ツインギターという最終的な仕上がりをすごく意識する(HIDE-ZOU)
新曲について伺っていきたいと思います。リード曲「Zmei ~不滅竜~」は、サウンドはヘヴィですが疾走感もある楽曲です。
ASAGI:ブルガリア語の民族的なクワイアは今回も力を入れました。冒頭から世界観に引き込むためにはどういった方法が良いかなと考えたり、作曲自体は結構難産だったんですよね。民族的な要素とバンドサウンド、ロック、ヘヴィテイスト、メロディアスな感じを融合させるのってすごく難しくて。かつ、メロディーはキャッチーに伝えたいけど、民族的な要素を追求し過ぎるとかなりマニアックになっちゃうので、上手くそのバランスを取るのにかなり悩みました。歌い方にしても、ブルガリアンヴォイスを自分なりに取り入れられないかなと思ったんですけど、基本的にブルガリアンヴォイスは女性ヴォーカルなので、そこをどういう風にしようかなと試行錯誤して。最終的に音源ではファルセットをメインにはしたのですが、メロディー的なニュアンス、歌い回しは参考にした部分もあります。それと、竜の強さや迫力、サビでは乙女を乗せて空を飛んでいるというイメージがあったので、突き抜ける感じや開放感を意識して歌いましたね。
ちなみに、ブルガリア語を歌うのは難しいですか?
ASAGI:最初、メロディーに言葉を当てはめていく時が大変なんですけど、しっかりハマると独特な感じがすっごく気持ちいいんですよね。
そうなんですね。イントロ等のメインのギターリフはDらしいなと。
Ruiza:確かに。リフはASAGI君のデモの段階から入っていたフレーズです。今回は実際に集まってディスカッションして、ASAGI君がイメージしているものを、こういう風に弾いているよというのを直接目で確認してもらっているので、よりイメージに近付けられたと思います。実際に弾く時に迷いも少なかったですね。いつも自分がレコーディングをする時、頭の中でこう弾きたいと思った音と、実際に弾いて出る音ってバッチリの時もあれば、ちょっと違うこともあって、何度も修正していって追い込んでいくみたいなことがあるんですけど、今回は直接イメージを共有しながらできたのが、すごく良かったなと。PC上のアンプシミュレーターを使って音作りはしているんですけど、生っぽいものになっているし、単純にカッコいいと思いましたね。
HIDE-ZOU:ASAGIさんがイメージするものを極限までギターで表現するに当たってのディスカッションを、今回ほど密にやったのは久々だったんです。なので、僕も録る時に迷いがなかったですね。今までだと、何度か弾いたものをオンライン上で調整していくというやり方だったんですけど、やっぱり直接やり取りしたほうが早かったなと。これは次に活かせるなと思いました。個人的には重みのあるリフの中で、単純に低い音で攻めるのではなく、重さの中に1メイク、2メイクくらいあって、ほんの一瞬のピッキングの強弱だったりで大分変わるというところの表現は満足できました。細かい部分のニュアンスを感じてもらいたいですね。
Tsunehito:ベースはレギュラーチューニングから1音下がっていて、すごくヘヴィな感じなので、ギターとベースがユニゾンする部分の重厚感がガッチリいくように、リズムに対してバッチリ合わせることを目指して弾きました。そのお陰でドラムのグルーヴにベースもピッタリ張り付いていく感じになって、疾走感も上手く出せたなと思います。ヘヴィな部分と休符の歯切れの良い部分も意識して弾いたので、より躍動感が出せたなと自分的には満足していますね。
HIROKI:自分は重厚感のあるどっしりとしたプレイを心掛けましたね。ビートは食らいつきを重視して、フィルは16分フレーズを多用して疾走感も増すようにしました。サビのツーバスも良い感じに昇華できましたし、聴き手に高揚感を持たせるようなプレイができたと思います。
「Venom immunity」のデジタリックな要素はここ2~3年くらいのDからも感じられた、今っぽいサウンドです。
ASAGI:そうですね。「Draco animus」の次に続く楽曲で、毒耐性を身に付けた新種の竜をイメージしていたんですけど、ヴァンパイアストーリーは未来を描いているので、『愚かしい竜の夢』とクロスオーバーすることによって、未来感がまた新たに加わりました。デジロックの全体像は何となくあったんですけど、〈Venom immunity〉というフレーズがずっと頭にあって、ある日サビのメロディーが浮かんできたんですよね。そこからイントロのリフだったりを肉付けしていきました。歌の面では、メロディーは繊細だけど、荒々しさとは違った洗練された強さみたいなものを感じさせたいなと思って考えていきましたね。
イントロアウトロのギターリフが掛け合いになっていますが、こういう部分があると、早くライブで生で観たいなと思ってしまいます。
全員:確かに。
HIDE-ZOU:掛け合いもそうですけど、ステレオ感は二人ですごく意識しています。補うところと出し合うところ、引くところ、そういうバランスは気を付けていて、ツインギターという最終的な仕上がりをすごく意識しますよね。聴けば聴くほど、補い合っているなと感じてもらえるところがあると思うんです。そこがDの魅力だと自負しているので、そういう風に聴いてもらえると嬉しいですね。
Ruiza:この曲はデジロックな感じがすごくカッコいいですし、新しいなと思いましたね。激しいのに心地よいというか、新鮮な魅力がある楽曲だなと。毒耐性ということで、危険な感じ、スリリングな感じを表現できたらいいなと思ってフレーズを考えました。
Tsunehito:デジタリックなシンセが入っていたり、リズムも跳ねる感じなので、ライブ感がすごくあるなと完成してから改めて思いましたし、そのシンセがありつつギターのステレオ感もあり、全体的に音のレンジ感がすごく広く感じるというか。それによってライブ会場っぽいサウンドに仕上がっているなと思いました。元々のASAGIさんのデモの時点で、Aメロだけベースがオクターブ高いところでイントロとかと同じリフを弾いているんですけど、そこから一気に低いレンジに下りたり、そういう音の高低の動きもありつつドキドキする感じになっていると思いますね。
HIROKI:冒頭から期待できる展開になっていて、曲の勢いと抑揚を上手く出すアレンジをさせてもらいました。この曲もツーバスが出てくるのですが、それが良いアクセントにもなっていて、とてもカッコいい仕上がりになったと思います。
寄り添っているように感じてもらえたなら嬉しい(Ruiza)
「Lamb’s REM sleep」はヴァンパイアストーリーの楽曲かつ今作の世界観と密接に繋がる曲となっていますが、作曲者のTsunehitoさんはヴァンパイアストーリーを想定して作ったのでしょうか?
Tsunehito:作曲する時は毒耐性の曲も作っていて、それに対して治癒をするイメージが思い浮かんで作り始めたのがこの曲でした。なので、快方に向かっていくというイメージから、光や温かさを最初から意識して作っていたんですけど、ASAGIさんにストーリーを付けてもらい、今作にバッチリ当てはまるものになりました。
ASAGIさんとしては、この楽曲をヴァンパイアストーリーにしたのは、どんな流れだったんでしょう?
ASAGI:「Draco animus」「Venom immunity」の流れがあって、「Venom immunity」の主人公とTsunehito扮するカーバンクルから生まれる子供のイメージが浮かんだんですよね。ツネが言った光が差し込むイメージ=生まれてくる、治癒していくイメージ=胎児が形作られていくという風に僕は感じて、それが世界観とリンクしたので、これはもっと突き詰めていきたいなと。曲調が夢を見ているような感じだったので、夢を見やすい状態=レム睡眠のことを入れてみようと思ったり、カーバンクルのお腹の中で胎児が夢を見ているようなイメージをしましたね。そこから、生まれてくる神秘的な感じを物語と絡めながら表現したいなと。曲中に〈ラララ〉で歌っている部分は最初からツネのデモに入っていたんですけど、そこはやっぱり歌詞を当てはめるより〈ラララ〉のほうが、ゆりかごのような感じがするなと思いましたね。全体的に優しい癒し的な感じで歌えたらいいなと心掛けました。
この楽曲は歌に寄り添うようなギターが印象的だなと感じました。
Ruiza:最初にデモを聴いた時の印象としては、段々色付くというか暗いところから光が差すイメージ、時が流れていく様、人生的なものを感じました。なので、コード進行が切り替わっていくところを上手くまたいで滑らかなフレーズを付けたいなと思いました。あえて頭から始まらないフレーズも結構入っています。寄り添っているように感じてもらえたなら嬉しいですね。
HIDE-ZOU:ツネがデモに入れてくれていたフレーズを踏襲しながら、アンビエント感も意識した音作りをしていって、フワッとした感じにしたかったんですよね。ピッキングでソリッドに弾くよりも、もっと大きな感じで、伸ばし具合とかも意識して録りました。ギターソロも弾かせていただいたんですけど、最終的にハーモナイザーで1オクターブ、2オクターブ混ぜた音で、倍音がどんどん増えていくようなイメージにしたのが、綺麗にハマったなと満足しています。このアルバムの中に「Lamb’s REM sleep」が入ったことによって、世界観も広がったように思いますし、新しい可能性が見えた感じがしました。
ベースの動きのあるフレーズがまた心地よいなと。
Tsunehito:配信でアコースティックライブをやる時に、ルートをメインにして音数をすごく減らしたアレンジを心掛けてやっていて。そういうこともありつつ、今回の新曲たちは引くところは引いて、少し動くところはハイポジションで動くということを意識していたんですけど、この曲は曲作りをしている段階から、シンセやベースで躍動感を出す部分のイメージが湧いていたので、それに合わせてベースフレーズも自分らしいフレーズの動き方を自然と入れることができたなと思いますね。シンセも自分が作っているんですけど、間を縫うような感じに上手くできたなと思います。
HIROKI:デモの段階でツネが作り込んでくれていましたし、展開もツネらしいアレンジになっていて、曲の構成の繋がりを意識しながらそれを上手く自分なりに昇華させてもらいました。タイトさがとても心地よい曲ですし、聴かせ所も多いので早く聴いてもらいたいですね。
自分たちの心に嘘をつきたくない(ASAGI)
アルバム『7th ROSE』(2010年)収録曲「花摘みの乙女 ~Rozova Dolina~」の再録を入れた理由というのは?
ASAGI:元々「花摘みの乙女 ~Rozova Dolina~」と『愚かしい竜の夢』の世界観は繋がっていて、『愚かしい竜の夢』に出てくる乙女が、「花摘みの乙女 ~Rozova Dolina~」に出てくる主人公の孫に当たるんですよね。なので、フルアルバムにするなら今のDの音で再録したいなと思いました。
先日の配信でも披露していましたが、ASAGIさんのタンバリンさばきが華麗だなと思って。
ASAGI:ありがとうございます。実は今回の再録で生のタンバリンの音も入れました。以前の音源は打ち込みの音だったんですけど、ライブを経てタンバリンさばきの経験値が上がったので(笑)、せっかく再録するなら生の音を入れたいなと思って頑張りました。あとはサビのハーモニーなんかも増やしたりしていますね。
そうだったんですね。最後に、未だ有観客ライブを再開していないDですが、今後のライブについてどのように考えているか聞かせてください。
ASAGI:もちろん有観客をやりたいという気持ちはみんな強く持っています。だけど様々なことを考えると、なかなか踏み切れないところがあるんですよね。アーティストがやると言ったら、ファンは観たいと思ってくれるでしょうし…。でも様々な不安もつきまとうわけじゃないですか。移動する時やライブハウスに入った時、もちろんできる限りの感染対策はするにしても、やっぱり心から楽しめる状況というのは今は難しいだろうなと。自分たちがステージに立って演奏する上でも、自分たちの心に嘘をつきたくないというか、納得した上でステージに立てるタイミングが必ずあると思うので、そこを今は探っているところですね。100%元通りにならなかったとしても、しっかり着地点は見つけたいですね。
「M.L.V.」は今後も続けていくのでしょうか。
ASAGI:そうですね。Vol.いくつまで行けるかわからないですけど、良きタイミングでやりたいなと。今、行っている活動は全部納得した上でやっているものですけど、「M.L.V.」はこのコロナ禍で色々悩んだ末に見つけた一つの答えだったので、とても大事なものになっています。続けられる限りはやりたいなと思います。まずは今できる最大限の力を注ぎ込んだ『Zmei』を聴いて、心の炎を燃やし続けていてほしいですね。
(文・金多賀歩美)
D
ASAGI(Vo)、Ruiza(G)、HIDE-ZOU(G)、Tsunehito(B)、HIROKI(Dr)
オフィシャルサイト
リリース情報
New Album『Zmei』
2021年11月23日(火)発売
(GOD CHILD RECORDS)
[豪華数量限定盤](CD+DVD/ハードカバージャケット、写真集付き豪華仕様、全曲セルフライナーノーツ付き)GCR-213 ¥11,000(税込)
※オフィシャル通販のみ
※完全数量限定、無くなり次第販売終了
[通常盤](CD)GCR-214 ¥3,300(税込)
収録曲
[CD]※共通
- 竜哭の叙事詩
- 愚かしい竜の夢
- 花摘みの乙女 ~Rozova Dolina~
- Draco animus
- Venom immunity
- Lamb’s REM sleep
- 隷獣 ~開闢の炎~
- 遥かな涯へ
- Draconids
- Cannibal morph
- Zmei ~不滅竜~
[豪華数量限定盤DVD]
- Zmei ~不滅竜~
- Venom immunity
- Lamb’s REM sleep
- 愚かしい竜の夢
Digital Single『Zmei ~不滅竜~』