インタビュー

AKIHIDE

初のコンセプトアルバム『RAIN STORY』で綴る、一つの物語。
AKIHIDEにとっての“雨”、そしてその先にあるものとは。

BREAKERZのギタリスト、AKIHIDEのソロ作品第3弾は、“雨”をテーマにしたコンセプトアルバム。エレキギター&ピアノをメインとした楽曲と、AKIHIDEがイラストと言葉を綴ったブックレットにより、様々な雨の日の情景を描いた一つの物語である。悲しみや苦しみを、少しでも前向きにしていけるような音や言葉を詰め込んだという今作について、AKIHIDEに話を聞いた。

◆雨と涙というのは僕の中で似ているものなのかも

――ソロ第1弾『Amber』が昨年の6月リリースだったので、今作『RAIN STORY』で1年間に3枚のアルバムをリリースすることになるんですね。

AKIHIDE:そうなんですよね(笑)。

――すごいことです。大変ではなかったですか?

AKIHIDE:今、制作意欲が湧いているんです。『Amber』は歌を歌ってギターを弾いて、『Lapis Lazuli』(2013年10月発売)はアコースティックギターで、今回はエレキギターのインストゥルメンタルがメインで、全然違うことを3つやってきたので、自分的には全然大変ではなかったです。逆に刺激的で、作りやすかったですね。

――『Amber』、『Lapis Lazuli』という対を成す二作を経て、今回コンセプトアルバムを作ろうと思ったのはいつ頃なんですか?

AKIHIDE:『Lapis Lazuli』をリリースしてツアーを回っていく中で、次の作品はまだ考えていなかったんですけど、ライブはすごくやりたくて、6月にライブハウスツアーをやることが先に決まったんです。そこで、ツアーのテーマを何にしようかなと思って。昨年6月に『Amber』ツアーを回った際、雨がすごかったんです。ファンの方には申し訳ないんですけど、昔から結構雨が多くて、雨男疑惑があって(笑)。だったら、逆に“雨男”というのをテーマにツアーを回ろうかなと思ったのが最初で、せっかくツアーを回るんだったら曲を書こうと思って、できたのが「RAIN MAN」なんです。そこから、あれよあれよという間にイメージが湧いてきて、雨をテーマにした曲だったり物語ができて、コンセプトアルバムという形にしようかなと。なので、段階を踏んでという感じで、具体的に動き出したのは昨年末ですかね。

――『Amber』には「涙の河」「桜雨」という楽曲があり、歌詞にも〈涙〉というワードがたくさんありましたし、『Lapis Lazuli』には「Namida」「Rain」という楽曲がありました。そして今作収録の「RAIN MAN」には〈涙の雨〉というワードがあります。AKIHIDEさんの中で、涙と雨は近いイメージだったり、切り離せないものなのでしょうか?

AKIHIDE:今回は、雨というのが生きていく中での悲しい日、辛い苦しい日、いわゆる晴れの日ではない、という比喩はしているんですけど、雨の濡れる感じや寂しい感じ、伝わってくるものというのが、この物語(ブックレット)もそうなんですけど、神様が流した涙が地上に降り注いでいるんじゃないかなと発想する時があって。自分が辛い状況の時に降る雨とかは、神様が泣いてくれてるのかな、と思うことが多いんですよね。なので、雨と涙というのは僕の中で似ているものなのかもしれません。

◆「もっと来いよ!」という感じがすごかった

――アコースティックにこだわった『Lapis Lazuli』を制作したからこそ、アコースティック以外のインストゥルメンタル曲も作りたいという気持ちが高まったところはありますか?

AKIHIDE:そうですね。アコギを弾きまくった後に「エレキ弾きたいなぁ」ってスタッフに漏らしてましたね(笑)。『Lapis Lazuli』で、ある程度癒しサウンドに行き切ったので、だからこそ、攻めるエレキギターのサウンドというのを自然と自分が求めていたのかもしれないですね。

――『Lapis Lazuli』の制作当初、エレキギターを使ったインストゥルメンタルも入れたくて色々と迷っていたというお話だったので、今作の中にはその頃に作った楽曲もあるのでしょうか?

AKIHIDE:お、その通りですね。特に「HUMAN MAZE」と「BLUES & REE」は、『Lapis Lazuli』の最初の段階で作った曲で、2年弱くらい前にレコーディングしていました。

――その時の形からほとんど変わっていないですか?

AKIHIDE:ほとんど変わってないんですけど、今回は絵本の物語が軸になっているので、世界観がそこにハマるかハマらないかというところで考えて、結果的に物語としても通じたので、収録することになりました。

――エレキギターとピアノをメインにするというサウンドのコンセプトは、どのようなところから?

AKIHIDE:まずピアノのロックを最近すごく聴いていたのと、「RAIN MAN」で雨の音をピアノで表現した時にすごくマッチングしたというところと、ピアノロックの上にギターを弾くという音楽を僕自身が聴きたかったし、僕だったら僕らしく作れるんじゃないかなという感覚があったので、そこを軸に作ってみました。「RAIN MAN」は歌を歌うことが一番伝わるかなと思って歌っているんですけど、他の曲は自分の声の代わりにエレキギターを弾いているので、いわゆる歌い手としてギターを弾いているんです。なるべく少ない他の楽器でそれを補ってもらうという時に、ピアノは音域が広いのですごく支えてくれる楽器だったんです。

――核となっているピアノには、渡辺貞夫さんのツアーにも参加されているDIMENSIONの小野塚晃さんが6曲参加されていたり、ドラムには前作での「Battle」のセッションムービーが記憶にも新しいmouse on the keysの川崎昭さんが2曲参加されていたり、様々なミュージシャンの方々と作品を作ってみて、新たな気付きはありましたか?

AKIHIDE:特に今回は、ジャズ、フュージョンという僕が今まであまり演奏してこなかったジャンルを取り込もうと思っていたので、自分なりに勉強もしたんですけど、今回参加していただいたミュージシャンの方々が、ジャズやフュージョンの世界でやられているので、すごく刺激的でしたね。レコーディングでは先にドラム、ベース、ピアノを録ってからギターを録りましたけど、音で会話するということを常にやってきていらっしゃる方々なので、最初に僕が描いていた構想よりも、皆さんがどんどん音で畳み掛けてくるんです。 なので、僕も弾いている時に煽られちゃうんですよね。言葉もないんですけど、音が「もっと来いよ!」という感じがすごかったんです。そこが、自分的には刺激的でしたし、音で人の気持ちを高揚させたり、落ち着かせてくれたり、というのをすごく学んだレコーディングでしたね。

――今作に使用したギターの本数はどのくらいですか?

AKIHIDE:エレキギターで言うと3本くらいで、よく使っているSGという赤いギター(Gibson SG ’74)と、ストラトキャスターというコラージュしていたギター(Fender Stratocaster ’76)と、真っ黒いストラトキャスターをメインで、曲によって使い分けました。

――どのように選択しているのでしょうか?

AKIHIDE:SGは、世の中的にロックギタリストが使ってきた印象が強いギターで、何を弾いてもイカつい兄ちゃんみたいな音になるんですよ。だから、優しい曲とかを弾くとちょっと違うんですよね。ストラトキャスターは、ボディーの形が女性らしい形をしていると言われているんですけど、音もやっぱり繊細なんですよね。優しい曲だったり、少し女性的なニュアンスが欲しい時には、そういうギターの方が合う。曲に合わせて色々試してみたりするんですけど、結局ハマっていくのはそういう感じで分かれていきましたね。ロックな時はこの人(ギター)、優しいものを表現したい時はこの人(ギター)と。大まかに言うとその二つですね。

――今回、歌入りの楽曲を1曲のみにした理由というのは?

AKIHIDE:他にも歌入りの曲は作っていたんですけど、ストーリーと合わせて構成していったら、ハマる曲がたまたまなかったんですよね。1曲しかできなかったわけではなく、『RAIN STORY』というアルバムをより伝えるためには、この曲だけを入れることが一番良いのかなと思って。

――なるほど。ヴォーカル録りは『Amber』の時より順調でしたか?

AKIHIDE:順調でしたね。キー設定から、自分にとって歌いやすい歌い回しとか、すごく考えながら作っていったので。自然と湧いてきたというよりは、図面を書いて作っていったような曲で、実際にレコーディングする頃にはある程度把握していたので、やりやすかったですね。今回は基本になっているのが最初に歌ったテイクで、本当にびっくりするくらい、すんなりいきました。

――ちなみに、前作ではビスケットやお茶っ葉の缶をパーカッションにしたというお話がありましたが、今回はそんなちょっと変わった裏話はありますか?

AKIHIDE:「YELLOW BOOTS」で子供のコーラスを入れたくて、小学生の男の子と女の子に歌ってもらったんですけど、いやぁ癒されましたよね。その子たちって、もう作曲家コースとかに行っている子たちで、歌もすごく上手いんです。だから「もっと子供っぽく、ヘタに歌って」ってお願いしたんですよ。「ミスってもいいから」って言ったら、「ミスはできません!」って(笑)。そんなプロ意識が非常に可愛らしくもあり。結構ぎゅっと詰まったスケジュールだった中、その楽しいレコーディングがあったおかげで、ほっこりと癒されましたね

◆苦しいものを心から外に出してくれるという存在

――『Amber』は私小説のような作品、『Lapis Lazuli』は聴いた方が主役のストーリーのサントラ、と言っていましたが、今作を言葉で表すとどんな作品でしょうか?

AKIHIDE:今作は自分でも不思議な作品で。世の中にもなかなかあるようなタイプの構成でもないし。ブックレットの絵本がすごく軸になっているので、心掛けたのは“雨”というテーマで歌詞のない曲が多いというところで、読んでいただいた、聴いていただいた方の人生において何か共有できるような言葉をと。なるべくシンプルな言葉にして、その人たちが何か苦しいこと悲しいことがあったら、そこに対してちょっと前向きになれるような音や言葉を入れたんですね。なので、強いて言えば、聴いていただいた方にとっての絵本なのかもしれないですね。ぜひブックレットの言葉を見ながら、全曲堪能していただければと思います。

――今回のブックレットも素敵なコラージュ作品ですね。

AKIHIDE:一貫してこだわっているアナログテイストというか、手作り感を生かすために、実際に切り貼りをしたんですけど、今回は撮影するステージ上に何層も並べて立体感を出して、手前のものや奥のものはぼかす距離まで持っていって、ピントをどこに合わせるかをカメラマンさんと試行錯誤して撮っていったんです。絵なんだけど絵じゃない、非常に独特な、不思議な作品ですね。

――このブックレットに出てくる「レイン」は、以前からAKIHIDEさんの作品に登場しているナミダくんと同じキャラクターですか?

AKIHIDE:神様から生まれたナミダくんなんですけど、それが空の上で雲の列車に乗って地上に降ってきて、8つの色々な人の物語を前向きにしてくれて、最後に虹と共に帰っていくというお話です。基本的に僕にとって涙というのは、雨であり、時として癒しの涙でもあり、その人の苦しいものを心から外に出してくれるという存在なんです。

――最初に通常盤のジャケ写を見た時に、これはナミダくんなのか、でも今までのナミダくんに羽根は付いてなかったはず…と思って。

AKIHIDE:お、さすがですね。

――改めて、最初(『MOON SIDE THEATER』(※)内「あおいなみだ」)のナミダくんをプリントアウトしてきました(笑)。

AKIHIDE:最初のナミダくんは頭の形がおかしいですよ(笑)。まだ俺の中で完成されてなかったっていう(笑)。雰囲気が大分変わりましたよね。最初のはすごいですね、頭が長いです(笑)。ただ言えるのは、1匹1匹が違う子なので、最初の子は頭が長い子だったんでしょうね(笑)。今回も、寝癖が付いてる子とか、帽子をかぶっている子とか、そこで個性を出しているんです。そういう変化も一つの伏線として楽しんでもらえたらいいですね。

――「RAIN MAN」はなぜオオカミなんでしょう?

AKIHIDE:デザイナーさんが自然とオオカミをチョイスしてくれていて。『Amber』の時も僕がギターを持っているキャラクターがオオカミで、「RAIN MAN」はイコール僕的なところがあるので、なんでだろう?と思っていたんですけど。満月の日ってオオカミ男はオオカミに豹変するじゃないですか。月が僕のテーマになっているので、ある意味、月という音楽があると、普段は地味な人間な僕も多少なりとも変われる(笑)。そういう部分ではずれてないのかなと。

――アーティスト写真等もAKIHIDEさん監修ですか?

AKIHIDE:「RAIN MAN」のタイトルが決まった時にはヴィジュアルイメージは既に浮かんでいたので、それを元にディスカッションして膨らませました。まさしく“雨男”をテーマに、絵本の中の登場人物のようにしたいということで、ちょっとアンティークな感じの色合いで。通常盤のジャケットの絵と並べても遜色ないような感じにできて、僕自身もこの絵本の中の登場人物みたいなイメージがあったので、そうなって良かったなと思います。衣装も今までにありそうでなかったトーンが出せたので、僕らしいけどあんまり使ったことのない雰囲気になって、非常によかったですね。この傘、1920年代ものらしいんですよ。超アンティークの傘。

――すごいですね。

AKIHIDE:100年くらい前ですからね。雨の中で使えるかはわからないですけど、ちゃんと開くし。すごく可愛い傘でしたね。今回は雨男ツアーなので、実はグッズで傘も作っていて。雨という、いわゆる「ちょっと嫌だな」「憂鬱になるな」という日が仮にあったとしても、アルバムもグッズも本当にトータルで雨をテーマに、その雨という出来事を一緒に前向きにしていけるようなものにしているので、色々楽しんでいただけると思います。

――早いもので約5ヶ月も前のことになりますが、初のジャズクラブ、初のインストゥルメンタルライブだった『Lapis Lazuli』ツアー(2013年11月15日~12月5日)はいかがでしたか?

AKIHIDE:自分的にも掴めたものがありましたし、楽しかったし、お客さんの笑顔も素敵でした。ギターだけで伝えるということの楽しさと勇気を逆にもらって、今作『RAIN STORY』に繋がる大切なツアーだったと思いますね。

――今回のツアー内容のイメージとしては、『Amber』ツアーと『Lapis Lazuli』ツアーの間のような感じでしょうか?

AKIHIDE:もちろん『RAIN STORY』がメインにはなりますけど、全部の作品が僕のキャラクターだと思うので、『Amber』も『Lapis Lazuli』も入れ込んだ、カラフルな、自分的にも新しいスタイルのライブになるんじゃないかなと思います。

――今回は雨というテーマがあるので、降っても大丈夫ですね。むしろ降った方がいいくらいでしょうか。

AKIHIDE:僕が「降ってほしい」と言ったらお客さんが可哀想なので、声を大にしては言えないんですけど(笑)、6月なので雨は降ると思うんですね。なので、来る時に少しでも楽しくなったらいいなぁと思って傘を作ったりして。仮に雨が降ったとしても、今作ならなおさら許してもらえると思うので、それも一つの味わいと思っていただけたら嬉しいです。

<脚注>
※AKIHIDEが作画、音楽、WEBデザイン全てを制作している、2003年に開設したオンライン絵本コンテンツ。

(文・金多賀歩美)

AKIHIDE

<プロフィール>

2001年、FAIRY FOREのギタリストとしてメジャーデビュー。2003年、FAIRY FORE脱退。2004年、NEVER LANDを結成しギターヴォーカルとして活動を始める。2007年、NEVER LAND解散。同年BREAKERZ結成。これまでに様々なアーティストのサポートギタリストや楽曲提供も行ってきた。また、オンライン絵本コンテンツ『MOON SIDE THEATER』の開設、絵本『ある日 ココロが欠けました』を出版する等、アート作品も手掛ける。2013年よりソロ活動をスタートさせ、2枚のアルバム『Amber』『Lapis Lazuli』をリリース。2014年4月には、絵本『Life Book』、初のLIVE DVD『AKIHIDE LIVE 2013 “Amber×Lapis Lazuli”』を発表した。6月からアルバム『RAIN STORY』を引っさげた全国ツアーを開催する


■オフィシャルサイト
http://akihide.com/


【CDデータ】

初回限定盤
(CD+DVD)
ZACL-9075
¥3,500+税

通常盤
(CD Only)
ZACL-9076
¥2,750+税


『RAIN STORY』
2014年5月14日(水)発売
(ZAIN RECORDS)
“雨”をテーマにした、BREAKERZギタリスト・AKIHIDEの3rdアルバム。収録曲「RAIN MAN」は、読売テレビ・日本テレビ系「名探偵コナン」エンディングテーマ。

【収録曲】
[CD]
01. HEAVEN’S STATION
02. RAIN MAN
03. LIGHTNING QUARTZ
04. BLUE BIRD BALLAD
05. YELLOW BOOTS
06. AMAOTO QUARTET
07. HUMAN MAZE
08. BLUES & REE
09. DEVIL’S TRUMPET
10. RAINBOW ROAD
Bonus Track. RAIN MAN 〜Acoustic Instrumental Version〜(※通常盤のみ)

[初回限定盤DVD]
RAIN MAN -Music Clip-+Prologue of RAIN MAN