AKIHIDE

AKIHIDE

眠れない夜にAKIHIDEが贈る音絵本『-つきのふね-』。
ある三日月の夜に、主人公が見つけた本当に大切なものとは――。

BREAKERZのギタリスト、AKIHIDEが音楽活動と並行して行っているアート活動。CDのアートワークやグッズデザインはもちろん、過去に2作の絵本を発表しているAKIHIDEだが、今作『-つきのふね-』は絵本としては本当の意味での書き下ろし初作品。さらに、全編アコースティックギターで紡がれるオリジナルサウンドトラックCDを付属した「音絵本」という新たな形態でのリリースとなる。作画、作曲、演奏全てAKIHIDE一人による作品ということも特筆すべき点だ。視覚、聴覚の両方で、その世界観をぜひじっくり堪能していただきたい。

◆ライブがあったからこそ、作りたいと思った作品

――これまで2作の絵本を発表していますが、今回はサウンドトラックCDと共に「音絵本」という形態での作品ということで。この形態で出そうという構想はいつ頃からAKIHIDEさんの頭の中にあったのでしょうか?

AKIHIDE:そもそもの始まりは、11月に「Premium Night Show 2016 -月の舟-」というライブがあるんですけど、いつも何かしらリリースものを絡めた動きだったり、リリースする予定の曲を演奏したり、わりと作品絡みのツアーが多かった中、今回は特に決めていなかったんです。でもせっかくツアーをやるならお客さんにより楽しんでもらう一つのツールとして、やっぱり作品は必要かなと。アルバムは今年3月に『ふるさと』を出していたので、アルバムを続けてリリースするより何か新しいものができないかなと考えて、絵本を書くのが好きなので、絵本と音源で、絵本に特化したものを作ったら面白いかなと思って制作を始めました。具体的に考えだしたのは、7月のEX THEATER ROPPONGIでのライブの後くらいですかね。だから、ある意味ライブがあったからこそ、作りたいと思った作品ではあります。

――実際に取り掛かり始めたのが7月くらいということですか。

AKIHIDE:そうですね。ツアータイトルを決めて、絵を描いたら、イメージの共有のためにスタッフに一度送るんです。それで浮かんできたのが表紙の感じで、「つきのふね」というタイトルだけが最初に決まって。そこから導かれるように話を作っていった感じですね。

――なるほど。表紙の絵のみが最初にあって、そこからタイトルが決まり、物語を作り、その後に曲を制作していったという流れですか。

AKIHIDE:はい。絵本は今作で3作目とはなっているんですけど、1作目『ある日 ココロが欠けました』(2012年2月発売)は僕が中学時代に書いた詞を元にしていて、2作目『Life Book』(2014年4月発売)はブログを元に書いているので、本当の意味での書き下ろしというのは今作が初めてで、より絵本感が増している作品になったと思います。

――「MOON SIDE THEATER」(2003年に開設したAKIHIDEが作画、音楽、WEBデザイン全てを制作しているオンライン絵本コンテンツ)もあったので、WEB上でやっていたことが、ついに形ある物として発売という感もあります。好きなこと、得意分野を突き詰めて続けていくことは大切なことだなと。AKIHIDEさんは子供の頃から絵、本、音楽は好きだったんですか?

AKIHIDE:そうですね。母親があんまりゲームとかは買ってくれなかったんですけど、本とCDだけは買ってくれる人で。僕が30歳になる前くらいまでは、誕生日プレゼントにいつも絵本をくれたんです。

――素敵ですね。

AKIHIDE:その影響が強いんでしょうね。たぶん、僕が小さい頃に絵本に目を輝かせていたから、母親は与えようとしたんだと思うんですけど。そういう意味では、小さい頃から好きでしたね。

――学校の音楽の授業は好きでしたか?

AKIHIDE:全然好きじゃないです(笑)。笛とかやらされるじゃないですか。ギターもなかったし。歌は好きでしたけど、あんまり楽しかったという記憶はないですね。授業というものに関しては、あんまり好きなものはなかったです(笑)。

――図工も?

AKIHIDE:図工も彫刻刀で指を切った記憶しかないですね(笑)。友だちと会うのが楽しかったということくらいですね。

――では苦手だったものは?

AKIHIDE:数学は嫌でしたね。やっぱり理数系は全然ダメです。悲しいくらい苦手でした(笑)。

◆新しい明日を迎えられるようなお話を作りたいなというのが根源にあった

――これまで、楽曲からイメージされるイラストを軸にした『RAIN STORY』、インストゥルメンタルだけど言葉と絵があることで自分らしくなるというのが、4作目にしてより突き詰められたという『月と星のキャラバン』など、AKIHIDEさんと物語やアートワークは切り離せないものですが、今回は絵本のほうがメインということで、制作に臨む心持ちとしては何か違いはありましたか?

AKIHIDE:今までは基本的にCDのブックレットにイラストやキャラクターを使用していたので、あくまで音の情報をより補足するために絵を描いたり物語を作るという発想だったんですけど、今回は絵や物語で何を伝えたいかということから始まっているんですよね。最近また絵本を読んだりするんですけど、基本は子供向けじゃないですか。大人が理解できる絵本って、子供が理解できなかったり。今まで作った作品もファンの方から喜んでいただいている声はもちろん聞くんですけど、保育士さんの方で「子供にも見せたいと思います」と言ってくれる方もいるので、もっと子供にもわかるような内容のもので、大人のファンの方が見ても喜べるようなものにしたいなと思って、ストーリーを作って、そこに音をはめ込んでいきました。

――なるほど。

AKIHIDE:なので、言葉もほとんど平仮名で構成して、あとは絵本の良さって人の手が加わった感じだと思うので、僕は基本的にはPCで絵を描いていて、そこに手作業を加えて今までのジャケットを作っていたんですけど、今回はもっと温かい感じにしたくて、下地を絵の具で塗ったものをスキャンしてデータで取り込んで、それを1回プリントアウトしたものを色々と加工して、という今まで以上に手間のかかる作業をやりました。今作は絵本らしい温かさをより考えて作りましたね。

――今作の絵という部分でいうと、特にお気に入りのページは?

AKIHIDE:10ページ11ページの「ほしのみなと」に着く場面ですね。今作を一番象徴している感じの、青と星空と、それを旅する舟という。前作に出てきたウサギに近いキャラクターや、僕がよく描くナミダくんもいたり。華やかで旅立つ感じがして、色合いも綺麗なので、個人的にこのページは好きですね。各ページ、色合いもしっかり考えたので、それを見ながら音を聴いていただければなと思います。

――この絵本は完成するまでに、どのくらいの期間かかったんですか?

AKIHIDE:結構長かったですね。ストーリーを考えて、絵を描いて、そこからどうやって作っていくかデザイナーさんと話をして、塗って…。7月くらいから取り掛かって、つい先日できあがったので、トータルで言うと3ヶ月くらいかかっていますね。塗る作業自体は1日でやって、データを読み込んでから、もう1回、星を散りばめてという流れで、2日間だったんですけど。

――なるほど。今作は大人が読んでも、人生を考えるような気付きを与えてくれます。物語のテーマはどのようなところから生まれたのでしょうか。

AKIHIDE:やっぱり最初に浮かぶのは、ライブに来てくれる方の顔です。眠れない夜とか悩み事があって悶々としてしまうことって僕自身もよくあるんですけど、きっとそういう夜は皆さんも少なからずあるだろうなと。そういうところで、眠りに誘えるというか、安心できるというか、新しい明日を迎えられるようなお話を作りたいなというのが根源にあったんですよね。それってきっと、子供にも当てはまるところもあると思うし。それを上手く伝えやすく、なるべく情報を削ぎ落として、わかりやすく作ろうと思いました。

――何気ない日々の中での幸せがテーマでもありますが、AKIHIDEさんという人間を表すような作品だなと。AKIHIDEさんのブログも、読むだけで穏やかな気持ちになります。

AKIHIDE:ありがとうございます(笑)。

――AKIHIDEさんは日常生活で焦ること、怒ることなんてないのではないかと思ってしまいます(笑)。

AKIHIDE:いやいや(笑)。ブログはある意味、詞や絵本のような感覚で。僕の生活を知ってもらうというよりは、なるべく見ていただく方がホッとできる場所みたいなものになればいいなと思って書いているので、実生活はもっと焦ったりしています(笑)。

――(笑)。物語の主人公は、もったいない気がしてすぐに物を捨てられませんでしたが、AKIHIDEさんはなかなか捨てられないものはありますか?

AKIHIDE:そうですねぇ…難しいですね。何でも執着みたいなものってありますよね。捨てられないもの…夜、寝る前のお菓子とかがやめられないですね(笑)。最近気付いたのは、和菓子は非常にいいんだなと。動物性の油とか使ってないじゃないですか。いいなと思って、なるべく和菓子に転換しているんですけどね。でも、甘いものは捨てきれない(笑)。

――寝る前にお菓子を食べるんですね(笑)。

AKIHIDE:お酒を飲みながらお菓子ですね。ビールを飲みながらケーキとか、普通にできる人なので(笑)。でも和菓子だと翌朝の胃が楽ですね。体重も増えてない(笑)。

――それは大切ですね(笑)。

AKIHIDE:本当に洋菓子と和菓子で全然違うので、ビックリしました。

◆ギター1本とは思わせないような深み、自分なりのギタリストとしての進化

――前作『ふるさと』は優しく温かい音をテーマにしていたり、毎回様々なテーマで作品を制作していますが、今作はサウンドトラックという位置付けの他に、ギタープレイやサウンド的な部分での目標やテーマは何かあったのでしょうか?

AKIHIDE:今回は完全に絵本から生まれている曲なので、サウンドトラックなんですけど、曲に対する作り方とかは割と変わらず、なるべく進化していたいなとは思っていて。一つ違うのは、今までは色々なミュージシャンの方たちに手伝ってもらって、そこで自分の世界を広げていたんですけど、絵本は基本的に自分一人で書くものですし、なるべく自分の部屋の中で、想像で世界を広げていきたいなと思ったので、今回は自分一人で作業しました。全部自分で打ち込んで、自分でギターを弾いてというだけなので、主人公のアーサーと一緒で、想像の旅をするじゃないですけど、サウンド的にも自分の中で突き詰めて、そこで創造する音の世界をお届けしたいなと思って。そういうコンセプトで作ったので非常にシンプルではあるんですけど、基本的にギターもメインは1本で、でも1本とは思わせないような深みというか、自分なりのギタリストとしての進化だったり、新しい挑戦として聴いていただけると思います。サウンドトラックという括りだけじゃなく、1作品、シングルのような気持ちで作っているので、音のほうもしっかり聴いていただきたいなと思いますね。

――今回の3曲は、作曲、アレンジ、ギター、パーカッション、プログラミング全てAKIIHDEさんということで、全て一人でこなしたからこそのレコーディング等での印象的な出来事はありますか?

AKIIHDE:レコーディング…家で一人でやっているようなものですからね(笑)。パーカッションが最近好きで、BREAKERZのほうも含め、結構自分で演奏したりしているんですけど、なんか空気感が出るんですよね。原始的というか、子供でもおじいちゃんおばあちゃんでもできる、ただ振れば、叩けば音が鳴る、すごく感情に直結している楽器なので、それが加わることによって、僕一人なんですけど奥行きが出るんですよね。聴いていただけると、広がりを感じていただける要素になっていると思います。

――1曲目「月の舟」はウインドチャイムが入っていますが、シェイカーのような音やリズムの音は何ですか?

AKIIHDE:ウインドチャイムは入れましたね。あとは打ち込みかな。生の人間がやっていない感じも、逆に今作には合うなと思うんですよね。あくまで僕が弾いているアコースティックギターを支えるというか、色を付ける程度というか。今までは色々なミュージシャンたちとの化学反応みたいなもので聴かせてきた作品がほとんどだったんですけど、これは本当に僕のギターにおかず程度にちょっと入ってくるという感じです。

――「流星鳥」のシャーンという音はスレイベルですか?

AKIHIDE:スレイベルは今回使っていなくて、よくストリートミュージシャンの方とかが使っている足に巻くベルがあるんですよ。それを手に持ってシャカシャカやってみました。

――中盤の辺りのリズムは、ギターを叩いて出している音ですよね?

AKIHIDE:そうですね。ギターを叩いて、パーカッションっぽい使い方をしています。

――そして「星のみなと」では中盤の高音が効いているなと。

AKIHIDE:ハーモニクスという奏法ですね。今回はシンプルな作品だから、アコースティックギターで本当に色々な音が出せるというのが、より伝わりやすいかもしれないですね。

◆癒し度は今回がダントツかもしれない

――2013年から秋の恒例ライブになっている「Premium Night Show」ですが、今回はこれまでにはない編成(パーカッション、ベース、ピアノ)ということで、聴きどころを教えてください。

AKIHIDE:今まではリズムがドラムだったんですけど今回はパーカッションで、それを軸にやるので、僕自身もすごく楽しみにしているんですけど、癒し度というか繊細な情景度というのは、今回の「Premium Night Show」がダントツかもしれないですね。やっぱりリズムってすごく重要なので、それがドラムじゃなくてパーカッションになるということで、今までの楽曲も相当変化を遂げると思います。

――セットリストは、これまでの楽曲が色々と散りばめられる感じでしょうか。

AKIHIDE:そうですね。『-つきのふね-』を中心に。でも基本的に、僕はライブの度に毎回アレンジを変えているんですけど、今回は大分変わるんじゃないかなと。今までご覧になっている方も楽しめる内容になっていると思います。ピアノも初めての方なので、大分新しい化学反応をみんなで繰り出せるんじゃないかなと思っています。

――12月21日に行われる「Legend Guitarist ~Electric Star~」@Zepp DiverCity Tokyoはまた興味深いイベントです。どんなライブになるのでしょうか。

AKIHIDE:僕もわからないんですよね(笑)。でも、先輩ミュージシャンから若手の凄腕のミュージシャンまで集まっていて、僕が出させてもらっている「Being Guitar Summit」とも少し違う分野の場所で活躍されている方たちなので、同じギターのイベントでも全然違うものができると思います。特にバンドを経ている方、今もバンドをやられている方が多いので、だからこそできるインストゥルメンタルのライブになるんじゃないかなと楽しみにしています。

――では最後に、読者の皆さんへメッセージをお願いします。

AKIHIDE:非常に不思議な作品の作り方をした音絵本というシリーズの最初になるんですけど、とにかく読んでいただいたり聴いていただいて、全て引っ括めて、夜のちょっとしたホッとする時間になったらいいなと思って作りました。曲数は3曲なんですけど、ずっとループして聴けるような心地よさを絶対に感じていただけると思いますし、ギタリストとしても進化した部分を感じていただけると思うので、今までの方も、これを機に聴いていただける方も、ぜひお薦めできる作品ができました。ライブは毎回自分的にも楽しく新しいことに挑戦しているつもりなんですけど、パーカッションが加わることによって、より癒し度、ナチュラルな感じを感じていただけるライブになると思いますので、ぜひ皆さんに来ていただきたいなと思います。

(文・金多賀歩美)


ARTIST PROFILE

AKIHIDE

<プロフィール>

2001年、FAIRY FOREのギタリストとしてメジャーデビュー。2003年、FAIRY FORE脱退。2004年、NEVER LANDを結成しギターヴォーカルとして活動を始める。2007年、NEVER LAND解散。同年BREAKERZ結成。これまでに様々なアーティストのサポートギタリストや楽曲提供も行ってきた。また、オンライン絵本コンテンツ『MOON SIDE THEATER』の開設、絵本『ある日 ココロが欠けました』を出版する等、アート作品も手掛ける。2013年よりソロ活動をスタートさせ、これまでに5枚のアルバム『Amber』『Lapis Lazuli』『RAIN STORY』『月と星のキャラバン』『ふるさと』を発表。2016年11月、音絵本『-つきのふね-』をリリースし、「Premium Night Show 2016 -月の舟-」を開催する。

■オフィシャルサイト
http://akihide.com/

【リリース情報】

音絵本『-つきのふね-』
2016年11月2日(水)発売
(ムーンサイドブックス)

ふるさと
MSB-003
A5変形サイズ
オリジナルサウンドトラックCD同梱
¥3,000+税
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【CD収録曲】

01. 月の舟
02. 流星鳥
03. 星のみなと

【ライブ情報】

●AKIHIDE Premium Night Show 2016 -月の舟-
11月3日(木・祝)愛知・名古屋ブルーノート
11月4日(金)愛知・名古屋ブルーノート
11月12日(土)神奈川・Motion Blue yokohama
11月13日(日)神奈川・Motion Blue yokohama
11月19日(土)大阪・Billboard Live OSAKA
ツアー特設サイト http://akihide.com/special/tsukinofune

●Legend Guitarist ~Electric Star~
12月21日(水)Zepp DiverCity Tokyo
出演:AKIHIDE(BREAKERZ)/ KOJI(ALvino)/ Leda(Far East Dizain)/ RENO(ex.ViViD) / you(Janne Da Arc)※ABC順