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竜と人が共に在った世界の話。『愚かしい竜の夢』とヴァンパイアストーリーのクロスオーバーで展開するアルバム『Zmei』の全貌とは――

コロナ禍以降、様々なアクションを起こしてきたDが、昨年末、新たにスタートさせたのが歴代MV撮影場所を巡る無観客公演の配信企画「Music Live Video」。その第3弾として、2017年発売のミニアルバム『愚かしい竜の夢』をテーマとした配信を今年10月に行ったばかりだが、同作品に新曲3曲と再録曲1曲、4月にFC限定リリースした1曲を加えた全11曲収録のコンセプトフルアルバムとして、新たな作品『Zmei』が誕生することとなった。約1年半ぶりの登場となるDの5人に、これまで行ってきた様々な無観客配信ライブの裏側と、最新作の制作秘話をたっぷりと語ってもらった。


間違いなくDにはこれが合っているなと確信した(ASAGI)

ASAGI

Dはコロナ禍以降、歴代MV撮影場所での配信企画「Music Live Video」(以下、「M.L.V.」)、高田馬場AREAでの7日間連続ライブ生配信、自社スタジオStudio Rosariumでのアコースティックライブ生配信と、様々な形で無観客配信ライブを行ってきました。ライブハウスでのオーソドックスな配信ライブではなく、それぞれ明確なコンセプトで考え抜かれた配信ライブの形は、さすがDだなと感じていました。

ASAGI:確かに「M.L.V.」は、何かDらしい配信ライブの形はないかな?と悩み抜いた結果でした。オーソドックスな配信ライブだと、ライブDVDと近い形になりますよね。でもライブDVDの場合は、アーティストとお客さんのパワーの相乗効果で、ライブ映像が作品として残っていきますけど、配信ライブってそういう相乗効果はどうしても得られないんです。もちろん、自分たちの音楽を伝えるという意味では、全力を尽くすことはできるのかもしれないし、AREAからの7days配信も最後のAREAということでやりきりました。でも、コロナ禍で新たに企画する映像作品として考えた時に、ロケーションありきで、MVとライブをMIXしたような表現の仕方のほうが、世界観的にDには合っているんじゃないかなと思ったんです。一発目をロックハート城でやってみて、間違いなくDにはこれが合っているなと確信しましたね。それと、メンバー、スタッフ、お客さんの安全も含めて、安心して音楽を楽しめるものをと考えた時に、やっぱりこの形だったんですよね。お客さんも喜んでくれたし、自分たちもすごく達成感がありました。ファンとの相乗効果の代わりになるものはないですけど、その寂しさをロケーションや演出などがある程度は埋めてくれた部分もあったし、映像作品としてすごく納得できるものになりました。

なるほど。

ASAGI:あとはせっかく自社スタジオがあるので、アコースティックであればいけるかなと。自社運営だからこそのやり方というか、世界観に応じたアレンジでセットチェンジしていますね。それはそれで大変ですけど、楽しんでやっています。そしてAREAは…めちゃくちゃ大変だったんですよ。僕らの理想を踏まえて業者を入れると、7日間連続だとかなりコストがかさむんですよね。だからといって、そこを削ってカメラや音の面で妥協してクオリティを落とすのはナンセンスじゃないですか。だから、削る方向じゃなくて、最大限のクオリティで届けるには、機材を買うしかないなと。カメラとスイッチャーを揃えるところから始めました。AREAの配信ライブがあって、生配信を自分たちで対応できるようになったので、あの経験はものすごく大きかったです。あの時ほど忙しくてやることが多いライブはもうないんじゃないかと思うくらい(笑)。機材周りはHIDE-ZOU君がすごく頑張ってくれましたね。

HIDE-ZOU:機材を揃えるに当たって色々と調べたんですよ。どうしても小さくまとめられているものだと、使い方は簡単になっているのかもしれないですけど、できないことが出てくるというのもあって、プロユースの機材を揃えました。そうなると今度は、専門的な知識がないと起動できないという壁にぶち当たって。日本製じゃないので、説明している人のYouTube動画とかを見ても大体が英語なんですよね。なので、毎日のようにカスタマーサービスに電話していました(笑)。丁寧に教えてくださって使い方がわかったので、メンバーとスタッフでスタジオに集まって、皆でこうじゃないああじゃないと話し合いながら、ようやくこれならいけるという判断になった時に、GOした感じですね。だから1週間くらいずっとカスタマーサービスに連絡していた時が一番大変でした(笑)。

もう無敵ですね(笑)。

HIDE-ZOU:今まで触れなかったものに新たに触れても大丈夫だという意識も芽生えましたね。挑戦の一つみたいな。AREAの経験は、その後の我々の活動にすごく活かされているので、良かったなと思います。

ASAGI:ただ、事前に試してみて大丈夫でも、やっぱり本番になると予期せぬトラブルも起こったりするので、それが毎回怖いですね。

HIDE-ZOU:生配信するに当たって色々な段階を踏むんですけど、どこがトラブっているのか判断しなきゃいけないのが、なかなか難しかったですね。冷や冷やしました(苦笑)。

ASAGI:しかもAREAの時、雷が鳴っていた日もあったんですよ。その影響で機材がトラブったりもしたので、天候にも左右されるのかと(笑)。

HIDE-ZOU:電圧で機材にダメージを受けたんですよね。

ASAGI:全配信が終わってからPCが壊れたもんね(笑)。

HIDE-ZOU:使っていたPC3台のうち2台がクラッシュするという。多分、電圧の問題だと思うんですよね。あれは5月6日でした。7daysが終わって、データを整理しようと思って電源を立ち上げたら「ビーー」みたいな…! もう1台を立ち上げようと思ったら、今度は立ち上がらないんです。何じゃこりゃー!と。色々なデータが入っているので、それを救出するのに東奔西走して。詳しい人に連絡して、データだけは救出できて何とかなりました。

もしデータが全部飛んでいたらと思うとゾッとします。

HIDE-ZOU:でも、7日間のデータは無意識にハードディスクにも保存していたんですよ。過去の自分に感謝しましたね。PCがクラッシュして、「やっちまった、保存しておけばよかった!」ということがこれまでに何度かあったので、どんなに忙しくても重要なデータは二つに分けて保存しておくというのが教訓です。

ASAGI:あの生配信の開催を決定したのは、AREAが今年で閉館するというのが大きかったんですよね。Dでできる最後のAREAを何とかして納得できる形で届けたいなと。ライブハウスなので、業者やスタッフを揃えようとすると、結構な人数になって密になっちゃうじゃないですか。それも踏まえると、メンバーも稼働しながら最小人数で最後のAREAを何とか届けなきゃいけないな…というところから始めたんです。めちゃくちゃ大変でしたけど、やって良かったなと思います。

Ruiza:今振り返ると、どの配信ライブもすごくDらしいなと思うし、無観客での配信ライブという形になって以降、バンドがめちゃくちゃパワーアップしているなと思いますね。最初は慣れないことが多かったので、難しい部分や予期せぬトラブルもありましたけど、一歩一歩階段を上っているなと。最近は余裕が少しだけ出てきたのかなと思います。どれも大変は大変なんですけど、良い大変さで、ものすごく濃い1年半~2年を過ごしたなと。とても良い経験値を手に入れているのかなと思いますね。

有観客とはまた違ったライブの見せ方ができた(HIROKI)

HIROKI

昨年末に行われたロックハート城での「M.L.V.」第1弾を視聴した時、あまりの高クオリティに本当にビックリしました。地上波の音楽特番レベルだなと思って。

ASAGI:ハハハ(笑)。いつものMVチームに入ってもらったので、Dとしてやるんだったら派手にやりたいということを相談させてもらったんです。なので照明もガッツリ仕込んでもらって、カメラも結構な台数入れました。そこまでは今までのMVの流れですけど、さらに生で音をRECするので音響の人たちも加わって、更に銀テープも飛ばしてと、かなり大掛かりでしたね。

生配信ではなく事前に収録したものを配信するという形は、特にこの界隈で昨年末の時点では割と珍しかったように思います。

ASAGI:それはめちゃくちゃ悩んだんですよ。最初は生配信でいこうという話だったんですけど、ロックハート城は結構山のほうなので、天候も変わりやすいし、突然雨が降って中止になるかもしれない。初めての生配信となると、様々なトラブルが起こり得るなと。ネット環境も不安定だと安心して届けられないですよね。ロックハート城から生配信した例は過去にあったらしいんですけど、それはテレビ局が大きな中継車で来て何とかなったという感じだったみたいで。ただでさえコロナ禍になって色々な予定をキャンセルして、バンドもお客さんの予定も振り回されている中、せっかく決まった楽しみな予定を狂わせるようなことが起こったら嫌だったんですよね。せっかくオンラインでやるなら、しっかりその日に配信できるようにしたいなと思った時に、やっぱり収録というのが一番安心安全な形なのかなと。結果この形にして良かったですね。

Tsunehito:「M.L.V.」は第3弾までやってきましたけど、Dの歴史を辿ることもできる、映像作品としても良いものを届けることができたと思います。各回テーマとなる作品の当時のヘアメイクや衣装を踏襲してやったので、それに思い入れのあるファンの子たちや、当時は観られなかったけど「M.L.V.」で初めて観られるという子たちにとっても、今のDで届けられたのは良かったなと。PCやスマホなど、それぞれ好きな端末で観られますし、ライブみたいに盛り上がることも、入り込んで静かにじっくり観ることもできる。この状況だからこそ、それぞれの気分で楽しみ方を選べるというのも良かったんじゃないかなと思いますね。視聴チケットの種類によってはダウンロードやDVDで手に入れることもできて、見応えのある映像作品を長く楽しんでもらえるのも良いと思います。色々な配信ライブによって、コロナ禍になってからのバンドの見せ方、新鮮さも届けられて、ファンの子たちが喜んでくれているのが本当に嬉しかったですね。

HIROKI:ロックハート城やワープステーション江戸の時は屋外だったので、雨が降らなくて本当に良かったです(笑)! とはいえ、配信ライブといえどもカメラの向こうにいるみんなにライブの熱い思いを伝えられるように演奏していますし、有観客とはまた違ったライブの見せ方ができたと思います。自分自身も、ドラマーとしてアピールする部分でもとても勉強になりました!

録りの時点で細かい部分まで追い込めるようになった(Tsunehito)

Tsunehito

2017年10月発売のミニアルバム『愚かしい竜の夢』をコンセプトにした「M.L.V.」第3弾@大谷稲荷山が10月16日に配信となり、同作品に新曲と再録曲を加えたコンセプトフルアルバム『Zmei』がこの度、新たにリリースされるわけですが、『愚かしい竜の夢』をテーマにフルアルバムを制作しようと思ったきっかけというのは?

ASAGI:これまでミニアルバムはいくつかリリースしていて、作った時点では思い描いているものは全部詰め込んでいるので、その時はそれが完成形なんですけど、そのコンセプトでライブを回ったり、時間が経って振り返ったりしている中で、またストーリーが広がることもあったんですよね。なので、いつかそれをコンセプトフルアルバムにしてリリースするのも良いのかなという話を結構前からしていたんです。リリースしてツアーを回るのって大体1~2ヵ月のスパンですけど、Dの世界観はすごく濃いし深いので、スパンとしては割と短めだなと感じている部分もあったんですよね。作品の見せ方として割と駆け足になってしまう感じもしていたので。

確かに。

ASAGI:「M.L.V.」でコンセプトに沿ったセットリスト、衣装、メイク、ロケーション…となってくると、作品を振り返るので、新たな物語が浮かんで来たりもするんですよね。改めてもう一度考えられるというか。『愚かしい竜の夢』を「M.L.V.」第3弾でやろうとなった時も、やっぱりそうで。FC限定音源の「Draco animus」を4月にリリースして、ヴァンパイアストーリーと『愚かしい竜の夢』の世界が繋がったんですよね。「Draco animus」ができた時点で、それに繋がる「Venom immunity」のイメージも湧いてきたので、あと数曲あれば前から話していたコンセプトフルアルバムという形にできるんじゃないかと。そんな中、最後に表題曲の「Zmei ~不滅竜~」ができて、アルバムタイトルが決まりました。

ミニアルバムと今作で曲順がかなり違いますが、なぜ大幅に入れ替えを?

ASAGI:仮の段階ではミニアルバムの曲の後に、新曲をバーッと並べる形で進めていたんですよ。だけど、歌詞も踏まえてセルフライナーノーツを書いたりしているうちに、曲順を並べ直したほうが世界観が伝わりやすくなるなと思ったんです。『Zmei』というアルバムタイトルが決まって、竜を呼ぶ曲である「竜哭の叙事詩」の〈ズメイよ〉というフレーズから始まったほうが、アルバムとしては締まるなと。かつ、新曲が加わることによって、前後の時間軸の流れも繋がるように考えていきました。

レコーディング方法としては、これまでと変化したことはありますか?

HIDE-ZOU:レコーディングする環境が段々変わってきて、PCも進化しているし、音的なクオリティも数年前と比べると圧倒的に解像度が違うんですよね。DAWも進化しているので、それを利用しない手はないなと。プロデューサーの岡野ハジメさんと話し合って、「Draco animus」のレコーディング辺りから今までと違うやり方を実験してみようということになりました。

Tsunehito:今までだったら実際にキャビを鳴らして、それを録るリアンプという手法でギターもベースもやっていたんですけど、PC上の色々な機材が進化しているので、今回はそういうものでチャレンジしてみようという話になったんですよね。なので、弦楽器隊はリアンプをやらず、PC上での音作りで完結させたんですけど、めちゃくちゃ納得できるものができたので良かったなと。聴きやすいというか、整理されて音の帯域…例えばバスドラの低い部分とベースの低い部分がぶつかって打ち消し合ったりするのを、今までならMIXの時に調整するんですけど、今回は録りの時点で細かい部分まで追い込めるようになったのが良かったなと。

そうだったんですね。

Tsunehito:その分、新しく気付けたこともあって。録りで自分が強く弾いてしまったものって、ガチッという弾いたアタックは聴こえるけど、気を付けないと低音の膨よかな部分がなくなりがちというか。リアンプで録る場合はそこが補えたりするんですけど、PC上の場合は膨らんできてくれないことがわかって、弾き方は気を付けました。なので、それぞれの方法に合った弾き方があるんだなというのが発見でしたね。