A9

沙我

◆一個一個の楽器が確立しているのがヴィジュアルシーンとして大事だと思う(沙我)

――続く将さん曲「ECHO」はサビの女性コーラスが特に印象的です。

沙我:原曲にはなかったんですけど、アレンジしていく中でサビのキーがかなり高くなることに気づいて、これはさすがに地声で歌えないなと。で、逆に女性コーラスにしちゃおうとアイディアを出して、ヒロトの知り合いの歌手AISHAに歌ってもらったら、めちゃめちゃいい感じになりました。

――コーラスによって、ドラマティックさと切なさが増しますね。あと、この曲は虎さんのアコギにも注目ということで。

沙我、Nao:(笑)

Nao:楽しみです(笑)。

――「超緊張する」「見るんじゃねーよ」と言っていましたが(笑)。

沙我:大丈夫、笑顔でやってくれますよ(笑)。ぜひ手元を見てやってください。

――お二人は、演奏的に緊張するのはどんな時ですか?

沙我:あんまりないですけど、例えばツアー中に前のライブでトラブっていたセクションは、次は上手くやらなきゃという緊張感はありますね。

Nao:緊張はもう何年もしていないですね。昔は上手く見せようとしたり、自分の技量が足りなくて背伸びしようとしていたのが緊張に繋がっていたんですけど、今はありのままの自分でプレイしているので。

――なるほど。「荊棘」は先日の公演でNaoさんが息切れをしていた楽曲です。

Nao:速いから、ちょっと遅れると戻れないんですよ。これは顔がめっちゃ真剣ですね(笑)。しっかり叩かないと崩れちゃうので、真剣でしかないです。

――沙我さんが「テンポを下げようか聞いたけど、大丈夫って言うから」と言っていましたが(笑)。

Nao:でも元のものからは下げてくれて。元が本当に速くてどうしようっていう感じだったんですよ。それを現実的なところまで下げてアレンジをして。まぁでも、ドラムだけじゃなく単純に曲としてというところだったので、ドラムはこれだったらいけるよというところで落ち着いてくれてよかったです。

――沙我さんから「ダウンチューニングでこういう輪郭がハッキリしているMIXは日本人のエンジニアには珍しい」というお話もありましたが、A9は采原さんへの絶大な信頼感がありますよね。

沙我:采原さんは日々進化しているんですよね。スタジオに行くたびに機材も変わっていて、向上心がすごくて、世代も近くて同じ目線で話ができるのがすごく良いです。何を求めているかという感覚も伝わるんですよね。一個一個の楽器が確立しているのがヴィジュアルシーンとして大事だと思うので、すごくそれをわかってくれているのかなと思いますね。

――機材を増やすためにカップ麺ばかり食べているそうで(笑)。

Nao:俺たちみたいですよね。好きな物のために節約するっていう。

――Naoさんもおにぎりを作って現場に持参していますもんね。

Nao:そうですよ! 今日なんか節約で何も食べてないですよ(笑)。

沙我:俺も(笑)。

――食べてください(笑)。そして「輪廻と一夜の物語」は、ヒロトさんが「壮大なものをやりたかった」と言っていましたね。

沙我:この曲は半年前にオファーしていたんですけど、やっと上がってきました(笑)。夏くらいにアルバムの話をしていて、こういう曲を作ってくれというのを振り分けて、ヒロトさんが1曲深い曲を作らなきゃいけなかったんですけど、ようやく2月の終わりに上がってきましたね(笑)。仮タイトルが「輪廻」だったので、何があったんだろうと思って。意外と王道のバラードで良かったですね。

――この曲のイントロは、ヒロトさんが目を瞑って恍惚の表情で弾いている姿が想像できます。

沙我:確かに。デモだと普通のテンポだったんですけど、本チャンだとテンポが落ちて、よりゆっくり弾いていたので、「聴けー」っていう感じなんだろうなと。

――Naoさんは、この曲はニュアンスがすごく難しかったそうですね。

Nao:そうなんですよ! 最近、ドラムのRECは「やっといて」って丸投げされるんですけど(笑)、ヒロト君のデモのドラムは打ち込みなので、どう表現したいんだろうって悩むんですよ。色々試しつつ、ヒロト君は電話に出なくてわからないし、ヤバい、もう俺はこれがいいと思うというもので録るしかない、みたいな。バラードはやっぱり難しいですね。ちょっと弱く叩いたほうがいいのか、そのままいっちゃっていいのか、人によって結構判断が違うし。

沙我:ドラマーがこの性格でよかったなと思いますね。

Nao:この性格じゃなきゃ無理だよね(笑)!

沙我:ドラマーが虎とかヒロトみたいな性格だったら、ヤバいバンドだったなと思いますね。成り立ってないと思う。

――Naoさんが録る時は、他にどなたがいるんですか?

Nao:誰もいません! 孤独(笑)。一人でマイクを立てて、叩いてレベルとって、「はい、いきまーす」「はい、終わりまーす」っていう。だからこそ、デモのアレンジでちゃんと話して理解して叩くというのが大事で。ちゃんと確認して流れを掴んで録らなきゃいけないので、結構大変なんですよ。

――最近のA9のメインスタジオはどういうところなんですか?

沙我:基本的に各々の自宅で録ってますね。Naoスタジオでも録れるっぽいんですけど、やらせてくれないんですよ。

Nao:俺が稼働すると、俺が叩けないから! 時間ないんだから(笑)!

沙我:采原さんが、ドラムの音はそこらのスタジオで録るよりいいって褒めてました。

Nao:機材とプレイ、自分のスタジオだからこそ時間をかけてこだわってできるので、すごくいいなと思っています。

――「Adam」は「九龍」のアップデート版ということで。

沙我:イントロとか本当に「九龍」を意識して作りましたね。結果的にリード曲になっていますけど、最初はそんなつもりはなくて、時間的にギリギリでヤバいという状況の時に、将君が持っていたデモを曲にしたんです。一度バラバラに解体して作り直したんですけど、作っている途中から、めちゃめちゃノリやすいしA9らしいなという風に変わってきて、ひょっとしてこれリードになるんじゃないかなと。

――タイトルだけ見たら、「IDEA」がリードなのかなと思いますよね。

沙我:最初は「IDEA」をリードにしようかと話していたんですけど、作っている段階で、これは世界観が濃すぎて、あんまりリードっていう感じじゃないなと思ってきて。かと言って、この感じを崩してリードっぽくすると、逆によくわからない曲になっちゃうなと。結果、「Adam」に落ち着いてよかったです。

――確かに、復活後のA9の王道というか、最新のA9の名刺代わりになる曲だなという印象を受けました。でも、これは本当にドラムのカウントまでは「九龍」なのか「Adam」なのかわからないですよね。

沙我、Nao:わからない(笑)。

――そして虎さんが作った「ONE」がラストです。これは「春夏秋冬」(ミニアルバム『ALICE IN WONDEЯLAND』収録)のような、メロコアっぽい曲をと言われて作ったということでしたね。

沙我:虎曲の作風は、こういうピュアな曲か、めちゃめちゃ激しい曲がどっちかで、A9ではこういう曲は虎にしか作れないんですよ。思い描いていた通りの、ライブでの画が浮かぶようないい曲になったなと思います。

Nao

◆孤独な戦いのドラマが集まってできている(Nao)

――以前、Naoさんが鰻を食べてから臨んだらサクッと叩けたというエピソードがありましたが、今回はそういう出来事はありましたか?

Nao:今回はインストアイベントと同時進行だったので、食べる暇がなかったです(笑)。

――では今回のレコーディングで印象的な出来事は?

Nao:孤独だった印象しかない(笑)。

沙我:昔みたいにレコスタに集まって録っていくのではなくて、各々自宅で録った音を持ち寄ってという感じなので、それぞれの家できっと何かがあったんでしょう(笑)。

Nao:孤独な戦いのドラマが集まってできている、みたいなね。皆、どういう感じで録ってるのかな?

沙我:俺、何も考えずにテレビを見ながら超ラフにやってる(笑)。

Nao:何それ!? マジかよー(笑)! リビングでやってるってこと?

沙我:そう、コーヒー飲みながら。すごくね? ノートPCを持ってきて、1日かけてやっています。すごく自由にやれるので、やっぱり上手く録れますね。

Nao:楽っすね(笑)。

沙我:前は、スタジオでエンジニアさんとレコード会社の人たちが見ている中で、いかに早く終わらせるかという時間との勝負だったので、なかなか落ち着いてプレイできなかったですけど、今は良いプレイができますよ。

――ドラムはそんなに楽にできないですもんね。

Nao:できないっすね。音が入っちゃうので、エアコンも切るし。無心でやってましたね。辛かったー。

――お二人といえば、昨年から始まった「ALTERNATIVE」(※沙我とNaoの二人だけによる公演)もありますよね。

Nao:お!

沙我:今年はまだやってないですねぇ。

――バンド結成時にNaoさんが「最強のリズム隊を目指そう」と言ったというお話が印象的でした。

沙我:個性が強いリズム隊にはなったと思いますね。視覚的にもキャラ的にも(笑)。

Nao:「ALTERNATIVE」は、またいつかやるでしょう。

沙我:また観たいってよく言われるんですよね。

――ベーシストとドラマーだけの公演というのは、なかなかないですからね。一体何をやるんだろうというところから始まりますよね。

沙我:ですよね。不思議と、観た人はめちゃめちゃ満足な顔をして帰ってくれるんですよ。「めっちゃ良かった! また観たい!」って皆言ってくれるので、我ながらすごいなと思いますよね。

Nao:…チケット代、上げないとな(笑)。

――沙我さんは歌も歌えちゃうんだなぁと。

沙我:二人だけなので、ただドラムとベースをやっていればいいっていうわけじゃないんですよね。

Nao:普通だとそういう考えから抜けられなくて、できないと思うんですよ。だけど、二人でできることを何でも全部やろうみたいな。そういう楽しさがあるのかな。

――トークの内容もすごく濃厚でしたし。

Nao:世間話っぽいけどね(笑)。

――「へー」と思う情報が満載で。沙我さんが昔ベースを大切にしていなくて、ソフトケースで持ち歩いていたとか(笑)。

沙我:チューニングをペンチでやっていたとか(笑)。

――それと、以前のインタビューで沙我さんが自炊にハマっていて、魚料理を月に1回くらいチャレンジしたいと話していましたが、その後いかがですか?

沙我:いやぁ、やってないですね。自宅近くに美味い定食屋さんがあって、結果そこでいいじゃんと。魚料理は匂いがね…。調理も掃除も大変なので。

――Naoさんは海外の土地で森林を育てて、オリジナルドラムを作りたいという壮大な夢がありましたが。

Nao:実は某有名ドラマーの方が、それでドラムメーカーを作ったんですよ。やっぱりできるんだなと思って。俺はまだ頑張らないと難しいですね…。

――「私の土地をどうぞ」という方は現れないですか。

Nao:まだいないですね。日本でもいいですよ(笑)。

――(笑)。さて、ツアーが4月12日の新宿ReNYを皮切りにスタートし、ファイナルは5月7日Zepp DiverCityです。

Nao:難しいことを考えずに楽しめるノレる、フレッシュさを兼ね備えたような楽しいライブにしようと思うので、ぜひ遊びに来てください! いい思い出作ろうぜ。

沙我:僕らのことを最近対バンで知ったという人もいると思いますが、ちょっと気になるなという人が初めて来ても、何も考えずに楽しくなれるようなツアーになると思うし、ずっと来てくれている人も、A9に付いて来て良かったと思えるようなライブになると思います。13年目という活動の重みと、原点回帰して新たな1年目を迎えている、そのスタートとしてのツアーにしたいので、良かったら遊びに来てくれたらなと思います。

(文・金多賀歩美)


ARTIST PROFILE

A9

<プロフィール>

将(Vo)、ヒロト(G)、虎(G)、沙我(B)、Nao(Dr)により2004年結成。メロディセンスが光る楽曲が注目を浴び、結成直後よりシーンで注目を集めセールス、ライブ動員ともに拡大。2011年には初の日本武道館公演を成功に収める。2014年の10周年YEARにはアルバム『Supernova』を発表し、初のアジアツアーを含む全34公演を展開。同年8月、富士急ハイランドコニファーフォレスト公演をもって独立。2015年8月、EP『銀河ノヲト』を引っさげた11周年記念ライブで、1年ぶりに完全復活を遂げた。2016年4月、2nd EP『LIGHT AND DARKNESS』を発表し、8月には新木場STUDIO COASTにて12周年ライブを開催。2017年4月にフルアルバム『IDEAL』をリリースし、全国ツアーを行うことが決定している。

■オフィシャルサイト
http://a9-project.com

【リリース情報】

『IDEAL』
2017年4月12日(水)発売
(NINE HEADS RECORDS)

IDEAL
[初回限定豪華盤]
豪華ブックレット仕様
(CD)
NINE-0007
¥3,300+税
amazon.co.jpで買う
IDEAL
[通常盤]
(CD)
NINE-0008
¥3,000+税
amazon.co.jpで買う

【収録曲(※共通)】

01. REAL-Instrumental-
02. IDEA
03. MEMENTO
04. 造花の代償
05. UNDEAD PARTY
06. ECHO
07. 荊棘
08. 輪廻と一夜の物語
09. Adam
10. ONE

<封入特典『IDEAL CARD』>
初回限定豪華盤に下記をランダムに封入予定。

「IDEAL PREMIUM LIVE GOLDEN TICKET」
6月10日(土)東京都内で実施する『IDEAL PREMIUM LIVE』にご招待。
(ご入場時別途ドリンク代が必要となります)
※実施場所・時間・その他注意事項は、チケットに記載。

「IDEAL 2 SHOT SILVER TICKET」
ご希望のメンバーと2ショット撮影会にご招待。
6月11日(日)東京都内
※お客様のカメラでの撮影となります。
※実施場所・時間・その他注意事項は、チケットに記載。

「MEMBER MESSAGE CARD」
全5種類
『IDEAL CARD サイン会キャンペーン』をA9 2017 TOUR【IDEAL HORIZON】各会場、終演後に開催。「MEMBER MESSAGE CARD」をご提示でライブ終演後に行われるサイン会に1枚1回、表面のメンバーのサイン会に参加できます。
※キャンペーン概要、注意事項は、MESSAGE CARD裏面に記載。

【ライブ情報】

●A9 2017年ツアー「IDEAL HORIZON」
4月12日(水)新宿ReNY
4月14日(金)福岡DRUM Be1
4月16日(日)熊本B.9 V1
4月18日(火)岡山IMAGE
4月19日(水)京都MUSE
4月21日(金)名古屋E.L.L.
4月23日(日)金沢AZ
4月24日(月)新潟NEXS
4月28日(金)仙台darwi
4月30日(日)札幌KRAPS HALL
5月4日(木・祝)Zepp Osaka Bayside
5月7日(日)Zepp DiverCity(TOKYO)

●A9×少女-ロリヰタ-23区 2MAN TOUR「九二十三-NINE TWO THREE-」
6月24日(土)郡山HipShot -沙我Birthday-
7月5日(水)大阪 BIGCAT -将Birthday-
7月6日(木)岡山CRAZY MAMA KINGDOM -リョヲ丞Birthday-
7月9日(日)名古屋ReNY
7月16日(日)新宿BLAZE ※TOUR FINAL