新しい人もチラホラいたような気がするんですよね。

――わかるものなんですね。

虎:狭い会場だとわかりますね。特に男の子が増えている印象がありました。どの位置にいても、ヴォーカルをずっと見ている人というのは、大体新しい人なんですよ。端にいてもヴォーカルを見ている。他のメンバーのことを特に知らなければ、歌を聴きに来ているわけだから、ヴォーカルを見るのは当たり前だと思うんですよ。

――ツアーが始まり、虎さんが監督デビューされたようですが(※ライブ会場での様子を撮影、編集したものをYouTube上に公開)、どのような経緯で虎さんが作ることになったんですか?

虎:久しぶりのツアーで、やっているということをみんなに教えないと、と思って。インナーに見られるのが嫌いというか、何でもかんでも外に向けて発信したいタイプなんです。出せるところには出したいなと。ちゃんとやってんだぞって。

――存在をアピールすると。

虎:うちらとしてはドドンッと「復活しました!」って言っているつもりでも、世の中的にはヌルっと始まっていると思うんですよね。それって、やっている側の勘違いみたいなものもあって、大して知らない人にとっては、すごく中途半端に思われていると思うんです。何のために休んでいたのかもわかっていないだろうし、こういうインタビューを読んでくれる人というのは、明らかなファンの人たちがほとんどなので、もっと取っ付きやすい形で、映像とかだったらパッと見てみようかなと思ってもらえるんじゃないかなと。今、もったいぶらないのが一番良いことだと思うんですよ。この映像もファンクラブ限定とかにしちゃうと、また同じようなことになるわけで。わかりやすい形で出せたらなと思いますね。

――映像関係のことは、以前からやっていたんですか?

虎:全然やっていないです。この1年の間にソフトを覚えました。何でも自分たちでやりたいというのが元々あって。あんまり人に頼りたくないタイプなんです。自分が興味のないことは、人に頼って、好きにやってくださいと。興味のあることは自分でやりたくて、人に任せるとストレスに感じるんです。

――音楽と一緒で、映像もこだわりだすと終わりが見えないですよね。

虎:こだわりだすと、結局お金が掛かるんですよ。難しいんですけど、ある程度までは自分でやりたいです。

――ちなみに、虎さんがSNSをやらない理由というのは?

虎:特にないんですけど、実はこの記事が公開される頃には、インスタを始めています!

――そうなんですね!

虎:今までやらなかった理由が、基本的に普段何をしているか知られたくないんです。周りの人を見ていると、現実的過ぎて。

――距離感が近くなり過ぎるというのはありますね。

虎:ですよね。みんな、飯ばっかり上げるじゃないですか(笑)。意味わかんないと思って。実際、俺の私生活なんてだらしないほうなので、例えば食べ物一つあげるにしても、9割コンビニ弁当になりますから(笑)。そういうのもあって、向いてないかなと。でも、インスタはできる気がしています。

――そういえば沙我さんのインタビューで、A9の楽屋がすごく汚いというお話が出て、その要因は虎さんとNaoさんと言っていたんです。

虎:いや、俺じゃないよね?

マネージャー:沙我さんも犯人の一人ですね(笑)。

虎:逆に俺以外なんですよ。

――あら? 話が違ってきました(笑)。

虎:だって俺、基本的に荷物がないんです。

マネージャー:缶コーヒーとか飲み物を置くのは、虎さんです。

虎:確かに。

マネージャー:食べ物を食べかけて置くのは、沙我さんです。で、よくわからない物を広げるのは、Naoさんです。

――(笑)。

虎:現場に来て、まずみんな机の上でカバンを広げて、そのまま放置するんですよ。謎にみんな床にカバンを置きたくないっていう。カバンを持たない俺にはわからないんですけど。みんなバババッと物を置いて机が埋まっていくので、それが汚く見えるんでしょうね。大きい机にカバンを置くから、みんな端っこで弁当を食べ出して、それをまたそのまま放置するんですよ。で、全部が埋まっていくという。さらに衣装が来て、物だらけになると。実際、そんなに汚いわけじゃないんですよ。

――物で埋まっているだけだと。

虎:うん、そうだと思います。

――この問題については、ヒロトさんと将さんにも伺いたいと思います(笑)。では最後に、今後のA9、どのようなバンドを目指したいですか?

虎:何でもできるバンドがいいと思います。自分の持ち味をもっと増やす、そういうバンドになれたらいいなと。正直、ギタリストがギターだけ弾けるのは、時代的に古いんですよ。色々できないといけないのかなと思います。

――独立して、必然的にやらなければいけないことも増えたと思うので、この1年で特に強く感じたということでしょうか。

虎:バンドをやっていく上で付随していくものが多いんですけど、意外と技術があれば解決できたりするんですよね。それを今まで人に頼り過ぎていて、そうするとバンドの方向性までチグハグになっていく気がして。何でも自分たちでできれば、自分たちの好きなような形が作れるんじゃないかなと思います。

――今後のA9、どんどん新しいものが生まれそうですね。

虎:そうですね。もしかしたらNaoさんが曲を作れるようになるかもしれないし。いや、ないかな(笑)。

(文・金多賀歩美)