9枚目のフルアルバム『FREEDOM No.9』を引っさげ、Jが初登場! 自身の音楽を追究し続け、より強固なものとなったJの最新サウンドに迫る!
“自由”というワードを掲げたJの9枚目となるオリジナルフルアルバムが完成した。音楽と向き合いながら常に走り続けてきたJだが、「自分自身がやり続けた音楽をさらに強固なものに」という思いの元、今作の制作に取り組んだという。Jの全てが凝縮された今現在の“J”そのものとも言える今作について、たっぷりと語ってもらった。
◆自由を追い求めてきたし、自由というものを得てきた
――タイトルにある“FREEDOM”にはどんな意味が込められているのでしょうか?
J:俺自身にとって音楽って一体何なんだろう?とか、音楽で何を得てきたんだろう?って、自分の中で整理をする…改めて音楽と向き合うということを、毎回レコーディングに入る前にそんな事をやっているんだけど、今回それを考えた時に、俺にとっての音楽って“自由”っていう言葉が一番近いのかなと。ガキの頃にロックを聴いて「俺もいつかこんな風になりたい」「バンドをやりたい」っていうところから始まって、俺はロックに自由をもらえた気がするんですね。バンドを始め、仲間に会い、自分で曲を書いて、色々なところに共感してくれる人たちがいて、日本中を昇り詰めていって、色々な景色も見て、今ここにいる。本当に自由を追い求めてきたし、自由というものを得てきたんだとも思うんだ。今作は9枚目のフルアルバムなので“9番目の自由”というタイトルを付けたんだ。このアルバムを聴いてくれた人たちが、また新しい自由を手にしてくれたらいいなぁと思いながら作りました。
――このタイミングで“自由”というワードが出てきたきっかけは何かあったのでしょうか?
J:ともすれば“FREEDOM”ってすごく軽い言葉になるじゃないですか。都合の良いように使われる言葉でもあるし。でも、ある意味自由に生きてきた人間としては、だからこそ一つ付け加えてもいいのかな、と思う瞬間もあって。自由って、残酷な一面もあるんですよね。その自由を掴むために色々なものを失ったり、傷ついたりしてもがいていたりする世の中だったりもするじゃないですか。だからこそ、手に取りたい。摑み取りたい。そんな思いにさせるものだと思うんですね。ロックミュージックが持っている最大限のパワーというのは、人を押し出す力、自由でいることの自由というか。そういうことを気付かせてくれるものだと思っているので、このタイミングで“自由”という言葉を掲げるのは、この時代に逆にリアリティを持って響くんじゃないかなと思ったんですよね。今このタイトルを付けて良かったなと思います。
――Jさんのアルバム作品は、リードトラックの曲名とアルバムのタイトル名が同じというものは少ないですよね。
J:少ないですね。あまり意識はしてないんですけど。アルバムを作っていると、リードトラックだけでそのアルバムを表現できるということでもないなぁと思ってしまう時もあるんだ。だから、アルバムという一つの名前の中に色々なストーリーが入っていた方が、自分の中では自然な流れなのかな。
――今回、制作とライブを行ったり来たりだったのではないでしょうか?
J:そうですね。レコーディングしながら一旦止めてライブに行ったり、という期間が多かったですね。あまりじっとしていられない性分なので、レコーディングもずっと根詰めていくと痺れ切らしてしまうんです。ライブで得たエネルギーそのままのテンションを、レコーディングという全く正反対の場所に持って行けるので、大変なんだけどすごく良いものを生んでくれましたね。レコーディングって、かしこまっちゃう時もあるんだよね。「よし、録るよ」みたいな。そういうんじゃなくて、ノッたまま行けるというか。そういうセッションができるので、いいのかなと思います。
――4月のSHIBUYA-AX公演で早くも新曲を披露していたんですよね。
J:「If you can see me」かな。
――一番最初にレコーディングした曲は「If you can see me」ですか?
J:最初のタームでレコーディングしていた曲の一つではありました。ただ、自分の中でライブでプレイする曲と、作り上げていかないといけない曲は違ったりもするので、ライブではその曲を選んだのかな。他にも数曲レコーディングしていた曲はあったんですけど、自分の中で世界観というものを作り上げていかなきゃなと思っていた時期だったので、自分自身にもライブであまり違う印象を植え付けたくなかったんです。
――アルバムの全体像はどの段階で見えていたのでしょうか?
J:今回、不思議と自分が想像していた全体像を途中で超え始めたんだ。煮詰まらなかったというか、自分の思い付くままレコーディングが進んで行って、結果的にこの形に。いつも、ああいう風にしたいな、こういう風にしたいな、というものが当然あるんですけど、今回はわざわざそのために何かを削ったり何かを増やしたりすることでもないなぁって思えたんですよね。その方が今の自分にとってすごく自然だし、音楽にとってすごくオーガニックなことかなと。途中からは自分が何曲書いているのか忘れるくらい、今の俺っていうものを表現できる精一杯のことをやろうと。それが良かったのかもしれないなと思います。
――一枚の作品としてのテーマを最初に掲げた上での制作だったのでしょうか?
J:自分自身がやり続けた音楽を、さらに強固なものにしようと。そういう思いが今までのアルバムの中で一番強かったかな。それが例えば表現方法として今までにやったことがある事だったとしても、その何倍にも膨れ上がらせることが今の自分だったら可能だと思ったし、バンドとしてもそれができる、それをやることがクールだとも思ったんです。なぜかと言うと、俺の好きなアーティストやロックバンドは、自分たちのサウンドをずっとやり続けて、自分たちのスタイルを貫き通して走り続けているバンドが多いんですね。それってやっぱり昨日今日始めたものには無い強さがあるし、俺もそうなりたいと思いながらバンドをやってきたわけだから、あえてド真ん中を目掛けて投げるってことをしましたね。
――今作を聴いて、まっすぐ前へ走る姿や、強さの中にある優しさというものを感じ、Jさんそのもののような作品だなと思いました。
J:嬉しいね。
――通して聴いた時に全曲がすごく繋がっている印象を受けたのですが、歌詞の繋がりも意識したのでしょうか?
J:今回は本当に思い付くままでしたね。当然曲を書く時になんとなくのイメージはあるんです。こういうことを書こう、こういうことを伝えたいという。ただ、それは本当に断片なんだ。それを言葉というものに落とし込んでいく感じ。気が付くとストーリーができあがっていて、曲を並べてみるとまたさらにストーリーができあがっていて。全曲を通して聴いた時に俺自身も「すごく繋がっているな」って改めて思ったんですよね。実は言いたいことなんていうのは、今までに言い尽くしてきたのかもしれない。でも、時代や自分自身の経験値から、言葉の角度や温度って変わっていくものだと思うんだ。それを素直に今の自分で伝えることができたらいいなと思って。
――曲順はすんなり決まったんですか?
J:いや、決まらないですね。曲順を決める作業っていうのが本当に嫌いで(笑)。何十通りも、何時間も何日もずーっと…聴いたり離れたりしながら作るんです。
――そうなんですね。あまりにも綺麗に繋がっていたので。
J:本当(笑)? 嬉しいね。音楽なので正解は当然ないんですけど、自分自身がこう聴いてもらいたい、こういう風に伝えたいんだというフォルムみたいなものは、ぼんやりとあるんですよね。そこからどういう風に当てはめていくか…それは曲間も作用するんだ。すごく楽しい作業でもあるんですけど、もどかしい部分もあったり。それはそれでモノを作る上での楽しみだけどね。
――曲間も結構こだわりましたか?
J:曲間も、その曲たちを繋げていくためにすごく重要なものだと思うんです。その曲が終わった後に何を感じてもらうか、逆に間髪入れずに次の曲にストーリーを繋げていくか。難しいですね。それは何回も聴いて自分の感覚に当てはめていくしかないので、ものすごく時間はかかるんですけど。
――今作の歌詞には〈光〉というワードが多いですよね。
J:光って、希望や未来を象徴するものだと思って使っています。だけどもう一つ言えるのは、影がないと光は存在しないんですよね。光が見えているからこそみんな走っているわけだし。色々な意味で前向きな場所、物として捉えてもらえる言葉かなと思いながら使っています。
――作詞で一番苦労したものはどの楽曲でしょうか?
J:んー…全部ですけど、歌詞の数が少ないのもあって「Day Dream -the way of infinity-」は難しかったです。聴いた人のイマジネーションをより掻き立てるような作りにしたかったので、言葉数も少なくしたかったし、投げかけるイメージを聴いてくれた人に届くものにしたかった。あえて言葉を繰り返すことによって生まれてくる情景というものも利用したかったし。もちろん自分の言いたいこともあるんですけど、こういう言葉を使ったらこういう風に感じてもらえるかな、とか考えて。作っていて楽しかったですね。音楽を聴くことの中で、想像することってものすごく楽しいことだと思うんです。そういう聴き方をしてもらえたらいいなと思って作っていましたね。