A9

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最新版のA9が投影されたフルアルバム『IDEAL』が完成!
続いていく世界の中で、理想を描きながら現実を生きる――。

A9が前作『Supernova』から約3年ぶりとなるフルアルバム『IDEAL』をリリースする。2014年の10周年を機に独立し、1年の休止期間を経て2015年8月に完全復活を遂げてから初のフルアルバムとなる今作は、自身の過去の楽曲と向き合った上で、現在の思いや技術をもって自らをアップデートする形で制作された渾身の作品。3月9日に行われた『IDEAL』世界最速解禁解説公演での話を元に、色とりどりの新曲たちについて語ってもらった、A9のリズム隊、沙我(B)とNao(Dr)によるロングインタビュー。

将

◆今考えたら、すーごいレアでしたね(沙我)

――3月9日に『IDEAL』世界最速解禁解説公演が行われましたが、未完成の音源を披露するという前代未聞の公演になりました。まだヴォーカルが入っていないものばかりでしたが、本来はあの日に間に合わせる予定だったんですか?

沙我:完成したほうがいいなというイメージはありましたけど、スケジュール的に大分ギリギリになってしまいましたね。結果的に…半分デモみたいな形になってしまいました(笑)。今考えたら、すーごいレアでしたね。あの音も本番の5分前にやっと届いたんですよ。

Nao:あれが…生放送(ニコニコ生放送で生中継)されたんでしょ(笑)?

沙我:そうだ、ずっと残る(笑)。

Nao:世の中に保存されているんでしょ(笑)?

沙我:YouTubeとかに上げられて、「ウケる」とか言われて(笑)。

――(笑)。1部はデザイナーの平井俊行さん、2部はエンジニアの采原史明さんを迎えたトークセッションもありましたが、平井さんが沙我さんの衣装はいつもどう肌を露出させるかを考えていると。

沙我:「露出できなくてすみません」って、いつも謝られるんですよ(笑)。バンド一人ひとりのイメージを、ちゃんと考えてくれているんですよね。いいものが毎回できてくるので、最近は衣装が楽しみですね。

――お二人はヴィジュアル面でのこだわりはありますか?

Nao:ドラムの叩きやすさを必須にして作ってもらっているので、僕だけ伸縮性のある素材だったりします。ステージに出てきて、叩く前に服を脱がなきゃいけないのが嫌なので。着たままちゃんと叩ける衣装というのは考えていますね。メイクは正直…あんまり気にしてないかも。

沙我:こだわってると思うけどね。気にしてない人だったら「ん? 塗っておいてー」って感じじゃない?

Nao:あ、カラコンをしないっていうのがこだわりですね。昔はしていて、それはそれでカッコいいんですけど、自分の良さを出そうとするとカラコンじゃないかもなと思ってから、ありのままでいいやと。ヒロト君もしてないんですけど。してないってことを、皆さんに知ってほしいっすね。ナチュラル思考です。

沙我:確かにねぇ。Nao、ヒロトは本当の自分の姿を見てほしいっていう感じだと思うので。逆に普段は壁があるんですよ(笑)。実はNaoを演じている、ライブでこそ解き放たれたい、みたいな。

――沙我さんは最近、左目が隠れていますが(笑)。

沙我:去年の夏に原点回帰のライブをして、そこで約10年ぶりに眼帯をしたんですよね。個人的にもやっぱり初心に帰るなぁという気持ちがすごくあって。眼帯をした自分の顔を鏡で見て、懐かしいなぁ、みたいな。その頃の自分のフレッシュさが戻ってきた感じがしたので、気づいたら続いていますね。まだ似合うんだなぁと思いました。

――本当にお似合いです。

沙我:特に続けようと思っているわけじゃないんですけど、平井さんがいっぱい作ってくれるので、これは着けないわけにいかないなと(笑)。

――実際、いくつあるんですか?

沙我:今…6個くらいありますね(笑)。

ヒロト

◆展開が面白い曲というのは世の中に少ないと思うので、すごく叩き甲斐がある(Nao)

――さて、世界最速解禁解説公演でのお話を元に、『IDEAL』に関して伺っていきたいと思います。今作は過去の曲たちのアップデート版というのが大きなテーマのようですが、各楽曲に対になる過去曲が存在すると思っていいのでしょうか?

沙我:ほとんどがありますね。

――最初からこのコンプセトで制作に臨んだんですか?

沙我:そうですね。いつもアルバムを作る時は、それぞれ好きに作った曲を持ち寄って、そこから選んでいくんですけど、今回は曲数も曲のテイストも作曲者も全部決め込んで作りました。それぞれが得意なものを作ってもらおうと思って、虎は「荊棘」と「ONE」、ヒロトは「造花の代償」と「輪廻と一夜の物語」、僕は「IDEA」と「MEMENTO」、あと「Adam」は将との共作ですね。将は「UNDEAD PARTY」と「ECHO」、「Adam」の原曲です。

――「IDEA」は「GEMINI」(2011年発売のアルバム『GEMINI』収録)的な壮大感と言っていましたが、対になる曲というと「GEMINI」になるのでしょうか?

沙我:今思うとそうかもしれないですね。曲の長さは「GEMINI」の1/3くらいしかないんですけど、展開の多さだったり、自分の手癖やテイストは「GEMINI」に近いのかなと、作り終えてから思いました。作っている最中は特に過去の曲を考えずに、世界観重視でアルバムのオープニングとして世界に引き込むための曲という意識で作ったんですけど。

――展開の仕方、構成がとても沙我さんらしいなと。イントロからAメロ、Bメロ、サビ、アウトロと、各セクションで別の曲のようにテイストが異なるにも関わらず、1曲にまとまっているというのがすごいなと思って。

沙我:確かに全部違いますね。どうしてもこうしたいという絵が頭の中にあって、それが多分、僕らしさというか個性なのかなと。素直にそれに従って作った結果、こういう曲になったんだと思います。

――『銀河ノヲト』の時にヒロトさんが組曲をやりたいと言っていて、リード曲「Spiegel」はメンバーのリレー形式で作曲した、ある種の組曲だったということや、その頃に沙我さんがジャンルレスな感じ、よくわからない曲を作りたかったということも言っていたので、そういう流れも反映された結果でしょうか?

沙我:作る上での気持ちもジャンルレスな気分で作っているので、どうしてもそういう感じにはなっちゃいますね。その分、すごく悩んだり、止まっちゃう時があるんですよね。頭の中では浮かんでいるんですけど、手が追いつかないというのが結構あって…。

――これだけ色々な要素が盛り込まれている曲だと、デモの制作段階で直したくなった場合、1から組み直さなくてはいけなそうですね。

沙我:そうですね。だから本当に頭の中で固まるまでは、実際には音を入れないですね。横になっている時や風呂の中で、ひたすら「本当にこれでいいのか」と頭の中で描いて、「絶対にこれしかない」と決まってから作業をします。

――なるほど。Naoさんは、こういう楽曲というのはドラマーとしていかがですか?

Nao:展開が面白い曲というのは世の中に少ないと思うので、すごく叩き甲斐があるし、勉強になりますね。展開がある分、ちゃんと流れを把握していないと、ビシッとしたドラムが叩けないという曲です。

沙我:イントロはタムで刻んでるんですけど、あれは最初、周りに「地味じゃね?」って言われて悔しくて、いかに地味に聴こえさせないかというところでアレンジしていって、タムで刻むのを押し切ったんですけど、結果的には「おー!」というものになったと思います。そこが苦労しましたね。作曲する時ってドラムがかなり大事で。ライブでも歌とドラムの関係性は一番大事だと思います。

Nao:大変なんですよ(笑)。

――2月に発売された先行シングル「MEMENTO」は、既にライブのアンセムになりつつありますが、冒頭の〈Up to U!〉(訳:お前次第だ!)という言葉が、Naoさんの中で「ジャスティス!」に続く流行語になっているのかなと(笑)。

沙我、Nao:(笑)

Nao:すごくいい言葉だなと思って。これを使ってるの、カッコよくないすか?

沙我:使ってる人いないもん。

Nao:出だしからいい言葉で、意味を知って感動しましたね。

――この曲はやっぱり頭のドラムでアガりますね。

沙我:今のところ、あそこでスティックを落としたりしていないので良かったです。

Nao:カツッて言わないようにしないと。あそこは毎回ビシッと決めて〈Up to U!〉に繋げますよ。

――続く「造花の代償」は通称「ヒロトシャッフル」とのことで。「ハイカラなる輪舞曲」(2005年発売のミニアルバム『ALICE IN WONDEЯLAND』収録)の曲調を継承したものが欲しくて、沙我さんがヒロトさんに「作れるでしょ?」と振ったそうですね。

沙我:ヒロトさんがluz君という歌い手のサポートをしているんですけど、luz君の曲がシャッフル調のものが結構多いので、きっと体に染み込んでいるはずだと思って頼みました。

Nao:そしたら、ギターが跳ねてないっていう(笑)。

沙我:ビックリしましたね(笑)。でも、しっくりきました。こういう感じを待っていたなと。

虎

――ベースの見せ場もありますし、ヒロトさんが「ハイカラなる輪舞曲」は沙我さんのベース舐めがあるから、「造花の代償」でもしてほしいと言っていましたが(笑)。

沙我:この曲は多分、日替わりでメンバーが一輪の花を投げますよ。

――Naoさんは「なんでこんなに速いの?」と言っていましたが、レコーディングとライブでは体感、大変さの違いはありますか?

Nao:レコーディングはやっぱり勢いでは行きづらいんですけど、しっかり雰囲気を出すためにも跳ねたように叩かなきゃいけないというのが苦労しました。けど、ライブはライブで跳ねてますよ。すーごい難しいんですけど、すーごいカッコいい曲なので、好きです。

――そういえば、Naoさんは可愛いキャラでいきたいのに、難易度の高いプレイを求められるから顔が険しくなると言っていましたが、今作も難易度が高そうですね…。

沙我:可愛く叩けないですよ。

Nao:そうね…メイクの時点で眉毛を下げとくか(笑)。

――(笑)。そして「UNDEAD PARTY」は「RED CARPET GOING ON」(2006年発売のシングル『九龍』c/w)に続くパーティーソングということで、これも対になる曲ということでいいのでしょうか?

沙我:対の曲にしたいですねぇ。やっぱりライブでNaoさんが難しい顔で叩くばかりじゃなくて、祭りになるような曲にしたいなというね(笑)。これはそんなに難しくないでしょ?

Nao:そんなに難しくない。だから…打ち込むか(笑)。

沙我:真ん中でパーティーピーポーになるセクションがあるので、そこでね。

Nao:そこで俺が何かできるんじゃないかという話が出ていて。だからドラムを放棄していいのかな、みたいな(笑)。

沙我:あそこで楽器弾いているのは俺しかいないから、みんなでパリピになっていいんじゃないかっていう。俺も弾かなくてもいいと思う。

Nao:ベース弾いている瞬間から俺も叩いてるけどね。

沙我:あ、叩いてるわ(笑)。じゃあ、やめようか(笑)。

――どうなるのか、ライブが楽しみですね(笑)。

沙我:やっぱりパーティーしたいですもんね。

Nao:せっかくならね。

沙我:ライブアレンジを楽しみにしていてほしいです。

――エグいベースも必聴ですしね。

Nao:エグいっすねぇ。

沙我:ここまでちゃんとスラップしたのは初めてでしたね。

――「RED CARPET GOING ON」と比較すると、やっぱり“今”感のあるサウンドですよね。

沙我:そうですね。将くんが今っぽさを結構大事にしているみたいで。