インタビュー #1
初の全国流通シングル『STORY』をリリースするK。ソロ活動開始から1年、最新作と共に幕を開けるKの新たなストーリー。
BORNのギタリストからソロのギターヴォーカルへと転身し、着実に前進を続けるK。6月に今年初となるワンマンライブPS COMPANY PRESENTS K ONEMAN LIVE 『Liberated from pain』を成功させ、8月30日には待望の全国流通シングル『STORY』をリリースする。作品に詰め込まれた“Kらしさ”が溢れる新曲たちにぜひ注目していただきたい。昨年8月19日に行われた新宿ReNYでの1stライブから1年、活動の第二章がいよいよスタートする今回は、Kのインタビューを#1、#2の二本立てでお届けする。
◆今年は2年生としてもっと何かを作っていけたら
――先日行われた今年初のワンマンライブ(PS COMPANY PRESENTS K ONEMAN LIVE 『Liberated from pain』)、振り返っていかがですか?
K:やっぱりワンマンは楽しいですね。去年は“攻める”という意味を込めて、始動からワンマンを3連発でやったりしたんですけど、それによって一瞬ワンマンに慣れを感じたりもしたんです。まぁ、「3本で慣れ!?」という話ですけどね(笑)。そうやってライブを重ねていくうちに、2017年はどんどん外にも出たい、勝負したいという気持ちが出て来て、今年は色々な対バン形式でのイベントを行ってきました。それを経て開催したのがワンマンライブ『Liberated from pain』だったんです。
――対バンイベントを経てのワンマンライブは格別だったのでは?
K:そうですね。自分のファンが温かく見守ってくれたことが何より嬉しかったです。最近はイベントにも慣れてきたとは言え、会場の後ろのほうで自分の音楽に対して目が死んでいる子たちを見るとどうしても、「あの子たちにどれだけ刺さるだろう」と思うんですけど、ワンマンでは、みんなが俺の音楽を聴きに来てくれていることが表情でわかりますから。最近は歌いながら客席がしっかり見られるようになってきたんです。ギタリストでもライブ中に客席は見られるんですけど、どうしてもネック越しになるじゃないですか。でも、ヴォーカルなら視界にダイレクトに入ってくる。だから純粋に楽しくて、これからもっとやりたいと思えました。
――あのライブは後ろから観ていても、温かくて“ホーム”な感じがしました。
K:嬉しいです。終わった後に、照明をやってくれていたスタッフから、「Kさんのライブの良さって何なんでしょうね。曲がいいのか空気がいいのか難しいんですけど、とにかくいいんですよ!」って言ってもらえたし、サポートをしてくれた人たちからも、「楽しいし、空気がいいね」と言われることが多いんです。「K君もファンの子もフルスロットルで、ガッツリ行くかと思ったら途中で緩いMCがあったりして。でもファンの子は全然嫌そうじゃない。そういう関係性がいいよね」と言われて。
――確かに、ファンの方々は受け入れ態勢万全な感じがしました。
K:そうですよね! 今後もそれが広がっていったらいいなと思うし、ライブもどんどんやっていきたいと思っています。
――ライブのタイトル「Libarated from pain」にはどういう思いを込めたんですか?
K:タイトルは“痛みからの解放”という意味なんですけど、これまでリリースしたシングルたちの歌詞にある、「あの時、こうできなかった」「もっとこうすればよかった」という、自分でもわかっていなかった心の奥底にある痛みを改めて見て、ネガティブではないんだけど、自分にはこういう部分もあるのかなと思ったんです。それを踏まえて、「どうなるかわからないし、やってみなきゃわからないという気持ちで1年やってきたけど、今年は2年生としてもっと何かを作っていけたら」と思って。
――その決意の表れなのか、あの日のセットリストは、ご自身の曲だけで構成されていましたね。
K:そうです。こういうタイトルのワンマンを自分の楽曲だけでやり切った。何か反対意見があったからセットリストからBORNの曲を抜いたわけではなくて、自然とそうなれたということが良かったなと思います。
――ソロとして活動を開始して1年、色々な変化を実感しているのでは?
K:ソロになってからは、出来立てほやほやの曲たちをCDにパッケージできているなと思います。去年の6~7月にReNYでの初ワンマンに向けて書きまくった曲が会場限定のシングル『Rebirth』になったし、今回も最近書いたものがシングル『STORY』になった。バンドのときはレコーディングしてからリリースされるまでに半年かかったこともあって、「そうか、やっと今月出るんだ」と思ったりもしたんですけど、ソロはこれを作りたいという熱が上がったらそれをすぐにCDにパッケージして、すぐにリリースできる。それはすごくありがたいことだなと思っています。
――今回のニューシングル『STORY』には、新曲の「STORY」「Higher」「−story forever−」の3曲が、通常盤には歌詞やアレンジを変えて新しくなった「雀羅」を加えた4曲が収録されていますね。
K:そうですね。「雀羅」は前からあったんですけど、今のアレンジに詰め直しました。
――1stライブで披露されて以降、ライブでのキラーチューンとなっていた「雀羅」の待望の音源化です。
K:そうなんです。でも、そう考えると、1stライブの段階で作った曲で、まだ音源化されていないものもあるんですよね。
――今回音源化した新曲たちは、ワンマンライブ『Liberated from pain』に向けて作った曲なんでしょうか?
K:というわけでもないんです。タイトル曲の「STORY」は、4月にDのRuizaさんのサポートをした日に屋上で何となく鼻歌を歌っていた時に、サビのメロディーと“STORY”というワードが浮かんで。実を言うと、『STORY』というシングルを出すと発表した5月26日の段階でも、その二つしかなかったんです。でも、これをすごく良いものにできる自信があった。だからそこから広げていったんです。
――Kさんは曲を作るとき、メロディーから作ることが多いんですか?
K:バンドにいた頃は楽器隊がバックを固めて、あとはヴォーカルにという感じだったんですけど、自分がヴォーカリストになってからはメロディー重視になったので、そこから作ることが多いですね。それに今回、頭の中に音源の構想がしっかりあったんです。「STORY」という曲が1曲目で、あとは「雀羅」を入れよう。多分めちゃくちゃキャッチーな曲になる気がする…とか。まだ曲はできていなかったんですけどね(笑)。
――(笑)。c/wの「Higher」はいかがでしたか?
K:この曲は「STORY」のMVにも映っているサポートドラムのSOYと一緒に作りました。俺はギターヴォーカルになってからは、時間ができると歌の練習のためにスタジオに入っていたんですけど、その時にSOYがドラムを叩いてくれて。ある日スタジオで、「ベース始まりの曲がほしいな」という話をしたら、そこから俺が弾いて、SOYにこう叩いて、ああ叩いてと指示して、あっという間に完成したのが「Higher」でした。
――その作業のスピーディーさが曲の疾走感に見事に反映されています。
K:確かにそうですよね(笑)。そして、インストゥルメンタルの「−story forever−」はいつも一緒に作業しているマニピュレーターのDAICHIさん(DAICHI YOKOTA氏)と共作アレンジしました。
――今回のシングルを作る上で、初の全国流通ということを意識しましたか?
K:すごく聴きやすくしたいなとは思っていたんですけど、特に固く考えたりはしなかったです。キャッチーさはいつも考えているし、メロディーももうあったので。それよりも、「STORY」のサビに行くまでの部分を決めることに注力していました。毎日いろんなバージョンを考えて、めちゃくちゃ激しくしてみたり、また変えてみたり。
――作詞はいかがでした?
K:「STORY」というタイトルでサビを掲げたときに、この歌に乗せたら歌詞が書けそうだなと思ったんです。一見、怒鳴ったり、強く吐き出したりしたほうが歌詞が伝わると思いがちなんですけど、歌をやっていくにつれて音階と音程が一番大切なんだとわかってきて。メロディーがきちんとあるからこそ表現しやすかったし、「STORY」も無事形になりました。
――今までの楽曲たちの中でも、「STORY」の歌詞は特に心にスッと入ってくる感じがしました。
K:この歌詞には、この1年間が詰まっている気がするんです。1年間というより、俺が物事をやるときの順番なのかもしれない。俺はどんなことでも最後は受け入れてプラスにするから、それまでは、しっかり悩んでいいんじゃないか、という。
――Aメロではかなり赤裸々な言葉が使われていますよね。
K:そうですね。少しずつそういうこともできるようになってきました。言葉を選んだりもするようになりましたし。例えば20%くらいの言葉を使って書くと、相手は「何となく、こういうことを言いたいのかな?」程度で止まるじゃないですか。そこで止まるぐらいだったら、いっそ振り切るときは振り切って、曖昧にするところは曖昧にしたほうが良いと思うんです。だから「STORY」は1Aで振り切って、でも3Aはちょっと緩くした。言葉遊びとしてそういうバランスを取っています。あと、「雀羅」や「Higher」ではアンダーグラウンドな歌詞をガッツリ書けたなと思います
――1曲の中でストーリーが感じられました。そして今回の収録曲は、Kさんの色々な面が見られる気がします。
K:俺の曲の振り幅とか、深く考えているようで意外とできたものをサラッとやってしまうタイプだとか(笑)、そういうところはファンの子たちもよくわかってくれていると思うので。1曲1曲の空気感が伝わればいいなと思います。
◆良いものを作って良いライブをして、それがエンターテイメントになっていけば
――今回のレコーディングは誰と行ったんですか?
K:あ、俺です(笑)。
――え、全部一人で?
K:はい(笑)。エンジニアさんと一緒に、ドラムは叩いたものをサンプリングして、ベース、ギター、コーラス、打ち込みをやって…という。でもこれは、今までやってきたことをちゃんとやらなくてはいけなくなった、という感じに近いんです。バンドをやっていたときは選曲会があったからそのためのデモを作っていた作業が、今は本チャンのレコーディングになった感じ(笑)。バンドをやっていた頃と変わったのは、良い意味で音の判断が早くなったことですね。今まではギタリストだったから、ギターの音に命をかけていたんですよ。当時は丸1日かけて音を探したりしていたんですけど、今は歌と歌詞に時間をかけたい。だから、言い方が難しいんですけど、全部フルでやっていられないと言うか。
――Kさんがレコーディングで請け負うものが大きくなったからこその決断でもありますね。
K:そうなんです。レコーディングの労力がヤバイですからね。バンドだったら、ドラムをチェックして、自分はギターの片方を弾いて、次はソロを弾いて、ヴォーカルに指示を出して…という感じだったんですけど、振り返ると「今までって全然楽だったじゃん!」と思って(笑)。今はドラムのチェックをして、「ここはもうちょっとこうしましょう、ああしましょう」とやって、それが終わったら「ベースのフレーズはどうしようかな」とあれこれやって、終わったら「ギターは…俺か」という(笑)。毎回自分でツッコんでいますからね。「次も俺か!」って。そして、それが終わると、「ヤバい、歌詞ができてない」ということになる。そもそもヴォーカリストは、楽器隊が録っている頃に歌詞を書いている人が多いですから。
――割とギリギリまで書けないという人が多いみたいですね。
K:書けないんじゃないですよ。あれは絶対にやっていないだけです(笑)。ヴォーカリストになってみてわかったんですけど、喉や体が楽器のパートは本当にテンションが上がらないとできないんです。だから今日はアガらないな、というときに歌詞を書きたくない気持ちもすごくわかる。そういう意味では大変なパートですよね。そう言いつつ、俺はまだ自分でヴォーカルをやっているようでやっていない、キッズみたいな感覚もあって。常に音を楽しめる距離感やスタンスで音楽に向き合っているからこそ、こうやってベースを弾いたりギターを弾いたり、歌をやったりできるのかもしれないとも思うんです。
――とは言えヴォーカリストとしても着実な成長を感じるのですが、秘訣は何でしょう?
K:ファンの子も含めて、いろんな人からそう言ってもらえているんですけど、正直なところあまり自分ではわかっていないんです。この前、景夕さん(Kra)と飲んでいた時に歌のテクニックを色々教えてもらおうと思ったら、「ヴォーカルは自分がやりたいようにやるのが正解だから」って言われて。俺はヴォーカルになりたてだから、どうやるのか教えてもらいたかったんですけど、ヴォーカリストはみんなそんな話に興味がないんですよね(笑)。「ミックスボイスはどうやるんですか?」って聞くと、「そんなの、できなくていいんだよ」って(笑)。あれができないと、喉に負担がかかるから嫌なんですけど、景夕さんが上手いし綺麗に歌えているじゃないですか。あれはズルいなと思って(笑)。
――練習は苦ではないんですか?
K:喉の筋肉をつけなきゃいけないのでどんどん歌わないといけないんですけど、意識的に頑張って練習するというより自然にやっている気がします。ボイトレも個人練習も時間ができたら行っているし、練習はあまり嫌いじゃないのかもしれない。それに、レコーディング前やライブ前にめちゃくちゃ練習したからって大して変わらないと思うんですよ。成長したかったら、毎日毎日ちょっとずつやればいい。俺は常にそういうスタンスでいます。
――真面目なKさんらしい言葉です。以前のインタビューでも、新たな練習や経験を一から積み直すことはあまり苦にしていませんでしたよね。
K:色々楽器をやっていてわかったんですけど、積み上がった後の方が大変なんです。ある程度のものを手に入れた後、そこからどうやって存在感を出すのか、どういうギタリストになるのかというほうが大変で。でも、最低限きちんとやっていれば、なるようになるんじゃないかなと思うようになりました。
――そのインタビューで、「本当の恐怖は、1~2年ぐらいそのパートをやったときにわかる自分の実力」とも話していましたが、ちょうど活動開始から1年目を迎えた今、見えてきたものはありますか?
K:そう言われると確かに最近は、歌いながらアンサンブルで自分の声があまり乗っていないなということがわかってきたりもしているんですけど…むしろわかりたくない(笑)。上手さ=自分をわかってくるということなので、上手くなると基準が上がって自由度が減るんです。例えばギターソロでミスタッチをして、観ている人は誰もわかっていないかもしれないけど自分の中ではデカいミスなんです。ヴォーカリストになって1年経って、今後そういうメンタルがどんどん作られていくと思うので、それが完成されるまでの今を楽しんでいます。ギターでも、初めて1~2年目の何が上手くて何が下手かわからないときが一番楽しかったりするんですよね。ライブDVDを観ながら、弾けていないのに弾けているふりをしたりして(笑)。でも、そういうときこそ本質的な勢いが出るとも思っているし、そういう時が音楽をやっていて多分一番楽しいのかもしれない。それに今はバンドとはまた違った楽しさ、充実感を味わっています。
――Kさんの第二章がいよいよスタートしますが、この先にどんなヴィジョンを持ってますか?
K:こういう時代だからこそ、良いものを作って良いライブをして、それがエンターテイメントになっていけばというところでしかないです。俺自身は常に、去年より歌やギターが上手い自分を追求していくのが仕事なんじゃないかなと思うんです。1年1年責任を持ってやることが大切だし、努力して、自分の近くにいる人たちから、やっぱりすごいな思ってもらわなくてはいけないと言うか。音楽をやってきてずっとそうなんですけど、進化していきたいという意味で、俺はソロという道も選んでいるんだと思うんです。これはヴィジョンと言うよりも、常に掲げているスタンスですね。
――これからもそのスタンスは変わらず突き進んでいくんですね。
K:はい。さらに今回、最高にキャッチーでロックな『STORY』ができたので、これを引っさげてイベントツアーで全国に行きます。ぜひ来てください。会場で待っています!
(文・後藤るつ子)
K
<プロフィール>
BORNのギタリストとして活動し、2016年5月26日のZepp DiverCity公演をもって解散。その晩、いち早くソロ活動のスタートを発表する。ヴォーカリスト兼ギタリスト、コンポーザーとしての活動を展開し、8月19日には新宿ReNYでPS COMPANY PRESENTS K 1st ONEMAN LIVE『Rebirth of the Kingdom』を開催。当日、初の音源となる会場限定シングル『Rebirth』が発売された。2017年3月、2枚目となる会場限定シングル『Raging pain』をリリース。8月30日に初の全国流通盤CD SINGLE『STORY』をリリースし、9月には「ZEAL LINK TOUR NEXT 2017」に参加することが決定している。
■オフィシャルサイト
http://www.pscompany.co.jp/k/
【リリース情報】
Single『STORY』
2017年8月30日(水)発売
(PS COMPANY Co., Ltd)
初回限定盤
(CD+M∞CARD)
PSIM-30055
¥2,778+税
通常盤
(CD ONLY)
PSIM-20044
¥1,852+税
【収録曲】
■初回限定盤
[CD]
01. STORY
02. Higher
03. -story forever-
[M∞CARD]
01. STORY -MV-
02. STORY -MV-off shot
03. Digital Photo
■通常盤
[CD]
01. STORY
02. Higher
03. 雀羅
04. -story forever-
【ライブ情報】
「ZEAL LINK TOUR NEXT 2017」
9月3日(日)金沢AZ
9月5日(火)仙台MACANA
9月9日(土)大阪RUIDO
9月10日(日)名古屋ell.FITS ALL
9月18日(月・祝)福岡DRUM SON
9月20日(水)岡山IMAGE
9月23日(土)高田馬場AREA